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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1259031
審判番号 不服2010-6263  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-23 
確定日 2012-06-20 
事件の表示 特願2003-559707「燃料電池または電気分解装置のための多孔性金属積層物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月24日国際公開、WO03/59556、平成17年11月4日国内公表、特表2005-533173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年1月15日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成21年3月30日付けで手続補正がされ、同年11月18日付けで拒絶査定がされた。
そして、この査定を不服として、平成22年3月23日に審判請求がされるとともに手続補正がされ、当審において、平成23年6月6日付けで前置報告書に基づく審尋をしたところ、同年10月19日付けで回答書が提出され、同年11月9日付けで補正の却下の決定がされるとともに、再度審尋をしたところ、平成24年1月11日付けで回答書が提出されたものである。

第2 原査定の理由についての検討
I.本願発明
本願の平成22年3月23日付けの手続補正は、平成23年11月9日付けの補正の却下の決定のとおり、却下されることとなる。
したがって、その発明は、平成21年3月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次に示すとおりのものである。

「不透過性金属構造物と、少なくとも1つの第1の金属繊維層と、少なくとも1つの第2の金属繊維層を含む積層物であって、前記不透過性金属構造物は、前記第1の金属繊維層の一方の側に焼結され、前記第2の金属繊維層は前記第1の金属繊維層の他方の側に焼結され、
前記積層物の金属繊維層を層の平面に平行な方向に通過する気体の量を意味し、前記積層物の長方形の平面の短辺と長辺を2枚のシールの短辺と長辺と一致するように前記2枚のシールの間に固定し、穴を通じて前記長方形の長辺から空気を吸引し、その吸引流量を測定することによって測定される平面空気透過性が0.02 l/min・cmより大きく、
前記長方形の長辺の長さが5cmであり、前記長方形の短辺の長さが2.5cmであり、
前記第2の金属繊維層の多孔性が80%未満であり、前記第1の金属繊維層の多孔性が80%より大きいことを特徴とする積層物。」(以下、「本願発明」という。)

II.原査定の理由の概要
原審における本願発明に対する拒絶査定の理由の一部は、概略、以下のものと認められる。

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記ア及びイの点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


ア)クレームなどに記載された平面空気透過性「l/min*cm」、垂直方向の空気透過性「l/min*dm^(2)」はどのような定義によるものなのかが不明であり、どのようにして測定されるのかがクレーム中で明確に限定されていないので、不明瞭である。

イ)平面空気透過性を測定するときには、積層物の一つの長辺の一部分から吸引し、吸引している長辺の使用していない範囲を密封し、吸引している長辺以外の3つの辺は大気に開放されているようだが、吸引していない長辺からの空気の流れだけでなく、短辺からの空気の流れも存在するから、同じ積層物であっても測定するときの長辺の長さによってl/min*cmの値が変化すると考えられるし、また、同じ試料であっても測定するときの吸引する部分の面積(本願明細書において番号310で表示されている部分の面積)によってl/min*cmの値が変化すると考えられるから、クレームに記載された平面空気透過性の限定に含まれるのかどうかの境界が不明瞭である。(測定するときの吸引する部分の面積(本願明細書において番号310で表示されている部分の面積)は「径310」の大きさが同じであっても穴の形状によって変化するし、また、穴の形状が同じであっても穴の大きさによって単位長さ当りの透過量は変化しうると考えられる)

さらに、拒絶査定の備考欄には、以下のウに示す補足が記載されている。

ウ)補正後のクレームでは「前記積層物の金属繊維層を層の平面に平行な方向に通過する気体の量を意味し、前記積層物の長方形の平面の短辺と長辺を2枚のシールの短辺と長辺と一致するように前記2枚のシールの間に固定し、穴を通じて前記長方形の長辺から空気を吸引し、その吸引流量を測定することによって測定される平面空気透過性が0.02 l/min・cmより大きく、前記長方形の長辺の長さが5cmであり、前記長方形の短辺の長さが2.5cmであり、」と記載されているが、平面空気透過性の定義は依然として不明瞭である。

