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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1258633 |
審判番号 | 不服2011-8008 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-15 |
確定日 | 2012-06-13 |
事件の表示 | 特願2005- 42880「小型モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月31日出願公開、特開2006-230142〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年2月18日の特許出願であって、平成23年1月6日付けで拒絶査定がなされ、同年4月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成23年4月15日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「磁気回路の一部を形成する略円筒状のハウジングの筒内に、マグネットの中心に回転軸を備えたインナーロータを回転可能に配置し、ハウジング内壁に、前記マグネットと間隙を介して対向させて界磁コイルを配置する外径φ12mm以下の小型モータであって、 前記ハウジングを、磁性体で、少なくとも軸方向に電気的絶縁部分を有する構造で構成した内層と、内層の周囲を囲んで該内層を一体的に保持する磁性体の外装ケースとから構成することを特徴とする小型モータ。」と補正された。 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「小型モータ」に関し、「外径φ12mm以下の」小型モータと限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-189509号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ・「【請求項6】隣合う直線状のヨーク線を絶縁被膜により連結し、この連結した複数のヨーク線を、回転子の回転軸と平行な状態になるよう筒形状にしてバックヨークを構成する請求項1記載のコアレスモータ。」 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本件発明は、永久磁石を用いて構成される電動機に属する。 【0002】 【従来の技術】円筒状の永久磁石を回転子の外周に配置し、その周囲に複数の銅線で構成されたコイルを永久磁石と対向するように配置し、永久磁石の発生する磁束とコイルに順次励磁電流を印加することにより発生する回転磁界により回転運動を生じる電動機について、永久磁石からコイルに鎖交する磁束を増加すること、及び永久磁石単体のパーミアンスを増加させることを目的として、コイルの外周部に磁性材料で構成されたバックヨークを配置することがある。 【0003】コイル外周部に磁性材料で構成されたバックヨークを配置することにより、永久磁石からコイルに鎖交する磁束を増加させることが可能であり、且つ永久磁石のパーミアンスを増加することが可能であるが、永久磁石が配置された回転子が回転する際に前記バックヨーク内部を通る磁束の時間的変化によりバックヨーク内に渦電流が発生し、その損失による回転機の効率低下及び発熱が大きな問題となる。一般的に磁性材料内部に発生する渦電流損失は回転子の回転周波数の2乗に比例して増加するため、特に高速で回転する電動機の場合にはこの影響が顕著に現れることとなる。 【0004】その渦電流による損失を低減する対策の一般的な事例として、薄板状に圧延された磁性材料を面方向に対して絶縁処理を行い、前記磁性材料を面方向に積層することでバックヨークを構成する方法がある。この方法により、磁性材料を一塊りで構成した場合に対して渦電流の発生するループを最小限に抑えることが可能となり、結果として渦電流損失を低減することが可能である。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、その構成のバックヨークを作成する際には薄板状に圧延された磁性材料のシート素材を目的の形状に金型プレスを行い、打ち抜かれたシート素材を軸方向に積層して構成するのが一般的であるが、その際生じたプレス打ち抜き残り部分の磁性材料は再利用が困難である。 【0006】本件発明は、円筒状の永久磁石を回転子の外周に配置し、その周囲に複数の銅線で構成されたコイルを永久磁石と対向するように配置し、永久磁石の発生する磁束とコイルに順次励磁電流を印加することにより発生する回転磁界により回転運動を生じる電動機について、永久磁石からコイルに鎖交する磁束を増加すること、及び永久磁石のパーミアンスを増加させることを目的とする。 【0007】また、コイルの外周部に磁性材料で構成されたバックヨークを配置する構造を有する電動機の構成において、バックヨークを軸方向に絶縁された磁性材料を積層する構成にすることで前記バックヨーク内で発生する渦電流損を低減することを目的とする。 