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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A47L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L |
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管理番号 | 1258627 |
審判番号 | 不服2010-25020 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-08 |
確定日 | 2012-06-13 |
事件の表示 | 特願2007-526218号「クリーニングクロス」拒絶査定不服審判事件〔平成18年2月23日国際公開、WO2006/018051、平成20年4月3日国内公表、特表2008-509764号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2005年4月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年8月14日、ドイツ国DE)を国際出願日とする出願であって、平成22年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成22年11月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年11月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「少なくとも1つのクリーニング表面(3)を有する繊維平面構造体(2)からなるクリーニングクロス(1)であって、 前記繊維平面構造体(2)が、不織布から形成されており、当該不織布が、結合剤(7)により結合しているかまたは熱溶融によって固化されている繊維材料(8)からなっており、 前記クリーニングクロスの上にプリントパターン(4)として形成された表面コーティング(5)が少なくとも部分的に配置されているものであって、該表面コーティング(5)が研磨作用物質(6)を含有しており、前記表面コーティング(5)の塗布量が15?100g/m^(2)であり、前記繊維平面構造体(2)の厚みと表面コーティング(5)の厚みとの比が、40:1?3:1である、クリーニングクロス。」(下線部は補正個所を示す) 2.補正の目的 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「繊維平面構造体」に、「前記繊維平面構造体(2)が、不織布から形成されており、当該不織布が、結合剤(7)により結合しているかまたは熱溶融によって固化されている繊維材料(8)からなっており」との限定を付加し、また、「前記繊維平面構造体(2)の厚みと表面コーティング(5)の厚みとの比が、40:1?3:1である」との限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特表平7-503280号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「その物品のアスペクトにおいては、本発明は、硬質表面をクリーニングするのに好適な研磨(好ましくは非耐久性紙)ワイピング物品に関する。この種の物品は、坪量約30?100g/m^(2)を有する吸収性不織基体から作る。研磨上有効な量のスクラビングビーズ混合物は、ベース不織基体の少なくとも一面にパターンで印刷し、次いで、硬化する。」(4ページ右上欄24行?左下欄6行) イ 「本発明の研磨ワイピング物品を形成するために使用するベース不織基体は、好適な坪量、カリパー(callper)、吸収性および強度特性を有する常法で作られた不織シートまたはウェブからなることができる。不織基体は、一般に、ウェブ構造を有する結合繊維状またはフィラメント状製品と定義できる(繊維またはフィラメントは「空気抄造」または或る「湿式抄造」法においてのようにでたらめに分布でき、または或る「湿式抄造」または「カード化」法においてのように所定配向度で分布できる。このような不織基体の繊維またはフィラメントは、天然物(例えば、木材パルプ、羊毛、絹、ジュート、アサ、綿、リネン、サイザルアサまたはラミー)または合成物(例えば、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミドまたはポリエステル)であることができ且つ高分子バインダー樹脂と一緒に結合できる。好適な市販の不織基体の例としては、デュポンによって商品名ソンタラ(Sontara(R))、ジェームズ・リバー・コーポレーションによって商品名ポリウェブ(Polyveb(R))で市販されているものが挙げられる。 コスト、製造しやすさおよび物品処分性の理由で、本発明のワイピング物品に使用する好ましい種類の不織基体は、木材パルプ繊維から作られるもの、即ち、紙基体からなる。」(5ページ左上欄17行?右上欄15行) ウ 「高分子スクラビングビーズは、一般に、スクラビングビーズ混合物中の全固形分の約30?70重量%を占めるであろう。より好ましくは、スクラビングビーズは、この混合物中の全固形分の約40?60重量%を占めるであろう。本発明の目的で、「全固形分」は、溶媒、例えば、水をスクラビングビーズ混合物から完全に蒸発するならば残るであろう高分子物質および他の物質の量を意味する。」(7ページ右上欄20行?左下欄3行) エ 「本発明の研磨ワイピング物品を形成するために、前記のような液体スクラビングビーズ混合物は、前記のようなベース不織基体の少なくとも一面上に印刷し、次いで、基体は乾燥し、スクラビングビーズ混合物は硬化する。いかなる通常の印刷法も、この操作で使用できる。