• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1258900
審判番号 不服2011-4557  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-28 
確定日 2012-06-18 
事件の表示 特願2009-243490「太陽光発電モジュール用接続構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月 3日出願公開、特開2010-123933〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成21年10月22日(優先権主張平成20年10月24日)に特許出願したものであって、平成22年9月7日付けで手続補正がなされたが、同年11月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月28日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである(以下、平成23年2月28日になされた手続補正を「本件補正」という。)。

第2 本件補正についての却下の決定

[結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲につき、補正前(平成22年9月7日付け手続補正後のもの。)の

「 【請求項1】
太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールに接続するためのケーブルと、を少なくとも中継する太陽光発電モジュール用接続構造体であって、
長期耐熱性の指数として、厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度(RTI:Relative thermal index)が115℃以上であり、かつ、-40℃におけるシャルピー衝撃強度が6.5kJ/m^(2)以上である、熱可塑性樹脂組成物を含む太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリカーボネートとABSを含むポリマーアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート及びポリフェニレンサルファイドよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項3】
平均肉厚が、3.0mm以下である、請求項1又は2に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)スチレン系樹脂と、(C)水添ブロック共重合体と、を含み、
前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の合計100質量部において、
前記(A)の含有量は65?98質量部であり、
前記(B)の含有量は1?25質量部であり、
前記(C)の含有量は1?20質量部である、請求項1?3のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物の前記定格温度が、120℃以上である、請求項1?4のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるシャルピー衝撃強度が、7.5kJ/m^(2)以上である、請求項1?5のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度が、3.0J以上である、請求項1?6のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項8】
90℃・飽和水蒸気環境下で500時間静置後の前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度が、前記静置前の前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度に対して、70%以上の保持率である、請求項1?7のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項9】
前記太陽光発電モジュール用接続構造体が、太陽光発電モジュール用ジャンクションボックスである請求項1?8のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項10】
平均肉厚が、1mm以上2.5mm以下である、請求項9に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項11】
前記太陽光発電モジュール用接続構造体が、太陽光発電モジュール用コネクタである請求項1?8のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項12】
平均肉厚が、0.5mm以上2.5mm以下である、請求項11に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。」



「 【請求項1】
太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールに接続するためのケーブルと、を少なくとも中継する太陽光発電モジュール用接続構造体であって、
長期耐熱性の指数として、厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度(RTI:Relative thermal index)が115℃以上であり、かつ、-40℃におけるシャルピー衝撃強度が6.5kJ/m^(2)以上である、熱可塑性樹脂組成物を含み、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリフェニレンサルファイドよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項2】
平均肉厚が、3.0mm以下である、請求項1に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)スチレン系樹脂と、(C)水添ブロック共重合体と、を含み、
前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の合計100質量部において、
前記(A)の含有量は65?98質量部であり、
前記(B)の含有量は1?25質量部であり、
前記(C)の含有量は1?20質量部である、請求項1または2に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物の前記定格温度が、120℃以上である、請求項1?3のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるシャルピー衝撃強度が、7.5kJ/m^(2)以上である、請求項1?4のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度が、3.0J以上である、請求項1?5のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項7】
90℃・飽和水蒸気環境下で500時間静置後の前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度が、前記静置前の前記熱可塑性樹脂組成物の-40℃におけるダート衝撃強度に対して、70%以上の保持率である、請求項1?6のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項8】
前記太陽光発電モジュール用接続構造体が、太陽光発電モジュール用ジャンクションボックスである請求項1?7のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項9】
平均肉厚が、1mm以上2.5mm以下である、請求項8に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項10】
前記太陽光発電モジュール用接続構造体が、太陽光発電モジュール用コネクタである請求項1?7のいずれか一項に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項11】
平均肉厚が、0.5mm以上2.5mm以下である、請求項10に記載の太陽光発電モジュール用接続構造体。」

に補正する内容を含むものである。

2 補正の目的

上記1によれば、本件補正による請求項1についての補正は、「熱可塑性樹脂組成物」について、「ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリフェニレンサルファイドよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む」ことを限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。

3 独立特許要件についての検討

本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記1において、補正後の請求項1に記載したとおりのものと認められるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。

