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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1258858
審判番号 不服2011-9446  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-06 
確定日 2012-06-21 
事件の表示 特願2005- 76410「プリント配線板へのLED実装方法およびLEDを実装したプリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-261366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年3月17日の出願であって、平成22年4月14日付け拒絶理由通知に対して、同年6月17日に手続補正がなされたが、平成23年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成23年5月6日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年5月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理 由]
1 補正内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするものであり、その特許請求の範囲の請求項1については、
本件補正前(平成22年6月17日付け手続補正後のもの)に、
「【請求項1】
金属基板の表面に絶縁層を介して銅箔層が積層接着されたプリント配線板へのLEDの実装方法において、
凸部冶具によってプリント配線板の銅箔層側から行う一度の加圧によって逆台形断面の円錐台状の凹部を1個または複数個つくり、
前記一度の加圧によってつくられた凹部の側壁に露出した銅箔面または側壁の銅箔上に、LEDのベアチップから凹部の側壁へ向かう発光光線をベアチップの正面方向に向かうように反射させる金属被膜面を成膜し、
前記円錐台状凹部にLEDのベアチップを入れて固定・配線し、
ベアチップの上面を透明材料で全充填することを特徴とするプリント配線板へのLEDの実装方法。」とあったものを、

「【請求項1】
絶縁層、銅箔層と比較して板厚の厚い放熱金属基板の表面に数十ミクロンの絶縁層を介して銅箔層が積層接着されたプリント配線板へのLEDの実装方法において、凸部冶具によって前記プリント配線板の銅箔層側から一度の加圧によって逆台形断面の円錐台状の凹部を1個または複数個形成し、前記一度の加圧によって形成された断面逆円錐台形状凹部の側壁に露出した銅箔層面または側壁の銅箔層上に、LEDのベアチップから断面逆円錐台形状凹部の側壁へ向かう発光光線をベアチップの正面方向に向かうように反射させる金属被膜面を成膜し、前記断面逆円錐台形状凹部にLEDのベアチップを入れて固定・配線し、ベアチップの上面を透明材料で全充填するか、前記断面逆円錐台形状凹部内側にガスを充填し、外側を透明材料又はガラス板で封止することを特徴とするプリント配線板へのLEDの実装方法。」と補正する内容を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正内容は、次の内容からなる。
ア 本件補正前の請求項1の「金属基板」を「絶縁層、銅箔層と比較して板厚の厚い放熱金属基板」とする補正。

イ 本件補正前の請求項1の「絶縁層を介して」を「数十ミクロンの絶縁層を介して」とする補正。

ウ 本件補正前の請求項1の「側壁に露出した銅箔面または側壁の銅箔上
に」を「側壁に露出した銅箔層面または側壁の銅箔層上に」とする補正。


2 補正目的
(1)上記「1(2)」の補正内容アは、金属基板が放熱金属基板であること、板厚が絶縁層及び銅箔層と比較して厚いことを特定するものであるから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。

(2)上記「1(2)」の補正内容イは、絶縁層の厚みを特定するものであるから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。

(3)上記「1(2)」の補正内容ウは、放熱金属基板の上に積層されるものが「銅箔層」であることから、側壁面に露出するものを「銅箔」から「銅箔層」に書き直したもので、実質的な内容に変更はない。

(4)よって、本件補正後の請求項1についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認め得るものであることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、以下のとおりのものである。
「絶縁層、銅箔層と比較して板厚の厚い放熱金属基板の表面に数十ミクロンの絶縁層を介して銅箔層が積層接着されたプリント配線板へのLEDの実装方法において、凸部冶具によって前記プリント配線板の銅箔層側から一度の加圧によって逆台形断面の円錐台状の凹部を1個または複数個形成し、前記一度の加圧によって形成された断面逆円錐台形状凹部の側壁に露出した銅箔層面または側壁の銅箔層上に、LEDのベアチップから断面逆円錐台形状凹部の側壁へ向かう発光光線をベアチップの正面方向に向かうように反射させる金属被膜面を成膜し、前記断面逆円錐台形状凹部にLEDのベアチップを入れて固定・配線し、ベアチップの上面を透明材料で全充填するか、前記断面逆円錐台形状凹部内側にガスを充填し、外側を透明材料又はガラス板で封止することを特徴とするプリント配線板へのLEDの実装方法。」

(2)引用文献に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-78102号公報(以下「引用文献」という。)には図とともに以下の事項が記載されている。

