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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1258863
審判番号 不服2011-13653  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-28 
確定日 2012-06-21 
事件の表示 特願2001-275951「改ざん防止用粘着ラベル」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月19日出願公開、特開2003- 84672〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年9月12日に出願したものであって、平成22年10月14日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年3月22日付けで、拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年6月28日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書について手続補正がなされ、更に、同年8月4日付けで審判請求書について手続補正がなされたものである。
その後、同年12月7日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成24年2月9日付けで回答書が提出された。

第2 平成23年6月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成23年6月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
平成23年6月28日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(以下、該請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。)。
「ラベル基材(A)と、前記ラベル基材(A)上に部分的に積層され且つ易剥離性を有する易剥離層(B)と、前記ラベル基材(A)及び易剥離層(B)上に積層され且つインキにより形成されたインキ層(C)と、前記インキ層(C)上に積層され且つ被着体に対して再剥離性を有するとともに、ラベル基材(A)に追従して内部破壊を生じることなく被着体との界面で剥離可能な再剥離型追従性粘着層(D)とを有している改ざん防止用粘着ラベルであって、ラベル基材(A)及び易剥離層(B)間の接着強度X_(AB)、易剥離層(B)及びインキ層(C)間の接着強度X_(BC)、および易剥離層(B)内部の破壊強度X_(B)から選択された少なくとも1つの強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度X_(D)よりも小さく、且つラベル基材(A)及びインキ層(C)間の接着強度X_(AC)、およびインキ層(C)及び再剥離型追従性粘着層(D)間の接着強度X_(CD)の強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度X_(D)より大きい関係を有しているとともに、前記再剥離型追従性粘着層(D)が、厚さ10?50μmの低密度ポリエチレンフィルム、厚さ10?50μmのアイオノマーフィルム、厚さ10?50μmのエラストマーフィルム、厚さ6?20μmの薄肉ポリエチレンテレフタレートフィルム、又は厚さ10?30μmの薄肉ポリプロピレンフィルムからなる粘着層基材(D1-a)と、前記粘着層基材(D1-a)のインキ層(C)側となる面に積層され且つ接着剤又は粘着剤からなる接着層(D1-b)と、前記粘着層基材(D1-a)の被着体側となる面に積層され且つ再剥離型粘着剤からなる再剥離型粘着剤層(D1-c)の3層により形成されており、該3層の内部の2つの界面における接着強度が、ともに前記接着強度X_(D)よりも大きいことを特徴とする改ざん防止用粘着ラベル。」
(下線は補正箇所を示し、本件補正において付されたとおりである。)

本件補正は、「再剥離型追従性粘着層(D)」が「内部破壊を生じることなく」剥離可能であること、「再剥離型追従性粘着層(D)」を形成する「低密度ポリエチレンフィルム」、「アイオノマーフィルム」、「エラストマーフィルム」いずれもが「厚さ10?50μm」であること、及び、「再剥離型粘着剤層(D)」が「3層により形成されており、該3層の内部の2つの界面における接着強度が、ともに前記接着強度XDよりも大きい」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下、検討する。

2 引用刊行物とそれに記載された事項及び発明
(1)本願出願前に頒布された登録実用新案第3068860号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載が図とともにある(下線は審決にて付した。以下同じ。)