(1)刊行物の記載

原査定の拒絶の理由に引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開2008-251856号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

ア 「【請求項1】
ボックス本体内に複数の端子板が備えられ、これら複数の端子板のうち互いに隣り合う一対の端子板間にバイパス用ダイオードが配設される太陽電池モジュール用端子ボックスにおいて、 前記ボックス本体内には、前記バイパス用ダイオードのダイオード本体部から延びるリード線および前記端子板との絶縁を確保した状態で金属製の放熱用部材が設けられており、 前記放熱用部材には、所定の間隔をあけて設けられる多数のフィンが一体的に形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用の端子ボックスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、環境問題への関心の高まりから、環境にやさしい発電システムとして、太陽光発電システムが注目されている。この太陽光発電システムとして、例えば、建物の屋根上等にマトリックス状に敷設した太陽電池モジュールによって太陽光発電を行うものが知られている。このような太陽光発電システムでは、隣接して敷設された太陽電池モジュールを互いに電気的に接続して、各太陽電池モジュールにより発電された電力を取り出すために、太陽電池モジュール用端子ボックスが使用される。
【0003】
そして、例えば、特許文献1に示されるように、太陽電池モジュール用の端子ボックスには、太陽電池モジュールの太陽電池セルの一部が日陰になった場合等に、その太陽電池モジュールへ逆方向電流が流れることを未然に防ぐために、バイパス用のダイオードが設けられている。バイパス用ダイオードは、端子ボックス内の端子板間に配置され、太陽電池モジュールと並列に接続される。
【0004】
ところが、バイパス用ダイオードを端子ボックス内に単に設けただけでは、バイパス用ダイオード自体に生じる熱を放熱させにくいという不具合がある。そこで、例えば、特許文献2に示されるように、上下に重ね合わせた多層の放熱板を端子ボックス内に設けた提案がなされている。この端子ボックスによれば、放熱板の合計の表面積が大きくなるので、効率よく放熱を行うことが可能になる。
【特許文献1】特開2004-289181号公報
【特許文献2】特開2006-310439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような従来の太陽電池モジュール用端子ボックスには、次のような問題点がある。
【0006】
放熱用部材としての放熱板を多層に重ね合わせる構成であるため、互いに重なり合っている間に熱抵抗が発生し、熱伝導率が悪くなり、重ね合わせる枚数が増えるほどに熱抵抗が大きくなり、放熱性が劣っていく。したがって、放熱板間に発生する熱抵抗の分だけ放熱性が損なわれてしまうという問題点がある。また、放熱板の端子ボックス内部への組み付け時の組み付けバラツキにともない、場所によって放熱量に差が生じやすくなり、放熱性が不安定になるという問題点がある。
【0007】
さらに、重ね合わせる放熱板の枚数が多くなるほど、放熱板の端子ボックス内への組み付け作業性が悪くなる。その結果、放熱板の組み付け作業に時間を要し、作業コストも増加するという問題点がある。また、使用する放熱板の枚数が多くなるほど、材料コストも増加するという問題点がある。
【0008】
したがって、放熱性およびコストの面で改良の余地がある。
【0009】
本発明は、そのような問題点を鑑みてなされたものであり、放熱性の改善を図るとともに、コスト低減を図ることが可能な太陽電池モジュール用端子ボックスを提供することを目的とする。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0020】
本発明を適用する太陽電池モジュール用端子ボックス(以下では、単に「端子ボックス」ともいう。)においては、1つの端子ボックスに設けられる端子板の数は、複数であれば特に限定されない。以下では、1つの端子ボックスに4つの端子板を設けた場合について説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係る端子ボックスを示す平面図、図2は、端子ボックスを示す後面図、図3は、端子ボックスを示す右側面図である。図4は、図1におけるA-A断面図、図5は、図1におけるB-B断面図である。なお、便宜上、図1、図2、図3に示すように、端子ボックス10において、4つの端子板16,16,・・・が並べて配置される方向を左右方向とし、各端子板16がボックス本体11の結線用開口12に向けて延びる方向を前後方向とする。また、これらの左右方向および前後方向に直交する方向を上下方向とする。
