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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1258608 |
審判番号 | 不服2009-6318 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-25 |
確定日 | 2012-06-13 |
事件の表示 | 特願2003-543307「マルチメディアコンテント適応のためのデバイス、方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月15日国際公開、WO03/41396、平成17年 4月 7日国内公表、特表2005-509227〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は,2006年10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年11月6日,EP)を国際出願日とする出願であって,平成19年11月12日付けの拒絶理由通知に対して,平成20年3月17日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成20年4月8日付けの拒絶理由通知に対して,平成20年10月9日に意見書が提出され,平成20年12月18日付けの拒絶査定に対して平成21年3月25日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成22年12月14日付けの当審の審尋に対して,平成23年3月17日に回答書が提出され,平成23年8月29日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成23年11月16日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年11月16日の手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「マルチメディアコンテント適応のための,第1プロファイルに関する入力データを受信し及び第2プロファイルに関する出力データを生成するデバイスであって, 第1プロファイルに関する事実を抽出する手段, 第2プロファイルに関する事実を抽出する手段, 前記第1プロファイルに関する事実及び前記第2プロファイルに関する事実に従って前記入力データを変更するための方法を記述しているルールセット, 前記入力データを,前記第2プロファイルに関する事実に一致するように,前記ルールセットに従って変更する手段,及び, 追加のルールを,前記ルールセットが前記入力データを前記第2プロファイルに関する事実と一致するように変更することを許容しない場合に,リクエストする手段を有し,前記ルールセット及び前記追加のルールが優先順位に従って分類されている,デバイス。」 第3 当審における拒絶理由について 当審における平成23年8月29日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 『【理由1】 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引 用 文 献 等 一 覧 ・引用例1:国際公開第2001/69936号 ・引用例2:特開平11-039165号公報 (原査定の拒絶理由の引用例3) ・引用例3:国際公開第99/48296号 ・引用例4:蕨野貴之 ほか6名,“移動通信環境を考慮したビデオストリーム変換制御方式の検討”,電子情報通信学会2000年総合大会講演論文集 通信1,日本,電子情報通信学会,2000年3月7日,p.561(当審の審尋の周知文献) ・引用例5:(略) ・引用例6:(略) (1)引用例1?5について ア 引用例1について。 引用例1には,以下のことが記載されている。 (途中略) イ 引用例1発明について。 上記アの摘記事項(ア)?(ウ)によれば,引用例1には,以下の発明が開示されている。(以下「引用例1発明」という。) (途中略) ウ 引用例2について。 引用例2には,以下のことが記載されている。 (途中略) エ 引用例3について。 引用例3には,以下のことが記載されている。 (途中略) オ 引用例4について。 引用例4には,以下のことが記載されている。 (途中略) カ 引用例5について。 (途中略) キ 引用例6について。 (途中略) (2)請求項1に係る発明について。 ・請求項1 ・引用例1?4 ・備考 (2-1)引用例1発明と請求項1に係る発明との一致点と相違点について (途中略) (2-2)判断 以上の相違点について,以下に判断する。 (途中略) (2-3)結論 したがって,本願発明は,引用例1発明,周知の事項及び引用例3,4開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)請求項2?11に係る発明について。 (途中略) 【理由2】この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 (途中略) 【理由3】 この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (途中略) 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。』 (なお,【理由1】の(1)の「引用例1?5について」は,「引用例1?6について」の誤記であることが明らかである。) 第4 審判請求人の意見書における反論について 審判請求人の平成23年11月16日の意見書における反論の概要は,以下のとおりである。 『1)理由1 出願人が引用例を拝見しましたところ,引用例1(国際公開第2001/69936号)は,請求項1,10,11記載の「前記ルールセットと前記追加ルールが優先順位に従って分類されている」こと,ここで,該ルールセットが第1プロファイルに関する事実及び第2プロファイルに関する事実に従って入力データを変更するための方法を記述している,を開示していませんし,示唆もしていません。各引用例のいずれにも,ルールを優先順位に従って分類することを開示していません。審判長殿は拒絶理由通知書において引用例4(“移動通信環境を考慮したビデオストリーム変換制御方式の検討”)を引用しています。引用例4は,ユーザーが指定した情報に基づいてクオリティ値を決定することを教示しています(561ページ右欄4行?右欄9行の(4)クオリティ値の決定における記述)。明らかに,引用例4はどんな優先順位も示唆していませんし開示もしておらず,ルールを優先順位に従って分類することを教示しているのではなくて,クオリティ値をユーザーの好みに基づいて決定することだけを教示しています。