このような方法としては、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷および噴霧添加が挙げられる。どの印刷法を使用することによっても、スクラビングビーズ混合物は、印刷操作に付されるベース不織基体のサイドの表面積の約20%?70%、より好ましくは約30%?50%上に印刷すべきである。 スクラビングビーズ混合物の不織基体への印刷は、ベース基体に研磨上有効な量のスクラビングビーズ混合物を付与し且つ結局貼着するのに好適な方式で行うべきである。しばしば、このことは、乾燥基準で基体表面1平方メートル当たり約1.5?10gのスクラビングビーズを与えるであろう量のスクラビングビーズ混合物を印刷することを包含するであろう。より好ましくは、スクラビングビーズ混合物は、スクラビングビーズ約2.5?8.0g/m^(2)が与えられる程度ベース基体上に印刷できる。」(10ページ左上欄14行?右上欄10行) オ 「スクラビングビーズ混合物がベース不織基体の表面積の必要な%上に必要な量で印刷される限りは、印刷されたスクラビングビーズ混合物の特定のパターンは、臨界的ではない。しかしながら、好ましくは、不織基体は、覆われた表面と覆われていない表面との規則的に繰り返す面積の個別のパターンを与える方式で印刷するであろう。」(11ページ左上欄3?9行) カ 「本発明の研磨ワイピング物品の好ましい形状においては、研磨剤ビーズ対不織基体の重量比(乾燥基準)は、一般に、約1.5:100から2:3、より好ましくは約1:20から1:4であろう。更に、このような好ましい形状においては、研磨剤ビーズ対固体接着剤-架橋剤物質の重量比は、一般に、約3:7から7:3、より好ましくは約4:6から6:4であろう。」(11ページ右上欄18?24行) そして、Fig.2及びFig.2Aには、スクラビングビーズ混合物が格子状のパターンで一面に印刷されたペーパータオル基体が示されている。 上記記載事項について検討すると、記載アには、ベース不織基体の少なくとも一面にスクラビングビーズ混合物をパターンで印刷した研磨ワイピング物品が記載されている。 なお、記載アには、吸収性不織基体の坪量は約30?100g/m^(2)であることが記載されている。 記載イには、研磨ワイピング物品を形成するために使用する好ましいベース不織基体について、紙基体が挙げられている。 また、記載イには、「不織基体は、一般に、ウェブ構造を有する結合繊維状またはフィラメント状製品と定義できる」とあり、不織基体の繊維またはフィラメントは高分子バインダー樹脂と一緒に結合できる旨記載されている。 記載ウには、高分子スクラビングビーズがスクラビングビーズ混合物中の全固形分の約30?70重量%を占めることが記載されている。 記載エには、研磨ワイピング物品を形成するために、液体スクラビングビーズ混合物がベース不織基体の少なくとも一面上に、表面積の約20%?70%印刷されることが記載され、スクラビングビーズの付与量は、乾燥基準で基体表面1平方メートル当たり約1.5?10gであることが記載されている。 記載オには、不織基体は、好ましくは、スクラビングビーズ混合物に覆われた表面と覆われていない表面との規則的に繰り返す面積の個別のパターンを与える方式で印刷される旨記載されている。 記載カには、研磨ワイピング物品の研磨剤ビーズ対固体接着剤-架橋剤物質の重量比は、一般に、約3:7から7:3であることが記載されている。 上記記載ウ、記載エ、記載カの記載事項を勘案すると、この研磨ワイピング物品におけるスクラビングビーズ混合物の付与量は、次のようになる。 すなわち、スクラビングビーズの量が1.5g/m^(2)で、かつ全固形分の70重量%を占める場合、スクラビングビーズ混合物の付与量は最小の約2.1g/m^(2)となり、一方、スクラビングビーズの量が10g/m^(2)で、かつ全固形分の30重量%を占める場合、スクラビングビーズ混合物の付与量は最大の約33g/m^(2)となる。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「少なくとも1つのスクラビングビーズ混合物が印刷された面を有するベース不織基体からなる研磨ワイピング物品であって、 前記ベース不織基体が、紙基体から形成されており、 前記研磨ワイピング物品の上にパターンで印刷したスクラビングビーズ混合物が配置されているものであって、該スクラビングビーズ混合物がスクラビングビーズを含有しており、該スクラビングビーズ混合物の付与量が約2.1?約33g/m^(2)である、研磨ワイピング物品。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「スクラビングビーズ混合物が印刷された面」は、本願補正発明の「クリーニング表面(3)」に相当し、以下同様に、「ベース不織基体」は「繊維平面構造体(2)」に、「研磨ワイピング物品」は「クリーニングクロス(1)」に、相当する。 引用発明の「前記研磨ワイピング物品の上にパターンで印刷したスクラビングビーズ混合物が配置されているものであって」と、本願補正発明の「前記クリーニングクロスの上にプリントパターン(4)として形成された表面コーティング(5)が少なくとも部分的に配置されているものであって」とを対比すると、表面コーティングに相当するスクラビングビーズ混合物を「パターンで印刷」することは、「プリントパターンとして形成」することに相当し、「配置」することは、「少なくとも部分的に配置」することに相当するから、引用発明の上記事項は、本願補正発明の上記事項に相当する。 引用発明の「該スクラビングビーズ混合物がスクラビングビーズを含有しており」は、スクラビングビーズが研磨作用を有することが明らかなことから、本願補正発明の「該表面コーティング(5)が研磨作用物質(6)を含有しており」に相当し、また、引用発明の「該スクラビングビーズ混合物の付与量が約2.1?