ア 【特許請求の範囲】
1.多数の窪みを有する絶縁金属基板の各窪みの底部に発光ダイオードが設置されており、該窪みの側壁面は反射面となっていることを特徴とする発光ダイオード照明具。
2.多数の窪みを有する絶縁金属基板の各窪みの底部に発光ダイオードが設置されており、該窪みの側壁面は反射面となっており、かつ上記絶縁金属基板の前面には各該発光ダイオードの発光光や該反射面からの反射光を集光するレンズ板を設置してなることを特徴とする発光ダイオード照明具。
3.しぼり加工により設けた多数の窪みを有する絶縁金属基板を使用する第1請求項および第2請求項に記載の発光ダイオード照明具。
4.レンズ板は、絶縁金属基板の表面を覆う透明なモールド樹脂層と一体成形されている第2請求項および第3請求項に記載の発光ダイオード照明具。

イ 本発明の発光ダイオード照明具は、従来品のように個々の発光ダイオードにつき反射鏡と集光レンズ付きの樹脂モールド加工を施し、ついで樹脂モールド発光ダイオードの多数個を個々に電気絶縁板に取付けて結線するのではなく、前記した多数の窪みを有し、しかも該富みの側壁面は反射面となっている絶縁金属基板を使用する。該絶縁金属基板は大量生産に適した構造を有し、したがって本発明の発光ダイオード照明具は大量生産されたそれら各板と樹脂モールド加工されていない発光ダイオードとを用いて流れ作業にて安価に組み立て生産できる。
本発明の発光ダイオード照明具においては、各発光ダイオードからの放出光は、一部は直接前方に、一部は窪みの側壁面の反射面により反射されて前方に効果的に放出されるので高輝度が得られる。(第2頁左下欄第7行ないし同頁右下欄第3行)

ウ 絶縁金属基板1は、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ニッケルなどの金属からなる金属基板層12、エポキシ樹脂、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、などの電気絶縁性材料からなる電気絶縁層13、およびアルミニウム、銅、金、ニッケルなどの導電性金属からなる電極パターン15、リード部パターン16とからなっており、かつ前記した多数の窪み11を有する。(第3頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第8行)

エ 絶縁金属基板1は、金属基板層、電気絶縁層、および導電性金属層とからなる3層構造の素板材を用い、たとえばその導電性金属層をパターンエツチング処理して電極パターン15とリード部パターン16を残して他部を除去し、電極パターン15とリード部パターン16上の必要個所にワイヤボンディングのための金属メツキを施し、ついで窪み11を設けることにより作製することができる。
窪み11は、平板の掘削、しぼり加工、化学エツチングなど、種々の方法によって形成することができ・・・しぼり加工が好ましく、その方法によって実質的に同一構造でしかも同一寸法の多数の窪み11を能率よく形成することができる。ここでいうしぼり加工とは、周知の通り、平らな素板材(ブランク)から継目のない底付き筒型乃至窪みを形成する作業を意味し、その具体的な方法としては、手工的なつち打ち法、旋盤とヘラとを使用する方法、プレス機を使用してポンチとダイスとによって素板材を変形加工する方法などがある。
側壁面14上を覆い反射面としての作用をなす電極パターン15の部分は、要すれば一層反射効率を高めるために光沢研摩やあるいはニッケル、クロム、金などの光沢メツキが施される。
かくして得た絶縁金属基板1の各窪み11の底部に、発光ダイオード2をその裏面電極22が窪み11の底部に位置する電極パターン15の部分と電気的に接触するようにたとえば導電性接着剤を用いて接続設置され、一方、発光ダイオード2の表面電極21と隣接する電極パターン15の部分とがボンディングワイヤ5によって接続されている。リード部パターン16とそれに最も近い発光ダイオード2とは、後記する理由から抵抗6を介して接続されている。
ついで必要に応じて絶縁金属基板lの全表面、または少なくとも窪み11とボンディングワイヤ5とは光透過性の有機高分子、たとえばポリカーボネート、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などにてマスクされる。
レンズ板3はポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ナイロン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、フッ化エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ガラス類、あるいはその他の光透過性の有機高分子からなっており、絶縁基板1の各窪み11の直上、特に各発光ダイオード2の直上にあたる位置に凸レンズ31を有する。本発明においては、レンズ板3は必ずしも必要でないが、多くの場合において照明輝度を高める上でそれを採用することが好ましい。(第3頁右上欄第16行ないし第4頁左上欄第7行)

オ 本発明において、第8図に示すような逆台形状の断面形状を有する窪み11は、反射効率が良好であり、たとえばしぼり加工によって作製が容易であり、さらに発光ダイオードの取りつけも容易である。以下第8図に基づいて断面形状の好ましい態様を説明する。同図においては、窪み11の側壁面14の最外表面と底部並びに該底部上に設置された発光ダイオード2のみが示されており、側壁面14の内部構造などは以下の説明において特に必要がないので省略されている。
第8図において、dは窪み11の底部の直径、Dは窪み11の開口部の直径、Hは窪み11の深さ、θは側壁面14の傾斜角度である。(第4頁右下欄第6ないし18行)