【0022】
図1?図5に示す端子ボックス10は、互いに電気的に接続される複数枚の太陽電池セルが表面に設けられた太陽電池モジュール(図示略)の裏面側に装着されるものである。このような端子ボックス10を用いることによって、建物の屋根等に、例えば、マトリックス状に敷設された複数枚の太陽電池モジュールにより太陽光発電を行う太陽光発電システムにおいて、隣接して設けられた太陽電池モジュールを互いに電気的に接続して、各太陽電池モジュールにより発電された電力を取り出すことを可能としている。
【0023】
端子ボックス10のボックス本体11は、例えば、変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)やABS(アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン)のようなの耐候性、電気絶縁性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性といった特性を有する合成樹脂等により箱形に成形されている。このボックス本体11は、上面側が開口するとともに、底面側に複数(この例では4つ)の結線用開口12,12,・・・が形成されている。また、左右の側壁部13,13にそれぞれケーブル導入用の半円形状の凹部14,14が形成されている。そして、上面側の開口に図示しない板状の蓋体が取り付けられて閉鎖されうるような構造となっている。なお、ボックス本体11の内部の空間には、絶縁性樹脂(例えば、シリコーン樹脂等)が充填されて、ボックス本体11内部における電気的な接続部分が樹脂封止されるようになっている。
【0024】
ボックス本体11の内部には、放熱用部材30が複数備えられている。この例では、3つの放熱用部材30,30,30が所定間隔で左右に並べて配置されている。各放熱用部材30は、ボックス本体11の底部に形成された位置決め用の凹部15にそれぞれ嵌め込まれている。これら3つの放熱用部材30,30,30の上側には、1つの固定用部材40が被せられている。このように、各放熱用部材30が、ボックス本体11の底部と固定用部材40との間に挟まれた状態で設けられており、この固定用部材40によって各放熱用部材30がボックス本体11内に固定されている。
【0025】
固定用部材40は、ボックス本体11と同じ材質で形成されており、超音波溶着等によりボックス本体11に固着されている。この固定用部材40によって、ボックス本体11内部の結線用開口12,12,・・・よりも後方の部分がほぼ全域にわたって覆われている。固定用部材40の左右の両端部には、外側へ突出する突出部41,41が形成されている。各突出部41には、それぞれケーブル導入用の半円形状の凹部42が形成されている。そして、ボックス本体11の凹部14と、固定用部材40の凹部42とが互いに向き合うように設けられおり、凹部14,42によって円形のケーブル導入用開口43が形成されている。なお、放熱用部材30および固定用部材40の詳細については後述する。
【0026】
ボックス本体11の内部には、金属製(例えば、真鍮製等)の端子板16が複数備えられている。この例では、4つの端子板16,16,・・・が所定間隔で左右に並べて配置されている。各端子板16は、固定用部材40の底部に形成された位置決め用の凹部44にそれぞれ嵌め込まれている。そして、各端子板16は、凹部44の内壁で位置決めされた状態で固定用金具46により固定用部材40に固定されている。この場合、各端子板16に形成された取付孔16eに、固定用部材40に形成された固定用突起45を挿入し、その固定用突起45の頂部に固定用金具46を取り付けることで、各端子板16を固定用部材40に固定している。この取り付け状態では、端子板16と放熱用部材30とが接触しないようになっている。つまり、固定用部材40が端子板16と放熱用部材30との間には固定用部材40が介在されており、端子板16と放熱用部材30との絶縁を確実に確保するようにしている。
【0027】
また、各端子板16は、一端部(前端部)16aがボックス本体11の結線用開口12に臨むように配置されている。各端子板16の一端部16aには、太陽電池モジュール側の出力端(図示略)が半田付けにより接続される。なお、半田付けによる端子板16と太陽電池モジュール側の出力端との接続作業を容易とするために、各端子板16の一端部16aには、予め半田層17が形成されている。
【0028】