たとえユーザーの好みを優先順位として解釈したとしても,引用例4はどんなルールのどんな分類も教示はしていません。 当業者が引用例4の教示を引用例1に適用することはありません。と云うのは,引用例1においては,トランスコードヒントメタデータが,どんなクオリティ値も参照していないからです。仮に引用例4の教示を当業者が引用例1に適用したとしても,ユーザーの好みに基づいてクオリティ値を決定して,該クオリティ値をトランスコードのために使用できた可能性があっただけにすぎず,決して,変換ルールを優先順位に応じて分類することには想到し得なかったのです。したがいまして,「前記ルールセットと前記追加ルールが優先順位に従って分類されている」ことを特徴事項として備える請求項1,10,11に係る発明は引用例1乃至引用例4から当業者が容易に発明できたものではなく,引用例1乃至引用例4に対して進歩性を有しており,請求項1を減縮した請求項2-9も当然に引用例1乃至引用例4に対して進歩性を有していると云えることから,本理由は失当であると思量致します。 2)理由2 (途中略) よって,本理由は解消したと思量致します。 3)理由3 (途中略) したがいまして,この出願の発明の詳細な説明の記載及びこの出願の出願時の公知技術から当業者が請求項1に係る発明を実施することができたと,出願人は思量致します。よって,本理由は失当であると思量致します。』 第5 当審の判断 当審は上記「第4」の審判請求人の反論によってもなお,本願発明は,当審の拒絶理由の【理由1】の理由により進歩性を有しないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 5-1.各引用例について (1)引用例1について 平成23年8月29日付けで通知した拒絶理由で引用した引用例1(国際公開第2001/69936号)には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例1摘記事項」という。) (ア)「Technical Field The present invention relates to an audio/video (or audiovisual, "A/V") signal processing method and an A/V signal processing apparatus for extracting a compact representation of a multimedia description and transcoding hints metadata for transcoding between different (e.g., MPEG) compressed content representations, manipulating (e.g., MPEG compressed) bitstream parameters such as frame rate, bit rate, session size, quantization parameters, and picture coding type structure, such as group of pictures, or "GOP", classifying A/V content, and retrieving multimedia information.」 (1ページ3行?11行) (当審仮訳: 技術分野 本発明は,マルチメディア記述及び異なる方式(例えば,MPEG)により圧縮されたコンテンツ表現間のトランスコードのためのトランスコードヒントメタデータの縮小された表現を抽出し,フレームレート,ビットレート,セッションサイズ,量子化パラメータ,ピクチャコード化タイプ構造(例えば,グループオブピクチャ:GOP)等の(例えば,MPEG圧縮)ビットストリームパラメータを操作し,A/Vコンテンツを分類し,マルチメディア情報を取り出すオーディオ/ビデオ(又はオーディオビジュアル(A/V)信号方法及びオーディオ/ビデオ信号処理装置に関する。) (イ)「The present invention is in the field of transcoding compressed A/V content from one compressed format into A/V content of another format by using supporting transcoding metadata. The term transcoding includes, but is not limited to changing the compressed format (e.g. conversion from MPEG-2 format to MPEG-4 format), frame-rate conversion, bit rate-conversion, session-size conversion, screen-size conversion, picture coding type conversions, etc. 」 (6ページ2行?7行) (当審仮訳: 本発明は,トランスコードメタデータを用いて,ある圧縮フォーマットを有するA/Vコンテンツを他の圧縮フォーマットを有するA/Vコンテンツにトランスコードする技術分野に関する。トランスコードという用語は,特に以下に限定されるものではないが,圧縮フォーマットの変換(例えば,MPEG-2フォーマットからMPEG-4フォーマットへの変換),フレームレートの変換,ビットレートの変換,セッションサイズの変換,画面サイズの変換,ピクチャコード化タイプの変換等を含む。) (ウ)「Best Mode for Carrying out the Invention Fig. 1 depicts a general overview on a system 100 for transcoding in a home network environment in accordance with an embodiment of the invention. As shown in Fig. 1, an A/V content server 102 includes an A V content storage 103, an A/V transcoding unit 106, a transcoding hints metadata extraction unit 104, and an A/V transcoding hints metadata storage buffer 105. A/V content storage 103 stores compressed A/V material from various