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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1259016 |
審判番号 | 不服2009-6290 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-24 |
確定日 | 2012-06-20 |
事件の表示 | 特願2003-552923「EGVIIIエンドグルカナーゼ及びそれをエンコードする核酸」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月26日国際公開、WO03/52056、平成17年 5月12日国内公表、特表2005-512536〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年10月30日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月18日 米国)とする出願であって、平成20年8月26日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたが、同年12月16日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年3月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月23日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。 2.平成21年4月23日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年4月23日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 上記補正により特許請求の範囲の請求項1は、補正前の 「以下からなる群より選択される単離ポリヌクレオチド: (a)図2又は配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (b)図2又は配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (c)図2又は配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (d)図2で表すアミノ酸配列を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (e)配列番号2として表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (f)配列番号2として表すアミノ酸配列を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (g)配列番号4として表す核酸配列またはその相補的配列;及び (h)高ストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする核酸配列またはその相補的または断片配列であり、前記単離ポリヌクレオチドがエンドグルカナーゼの生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードするもの。」から 「以下からなる群より選択される単離ポリヌクレオチド: (a)配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (b)配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (c)配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (d)配列番号2及び配列番号3で表すアミノ酸配列を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (e)配列番号2として表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (f)配列番号2として表すアミノ酸配列を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (g)配列番号4として表す核酸配列またはその相補的配列;及び (h)低又は中程度のストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする核酸配列またはその相補的または断片配列であり、前記単離ポリヌクレオチドがエンドグルカナーゼの生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードするもの。」へと補正された。 上記補正は(h)に関して、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「高ストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする」を「低又は中程度のストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする」と補正するものであるが、「低又は中程度のストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする」核酸配列は、補正前の「高ストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする」核酸配列と比較して相同性の低いより広い範囲の核酸配列まで含むこととなり、特許請求の範囲を拡大するものである。かかる補正が不明瞭な記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものとも認められない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (3-1)本願発明 平成21年4月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」)は、平成20年8月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】以下からなる群より選択される単離ポリヌクレオチド: (a)図2又は配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (b)図2又は配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (c)図2又は配列番号2で表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (d)図2で表すアミノ酸配列を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (e)配列番号2として表すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (f)配列番号2として表すアミノ酸配列を有するEGVIIIポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列; (g)配列番号4として表す核酸配列またはその相補的配列;及び (h)高ストリンジェンシーな条件下で配列番号4として表す配列にハイブリダイズする核酸配列またはその相補的または断片配列であり、前記単離ポリヌクレオチドがエンドグルカナーゼの生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードするもの。」 本願請求項1に記載された発明は、(a)から(h)の選択肢により択一的に記載されたものであり、そのうち選択肢(e)で特定される発明(以下、「本願発明」という。)は、エンドグルカナーゼ活性を有し、及び配列番号2として表すアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードする核酸配列または相補的な核酸配列を含む単離ポリヌクレオチドに係るものである。 (3-2)本願明細書の記載 これに対して、本願の発明の詳細な説明では、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能について、エンドグルカナーゼであると記載されているが、当該ポリペプチドを実際に発現して当該ポリペプチドのエンドグルカナーゼ活性を確認した実施例等の具体例は記載されていない。 