4つの端子板16,16,・・・のうちで、互いに隣り合っている一対の端子板16,16の間には、バイパス用ダイオード20がそれぞれ配設されている。この例では、端子板16がボックス本体11内部に4つ並べて設けられているので、バイパス用ダイオード20が3つ用いられている。また、バイパス用ダイオード20として、合成樹脂等でモールドして形成されているパッケージタイプのダイオードが用いられている。
【0029】
各バイパス用ダイオード20は、そのダイオード本体部21が固定用部材40に形成された位置決め用の開口47に嵌め込まれている。そして、各バイパス用ダイオード20は、ダイオード本体部21が開口47の内壁で位置決めされた状態で放熱用部材30の上に載置され、ネジ24およびナット25により放熱用部材30に固定されている。この場合、各バイパス用ダイオード20のダイオード本体部21の後端部に形成された取付孔23および放熱用部材30に形成された取付孔33にネジ24を挿入し、ナット25を締め付けることで、各バイパス用ダイオード20を放熱用部材30に固定している。なお、タップ等によって放熱用部材30に雌ネジを切り、その雌ネジにネジ24を締め付けることで、各バイパス用ダイオード20を放熱用部材30に固定してもよい。
【0030】
また、各バイパス用ダイオード20のダイオード本体部21から延びるリード線22,22が、一対の端子板16,16のダイオード接続部16b,16bに半田付けにより接続される。このように、バイパス用ダイオード20を一対の端子板16,16間に太陽電池モジュールと並列に接続することで、太陽電池モジュールへ逆方向電流が流れることを未然に防ぐようにしている。
【0031】
また、4つの端子板16,16,・・・のうちで、左右両端寄りの各端子板16,16には、接続ケーブル18,18の一端がそれぞれ接続されている。接続ケーブル18,18は、上述したケーブル導入用開口43,43からボックス本体11内部へそれぞれ導入されて、端子板16,16のケーブル接続部16c,16cにそれぞれ接続されている。接続ケーブル18は、その他端側に接続されるコネクタ等を介して、他の太陽電池モジュールに装着された端子ボックスの接続ケーブル等と互いに連結可能となっている。
【0032】
ここで、ボックス本体11内部に設けられる4つの端子板16,16,・・・について説明する。ここでは、便宜上、4つの端子板16,16,・・・および3つのバイパス用ダイオード20,20,・・・を、それぞれ左方に配置されているものから順に、第1の端子板16A,第2の端子板16B,第3の端子板16C,第4の端子板16D、および、第1のバイパス用ダイオード20A,第2のバイパス用ダイオード20B,第3のバイパス用ダイオード20Cとして説明する。
【0033】
ボックス本体11内部で、左端寄りに設けられる第1の端子板16Aは、上述した一端部16aとダイオード接続部16bとケーブル接続部16cとが、連結部16dを介して一体的に連結された構成になっている。具体的には、左右方向に延びる連結部16dの右端部から前方に向けて一端部16aが延び、連結部16dの中間部から後方に向けてダイオード接続部16bが延び、連結部16dの左端部からケーブル接続部16cが延びている。また、一端部16aの後端部に上述した取付孔16eが形成されており、この取付孔16eに固定用部材40の固定用突起45が挿入されている。そして、固定用突起45の頂部に固定用金具46が取り付けられて、第1の端子板16Aが固定用部材40に固定されている。この第1の端子板16Aには、第1のバイパス用ダイオード20Aだけが接続されている。
【0034】
ボックス本体11内部で、右端寄りに設けられる第4の端子板16Dは、上記第1の端子板16Aと左右対称な構成になっている。具体的には、左右方向に延びる連結部16dの左端部から前方に向けて一端部16aが延び、連結部16dの中間部から後方に向けてダイオード接続部16bが延び、連結部16dの右端部からケーブル接続部16cが延びている。また、一端部16aの後端部に上述した取付孔16eが形成されており、この取付孔16eに固定用部材40の固定用突起45が挿入されている。そして、固定用突起45の頂部に固定用金具46が取り付けられて、第4の端子板16Dが固定用部材40に固定されている。この第4の端子板16Dには、第3のバイパス用ダイオード20Cだけが接続されている。
【0035】
一方、ボックス本体11内部で、左右中央寄りに設けられる第2,第3の端子板16B,16Cは、上記第1,第4の端子板16A,16Dとは、異なる形状になっている。
【0036】