sources with varying bit rate and varying subjective quality. For example, A/V content storage 103 may contain home video from a portable Digital Video ("DV") video camera 111, MPEG-4 compressed video with a very low bit rates (of say 10 kbit/s) from an MPEG-4 Internet camera 112, and MPEG-2 Main Profile at Main Level ("MP@ML") compressed broadcast video of around 5 Mbit/s from a broadcast service 101, which is in some cases already associated with transcoding hints metadata. A/V content server 102 may also contain high definition compressed MPEG video at considerably higher bit rates. As shown in Fig. 1, A/V content server 102 is connected to a network 113, which may be a wire-based or wireless home network. Several A/V terminals with different characteristics may also be attached to network 113, including, but not limited to: a wireless MPEG-4 A/V personal digital assistant ("PDA") 107, a high resolution A/V terminal for high definition television entertainment 108, an A/V game console 109, and an International Telecommunications Union Technical Standards Group ("ITU-T") based videophone 110. The A/V terminals 107, 108, 109, and 110 may be attached with different bit rate transmission capabilities (due to cable or radio link) to home network 113. Furthermore, wireless video PDA 107, for example, may be limited in terms of computational power, storage memory, screen size, video frame rate, and network bit rate. Therefore, A/V transcoding unit 106 may transcode, for example, 5 Mbit/s MPEG-2 broadcast video at European 25 frames per second ("fps") and 720x 480 pel contained in A/V content server 102 to an MPEG-4500 kbit/s 15 fps video for wireless transmission and display on a 352x240 pel display by wireless MPEG-4 video PDA 107. A/V transcoding unit 106 may use the transcoding hints metadata from buffer 105 to transcode, in real time, the compressed source bit rate of the A/V content to the capabilities of each specific target A/V terminal 107, 108, 109, and 110. The transcoding hints metadata are generated in transcoding hints metadata extraction unit 104 or they may be distributed by a broadcast service 101. As shown in Fig.1, a compressed bitstream in a source format (hereinafter "first bitstream") 116 is transferred from A/V content buffer 103 to A/V transcoding unit 106. A bitstream in a target format (hereinafter "second bitstream") 115 is transferred after transcoding in transcoding unit 106 to home network 113. From home network 113, content in, e.g., compressed DV format is stored in A/V content storage 103 via link 114. Fig.2 illustrates the transcoding hints extraction, transcoding hints storage, and transcoding process in accordance with an embodiment of the invention. As shown in Fig. 2, a buffer 201 contains A/V content in a source format. A buffer 202 contains a description of the source format, such as bit rate, compression method, GOP structure, screen size, interlaced or progressive format, etc. A buffer 