約33g/m^(2)である」は、本願補正発明の「前記表面コーティング(5)の塗布量が15?100g/m^(2)であり」と、表面コーティング(5)に相当するスクラビングビーズ混合物の塗布量が15?約33g/m^(2)の範囲で共通している。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「少なくとも1つのクリーニング表面(3)を有する繊維平面構造体(2)からなるクリーニングクロス(1)であって、 前記クリーニングクロスの上にプリントパターン(4)として形成された表面コーティング(5)が少なくとも部分的に配置されているものであって、該表面コーティング(5)が研磨作用物質(6)を含有しており、前記表面コーティング(5)の塗布量が15?約33g/m^(2)である、クリーニングクロス。」 そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す)。 (相違点1) 本願補正発明の繊維平面構造体(2)は、不織布から形成されており、当該不織布が、結合剤(7)により結合しているかまたは熱溶融によって固化されている繊維材料(8)からなっているのに対し、引用発明の繊維平面構造体(ベース不織基体)は、紙基体である点。 (相違点2) 本願補正発明の繊維平面構造体(2)の厚みと表面コーティング(5)の厚みとの比が、40:1?3:1であるのに対し、引用発明の繊維平面構造体(ベース不織基体)の厚みと表面コーティング(スクラビングビーズ混合物)の厚みとの比が不明である点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 引用例には、繊維平面構造体(ベース不織基体)は、一般に、ウェブ構造を有する結合繊維状またはフィラメント状製品と定義できるとあり、さらに、不織基体を構成する繊維またはフィラメントは高分子バインダー樹脂と一緒に結合できる旨記載されている(記載イ参照)。言い換えると、引用例には、繊維平面構造体(ベース不織基体)を、高分子バインダー樹脂で結合された繊維材料からなる不織布で形成することが示唆されている。 そこで、引用発明において、紙基材に代え、結合剤により結合している繊維材料からなる不織布を繊維平面構造体(ベース不織基体)に適用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) クリーニングクロス(研磨ワイピング物品)を設計するに当たり、繊維平面構造体(ベース不織基体)の厚みと表面コーティング(スクラビングビーズ混合物)の厚みとの比の好適な範囲は、除去すべき汚れの種類及び使用目的、クリーニングクロス(研磨ワイピング物品)の強度、操作性等を勘案して、当業者が適宜試験により容易に見いだし得た程度のものであるといえるので、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 なお、この点について、請求人は回答書において、「この本願の厚みの比の範囲は、研磨作用を有するものからポリッシング作用のあるものまでを包含し(段落0012及び0013)」と述べているが、いくつかの用途に適した厚みの比の範囲をまとめたものが、本願補正発明で規定する厚みの比の数値範囲というのであれば、上述のように、厚みの比の数値範囲は、当業者が使用目的等に応じ、適宜試験により容易に見いだし得た程度のものであるといえるので、これをまとめて一つの数値範囲として表現した点に、格別な困難性は見いだし得ない。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という)は、平成22年1月22日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「少なくとも1つのクリーニング表面(3)を有する繊維平面構造体(2)からなるクリーニングクロス(1)であって、該クリーニングクロスの上にプリントパターン(4)として形成された表面コーティング(5)が少なくとも部分的に配置されているものであって、該表面コーティング(5)が研磨作用物質(6)を含有しており、前記表面コーティング(5)の塗布量が15?100g/m^(2)である、クリーニングクロス。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明から、引用発明との相違点に係る「前記繊維平面構造体(2)が、不織布から形成されており、当該不織布が、結合剤(7)により結合しているかまたは熱溶融によって固化されている繊維材料(8)からなっており」との発明特定事項、及び、「前記繊維平面構造体(2)の厚みと表面コーティング(5)の厚みとの比が、40:1?3:1である」との発明特定事項を省いたものである。 してみると、本願発明は、前記「第2」「3-2.」に記載したとおり、引用発明と一致するものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-13 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-01-30 |
出願番号 | 特願2007-526218(P2007-526218) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L) P 1 8・ 121- Z (A47L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木戸 優華 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 青木 良憲 |
発明の名称 | クリーニングクロス |
代理人 | 古谷 聡 |
代理人 | 溝部 孝彦 |