第2,第3の端子板16B,16Cのうち、左寄りの第2の端子板16Bは、上述した一端部16aとダイオード接続部16bとが一体的に連結された構成になっている。具体的には、左右方向に延びるダイオード接続部16bの右端部から上方に向けて一端部16aが延びている。また、一端部16aの後端部に上述した取付孔16eが形成されており、この取付孔16eに固定用部材40の固定用突起45が挿入されている。そして、固定用突起45の頂部に固定用金具46が取り付けられて、第2の端子板16Bが固定用部材40に固定されている。この第2の端子板16Bには、第1,第2のバイパス用ダイオード20A,20Bが接続されているが、このうち、左方に配置される第1のバイパス用ダイオード20Aがダイオード接続部16bの左端部に接続され、右方に配置される第2のバイパス用ダイオード20Bがダイオード接続部16bの右端部に接続されている。
【0037】
第2,第3の端子板16B,16Cのうち、右寄りの第3の端子板16Cは、上記第2の端子板16Bと左右対称な構成になっている。具体的には、左右方向に延びるダイオード接続部16bの左端部から上方に向けて一端部16aが延びている。また、一端部16aの後端部に上述した取付孔16eが形成されており、この取付孔16eに固定用部材40の固定用突起45が挿入されている。そして、固定用突起45の頂部に固定用金具46が取り付けられて、第3の端子板16Cが固定用部材40に固定されている。この第3の端子板16Cには、第2,第3のバイパス用ダイオード20B,20Cが接続されているが、このうち、左方に配置される第2のバイパス用ダイオード20Bがダイオード接続部16bの左端部に接続され、右方に配置される第3のバイパス用ダイオード20Cがダイオード接続部16bの右端部に接続されている。
【0038】
次に、放熱用部材30について、図6、図7を用いて説明する。図6は、端子ボックスの内部に配置される放熱用部材を示す平面図、図7は、図6におけるC-C断面図である。なお、3つの放熱用部材30,30,30は、ほぼ同様の構成であるが、バイパス用ダイオード20を固定するためのネジ24の挿入用の取付孔33の位置だけがそれぞれ異なっている。ただし、取付孔33を同じ位置に設けて、3つの放熱用部材30,30,30を同一の構成としてもよい。図6、図7では、端子ボックス10の内部に配置される3つの放熱用部材30,30,30のうち、中央に配置される放熱用部材30を示している。
【0039】
放熱用部材30は、断面が櫛歯形状の部材で、その上側に取り付けられるバイパス用ダイオード20に生じた熱を逃がすために設けられている。この例では、3つのバイパス用ダイオード20,20,20のそれぞれに対して、放熱用部材30が個別に設けられている。各放熱用部材30は、上述したように、ボックス本体11の位置決め用の凹部15内に配置される。
【0040】
放熱用部材30は、例えば、アルミニウム、銅、ステンスレス鋼等のような熱伝導性に優れる金属により形成されている。放熱用部材30は、基部31と多数のフィン部32,32,・・・とを備えている。
【0041】
基部31は、多数のフィン部32,32,・・・を一体に連結する部分であり、ボックス本体11の位置決め用の凹部15に配置した状態で、ボックス本体11の底部とほぼ平行に設けられる。基部31には、上述したネジ24の挿入用の取付孔33が形成されている。また、基部31には、左右方向に延びる段差34が形成されている。この段差34を境に、基部31の前部31aが後部31bに比べて若干だけ下方にずれた位置に設けられている。そして、基部31の前部31aの上面が後部31bの上面に比べて、段差34の高さ分だけ下方に窪んでいる。
【0042】
フィン部32は、基部31から突出して設けられる部分であり、放熱用部材30の表面積を大きくするための表面積増大部位として設けられている。このフィン部32が、バイパス用ダイオード20の熱を放熱させる役割を主に果たす。この例では、平板状の多数のフィン部32,32,・・・が、基部31の下面から下方(ボックス本体11の底面側)に向けて垂直に延びている。多数のフィン部32,32,・・・は、所定の間隔をあけて互いに平行に設けられている。各フィン部32は、所定の厚さに形成されている。各フィン部32の上下方向の長さ(高さ)は、ボックス本体11の位置決め用の凹部15に配置した状態で、各フィン部32の下端がボックス本体11の底部に接する長さに設定されている。各フィン部32の左右方向の長さ(幅)は、ボックス本体11の位置決め用の凹部15の左右方向の長さ(幅)と同じに設定されている。フィン部32の数、厚さ、面積(=「高さ」×「幅」)や、隣り合うフィン部32,32同士の間隔等に応じて、放熱用部材30による放熱量が決定される。
【0043】
次に、固定用部材40について、図8?図12を用いて説明する。図8は、端子ボックスの内部に配置される固定用部材を示す平面図、図9は、図8の固定用部材の後面図、図10は、図8の固定用部材の右側面図である。図11は、図8におけるD-D断面図、図12は、図8におけるE-E断面図である。