203 contains a description of a target format, such as bit rate, compression method, GOP structure, screen size, interlaced or progressive format, etc. A transcoding hints extraction unit 207 reads the A/V content in compressed source format from A/V buffer 201, as well as the source format description from buffer 202 and the transcoding target format description from buffer 203. After the transcoding hints are calculated by transcoding hints extraction unit 207, the transcoding hints are stored in a transcoding hints metadata buffer 206. An A/V transcoding unit 205 reads first bitstream 204 in the source format from A/V content buffer 201 and transforms the source format into the target format by means of the transcoding hints metadata stored in buffer 206. A/V transcoding unit 205 outputs second bitstream 208 in the new compressed target format to an A/V target format buffer 209 for storage. 」 (8ページ10行?11ページ2行) (当審仮訳: 発明を実施するための最良の形態 図1は,本発明に基づき,ホームネットワーク環境においてトランスコードを行うシステム100の全体的な構成を示す図である。図1に示すように,A/Vコンテンツサーバ102は,A/Vコンテンツストレージ103と,A/Vトランスコード回路106と,トランスコードヒントメタデータ抽出回路104と,A/Vトランスコードヒントメタデータ記憶バッファ105とを備える。A/Vコンテンツストレージ103は,様々なソースから供給される,様々なビットレート及び様々な主観的品質を有する圧縮されたA/V素材(compressed A/V material:以下,圧縮A/V素材という。)を格納する。A/Vコンテンツストレージ103は,例えば,ポータブルデジタルビデオ(DV)用ビデオカメラ111からのホームビデオデータ,MPEG-4インターネットカメラ112からのビットレートの低い(例えば,10kbit/s)MPEG-4圧縮データ,及び放送サービス101からのメインレベルのMPEG-2メインプロファイルデータ(MP@ML)とを格納する。放送サービス101からのデータには,既にトランスコードヒントメタデータが関連付けられていることもある。A/Vコンテンツサーバ102は,かなりビットレートの高い高解像度圧縮MPEGビデオデータを格納することもできる。 図1に示すように,A/Vコンテンツサーバ102は,ホームネットワーク113に接続されている。ホームネットワーク113は,有線ネットワークであっても,無線ネットワークであってもよい。異なる特性を有するA/V端末機器とは,以下に限定されるものではないが,例えば次のようなものがある。すなわち,無線MPEG-4A/V個人用情報端末装置(personal digital assistant:以下,PDAという。)107,高精細度テレビジョン放送用の高精細度A/V端末装置109及び国際電気通信連合の技術標準化グループ(Telecommunications Union Technical Standards Group:以下,ITU-Tという。)の規格に基づくテレビ電話(videophone)110等である。A/V端末機器107,108,109,110は,ビットレートの異なる伝送能力(ケーブル又は無線リンクに起因する)をもってホームネットワーク113に接続されている。 さらに,例えば,無線ビデオPDA107は,演算能力,メモリ容量,画面サイズ,ビデオフレームレート及びネットワークビットレートが制限されている。したがって,A/Vトランスコード回路106は,例えば,A/Vコンテンツサーバ102に格納されているヨーロッパ規格の25フレーム毎秒(fps),720x480画素の5Mbit/sのMPEG-2放送ビデオデータを無線MPEG-4ビデオPDA107のディスプレイに表示できる352x240画素及び無線伝送のためのMPEG-4500kbit/sのMPEG-4データにトランスコードする。A/Vトランスコード回路106は,バッファ105からのトランスコードヒントメタデータを使用して,A/Vコンテンツの圧縮されたソースデータのビットレートを各特定のターゲットA/V端末機器107,108,109,110の能力に応じて,実時間でトランスコード処理を行うことができる。トランスコードヒントメタデータは,トランスコードヒントメタデータ抽出回路104から生成してもよく,放送サービス101により配信されたものであってもよい。 図1に示すように,ソースフォーマットにより圧縮されたビットストリーム(以下,第1のビットストリームという。)116は,A/Vコンテンツストレージ103からA/Vトランスコード回路106に供給される。ターゲットフォーマットのビットストリーム(以下,第2のビットストリームという。)115は,トランスコード回路106においてトランスコードされた後,ホームネットワーク113に供給される。例えば,DVフォーマットに圧縮されたコンテンツは,ホームネットワーク113からリンク114を介してA/Vコンテンツストレージ103に供給される。 図2は,本発明に基づくトランスコードヒントの抽出,トランスコードヒントの保存,及びトランスコード処理を説明する図である。図2に示すように,A/Vコンテンツバッファ201は,ソースフォーマットのA/Vコンテンツを格納する。バッファ202は,ソースフォーマットに関する記述,例えば,ビットレート,圧縮法,GOP構造,画面サイズ,インターレース走査であるかプログレッシブ走査であるか,といった情報を格納する。バッファ203は,ターゲットフォーマットの記述,例えば,ビットレート,圧縮法,GOP構造,画面サイズ,インターレース走査であるかプログレッシブ走査であるか,といった情報を格納する。