ア 【実用新案登録請求の範囲】
「【請求項1】シールテープまたはシートの製作に適用可能な透明または半透明のフィルム状材料を基材とし、色彩および透明度が前記基材に一致し、かつ、前記基材との間に粘着性を具える材料の裏側に剥がれ表示を印刷したマーキング層と、色彩が前記基材およびマーキング層と異なるインクで前記マーキング層上と基材の前記マーキング層なき部分とを覆う固着色彩層と、前記固着色彩層上に塗布して、前記固着色彩層を粘着剤の塗布に適用しうるようにした非剥離層と、粘着剤を非剥離層上に塗布して形成し、前記剥がし防止用シートを被シール物件上に貼着可能にした粘着層とを含み、前記固着色彩層に対する前記粘着層の粘着力を、前記マーキング層に対する前記固着色彩層の粘着力よりも大きくし、基材に対する前記固着色彩層の粘着力よりも小さくしたことを特徴とする、剥がし防止用シート。
【請求項2】前記粘着剤に、シールシートを剥がした後、被シール物件上に粘着剤が残留しない粘着剤を使用したことを特徴とする、請求項1に記載の剥がし防止用シート。
【請求項3】前記粘着層に、シートを剥がした後の被シール物件上の再貼着に、剥がれ表示を維持したまま、貼着可能な粘着剤を採用したことを特徴とする、請求項1または2に記載の剥がし防止用シート。」
イ 段落【0001】
「【考案の属する技術分野】
本考案は、剥がし防止用のシートに関し、特に、物品のシール状態が過去において剥がされたか否かを表す剥がし防止(防剥)用シートに関する。」
ウ 段落【0004】
「【考案が解決しようとする課題】
上記防贋用テープは、防贋・剥がし防止の作用を発揮するが、若干の改善の余地を残す。すなわち、上記防贋用テープは、テープ基材を剥がした後、上記被シール物件上に上記防贋表示と粘着剤とが残留するため、事後の整除を要し、作業を煩雑化するという問題がある。なお、剥離後の再貼着ができないため、剥離後の再シールによって継続的にシール状態を維持する必要性がある場合、新たなテープを貼着しなければならないため、作業上不便であると共に、資材の浪費にもなる。」
エ 段落【0005】
「従来の防贋用テープの上記問題点を鑑み、本考案は、基材が剥がされた後のシール状態を意味する「開封済」、「剥がし済」、「已剥」などの文字などを明確に表示すると共に、被シール物件上に粘着剤などの物質痕跡が残留することのない剥がし防止用シートの提供を目的とする。また、基材を剥がした後のシール状態「開封済」、「剥がし済」、「已剥」などを明確に表示すると共に、被シール物件上に再貼着が可能な剥がし防止用シートの提供をさらなる目的とする。」
オ 段落【0008】1?8行
「図1に示すように、本考案の剥がし防止用シートは、透明または半透明のプラスチックスフィルムで構成した基材1と、この基材1の背面側に印刷されたマーキング層2と、このマーキング層2の上面およびマーキング層ギャップ20を含む基材1の背面側上面を覆って形成する固着色彩層3と、この固着色彩層3の上面に塗布した非剥離層4と、この非剥離層4上に塗布する粘着層5およびこの粘着層5を被覆する防粘紙6とを含む。基材1は、テープの製作に適する任意のシール用プラスチック材料、例えば、PE、PET、RPVC、OPPなどで製作し、形状は矩形、楕円形または帯状であっても良く、特に限定しない。」
カ 段落【0009】
「マーキング層2は、基材1と同色および同じ透明度で、かつ、基材1との間に粘着性を具える樹脂材料を用い、任意の印刷技術で「已開封(開封済)」の文字、模様、または記号などの剥がれ表示を基材1の背面側に印刷する。固着色彩層3は、上記基材1およびマーキング層2に対して適当な差異を有するインクを塗布して形成する。上記「適当な差異」とは、剥がし防止シートを用いる物件または使用法に応じてこの剥がれ表示を示す明晰度を決定するためのものであり、例えば、剥がれたことを明確に提示する場合は、上記基材1およびマーキング層2とに対するコントラストを強くし、上記剥がし防止作用を他人に気付かせたくない場合は、色を薄くする。なお、上記固着インクとマーキング層2との間の粘着力は、インクと基材1背面の粘着力より弱くし、かつ、マーキング層2上に塗布する場合は、上記マーキング層2背面の文字、模様または記号などを除き、上記基材背面の未マーキング部分およびマーキング層2間のギャップ20部分にも上記の固着インクを塗布する。上記シールシートを剥がした場合、上記マーキング層2が基材1の背面に粘着したまま上記固着インクと分離し、インク剤を対照用の下地色として、基材1表面から固着インクと分離したマーキング層2が観察できるようになる。」
キ 段落【0010】1?12行
「固着色彩層3上に塗布される非剥離層4は、例えば、ゴム(ラテックス)などの媒介材質であって、上記固着色彩層3の固着インク上への粘着剤塗布を容易にして粘着層5を形成する。なお、上記粘着層5と固着色彩層3との間に具えられる強い粘着力で一体化される。」
ク 段落【0011】1?12行