【0044】
固定用部材40は、端子ボックス10の各部材をボックス本体11の内部に組み付けるために用いられる部材である。固定用部材40には、左右の両端部に上述したケーブル導入用の突出部41および凹部42が設けられ、上面に上述した端子板16の位置決め用の凹部44が設けられている。凹部44は、平面視で、各端子板16を載置可能な形状になっている。この凹部44には、上述した端子板16の固定用突起45が複数(端子板16と同数)形成されている。また、凹部44に繋がるように、上述したバイパス用ダイオード20の位置決め用の開口47が複数(バイパス用ダイオード20と同数)形成されている。位置決め用の開口47は、バイパス用ダイオード20のダイオード本体部21がちょうど収まる形状、大きさに形成されている。
【0045】
また、固定用部材40には、左右方向に延びる段差48が形成されている。段差48は、上述した放熱用部材30の段差34に対応する位置に設けられており、段差48,34の高さは同じになっている。この段差48を境に、固定用部材40の前部40aが後部40bに比べて若干だけ下方にずれた位置に設けられている。そして、固定用部材40の前部40aの下面が後部40bの下面に比べて、段差48の高さ分だけ下方に突出している。
【0046】
ここで、端子ボックス10の各部材のボックス本体11への組み付けについて説明する。なお、図13?図15には、ボックス本体11内に配置される固定用部材、バイパス用ダイオード、および、放熱用部材を示している。
【0047】
まず、3つの放熱用部材30,30,30をボックス本体11の底面上にそれぞれ配置する。このとき、各放熱用部材30のフィン部32がボックス本体11の位置決め用の凹部15内に位置するように、各放熱用部材30の位置決めを行う。また、このとき、バイパス用ダイオード20固定用の各ナット25を凹部15内の適宜箇所に予め配置しておく。
【0048】
次に、固定用部材40を3つの放熱用部材30,30,30の上側に被せる。このとき、固定用部材40の段差48を各放熱用部材30の基部31の段差34に接触させて、固定用部材40の位置決めを行う。段差34,48による位置決めにより、固定用部材40の配置を容易に行うことが可能になる。この状態では、放熱用部材30の基部31の前部31aの上面と、固定用部材40の前部40aの下面とが接するとともに、放熱用部材30の基部31の後部31bの上面と、固定用部材40の後部40bの下面とが接している。そして、超音波溶着により固定用部材40をボックス本体11に固定する。
【0049】
次に、4つの端子板16,16,・・・固定用部材40の上にそれぞれ配置する。このとき、各端子板16の取付孔16eに固定用部材40の固定用突起45を挿入し、固定用部材40の固定用突起45によって各端子板16の位置決めを行う。そして、固定用突起45の頂部に固定用金具46を取り付けて、各端子板16を固定用部材40に固定する。
【0050】
次に、3つのバイパス用ダイオード20,20,20を放熱用部材30の上に配置する。このとき、各バイパス用ダイオード20のダイオード本体部21を固定用部材40の開口47に嵌め込んで、バイパス用ダイオード20の位置決めを行う。固定用部材40の開口47の内壁による位置決めにより、各バイパス用ダイオード20の配置を容易に行うことができる。そして、各バイパス用ダイオード20の取付孔23および放熱用部材30の取付孔33にネジ24を挿入し、そのネジ24を予め配置しておいたナット25に締め付け、各バイパス用ダイオード20を放熱用部材30に固定する。
【0051】
次に、半田付けにより各バイパス用ダイオード20のリード線22を端子板16のダイオード接続部16bに接続する。この状態では、バイパス用ダイオード20のリード線22と放熱用部材30の基部31との間に、固定用部材40の底壁部分49が介在されており、リード線22と端子板16とが接触しないようになっている。この場合、固定用部材40の底壁部分49は、段差48よりも前方の前部40aに設けられる部分であり、開口47の直前方に位置する部分となっている。上述したように、放熱用部材30の基部31の前部31aの上面が後部31bの上面に比べて下方に窪んでいるので、その窪んだスペースを利用して、固定用部材40の底壁部分49を配置するようにしている。これにより、バイパス用ダイオード20のリード線22,22と放熱用部材30の基部31との間に、固定用部材40の底壁部分49が挟まれて配置されることになり、バイパス用ダイオード20と放熱用部材30との絶縁を確実に確保することができる。」