トランスコードヒント抽出回路207は,A/Vコンテンツバッファ201から圧縮されたソースフォーマットによるA/Vコンテンツを読み出すとともに,バッファ202からソースフォーマットに関する記述及びバッファ203からターゲットフォーマットに関する記述を読み出す。トランスコードヒント抽出回路207は,トランスコードヒントを算出し,これをトランスコードヒントメタデータバッファ206に格納する。A/Vトランスコード回路205は,A/Vコンテンツバッファ201からソースフォーマットによる第1のビットストリーム204を読み出し,トランスコードヒントメタデータバッファ206に格納されているヒントメタデータを用いて,ソースフォーマットをターゲットフォーマットに変換する。A/Vトランスコード回路205は,圧縮された新たなターゲットフォーマットを有する第2のビットストリームをA/Vターゲットフォーマット209に供給し,保存する。) (2)引用例1発明について 上記(1)の摘記事項(ア)?(ウ)の記載を参照すれば引用例1には以下の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されている。 「A/Vコンテンツサーバ102は,A/Vコンテンツストレージ103と,A/Vトランスコード回路106と,トランスコードヒントメタデータ抽出回路104と,A/Vトランスコードヒントメタデータ記憶バッファ105とを備え, A/Vコンテンツストレージ103は,様々なビットレート及び様々な主観的品質を有する圧縮されたA/V素材を格納するものであって,例えば,ホームビデオデータ,MPEG-4圧縮データ,放送サービス101からのメインレベルのMPEG-2メインプロファイルデータ(MP@ML)とを格納し,放送サービス101からのデータには,既にトランスコードヒントメタデータが関連付けられていることもあり,A/Vコンテンツサーバ102は,かなりビットレートの高い高解像度圧縮MPEGビデオデータを格納することもできるものであって, A/Vコンテンツサーバ102は,ホームネットワーク113に接続され,例えば,PDA107,高精細度A/V端末装置108,テレビ電話110等,ビットレートの異なる伝送能力をもってホームネットワーク113に接続され, 例えば,PDA107は,演算能力,メモリ容量,画面サイズ,ビデオフレームレート及びネットワークビットレートが制限され,A/Vトランスコード回路106は,例えば,A/Vコンテンツサーバ102に格納されているMPEG-2放送ビデオデータをPDA107のディスプレイに表示できる352x240画素にトランスコードしてもよく, A/Vトランスコード回路106は,バッファ105からのトランスコードヒントメタデータを使用して,A/Vコンテンツの圧縮されたソースデータのビットレートを各特定のターゲットA/V端末機器の能力に応じて,実時間でトランスコード処理を行うことができるものであって, トランスコードヒントメタデータは,トランスコードヒントメタデータ抽出回路104から生成し,放送サービス101により配信されたものであってもよく, ソースフォーマットにより圧縮されたビットストリーム(第1のビットストリーム)116は,A/Vコンテンツストレージ103からA/Vトランスコード回路106に供給され,ターゲットフォーマットのビットストリーム(第2のビットストリーム)115は,トランスコード回路106においてトランスコードされた後,ホームネットワーク113に供給されるものであり トランスコードヒントの抽出,保存,処理は,A/Vコンテンツバッファ201がソースフォーマットのA/Vコンテンツを格納し,バッファ202がソースフォーマットに関する,ビットレート,圧縮法,GOP構造,画面サイズ,インターレース走査であるかプログレッシブ走査であるか等の情報を格納し,バッファ203は,ターゲットフォーマットの,ビットレート,圧縮法,GOP構造,画面サイズ,インターレース走査であるかプログレッシブ走査であるか等の情報を格納し,トランスコードヒント抽出回路207は,A/Vコンテンツバッファ201から圧縮されたソースフォーマットによるA/Vコンテンツを読み出すとともに,バッファ202からソースフォーマットに関する記述及びバッファ203からターゲットフォーマットに関する記述を読み出し,トランスコードヒント抽出回路207は,トランスコードヒントを算出し,これをトランスコードヒントメタデータバッファ206に格納するものであり, A/Vトランスコード回路205は,A/Vコンテンツバッファ201からソースフォーマットによる第1のビットストリーム204を読み出し,トランスコードヒントメタデータバッファ206に格納されているヒントメタデータを用いて,ソースフォーマットをターゲットフォーマットに変換して,A/Vトランスコード回路205は,圧縮された新たなターゲットフォーマットを有する第2のビットストリームをA/Vターゲットフォーマット209に供給すること。」 (3)引用例2について 平成23年8月29日付けで通知した拒絶理由で引用した引用例2(特開平11-039165号公報)には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例2摘記事項」という。) 「【0028】データを保存するファイルサーバ25とファイルサーバ25に保存するデータフォーマット形式が選択されると制御部53は,データフォーマット形式を変換する変換プログラムが機器にあるかどうか判断する。データフォーマット形式を変換する変換プログラムが無い場合,あるいは最適な変換処理プログラムでない場合には,制御部53がデータ変換に必要なデータフォーマット変換処理プログラム72をダウンロードする要求を行う。」 (4)引用例3について 平成23年8月29日付けで通知した拒絶理由で引用した引用例3(国際公開第99/48296号)には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例3摘記事項」という。) (ア)「Abstract: A novel method and apparatus for protection of streamed media content is disclosed. The apparatus includes control means for governance of content streams or objects, decryption means for decrypting content streams or objects under control of the control means, and feedback means for tracking actual use of content streams or objects. The