カ 一般に、絶縁金属基板の表面の窪み11および窪み17などをしぼり加工により形成する場合、該絶縁金属基板としてはその金属基板層12の厚さが2mm前後あるいはそれ以下の薄いものが適している。(第6頁左下欄第7ないし11行)

(3)引用文献に記載された発明
ア 引用文献の上記「(2)オ」の記載によれば、
第8図に示された、窪み11の形状は「逆台形状の断面形状を有する円錐台状」である。

イ また、引用文献には「本発明の発光ダイオード照明具は大量生産されたそれら各板と樹脂モールド加工されていない発光ダイオードとを用いて流れ作業にて安価に組み立て生産できる。」(摘記イを参照。)と記載され、絶縁金属基板1から板を作製する手順、さらに窪み17に発光ダイオード2を取り付ける手順(摘記エを参照。)が具体的に記載されてることに照らせば、引用文献には「『発光ダイオード照明具』を組み立て生産する方法」が開示されていることになる。

ウ してみると、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「逆台形状の断面形状を有する円錐台状の多数の窪みを有する絶縁金属基板の各窪みの底部に発光ダイオードが設置され、
発光ダイオードからの放出光は、一部は直接前方に、一部は窪みの側壁面の反射面により反射されて前方に効果的に放出される、発光ダイオード照明具の組み立て生産方法であって、
絶縁金属基板は、アルミニウム又は銅の金属基板層と、エポキシ樹脂などの電気絶縁性材料からなる電気絶縁層と、銅の導電性金属層とからなる3層構造の素板材であり、
導電性金属層をパターンエツチング処理して電極パターンとリード部パターンを残して他部を除去し、電極パターンとリード部パターン上の必要個所にワイヤボンディングのための金属メツキを施し、ついでプレス機を使用してポンチとダイスとによって素板材を変形加工して窪みを設け、
さらに、窪みの側壁面上を覆い反射面としての作用をなす電極パターンの部分に、反射効率を高めるためにニッケル、クロム、金などの光沢メツキを施し、
絶縁金属基板の窪みの底部に、発光ダイオードをその裏面電極が窪みの底部に位置する電極パターンの部分と電気的に接触するように導電性接着剤を用いて接続設置し、
発光ダイオードの表面電極と隣接する電極パターンの部分とをボンディングワイヤによって接続し、
リード部パターンとそれに最も近い発光ダイオードとを抵抗を介して接続し、
絶縁金属基板の全表面、または少なくとも窪みとボンディングワイヤとをシリコン樹脂などの光透過性の有機高分子にてマスクする、
発光ダイオード照明具を組み立て生産する方法。」

(4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「逆台形状の断面形状を有する円錐台状」は本願補正発明の「逆台形断面の円錐台状」及び「断面逆円錐台形状」に相当し、同様に、
「窪み」は「凹部」に、
「発光ダイオード」は「LED」及び「LEDのベアチップ」に、
「放出光」は「発光光線」に、
「前方」は「正面方向」に、
「側壁」は「側壁」に、
「電気絶縁層」は「絶縁層」に、
「銅の導電性金属層」は「銅箔層」に、
「『導電性金属層をパターンエツチング処理して電極パターンとリード部パターンを残して他部を除去し、電極パターンとリード部パターン上の必要個所にワイヤボンディングのための金属メツキを施し』た『絶縁金属基板』」は「プリント配線板」に、
「ポンチ」は「凸部治具」に、
「ニッケル、クロム、金などの光沢メツキを施し」は「金属被膜面を成膜し」に、
「導電性接着剤を用いて接続設置し」は「固定・配線し」に、
「シリコン樹脂など光透過性の有機高分子」は「透明材料」に、
「マスクする」は「全充填し」に、それぞれ、相当する。

イ 引用発明の「アルミニウム又は銅の金属基板層」を構成するアルミニウム及び銅が熱伝導率が高く放熱特性に優れることは、当業者にとって周知の事実である(例えば、
(ア)特開2004-95655号公報の【0048】を参照。
【0048】には、アルミニウムは熱伝導率が約240W/m・Kであるので、発光ダイオードの温度上昇を効果的に低減できる旨記載されている。
(イ)特開2002-223006号公報の【0029】を参照。
【0029】には、アルミ板をプレス加工して成形した反射鏡が熱伝導率が高いため、反射鏡全体から放熱することのできる旨記載されている。
(ウ)特開2001-332768号公報の【0014】を参照。
【0014】には、放熱特性が良好な金属材料として、銅、アルミニウムが例示されている。
(エ)特開平10-12927号公報の【0002】及び【0003】を参照。
【0002】には、アルミベース基板がヒートシンク性に優れる旨記載されている。
(オ)登録実用新案第3072840号公報の【0005】を参照。
【0005】には、放熱基板は、アルミニウム等の放熱性が好ましい材料より構成される旨記載されている。)。