III.当審の判断
上述の原査定の理由は、本願発明の「平面空気透過性」の定義が不明であって、その技術的範囲が不明瞭であるから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとするものである。
確かに、上記ア及びウで指摘しているように、請求項1の記載のみでは、吸引圧力及び吸引する長辺の状態が特定されておらず、その技術的範囲が不明確であることは明らかであるから、本件明細書【0017】の記載を参照し、本願発明の「平面空気透過性」とは、(1)200Paの減圧を使用した吸引条件で、(2)吸引している長辺の使用していない部分を密封し、(3)吸引した空気の容量を吸引している長辺の部分(cm)で割ったものという条件を加味し、さらに請求人が平成24年1月11日付け回答書で述べているように、境界効果を避けるために、「長辺の中心に吸引口を設ける」条件を、本願発明の「平面空気透過性」の要件として認定する。
そうすると、本願発明の「平面空気透過性」とは、
「前記積層物の金属繊維層を層の平面に平行な方向に通過する気体の量を意味し、前記積層物の長方形の平面の短辺と長辺を2枚のシールの短辺と長辺と一致するように前記2枚のシールの間に固定し、穴を通じて前記長方形の長辺から空気を吸引し、その吸引流量を測定することによって測定されるものであり、
前記長方形の長辺の長さが5cmであり、前記長方形の短辺の長さが2.5cmであり、
前記穴である吸引口を長辺の中心に設け、200Paの減圧を使用して吸引を行い、吸引している長辺の使用していない部分を密封し、吸引した空気の容量を吸引している長辺の部分(cm)で割ったもの」
となる。
しかしながら、このように本願発明の「平面空気透過性」を認定しても、上記イの「穴の大きさによって単位長さ当りの透過量は変化しうる」との指摘は妥当であって(その理由の妥当性を説明するものとして示した、当審の平成23年11月9日付け審尋における「空気の流入口(吸引していない長辺と2つの短辺)と流出口(吸引している長辺で密閉していない部位)の距離及び相対位置が相似形状ではないことにより、それらの平面空気透過性は変化する」との指摘も技術的に矛盾がない。)、これは、請求人が平成24年1月11日付け回答書で認めているように、境界効果によって、同じ吸引口の大きさであっても、空気の吸引流量は、その配置場所が長辺の中心部と端部では異なることに起因するものである。
すなわち、吸引口を中心に配置した場合でも、「吸引口の大きさ」と「空気の吸引流量」が比例関係にはなく、「平面空気透過性」の測定において、吸引口が任意の大きさを取りうるものであって、「単位長さ当りの吸引流量」は同一積層物でも変化しうるものであるから、本願発明の「平面空気透過性」の定義は不明確であって、その対象とする技術範囲を特定することはできない。また、明細書には、積層体の「平面空気透過性」を具体的に測定した際の吸引口の大きさに関する記載はないから、本願発明の「平面空気透過性」の定義に関し、具体的な吸引口の大きさを参酌することもできない。
したがって、本願発明は、明細書の内容を参酌しても、「平面空気透過性」の技術的範囲は不明瞭である。

なお、請求人は、本願発明の「平面空気透過性」の定義が不明確であるという前審及び当審の指摘に対して、再三にわたる釈明の機会があったにもかかわらず、実験結果を示す等、具体的、合理的理由に基づく釈明をしていない。

第3 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願発明は特許を受けることができないものであるから、請求項2?18に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-25 
結審通知日 2012-01-27 
審決日 2012-02-08 
出願番号 特願2003-559707(P2003-559707)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 野田 定文
山田 靖
発明の名称 燃料電池または電気分解装置のための多孔性金属積層物  
代理人 松島 鉄男  
代理人 河村 英文  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
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