control means may operate in accordance with rules received as part of the streamed content, or through a side-band channel. The rules may specify allowed uses of the content, including whether or not the content can be copied or transferred, and whether and under what circumstances received content may be 'checked out' of one device and used in a second device. The rules may also include or specify budgets, and a requirement that audit information be collected and/or transmitted to an external server. The apparatus may include a media player designed to call plugins to assist in rendering content. A 'trust plugin' and its use are disclosed so that a media player designed for use with unprotected content may render protected content without the necessity of requiring any changes to the media player. The streamed content may be in a number of different formats, including MPEG-4, MP3, and the RMFF format.」 (Abstract) (当審仮訳: 【要約】 ストリーミング方式のメディア・コンテンツを保護するための新規の方法および装置が開示される。装置は,コンテンツ・ストリームまたはオブジェクトを統御するための制御手段,コンテンツ・ストリームまたはオブジェクトを制御手段の制御の下で解読するための解読手段,およびコンテンツ・ストリームまたはオブジェクトの実際の使用を追跡するためのフィードバック手段を含む。制御手段は,ストリーミング方式のコンテンツの一部としてまたは側波帯チャンネルを通じて受信するルールに従って作用する。ルールは,コンテンツをコピーまたは転送できるか否か,および受信したコンテンツを1つの装置で「チェックアウト」して第二の装置で使用できるか否か,またどのような状況でこれができるかを含めて,コンテンツの許容される使用法を指定する。ルールは,また,予算,および監査情報の収集および(または)外部サーバへのその伝送の要求を含めるまたは指定することができる。装置は,コンテンツのレンダリングを助けるためにプラグインを呼び出すよう設計されるメディアプレーヤを含むことができる。保護されていないコンテンツに使用するよう設計されるメディアプレーヤがメディアプレーヤに変更を加える必要なく保護されているコンテンツをレンダリングできるように,「トラスト・プラグイン」およびその使用が開示されている。ストリーミング方式のコンテンツは,MPEG-4,MP3およびRMFFフォーマットを含めて,多様なフォーマットが可能である。) (イ)「(d) External network source. The rules may be stored on an external server. Rules may be addressed and downloaded by the CMPS if necessary」 (48ページ下から3行?下から2行) (当審仮訳: (d)外部ネットワーク・ソース。ルールは,外部サーバに記憶できる。ルールは,必要であればCMPSによってアドレス指定され,ダウンロードされる) (5)引用例4について 平成23年8月29日付けで通知した拒絶理由で引用した引用例4(蕨野貴之 ほか6名,“移動通信環境を考慮したビデオストリーム変換制御方式の検討”,電子情報通信学会2000年総合大会講演論文集 通信1,日本,電子情報通信学会,2000年3月7日,p.561)には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例4摘記事項」という。) (ア)「1.はじめに IMT-2000やMMAC等の広帯域無線通信システムの実用化とともに,移動通信環境下でより高品質なビデオストリームの利用が可能となる。本稿では,移動体通信で生じる制約を軽減し,快適なビデオストリーム利用環境を実現するビデオストリームの変換制御方式について報告する。」 (561ページ左欄1行?6行) (イ)「3.ビデオストリーム変換制御方式の検討 図1にビデオストリーム変換方式の概念を示す。ゲートウェイの制御モジュールは携帯型端末から通知される各種情報(端末情報,実効スループット,ユーザプリファレンス)に基づき,トランスコーダの動作を制御する変換パラメータを生成する。トランスコーダは指定された変換パラメータに従い,インターネット惻から受信したビデオストリームを移動通信環境に適した低レート方式にリアルタイム変換し配信する。変換パラメータの導出は次のような手順で行われる。 (1)変換方式の決定 端末から通知される情報から,端末に搭載されているデコーダ種別を判断し,それぞれの端末に適した変換方式(e.g.,MPEG1-MPEG4)を決定する。 (2)コーディングレートの決定 ゲートウェイと端末間の実効スループットがトランスコーダから出力されるビデオストリームのビットレートより低い場合には,端末上でのビデオストリームの安定した再生が保証されない。従って,端末から通知される実効スループット値をコーディングレートとする。 (3)フレームサイズの決定 端末惻での縮小拡大処理をなくし,端末負荷の軽減を図るため,端末惻での表示サイズとトランスコーダから出力されるビデオストリームのフレームサイズが一致するようフレームサイズを決定する。 (4)クオリティ値の決定 ビデオストリームではフレーム内の品質とフレームレートはトレードオフの関係にあり,どちらを重視するかはユーザの好みに依存することを考慮し,ユーザが指定した情報(ユーザプリファレンス)をもとにクオリティ値を決定する。」 (561ページ左欄18行?右欄9行) (ウ)「上記の変換パラメータの決定処理を一定時間毎に繰り返すことで通信状態の動的な変化に対応することが可能であるが,この際に,ユーザの見え方が急激に変化しないように主にコーディングレート及びクオリティ値を変更する。 