(2)引用発明

前記(1)ア及びウによれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。

「ボックス本体内に複数の端子板が備えられ、これら複数の端子板のうち互いに隣り合う一対の端子板間にバイパス用ダイオードが配設される太陽電池モジュール用端子ボックスにおいて、
前記ボックス本体内には、前記バイパス用ダイオードのダイオード本体部から延びるリード線および前記端子板との絶縁を確保した状態で金属製の放熱用部材が設けられており、
前記放熱用部材には、所定の間隔をあけて設けられる多数のフィンが一体的に形成され、
端子ボックス10のボックス本体11は、例えば、変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)やABS(アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン)のような耐候性、電気絶縁性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性といった特性を有する合成樹脂等により箱形に成形され、
各端子板16の一端部16aには、太陽電池モジュール側の出力端が半田付けにより接続され、
4つの端子板16,16,・・・のうちで、左右両端寄りの各端子板16,16には、接続ケーブル18,18の一端がそれぞれ接続され、接続ケーブル18,18は、ケーブル導入用開口43,43からボックス本体11内部へそれぞれ導入されて、端子板16,16のケーブル接続部16c,16cにそれぞれ接続され、接続ケーブル18は、その他端側に接続されるコネクタ等を介して、他の太陽電池モジュールに装着された端子ボックスの接続ケーブル等と互いに連結可能となっている太陽電池モジュール用端子ボックス。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明において、「各端子板16の一端部16aには、太陽電池モジュール側の出力端が半田付けにより接続され」、「4つの端子板16,16,・・・のうちで、左右両端寄りの各端子板16,16には、接続ケーブル18,18の一端がそれぞれ接続され、接続ケーブル18,18は、ケーブル導入用開口43,43からボックス本体11内部へそれぞれ導入されて、端子板16,16のケーブル接続部16c,16cにそれぞれ接続され、接続ケーブル18は、その他端側に接続されるコネクタ等を介して、他の太陽電池モジュールに装着された端子ボックスの接続ケーブル等と互いに連結可能となっている」ことに照らせば、引用発明の「太陽電池モジュール用端子ボックス」は、「太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールに接続するためのケーブルと、を少なくとも中継する太陽光発電モジュール用接続構造体」であるといえ、この点で本願補正発明と一致する。

イ 引用発明において、「端子ボックス10のボックス本体11は、例えば、変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)やABS(アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン)のような耐候性、電気絶縁性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性といった特性を有する合成樹脂等により箱形に成形され」ているものである。変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルを主成分とする熱可塑性樹脂組成物であることに照らせば、引用発明のうち、ボックス本体11が、変性ポリフェニレンエーテルにより成形されているものは、「熱可塑性樹脂組成物を含み」、「前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリフェニレンサルファイドよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む」ものといえ、この点で、本願補正発明と一致する。

ウ したがって、両者は、

「太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールに接続するためのケーブルと、を少なくとも中継する太陽光発電モジュール用接続構造体であって、
熱可塑性樹脂組成物を含み、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリフニレンサルファイドよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、太陽光発電モジュール用接続構造体。」

である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

「本願補正発明の熱可塑性樹脂組成物は、長期耐熱性の指数として、厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度(RTI:Relative thermal index)が115℃以上であり、かつ、-40℃におけるシャルピー衝撃強度が6.5kJ/m^(2)以上であるのに対して、引用発明の熱可塑性樹脂組成物は、そのような定格温度及びシャルピー衝撃強度を有するものであるか不明な点。」(以下、「相違点」という。)