【0008】また、その製造時に薄板状に圧延された磁性材料のシート素材を目的の形状に金型プレスを行い、打ち抜かれたシート素材を軸方向に積層して構成する場合には、プレス打ち抜き残り部分のシート素材が生じてしまうため、磁性材料のプレス打ち抜き残りが生じないようにすることも目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明では、円筒状の永久磁石を回転子の外周に配置し、その周囲に複数の銅線で構成されたコイルを永久磁石と対向するように配置し、永久磁石の発生する磁束とコイルに順次励磁電流を印加することにより発生する回転磁界により回転運動を生じる小型電動機について、永久磁石からコイルに鎖交する磁束を増加すること、及び永久磁石単体のパーミアンスを増加させることを目的として、コイルの外周部に磁性材料で構成されたバックヨークを配置する構造を有する電動機の構成において、前記バックヨークは糸状に整形された磁性材料に絶縁被膜を施し、前記磁性材料を軸方向に同心円状に巻き付けた構成を特徴とする。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明では、永久磁石を有する回転子と、この回転子の外周を覆うように円筒状に形成したコイル部と、このコイル部を支持するバックヨーク部とを備え、前記永久磁石の発生する磁束とコイルに順次励磁電流を印加することにより発生する回転磁界により回転運動を生じるコアレスモータにおいて、前記バックヨークは、糸状に整形した磁性材料に絶縁被膜を施したヨーク線により形成するコアレスモータであり、バックヨーク内で発生する渦電流損を低減するために糸状に整形された磁性材料に絶縁被膜を施したヨーク線を軸方向に同心円状に巻き付けた構成を特徴とする。」 ・「【0016】また、ヨーク線を軸方向に同心円状に巻き付けたバックヨークを構成する際に、前記バックヨークの外周に磁性材料のフレームを配置してもよい。一般的にバックヨークに生じる渦電流は内周側に多く発生することが知られている。そのため特にバックヨークの厚みが薄い場合、すなわち糸状に整形した磁性材料の断面積が小さい場合にはバックヨークの外周に磁性材料のフレームを配置してもフレームで生じる渦電流損は少ないため、高剛性、且つ磁気パーミアンスの高いモータを作成することが可能である。」 ・「【0020】 【実施例】(実施例1)図1、図2に本発明の実施例1の例を示す。図2は円筒状の永久磁石3を回転子の外周に配置し、その周囲に複数の銅線で構成されたコイル5を永久磁石3と対向するように配置し、前記コイル5の外周部にヨーク線10で構成されたバックヨーク1を配置する構造を有する電動機である。バックヨーク1は、糸状に整形された磁性材料に絶縁材料を用いて絶縁処理を行ったヨーク線10を軸方向に同心円状に、且つ、らせん状に巻き付けた構成である。」 ・「【0022】そして、ヨーク線の外周部に固定用の非磁性材料で構成されたフレーム2を配置した電動機の部分拡大図を図3に示す。ヨーク線10は糸状に形成した磁性材料7に、絶縁材料を被覆して絶縁被膜6を施している。 【0023】図に示す構造を用いることにより、ヨーク線を一塊りで構成した場合に対して渦電流の発生するループを最小限に抑えることが可能となり、結果として渦電流損失を低減することが可能である。 【0024】なお、本実施例に示す電動機の構造図ではバックヨークの外周部にフレームを設けているが、このフレームは非磁性材料であっても磁性材料であってもよい。逆にフレームを用いずにバックヨークのみで構成してもよい。」 ・「【0034】(実施例3)図6に本発明の別の実施例を示す。実施例3は円筒状の永久磁石を回転子の外周に配置し、その周囲に複数の銅線で構成されたコイルを永久磁石と対向するように配置し、コイルの外周部にヨーク線で構成されたバックヨークを配置する構造を有する電動機の構成において、バックヨーク1は糸状に整形された磁性材料に絶縁被膜を施し、磁性材料16を軸方向に並列に整列させて接着することで板状のコアを作成し、その板状のコアを円筒状に整形することでバックヨークを構成した例を示す。」 ・「【0036】また、この構造を用いることにより板状のコアを円筒状に整形する際に実施例2で示した構成に比べて円筒整形が容易であるが、外部からの衝撃に対してバックヨーク単体での剛性が低くなるため、磁性材料及び非磁性材料で構成されたフレームが必要であり、フレーム挿入後に再度フレームとコアを接着することでより剛性が高くなる。 【0037】 【発明の効果】本発明に示す構造を用いることにより、円筒状の永久磁石を回転子の外周に配置し、その周囲に複数の銅線で構成されたコイルを永久磁石と対向するように配置し、前記コイルの外周部に磁性材料で構成されたバックヨークを配置する構造を有する電動機の構成において、ヨーク線を一塊りで構成した場合に対して渦電流の発生するループを最小限に抑えることが可能であり、渦電流損失を低減することが可能である。」 ・図2の上の図には、永久磁石3とコイル5との間に回転子を回転可能とするための間隙を設ける点、ヨーク線を軸方向に同心円状に巻き付けることによりバックヨーク1を略円筒状とする点、及び、前記略円筒状のバックヨークの外周に接して円筒状のフレーム2を配置する点、及び、バックヨーク1とフレーム2とからハウジングを構成する点が記載されている。