してみると、引用発明の「アルミニウム又は銅の金属基板層」は本願補正発明の「放熱金属基板」に相当する。

ウ 引用発明の「凹部(窪み)」は、プレス機を使用してポンチとダイスとによって素板材を変形加工して設けられたものであるから、凸部治具(ポンチ)の加圧により形成されたものであるといえる。

エ 引用発明の「発光ダイオード照明具を組み立て生産する方法」は、
プリント配線板(導電性金属層をパターンエツチング処理して電極パターンとリード部パターンを残して他部を除去し、電極パターンとリード部パターン上の必要個所にワイヤボンディングのための金属メツキを施した、絶縁金属基板)にLED(発光ダイオード)を取り付けるものであるから、「プリント配線板にLEDを実装する方法」といえる。

オ してみると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「放熱金属基板の表面に絶縁層を介して銅箔層が積層接着されたプリント配線板へのLEDの実装方法において、凸部冶具によって前記プリント配線板の銅箔層側から加圧によって逆台形断面の円錐台状の凹部を複数個形成し、前記加圧によって形成された断面逆円錐台形状凹部の側壁に露出した銅箔層面または側壁の銅箔層上に、LEDのベアチップから断面逆円錐台形状凹部の側壁へ向かう発光光線をベアチップの正面方向に向かうように反射させる金属被膜面を成膜し、前記断面逆円錐台形状凹部にLEDのベアチップを入れて固定・配線し、ベアチップの上面を透明材料で全充填する、プリント配線板へのLEDの実装方法。」

カ 一方で、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
放熱金属基板に関し
本願補正発明が「絶縁層、銅箔層と比較して板厚の厚い」ものであるのに対して、
引用発明では、絶縁層、銅箔層との相対的な厚みが不明である点。

<相違点2>
絶縁層の厚みに関し
本願補正発明が「数十ミクロン」であるのに対して、
引用発明では、厚みが不明である点。

<相違点3>
凸部治具による加圧に関し
本願補正発明が「一度の加圧」であるのに対して、
引用発明では、一度であるか否か不明である点。

(5)判断
ア 上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
(ア)引用文献には、
金属基板層12の厚みに関連して「一般に、絶縁金属基板の表面の窪み11および窪み17などをしぼり加工により形成する場合、該絶縁金属基板としてはその金属基板層12の厚さが2mm前後あるいはそれ以下の薄いものが適している。」(摘記カを参照。)と記載されている。

(イ)そして、引用発明において、「放熱金属基板(アルミニウム又は銅の金属基板層)」の板厚を大きくするほど、その放熱効果が大きくなることは、当業者にとって明らかである。

(ウ)一方、引用発明は、3層構造の素板材である「プリント配線板(絶縁金属基板)」を変形加工して凹部(窪み)を設けるものであることに照らせば、プリント配線板の加工性を考慮して、積層される銅箔層(銅の導電性金属層)及び絶縁層(電気絶縁層)の厚みを、放熱金属基板(アルミニウム又は銅の金属基板層)と比べて薄くすることは、当業者が適宜なし得ることというべきである。

(エ)また、絶縁層(電気絶縁層)の厚さをどの程度とするかは、当業者が引用発明を実施する上で適宜定めるべき設計的事項であるところ、当該絶縁層は、熱伝導性の高い銅箔層(銅の導電性金属層)と放熱金属基板(アルミニウム又は銅の金属基板層)との間に介在することを踏まえると、熱の伝わり方を悪くしないように、その厚さを「数十ミクロン」程度とすることに格別の困難があるとは認められない。
そして、本願明細書の記載を見ても、絶縁層の厚みを「数十ミクロン」とした点に、設計上の意義を超える格別な技術的意義は認められない。

(オ)以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が引用文献に記載の事項に基づいて容易になし得たことである。

イ 上記<相違点3>について検討する。
(ア)引用発明において、具体的にどのように窪みを形成するかは、凹部(窪み)の数、凸部治具(ポンチ)の形状、放熱金属基板(アルミニウム又は銅の金属基板層)の厚み等を勘案して、当業者が実施に当たって適宜定めるべき設計的事項であるところ、凹部(窪み)を一度の加圧によって形成することに、格別の困難があるものとは認められない。

(イ)してみれば、引用発明において、上記<相違点3>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ また、本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。

(6)独立特許要件についてのまとめ
本件補正発明は、当業者が引用発明及び引用文献に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定のむすび
上記「3」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1(1)」にて本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、前記「第2 2(1)ないし(4)」に記載したとおり、本願発明を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3」で検討したとおり、当業者が引用発明及び引用文献に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び引用文献に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び引用文献に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-16 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-08 
出願番号 特願2005-76410(P2005-76410)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 北川 創
星野 浩一
発明の名称 プリント配線板へのLED実装方法およびLEDを実装したプリント配線板  
代理人 下田 達也  

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