(4)判断

ア 相違点について検討するに、引用発明は、「端子ボックス10のボックス本体11は、例えば、変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)やABS(アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン)のような耐候性、電気絶縁性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性といった特性を有する合成樹脂等により箱形に成形され」ていることに照らせば、「端子ボックス10のボックス本体11」を形成する材料が、上記特性について優れたものであることが望ましいことは明らかであって、具体的にどのような条件や指標に基づいて、どの程度の特性を有するものとするかは、当業者が設計上の必要に応じて適宜定める事項である。

イ そして、本願明細書の記載を見ても、本願補正発明において特定される厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度及び-40℃におけるシャルピー衝撃強度の範囲内と範囲外とで当業者が予測困難なほどの作用、効果の差異が生じるものと認めることはできず、相違点のように厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度及び-40℃におけるシャルピー衝撃強度の範囲が特定された点に格別の臨界的な意義があるものとは認められない。
本願補正発明における「長期耐熱性の指数として、厚み1.5mmにおける引張衝撃強度の定格温度(RTI:Relative thermal index)が115℃以上であり、かつ、-40℃におけるシャルピー衝撃強度が6.5kJ/m^(2)以上である」との特定は、太陽光発電モジュール用接続構造体に求められる特性を有すると評価できる長期耐熱性及び低温条件下での衝撃強度について、特定の評価方法及び測定方法に基づく数値として定めたものと解されるのであって、設計事項の域を超えるものということはできない。

ウ 請求人は、回答書において、
「本願発明は、少なくとも上記した特定の熱可塑性樹脂組成物を用いることで、従来に比して薄肉小型でありながら、耐熱性や耐低温衝撃性に優れる太陽光発電モジュール用接続構造体を実現することができます。その結果、太陽光発電モジュール用接続構造体の意匠性の向上や省スペース化等も可能となります。本願発明が達成し得る薄肉小型の程度とは、例えば、平均肉厚3mm以下という程度であり、これは従来技術では成し得なかった薄さであり大幅な改善です。(例えば、本願明細書段落0014及び請求項2ご参照)。上述したように、従来の端子ボックスでは、少なくとも放熱性を改良するために金属製の部材等を用いる必要があり(例えば、引用発明1ご参照)、このような金属製の部材があるために、十分に薄肉・小型な端子ボックスを実現できませんでした。しかし、本願発明では、例えば、平均肉厚3mm以下という程度まで薄肉化することができ、これは従来技術では成し得なかった薄さであり大幅な改善です。」
と主張するが、上記アのとおり、「端子ボックス10のボックス本体11」を形成する材料について、具体的にどのような条件や指標に基づいて、どの程度の特性を有するものとするかは、当業者が設計上の必要に応じて適宜定める事項であるし、本願補正発明は、「薄肉小型」であることを構成要件としないものであるところ、仮に、「薄肉小型」であることを構成要件とするものであったとしても、耐熱性や耐低温衝撃性に優れる材料を用いれば、「薄肉小型」であるものも、耐熱性や耐低温衝撃性に優れることは自明であるから、本願補正発明において奏される効果が、引用発明から予測し得る以上の格別顕著なものとも認められない。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというほかはない。

(5)小括

以上のとおり、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび

以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年9月7日になされた手続補正後の特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1において、補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明

前記第2[理由]3(1)及び(2)のとおりである。

3 対比及び判断

前記第2[理由]3(3)アないしウでの検討に照らして、本願発明と引用発明とは、同ウの相違点と同様の点で相違し、その余の点において一致するものと認められる。
そして、前記第2[理由]3(4)で検討したとおり、引用発明において、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が設計上適宜定めうる事項であるから、同様の理由により、引用発明において、同相違点に係る本願発明の構成とすることも、当業者が設計上適宜定めうる事項である。

よって、本願発明も、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-18 
結審通知日 2012-04-19 
審決日 2012-05-07 
出願番号 特願2009-243490(P2009-243490)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 北川 創
江成 克己
発明の名称 太陽光発電モジュール用接続構造体  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