したがって、図2には、円筒状のフレーム2を外周に接して配置したバックヨーク1の内側に、永久磁石3の中心に回転軸4を備えた回転子を回転可能に配置し、バックヨーク1内壁に、前記永久磁石3と間隙を介して対向させてコイル5を配置する点が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「糸状の磁性材料からなるヨーク線を同心円状に巻き付けて略円筒状としたバックヨーク1と、前記略円筒状のバックヨークの外周に接して円筒状の磁性材料のフレーム2とからなるハウジングの内側に、永久磁石3の中心に回転軸4を備えた回転子を回転可能に配置し、バックヨーク1内壁に、前記永久磁石3と間隙を介して対向させてコイル5を配置する高速で回転する、渦電流損が少なく、かつ、高剛性のモータであって、 前記ハウジングを、磁性材料で、少なくとも軸方向に絶縁被膜6を有する構造で構成したバックヨーク1と、バックヨーク1の周囲を囲んで該バックヨーク1を保持する磁性材料のフレーム2とから構成する高速で回転し、渦電流損が少なく、かつ、高剛性のモータ。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用例の【0016】の「ヨーク線を軸方向に同心円状に巻き付けたバックヨークを構成する際に、前記バックヨークの外周に磁性材料のフレームを配置してもよい。一般的にバックヨークに生じる渦電流は内周側に多く発生することが知られている。そのため特にバックヨークの厚みが薄い場合、すなわち糸状に整形した磁性材料の断面積が小さい場合にはバックヨークの外周に磁性材料のフレームを配置してもフレームで生じる渦電流損は少ないため、高剛性、且つ磁気パーミアンスの高いモータを作成することが可能である」なる記載を踏まえると、後者の「バックヨーク1」、及び、「フレーム2」とからなる「ハウジング」が前者の「磁気回路の一部を形成する略円筒状のハウジング」に相当するといえる(なお、本願の出願当初の明細書の【0029】に、「ハウジング2は、互いに電気的に絶縁された複数の磁性体リング14a、14b…の積層鋼板からなる内層14と、その内層14の外周を囲む略円筒状の磁性体からなる外装ケース15より構成されている」と記載されており、後者の「バックヨーク1」、及び、「フレーム2」が前者の「内層」、及び、「外装ケース」に相当するといえる。)。 後者の「内側」が前者の「筒内」に相当し、以下同様に、 「永久磁石3」が「マグネット」に、 「回転軸4」が「回転軸」に、 「回転子」が「インナーロータ」に、 「バックヨーク1内壁」が「ハウジング内壁」に、 「コイル5」が「界磁コイル」に、それぞれ相当し、後者の「糸状の磁性材料からなるヨーク線を同心円状に巻き付けて略円筒状としたバックヨーク1と、前記略円筒状のバックヨークの外周に接して円筒状の磁性材料のフレーム2とからなるハウジングの内側に、永久磁石3の中心に回転軸4を備えた回転子を回転可能に配置し、バックヨーク1内壁に、前記永久磁石3と間隙を介して対向させてコイル5を配置する高速で回転する、渦電流損が少なく、かつ、高剛性のモータ」と 前者の「磁気回路の一部を形成する略円筒状のハウジングの筒内に、マグネットの中心に回転軸を備えたインナーロータを回転可能に配置し、ハウジング内壁に、前記マグネットと間隙を介して対向させて界磁コイルを配置する外径φ12mm以下の小型モータ」とは、 「磁気回路の一部を形成する略円筒状のハウジングの筒内に、マグネットの中心に回転軸を備えたインナーロータを回転可能に配置し、ハウジング内壁に、前記マグネットと間隙を介して対向させて界磁コイルを配置するモータ」なる概念で共通する。 (イ)後者の「絶縁被膜6」が前者の「電気的絶縁部分」に相当し、同様に「磁性材料」が「磁性体」に相当し、後者の「ハウジングを、磁性材料で、少なくとも軸方向に絶縁被膜6を有する構造で構成したバックヨーク1と、バックヨーク1の周囲を囲んで該バックヨーク1を保持する磁性材料のフレーム2」と 前者の「ハウジングを、磁性体で、少なくとも軸方向に電気的絶縁部分を有する構造で構成した内層と、内層の周囲を囲んで該内層を一体的に保持する磁性体の外装ケース」とは、 「ハウジングを、磁性体で、少なくとも軸方向に電気的絶縁部分を有する構造で構成した内層と、内層の周囲を囲んで該内層を保持する磁性体の外装ケース」なる概念で共通する。 (ウ)後者の「高速で回転し、渦電流損が少なく、かつ、高剛性のモータ」と 前者の「小型モータ」とは、 「モータ」なる概念で共通する。 したがって、両者は、 「磁気回路の一部を形成する略円筒状のハウジングの筒内に、マグネットの中心に回転軸を備えたインナーロータを回転可能に配置し、ハウジング内壁に、前記マグネットと間隙を介して対向させて界磁コイルを配置するモータであって、 前記ハウジングを、磁性体で、少なくとも軸方向に電気的絶縁部分を有する構造で構成した内層と、内層の周囲を囲んで該内層を保持する磁性体の外装ケースとから構成するモータ。」 の点で一致し、以下の各点で相違している。 [相違点1] モータの種類に関し、本願補正発明では、「外径φ12mm以下の小型」モータであるのに対し、引用発明では、高速で回転し、渦電流損が少なく、かつ、高剛性のモータである点。 [相違点2] 内層と外装ケースとの関係に関し、本願補正発明では、内層の周囲を囲んで該内層を「一体的に」保持する外装ケースであるのに対し、引用発明では、内層(バックヨーク)の周囲を囲んで該内層を保持する外装ケース(フレーム)である点。 (4)判断 [相違点1]について 本願補正発明において、外径φ12mm以下の小型モータであることを特定していることによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0005】の「一般に、モータは小型化に伴い回転数が増加する傾向にある。また、モータの単位体積あたりの発生トルクを向上させるために、インナーロータに用いるマグネットとして、エネルギー積の高いものを用いる場合が多い。