また,出力されるビデオストリームのフレームレートが携帯端末上のデコーダが処理可能な値を超えることが予想される場合には,一時的にクオリティ値を制御し適正なフレームレートを維持するよう制御する。」 (561ページ右欄10行?17行) 5-2.対比 引用例1発明と本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)とを対比する。 (ア)引用例1発明の,「ソースフォーマットにより圧縮されたビットストリーム(第1のビットストリーム)」は,本願発明の,「第1プロファイルに関する入力データ」に相当する。 (イ)引用例1発明の,「ターゲットフォーマットのビットストリーム(第2のビットストリーム)」は,本願発明の,「第2プロファイルに関する出力データ」に相当する。 (ウ)引用例1発明の,「ソースフォーマットに関する,ビットレート,圧縮法,GOP構造,画面サイズ,インターレース走査であるかプログレッシブ走査であるか等の情報」を,「バッファ202に格納」することは,本願発明の,「第1プロファイルに関する事実を抽出」することに相当する。 (エ)引用例1発明の,「ターゲットフォーマットの,ビットレート,圧縮法,GOP構造,画面サイズ,インターレース走査であるかプログレッシブ走査であるか等の情報」を,「バッファ203に格納」することは,本願発明の,「第2プロファイルに関する事実を抽出」することに相当する。 (オ)引用例1発明の,「バッファ202からソースフォーマットに関する記述及びバッファ203からターゲットフォーマットに関する記述を読み出し,トランスコードヒント抽出回路207は,トランスコードヒントを算出し,これをトランスコードヒントメタデータバッファ206に格納」し,「A/Vトランスコード回路205は,A/Vコンテンツバッファ201からソースフォーマットによる第1のビットストリーム204を読み出し,トランスコードヒントメタデータバッファ206に格納されているヒントメタデータを用いて,ソースフォーマットをターゲットフォーマットに変換して,A/Vトランスコード回路205は,圧縮された新たなターゲットフォーマットを有する第2のビットストリームをA/Vターゲットフォーマット209に供給する」ことは,本願発明の,「第1プロファイルに関する事実と第2プロファイルに関する事実とに従って入力データを変更するための方法を記述するルールセット」と,「入力データをルールセットに従って第2プロファイルに関する事実に一致するように変更する」ことに相当する。 (カ)そして,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「マルチメディアコンテント適応のための,第1プロファイルに関する入力データを受信し及び第2プロファイルに関する出力データを生成するデバイス」である点で共通する。 してみると,引用例1発明と本願発明とは, 「マルチメディアコンテント適応のための,第1プロファイルに関する入力データを受信し及び第2プロファイルに関する出力データを生成するデバイスであって, 第1プロファイルに関する事実を抽出する手段, 第2プロファイルに関する事実を抽出する手段, 前記第1プロファイルに関する事実及び前記第2プロファイルに関する事実に従って前記入力データを変更するための方法を記述しているルールセット, 前記入力データを,前記第2プロファイルに関する事実に一致するように,前記ルールセットに従って変更する手段, を有するデバイス。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では,「ルールセットが第2プロファイルに関する事実と一致するように入力データを変更することを許容しない場合に,追加のルールをリクエストする手段」を有するのに対し,引用例1発明では,そのような構成になっていない点。 [相違点2] 本願発明では,「ルールセットと追加ルールが優先順位に従って分類」されているのに対し,引用例1発明ではそのような構成になっていない点。 5-3.判断 (1)相違点1について ア 引用例2摘記事項によれば,引用例2には,「データ変換を行うプログラムがデバイスにない」ときには,「デバイスの外部にプログラムのダウンロードを要求する」という周知の事項が開示されている。 イ さらに,引用例3摘記事項によれば,引用例3には,「ストリーミング方式のコンテンツを転送等制御」する際,「外部サーバにルールのダウンロードを要求する」ことも開示(以下「引用例3開示事項」という。)されている。 ウ してみると,引用例1発明に,周知の事項や引用例3開示事項を適用することにより,「ルールセットが第2プロファイルに関する事実と一致するように入力データを変更することを許容しない場合に,追加のルールをリクエストする手段」を有するよう構成し,もって[相違点1]に係る発明の構成とすることには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。 (2)相違点2について ア 「ルールセットと追加ルールが優先順位に従って分類」されるとの事項に関して,本願の発明の詳細な説明の【0060】段落には,以下のことが記載されている。 「適応モジュールは入力コンテントから抽出された事実に依存して,複数の選択を有することもある。変形実施例によれば,ルールは優先順位に応じてランク付けされる。例えば一度ユーザーの意見が複数のルールの中から1つのルールを選択するためにリクエストされたなら,このユーザーの好みは記憶され,このルールはユーザーの以前の選択に基づいた統計に従って分類される。」 イ この記載を参照すれば,相違点2に係る事項である,「ルールセットと追加ルールが優先順位に従って分類」されるとの事項は,つまり,「ルールセットがユーザの好みにより優先順位に応じてランク付けされて分類され,記憶される」ことを特定するものであると言える。(なお,本願発明は,「ユーザーの以前の選択に基づいた統計」に従って分類することまでは特定していない。) ウ ここで,引用例4摘記事項によれば,引用例4には,「受信したビデオストリームを低レート方式に変換して配信する際,ユーザの指定によりユーザの好みに応じた品質とすること,変換パラメータの決定処理を一定時間毎に繰り返すことで通信状態の動的な変化に対応することが可能であること,その際,ユーザの見え方が急激に変化しないように主にコーディングレート及びクオリティ値を変更すること,また,出力されるビデオストリームのフレームレートが携帯端末上のデコーダが処理可能な値を超えることが予想される場合には,一時的にクオリティ値を制御し適正なフレームレートを維持するよう制御すること。」が開示(以下「引用例4開示事項」という。)されている。 