「粘着層5は、上記シールシートを被シール物件A上にシールするために設けられ、一般公知の粘着材料が用いられる。ただし、本考案では、上記シールシートを剥がした後、粘着剤などが被シール物件上に粘着して残留することなく、なお、前被シール物件上に再貼着が可能な材料、例えば、アクリル圧感粘着剤を選ぶ。」
ケ 段落【0014】1?12行
「合法か否かを問わず、もし剥がし防止シートを剥がした場合は、図4あるいは図5が示すように、被シール物件Aに対する粘着層5の粘着力が固着色彩層3上に作用して、上記固着色彩層3がマーキング層2および基材1に対する剥離力を同時に生成するが、上記基材1に対する固着色彩層3の粘着力が、上記マーキング層2に対する粘着力よりも大きい故、上記固着色彩層3と基材1との密着状態を維持しながら、マーキング層2との間に剥がし作用による基材上のマーキング層ギャップ21を形成し、上記マーキング層2の上記剥がれ表示Bが上記ギャップ21を通して基材1の表面に、図6に示すように上記基材1の色柄で表示される。この場合、仮に剥がした事実をカモフラージュするために、またはシール作用を維持するために、剥がしたシールシートを被シール物件A上に再貼着(図5参照)しても、上記剥がれ表示Bは、そのまま、基材1表面に表示されて、剥がす前の状態に回復しえない。」
コ 段落【0015】
「以上の記述により、本考案の剥がし防止シートは上記構造を具え、かつ、固着色彩層に対する粘着層の粘着力を、マーキング層に対する固着色彩層の粘着力よりも大きくし、基材に対する固着色彩層の粘着力よりも小さくした設計を介して作用することが知れる。よって、上記剥がし防止シートが剥がされた場合、固着色彩層とマーキング層間に複合しえないギャップを構成することにより剥がれ表示をシート表面に表示する故、剥がしたシールシートを被シール物件上に再貼着しても、剥がれ表示Bがそのまま「剥がし済」(已剥)の状況をシート表面に表示する。」
サ 図2及び上記カからみて、マーキング層の印刷は部分的である。

上記記載事項及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「透明または半透明のフィルム状材料を基材とし、
色彩および透明度が前記基材に一致し、かつ、前記基材との間に粘着性を具える材料の裏側に、「開封済」の文字などの剥がれ表示を部分的に印刷し、剥がし防止シートを剥がした場合、マーキング層と固着色彩層との間に剥がし作用によるマーキング層ギャップを形成し、マーキング層の上記剥がれ表示「開封済」の文字が基材の表面に表示されるマーキング層と、
色彩が前記基材およびマーキング層と異なるインクで前記マーキング層上と基材の前記マーキング層なき部分とを覆う固着色彩層と、
前記固着色彩層上に塗布して、前記固着色彩層を粘着剤の塗布に適用しうるように、粘着層と固着色彩層とを強い粘着力で一体化する非剥離層と、
シールシートを剥がした後、粘着剤などが被シール物件上に粘着して残留することのない粘着剤を非剥離層上に塗布して形成し、前記剥がし防止用シートを被シール物件上に貼着可能にした粘着層とからなる、剥がし防止用シートであって、
前記固着色彩層に対する前記粘着層の粘着力を、前記マーキング層に対する前記固着色彩層の粘着力よりも大きくし、基材に対する前記固着色彩層の粘着力よりも小さくし、粘着層と固着色彩層とは強い粘着力で一体化され、
粘着層には、シールシートを剥がした後、被シール物件上に粘着剤が残留することがない粘着材料が用いられ、
剥がし防止シートを剥がした場合、上記基材に対する固着色彩層の粘着力が、上記マーキング層に対する粘着力よりも大きい故、上記固着色彩層と基材との密着状態を維持しながら、マーキング層との間に剥がし作用による基材上のマーキング層ギャップを形成する、剥がし防止用シート。」

(2)同じく、本願出願前に頒布された特開2001-92359号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の記載が図とともにある。
シ 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、情報表示窓の表面に貼着するための再剥離可能なホログラムラベルに関する。詳しくは、再剥離性粘着剤層を改良し、一定期間経過してからも再剥離性が良好で、かつ、情報表示窓の表面に膨潤、白濁等のダメージを残さないホログラムラベルに関する。」
ス 段落【0006】
「本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯型情報機器の情報表示窓にホログラムラベルを貼着し、一定期間経過後に剥離した場合に、ラベルの粘着剤等が残らず、かつ情報表示窓に膨潤や白濁等のダメージを残さない、再剥離性粘着ホログラムラベルを提供することである。」
セ 段落【0016】
「図1は、本発明のホログラムラベルの一実施形態の断面図である。図1のホログラムラベルは、上から、透明保護基材3、粘着剤層2、体積ホログラム層1、粘着剤層4、透明基材5、再剥離性粘着剤層6、剥離用シート7がこの順に積層されている。」