一方、渦電流損は、回転数の二乗と渦電流が発生する部分の最大鎖交磁束密度の二乗に比例して発生するため、このような小型モータは、より渦電流損が増大する傾向にある。」なる記載、及び、【0041】の「本発明の構成では、渦電流損を抑制し、且つ外径を増加させることなく、所定の起動トルクとモータとしての十分な機械的強度を確保した、内部損失トルク及び発熱の少ない、高効率な小型モータの実現が可能となる。」なる記載によれば、小型モータにおいて、渦電流損を低減するとともに、機械的強度を確保することにあるものと解される。 一方、「高速で回転し、渦電流損が少なく、かつ、高剛性の」モータであある引用発明は、渦電流損を低減するとともに、機械的強度を確保するモータを対象とする点で本願補正発明と共通し、さらに、小型モータが渦電流損を低減する必要があることは技術常識であるといえる。現に、本願の出願当初の明細書に従来技術として記載されている特開2002-136034号公報(以下、「周知例」という。)の【0007】に「本発明は上記課題を解決するもので、外径φ12mm以下の小径のインナーロータマグネット型モータであっても、組み立てにくさによる工数の増大を解消するとともに、うず電流損を低減し、高効率で発熱の少ないモータを提供することを目的とする。」と記載されている。さらに、小型モータとして外径φ12mm以下の小径のインナーロータマグネット型モータも特別なものではなく、一般的なものであると解される。 そうすると、「高速で回転する、渦電流損が少なく、かつ、高剛性のモータ」である引用発明において、上記技術常識を踏まえ、上記相違点1に係る外径φ12mm以下の小型モータであるとの本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって単なる数値範囲の最適化又は好適化に相当する設計事項に過ぎず、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。 [相違点2]について 本願補正発明においてハウジングを、磁性体で、少なくとも軸方向に電気的絶縁部分を有する構造で構成した内層と、内層の周囲を囲んで内層を一体的に保持する磁性体の外装ケースとから構成したことによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0033】の「内層14は、外装ケース15により一体的に保持されるため、所定の起動トルクを発生するために磁性体で構成する必要があるハウジング厚みのみで、モータとして十分な機械的強度を確保することが可能となる。」なる記載によれば、内層14と外装ケース15を一体とすることにより、機械的強度を確保する点にあるものと解することができる。 一方、引用例の【0036】に引用発明として認定した実施例1とは別の実施例3に関して、「フレーム挿入後に再度フレーム(「外装ケース」に相当)とコア(「内装」に相当)を接着することでより剛性が高くなる。」と記載されているように、内層と外装ケースを一体とすることにより、機械的強度を確保する点は周知慣用技術にすぎない。 そうすると、小型モータにおいて機械的強度を確保するという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知慣用技術の一体的に保持する技術を採用することにより相違点2に係る本願補正発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。 そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。 3.本願発明について 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「磁気回路の一部を形成する略円筒状のハウジングの筒内に、マグネットの中心に回転軸を備えたインナーロータを回転可能に配置し、ハウジング内壁 に、前記マグネットと間隙を介して対向させて界磁コイルを配置する小型モータであって、 前記ハウジングを、磁性体で、少なくとも軸方向に電気的絶縁部分を有する構造で構成した内層と、内層の周囲を囲んで該内層を一体的に保持する磁性体の外装ケースとから構成することを特徴とする小型モータ。」 (1)引用例 引用例、及び、その記載内容は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・検討 本願発明は、「2.」で検討した本願補正発明から、「小型モータ」に関し、「外径φ12mm以下の」小型モータという限定を省いたものに相当する。 したがって、本願発明を構成する事項の全てを含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により引用発明、上記周知慣用技術、及び、上記技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-21 |
結審通知日 | 2012-03-26 |
審決日 | 2012-04-26 |
出願番号 | 特願2005-42880(P2005-42880) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
P 1 8・ 575- Z (H02K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河村 勝也 |
特許庁審判長 |
仁木 浩 |
特許庁審判官 |
神山 茂樹 大河原 裕 |
発明の名称 | 小型モータ |