また、その機能に関連する記載として、本願明細書には「重複のないタンパク質データベースの基本的なBLASTPサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)は2001年9月12日に実施され、EGVIIIアミノ酸配列はGenBank登録番号AB021657(トリコデルマ・ビリディのエンドグルカナーゼII)と52%の配列同一性を示し、GenBank登録番号M19373(トリコデルマreeseiのエンドグルカナーゼEG-II前駆体)と51%の配列同一性、GenBank登録番号X89564(Penicillium janthinellumのエンドグルカナーゼ2)と50%の配列同一性、及びGenBank登録番号U13914(Macrophomina phaseolinaのエンド-β-1,4-グルカナーゼ)と52%の配列同一性を示す。これらの配列類似性はEGVIIIがグリコシルヒドロラーゼ属5の一種であることを示す(Henrissat,B.and Bairoch,A.(1993)Biochem.J.293:781-788)。」(段落【0111】)と記載されている。 (3-3)判断 本願発明が明細書のサポート要件を満足するためには、本願の発明の詳細な説明に、本願発明のポリペプチドがエンドグルカナーゼ活性を有することを当業者が理解できるように記載されているか、または、その記載がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らしてエンドグルカナーゼ活性を有すると認識できる範囲のものでなければならない。 上記(3-2)には、他の酵素とのアミノ酸配列の同一性から配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドがグリコシルヒドラーゼ属5に属するとされている。しかし、グリコシルヒドラーゼのアミノ酸配列の類似性による構造に着目した分類においては、例えば、段落【0111】において言及されている文献(Henrissat,B.and Bairoch,A.(1993)Biochem.J.293:781-788)において「52の酵素に相当する482配列の比較に基づいて、45ファミリーが現在定義可能であり、そのうちの22は多特異性である。」(同文献 第781頁要約右欄第4行?第6行)とされており、具体的には、例えば、グリコシドヒドラーゼ属5には酵素番号3.2.1.4(セルラーゼ)、3.2.1.58(グルカン-1,3-ベータグルコシダーゼ)及び3.2.1.74(グルカン-1,4-ベータグルコシダーゼ)で表される3つの異なる機能を有するグリコシドヒドラーゼが含まれる(同文献第782頁表1)ように、構造に着目した当該分類においては、同じ属に属する酵素であっても、機能による分類である酵素番号が異なる、つまりは、異なる触媒活性を有する場合があることは本願出願時の技術常識である。また、発明者等の本願出願後の文献(J.Biol.Chem,278(34),p.31988-31997)にもグリコヒドラーゼファミリー属5にはエンド-1,4-グルカナーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼの異なる酵素が属することが記載されている(p.31991 表1)。よって、(3-2)のように、アミノ酸配列の同一性から、グリコシドヒドラーゼ属5に属すると構造に着目した分類が同定されたとしても、そのことをもって当該酵素がエンドグルカナーゼ活性を有することを高い蓋然性をもって示したことにはならない。 そうすると、上記(3-2)に記載のように、エンドグルカナーゼ活性を実験等により具体的に確認した例のない本願の発明の詳細な説明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドがエンドグルカナーゼ活性を有するとの単なる記載があるだけで、技術常識を考慮しても、本願発明のポリペプチドがエンドグルカナーゼ活性を有すると推認できるように裏付けをもって記載されているとはいえない。 以上により、本願の発明の詳細な説明には、本願発明のポリペプチドについて、技術常識を考慮しても、当業者がエンドグルカナーゼ活性を推認できるように裏付けをもって記載されているとはいえず、本願発明は本願の発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから、特許法36条6項1号の規定する要件を満たしていない。 (3-4)請求人の主張について (3-4-1)エンドグルカナーゼ活性に関するデータの提出 請求人は、審判請求書において、出願時の実験において集積したものであるとするエンドグルカナーゼ活性に係るデータを提出、当該データが示すように本願発明に係るEGVIIIは高いエンドグルカナーゼ活性を示す旨主張している。 しかし、上記(3-3)に記載のとおり、本願明細書の記載からは本願出願時の技術常識を参酌しても配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのエンドグルカナーゼ活性を推認できるとは認められないから、そのような後出しの上記データを参酌することはできず、請求人の上記主張は採用できない。 念のため、データを検討しても、本願発明のポリペプチドの有無のみの差である+5mg/G XYNと+5mg/G EG6におけるキシラン変換率の差が有意であったとしてもグルコースの遊離によって生じるグルカン変換率の向上のみをもってエンドグルカナーゼの基質特異性が示されているということはできないから、当該データが有意なエンドグルカナーゼを示すものであるということはできない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (3-4-2)活性があることが発明の詳細な説明で十分に明らかにされている旨の主張 請求人は「しかしながら、本願発明に係るegl8の核酸配列に基づく予想アミノ酸配列中には、成熟アミノ末端にシグナルペプチドが確認されており、EGVIIペプチドが分泌されていることは明らかであるものと思われます(明細書段落0111)。更に、明細書段落0111によれば、配列番号1のポリヌクレオチドに基づく配列番号2にポリペプチドの配列類似性は既知のエンドグルカナーゼに対して52乃至50%程度の配列類似性を有しているものであります。これらの配列類似性は必ずしも高い値ではございませんが、Henrissat,B.及びBairoch,A.によれば、グリコシルヒドロラーゼ属5の一種に分類されることが出願当時の当業者の技術常識であると思われます。更に、Henrissat,B.及びBairoch,A.には該文献に記載の方法によれば、酵素活性を知る前にタンパク質等の分類が可能であると記載されております(添付資料1:Henrissat,B.and Bairoch,A.,786頁、DISCUSSION参照)。これらのことを考慮すると、egl8の核酸配列がコードするポリペプチドに活性があることは発明の詳細な説明において充分に明らかであるものと思料いたします。」(回答書第2頁第6行?第20行) しかし、上記(3-3)のとおり、本願発明のポリペプチドが分泌ペプチドであり、かつ、グリコシルヒドラーゼ5属に属するとしても、それはあくまで構造上類似のものとしての分類を特定しただけであって、そのことのみをもってエンドグルカナーゼ活性を有することが高い蓋然性をもって示されているということはできない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 4.結論 以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については言及するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-17 |
結審通知日 | 2012-01-24 |
審決日 | 2012-02-07 |
出願番号 | 特願2003-552923(P2003-552923) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福間 信子 |
特許庁審判長 |
鈴木 恵理子 |
特許庁審判官 |
冨永 みどり 伏見 邦彦 |
発明の名称 | EGVIIIエンドグルカナーゼ及びそれをエンコードする核酸 |
代理人 | 山崎 行造 |