ソ 段落【0024】
「再剥離性粘着剤層は、上記したような材料を使用し、膜厚4?100μmになるよう形成するとよい。また、再剥離性粘着剤層の剥離強度は、 被着基材に対して、10g/25mm?1000g/25mmの範囲で使用可能であり、より好ましくは、 50g/25mm?500g/25mmである。この剥離強度が10g/25mmより小さいと、外力で簡単に剥離してしまい問題であり、1000g/25mmを超えると、剥離を除去する際に、粘着剤が基材に残ってしまう等の問題を生じる。」
タ 段落【0031】
「4.透明保護基材、透明基材
本願の透明保護基材3、および透明基材5に使用可能な材料としては、厚さ1μm?1mm、好ましくは10μm?100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等の透明性が高く、平滑性が高い樹脂フィルムが使用可能である。中でも、無色透明なフィルムが最も好ましい。そして、これらのフィルムを粘着剤層にゴムローラー等で貼り合わせる。」

3 対比
本件補正発明と引用発明とを比較する。
a 引用発明の「基材」、「固着色彩層」は、本件補正発明の「ラベル基材」、「インキ層」にそれぞれ相当する。
b 本件補正発明の「易剥離層」について検討する。
本件補正発明の「易剥離層」は、本願図面の図3、及び、段落【0025】に「図3で示されるように、剥離後には、易剥離層(B)3と、ラベル基材(A)2及び/又はインキ層(C)4との界面(SAB、SBC)や、易剥離層(B)3の内部において剥離又は破壊が生じ、空隙ができている。なお、易剥離層31については、易剥離層31とラベル基材(A)2との界面で剥離又は破壊が生じており、易剥離層32については、易剥離層32の内部で剥離又は破壊が生じており、易剥離層33については、易剥離層33とインキ層(C)4との界面で剥離又は破壊が生じている。」(9?18行)と記載されるように、易剥離層とラベル基材との界面、及び/又は、易剥離層とインキ層との界面、或いは、易剥離層の内部において、剥離又は破壊が生じ、空隙ができる層のことであり、また、そのような剥離、破壊が生じることにより「ラベル表面には易剥離性インキの剥離による表示が表れ」(段落【0072】下から3?2行)るものである。
他方、引用発明の「マーキング層」は、「剥がし防止シートを剥がした場合、マーキング層と固着色彩層との間に剥がし作用によるマーキング層ギャップを形成し、マーキング層の上記剥がれ表示「開封済」の文字が基材の表面に表示される」ものである。
なお、該ギャップが空隙であることは言うまでもない。
結局、引用発明の「マーキング層」は、本件補正発明の「易剥離層」に相当する。
c 引用発明の「粘着層」は、「シールシートを剥がした後、粘着剤などが被シール物件上に粘着して残留することのない」もの、即ち、シールシートと一緒に(追従して)残留物なく剥離するものであるから、本件補正発明の「再剥離型追従性粘着層」に相当する。
d 本件補正発明の「(再剥離型追従性粘着層が)内部破壊を生じることなく」被着体との界面で剥離可能である点について検討する。
本願明細書において、本件補正発明に係る「再剥離型追従性粘着層の内部破壊」については、段落【0027】に「なお、再剥離型追従性粘着層(D)5は、ラベル基材(A)に追従して被着体との界面で剥離が可能な層であり、内部破壊が生じることがない。」と記載されるのみであるところ、該記載からみて、「内部破壊を生じることなく」とは、再剥離型追従性粘着層が、ラベル基材に追従して粘着層を残すことなく、被着体から剥離することを意味すると解される。
他方、引用発明の「粘着層」は、上記cのとおり、本件補正発明の「再剥離型追従性粘着層」に相当するものであり、被シール物件上から残留物なく剥離するものであるから、内部破壊を生じていないことは明らかである。
即ち、本件補正発明の「粘着層」も「内部破壊を生じることなく」被シール物件との界面で剥離可能なものである。
e 引用発明は「前記固着色彩層に対する前記粘着層の粘着力を、前記マーキング層に対する前記固着色彩層の粘着力よりも大きくし、基材に対する前記固着色彩層の粘着力よりも小さくし、粘着層と固着色彩層とは強い粘着力で一体化され、
粘着層には、シールシートを剥がした後、被シール物件上に粘着剤が残留することがない粘着材料が用いられ、
剥がし防止シートを剥がした場合、上記基材に対する固着色彩層の粘着力が、上記マーキング層に対する粘着力よりも大きい故、上記固着色彩層と基材との密着状態を維持しながら、マーキング層との間に剥がし作用による基材上のマーキング層ギャップを形成する」ものであるから、剥がし防止シートを剥がした場合に、マーキング層と固着色彩層との間にギャップが形成される、換言すれば、マーキング層と固着色彩層との界面で剥離するものであり、且つ、粘着層は基材に追従して、粘着剤が被シール物件上に残留することなく剥がれるものである。