エ この引用例4開示事項によれば,引用例4には,ユーザが品質をより一層重視するよう指示をする,つまり品質をより優先(第1優先)にすると,フレームレートは,品質に対して,より劣後(第2優先)となること,処理が追いつかないときには,第2優先のフレームレートが,一時的に,品質より優先されること,しかし,ユーザによる,品質のより一層重視の指示が記憶されていることから,(処理が追いつく等)状況が改善されれば,(本来の姿である)品質がより一層重視される第1優先の状態に戻ることが開示されている。 オ ここで,引用例4開示事項によれば,引用例4は,ユーザが品質をより一層重視するよう指示をすることを想定しているが,品質はユーザの好みにより変更しうるものであるから,品質をより一層低いものとすることにより,フレームレートが変化しないように設定されること,つまりフレームレートを第1優先とし,品質を第2優先とすることも想定されている。 カ つまり引用例4開示事項によれば,引用例4には,品質やフレームレートがユーザの好みにより優先順位に従って分類され,これにより品質重視のルールとフレームレート重視のルールとが優先順位に従って分類されることが開示される。 キ ここで,引用例1と引用例4は,ともに本願発明と同様の,「マルチメディアコンテント適応のための,第1プロファイルに関する入力データを受信し及び第2プロファイルに関する出力データを生成するデバイス」に係るものである点で共通する技術のものであること,そして,引用例1のホームネットワーク113に接続するものとして例示される無線ビデオPDA107は,演算能力,メモリ容量,画面サイズ,ビデオフレームレート及びネットワークビットレートが制限されるものであり,引用例4の携帯型端末と同様の制約のもとで使用されるものであること,以上のことから,引用例1発明に引用例4開示事項を適用することにより,ルールセットをユーザの好みの優先順位に応じたものとすること,つまり,「ルールセットと追加ルールを優先順位に従って分類」するよう構成し,もって[相違点2]に係る発明の構成とすることには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。 以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1],[相違点2]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,上記各相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。 また,本願発明の作用効果も,引用例1発明,周知の事項,引用例3開示事項,引用例4開示事項から当業者が予測できる範囲のものである。 5-4.審判請求人の主張の参酌 ここで,前記「第3」の審判請求人の意見書における主張について検討する。 審判請求人の主張は, 「明らかに,引用例4はどんな優先順位も示唆していませんし開示もしておらず,ルールを優先順位に従って分類することを教示しているのではなくて,クオリティ値をユーザーの好みに基づいて決定することだけを教示しています。たとえユーザーの好みを優先順位として解釈したとしても,引用例4はどんなルールのどんな分類も教示はしていません。当業者が引用例4の教示を引用例1に適用することはありません。と云うのは,引用例1においては,トランスコードヒントメタデータが,どんなクオリティ値も参照していないからです。仮に引用例4の教示を当業者が引用例1に適用したとしても,ユーザーの好みに基づいてクオリティ値を決定して,該クオリティ値をトランスコードのために使用できた可能性があっただけにすぎず,決して,変換ルールを優先順位に応じて分類することには想到し得なかったのです。」 というものである。 しかし,引用例4では,品質やフレームレートがユーザの好みにより優先順位に従って分類され,これにより品質重視のルールとフレームレート重視のルールとが優先順位に従って分類されることが開示されることは,前記5-3.(2)のカで判断したとおりである。 そして,引用例1と引用例4は,ともに本願発明と同様の,「マルチメディアコンテント適応のための,第1プロファイルに関する入力データを受信し及び第2プロファイルに関する出力データを生成するデバイス」に係るものである点で共通する技術のものであること,そして,引用例1のホームネットワーク113に接続するものとして例示される無線ビデオPDA107は,演算能力,メモリ容量,画面サイズ,ビデオフレームレート及びネットワークビットレートが制限されるものであり,引用例4の携帯型端末と同様の制約のもとで使用されるものであること,以上のことから,引用例1発明に引用例4開示事項を適用することにより,ルールセットをユーザの好みの優先順位に応じたものとすること,つまり,「ルールセットと追加ルールを優先順位に従って分類」するよう構成し,もって[相違点2]に係る発明の構成とすることには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものであることは,前記5-3.(2)のキで判断したとおりである。 以上のとおりであるから,審判請求人の意見書における主張を参酌してもなお,本願発明は進歩性を有しないものと判断される。 5-5.まとめ 以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,周知の事項,引用例3開示事項,引用例4開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,発明の効果についてみても,引用例1発明,周知の事項,引用例3開示事項,引用例4開示事項から予測される範囲のものにすぎない。 6.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,周知の事項,引用例3開示事項,引用例4開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-12 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-01-30 |
出願番号 | 特願2003-543307(P2003-543307) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西出 隆二、木村 雅也 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
松尾 俊介 須田 勝巳 |
発明の名称 | マルチメディアコンテント適応のためのデバイス、方法及びシステム |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 阿部 和夫 |
復代理人 | 濱中 淳宏 |
復代理人 | 渡邉 直幸 |