本件補正発明の「ラベル基材(A)及び易剥離層(B)間の接着強度X_(AB)、易剥離層(B)及びインキ層(C)間の接着強度X_(BC)、および易剥離層(B)内部の破壊強度X_(B)から選択された少なくとも1つの強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度X_(D)よりも小さく、且つラベル基材(A)及びインキ層(C)間の接着強度X_(AC)、およびインキ層(C)及び再剥離型追従性粘着層(D)間の接着強度X_(CD)の強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度X_(D)より大きい関係を有している」なる特定事項は、ラベルが剥離される際に、ラベル基材と易剥離層との界面、又は、易剥離層とインキ層との界面が剥離するか、或いは、易剥離層に内部破壊が生じ(本願図面の図3の3つの状態参照)、且つ、再剥離型追従性粘着層はラベル基材に追従して、再剥離型追従性粘着層を被着体に残すことなく剥がれることを特定する事項である。
即ち、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えていると言える。
f 引用発明では、各層は印刷・塗布等により形成されるものであるが、印刷或いは塗布された層は、結果的に積層されたものであるから、印刷・塗布は、「積層」と言い換えることができる。
また、そのように言い換えても、何ら矛盾はない。
g 引用発明の「剥がし防止用シート」は、本件補正発明の「改ざん防止用粘着ラベル」と同義である。

以上の点からみて、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する一方、次の点で相違している。
《一致点》
「ラベル基材(A)と、前記ラベル基材(A)上に部分的に積層され且つ易剥離性を有する易剥離層(B)と、前記ラベル基材(A)及び易剥離層(B)上に積層され且つインキにより形成されたインキ層(C)と、前記インキ層(C)上に積層され且つ被着体に対して再剥離性を有するとともに、ラベル基材(A)に追従して内部破壊を生じることなく被着体との界面で剥離可能な再剥離型追従性粘着層(D)とを有している改ざん防止用粘着ラベルであって、ラベル基材(A)及び易剥離層(B)間の接着強度X_(AB)、易剥離層(B)及びインキ層(C)間の接着強度X_(BC)、および易剥離層(B)内部の破壊強度X_(B)から選択された少なくとも1つの強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度X_(D)よりも小さく、且つラベル基材(A)及びインキ層(C)間の接着強度X_(AC)、およびインキ層(C)及び再剥離型追従性粘着層(D)間の接着強度X_(CD)の強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度X_(D)より大きい関係を有している、改ざん防止用粘着ラベル」
《相違点》
再剥離型追従性粘着層が、本件補正発明では、「厚さ10?50μmの低密度ポリエチレンフィルム、厚さ10?50μmのアイオノマーフィルム、厚さ10?50μmのエラストマーフィルム、厚さ6?20μmの薄肉ポリエチレンテレフタレートフィルム、又は厚さ10?30μmの薄肉ポリプロピレンフィルムからなる粘着層基材(D1-a)と、前記粘着層基材(D1-a)のインキ層(C)側となる面に積層され且つ接着剤又は粘着剤からなる接着層(D1-b)と、前記粘着層基材(D1-a)の被着体側となる面に積層され且つ再剥離型粘着剤からなる再剥離型粘着剤層(D1-c)の3層により形成されており、該3層の内部の2つの界面における接着強度が、ともに前記接着強度X_(D)よりも大きい」と特定されているのに対して、引用発明では、非剥離層を介した粘着層である点。

4 判断
刊行物2には、ホログラムラベルを情報表示窓(被着基材)に貼着するについて、一定期間経過後にラベルを剥離した場合にラベルの粘着剤を残さない再剥離性粘着剤層として、具体的に、粘着剤層、透明基剤、再剥離性粘着剤層の3層からなるものが記載され、又、透明基材として、10μm?100μmのポリプロピレンフィルム等が例示されている。
また、刊行物2記載の「再剥離性粘着剤層」の剥離強度(接着強度)は、「被着基材に対して、50g/25mm?500g/25mm」であり、これは、「剥離強度が10g/25mmより小さいと、外力で簡単に剥離してしまう問題」、「1000g/25mmを超えると、剥離を除去する際に、粘着剤が基材に残ってしまう問題」が生じるため、これら問題が生じない接着強度として採用された強度である。
即ち、上記の接着強度は、ラベル(貼着物)が被着基材(被着体)から簡単に剥離しない強度を持ちながら、貼着物を剥がす際には、被着体に粘着剤が残らない強度であるから、上記粘着剤、透明基剤、再剥離性粘着剤の3層の内の2つの界面における接着強度は、被着体との接着強度より大きいことは明らかである。
結局、一定期間経過後に貼着物を剥離した場合に、貼着物の粘着剤等が残らない再剥離性粘着剤層として、10μm?100μmのポリプロピレンフィルムを基材とし、該基材の被着体側に再剥離性粘着剤層を、基材の貼着物側に粘着剤層を積層した3層構造の再剥離性粘着剤層であって、各層の界面の接着強度が被着体との接着強度より大きい再剥離性粘着剤層、即ち、上記相違点に係る「再剥離型追従性粘着層」は、刊行物2に記載されるように、公知の技術手段である。
なお、本件補正発明では、ポリプロピレンフィルムの厚みは10μm?30μmと特定されているが、当該数値は、上記公知の技術手段に含まれる数値であり、且つ、30μmという数値に臨界的意義があるとも認められないから、厚みの上限を30μmに特定することに格別の意義は認められなず、当該数値は当業者が適宜設定するものと認められる。
そして、引用発明の「粘着層(再剥離型追従性粘着層)」及び刊行物2記載の「再剥離性粘着剤層」は、どちらも、貼着物(剥がし防止シート、ホログラムラベル)を、被着体から粘着剤の痕跡を残さずに剥離させるために用いられるものであるから、引用発明の粘着層の代わりに、刊行物2記載の「3層の再剥離型粘着剤層」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
また、それにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものとは言えない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年12月14日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ラベル基材(A)と、前記ラベル基材(A)上に部分的に積層され且つ易剥離性を有する易剥離層(B)と、前記ラベル基材(A)及び易剥離層(B)上に積層され且つインキにより形成されたインキ層(C)と、前記インキ層(C)上に積層され且つ被着体に対して再剥離性を有するとともに、ラベル基材(A)に追従して被着体との界面で剥離可能な再剥離型追従性粘着層(D)とを有している改ざん防止用粘着ラベルであって、ラベル基材(A)及び易剥離層(B)間の接着強度XAB、易剥離層(B)及びインキ層(C)間の接着強度XBC、および易剥離層(B)内部の破壊強度XBから選択された少なくとも1つの強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度XDよりも小さく、且つラベル基材(A)及びインキ層(C)間の接着強度XAC、およびインキ層(C)及び再剥離型追従性粘着層(D)間の接着強度XCDの強度が、再剥離型追従性粘着層(D)及び被着体間の接着強度XDより大きい関係を有しているとともに、前記再剥離型追従性粘着層(D)が、低密度ポリエチレンフィルム、アイオノマーフィルム、エラストマーフィルム、厚さ6?20μmの薄肉ポリエチレンテレフタレートフィルム、又は厚さ10?30μmの薄肉ポリプロピレンフィルムからなる粘着層基材(D1-a)と、前記粘着層基材(D1-a)のインキ層(C)側となる面に積層され且つ接着剤又は粘着剤からなる接着層(D1-b)と、前記粘着層基材(D1-a)の被着体側となる面に積層され且つ再剥離型粘着剤からなる再剥離型粘着剤層(D1-c)とにより形成されていることを特徴とする改ざん防止用粘着ラベル。」

2 引用刊行物及びその記載事項と発明
原審における拒絶理由に引用された刊行物及びその記載事項と発明は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「再剥離型追従性粘着層(D)」が「内部破壊を生じることなく」剥離可能である、「再剥離型追従性粘着層(D)」を形成する「低密度ポリエチレンフィルム」、「アイオノマーフィルム」、「エラストマーフィルム」いずれもが「厚さ10?50μm」である、及び、「再剥離型粘着剤層」が「3層により形成されており、該3層の内部の2つの界面における接着強度が、ともに前記接着強度XDよりも大きい」との特定事項を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、更に、他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 4」に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-18 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-08 
出願番号 特願2001-275951(P2001-275951)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭宮本 昭彦  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 東 治企
菅野 芳男
発明の名称 改ざん防止用粘着ラベル  
代理人 後藤 幸久  

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