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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63H
管理番号 1259048
審判番号 不服2010-26856  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-29 
確定日 2012-06-20 
事件の表示 特願2006-549231「アニマトロニクス・フィギュアの現実的な動作を生成する計算環境」拒絶査定不服審判事件〔平成17年8月4日国際公開,WO2005/069755,平成19年7月5日国内公表,特表2007-517585〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成16年8月12日(パリ条約による優先権主張:平成16年1月14日,米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成22年7月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。
その後,当審にて平成23年9月29日付けで拒絶理由通知を行ったところ,同年12月28日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けの手続補正書により特許請求の範囲,明細書及び図面の補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は,平成23年12月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める(下線は,補正前の請求項1の記載からの変更箇所について,当審にて付与)。

「オペレータが操作する機器から、アニマトロニクス・フィギュアの固定した動きでショーを構成する固定ショーの動作を制御するための少なくとも1つの固定ショー命令に関連する固定ショー選択入力と、アニマトロニクス・フィギュアの少なくとも1つの構成要素の動作を該固定ショーの動作とは別に制御するための人形操作命令を示す人形操作入力とを受信する受信モジュールと;
アニマトロニクス・フィギュアと;
前記固定ショー選択入力に関連する前記少なくとも1つの固定ショー命令を、少なくとも1つの固定ショーの物理的動作命令に変換し、前記受信した人形操作命令を少なくとも1つの人形操作用の物理的動作命令に変換する変換ソフトウェアモジュールと;
前記少なくとも1つの固定ショーの物理的動作命令を受信し、前記少なくとも1つの人形操作用の物理的動作命令を受信し、前記少なくとも1つの固定ショーの物理的動作命令及び前記少なくとも1つの人形操作用の物理的動作命令から合成動作命令を計算し、該合成動作命令を該アニマトロニクス・フィギュアに与えることにより、少なくとも1つのアクチュエータが前記アニマトロニクス・フィギュアの少なくとも1つの構成要素を動作させることができる動作ソフトウェアモジュールと
を具え、
前記動作ソフトウェアモジュールは、前記合成動作命令を前記アニマトロニクス・フィギュアに与えることによって行われる前記アニマトロニクス・フィギュアの合成動作がクリップされて、前記合成動作の距離、速度、加速度の値が低減されて所定限界内に入るように、前記合成動作命令を計算する
ことを特徴とするアニマトロニクスシステム。」

ここで,上記請求項1の記載中の「クリップされ」との用語は,制御工学における一般的技術用語でないが,当該用語に関連して,本願明細書の段落【0058】に,「…クリップ(制限)する。クリッピング(動作制限)とは、所定限界内に入るように値を低減することを称する。」との定義があることから,当該用語は,ある物理量について,請求項1に記載されるところの「値が低減されて所定限界内に入るように」することを意味するものとして認定した。

3.引用例
当審による拒絶の理由に引用した本願優先日前に頒布された刊行物である
特開平10-137439号公報(以下,「引用例」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,特に参照すべき記載について当審にて付与)。

(a)「【0002】
【発明の属する技術分野】本発明はロボツト装置に関し、例えば人間又はコンピユータ装置との対戦型でなるゲームシステムで用いられるロボツト装置に適用して好適なものである。」

(b)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで上述したシユーテイング型のゲームシステムでは、第3のタイプのように標的としてロボツトを用いることで、プレーヤ側で与えられる効果に加えて、攻撃が標的に命中した際にロボツトが倒れたり、爆発音を発したりするという標的側で表現し得る効果を実現することができる。しかし、ロボツトの動きそのものとしては単純な動作しか表現し得ず、プレーヤに表現し得る効果としてさほど現実感を有するものでは無いという問題があつた。
【0008】…
【0009】本発明は以上の点を考慮してなされたもので、攻撃、被弾及び損傷による効果を表す動きを模倣して、より現実的に効果表現し得るロボツト装置を提案しようとするものである。」

(c)「【0020】(1-1-2)外部からの信号により制御する場合の構成
図1との対応部分に同一符号を付して示す図2において、20は全体としてロボツト装置の全体構成を示し、ゲームを行うユーザ(以下、これをプレーヤと呼ぶ)から与えられる指示命令に従つて移動、攻撃等の行動を実行する。ロボツト装置20はロボツト装置1(図1)とほぼ同様の構成でなると共に、自律行動処理部2に換えてインターフエイス21を配してなり、プレーヤがリモコン22を操作して指示入力する指示命令を無線又は有線の伝送路を介して入力する。
【0021】リモコン22はプレーヤの操作により指示入力がなされた所望の行動に応じた指示命令信号S14を、所定の伝送路を介してロボツト装置20に送信する。ロボツト装置20は受信した指示命令信号S14をインターフエイス21に入力する。インターフエイス21は指示命令信号S14により示される行動内容に応じて、当該指示命令信号S14を運動制御部9又は武器制御部10に供給する。すなわち指示命令信号S14による行動が移動等の動作指示を示すものである場合、インターフエイス21は指示命令信号S14を動作命令信号S7として運動制御部9に供給する。また指示命令信号S14による行動が対戦相手に対する攻撃指示を示すものである場合、インターフエイス21は指示命令信号S14を攻撃命令信号S8として武器制御部10に供給する。なお、運動制御部9及び武器制御部10共に、指示命令が与えられた後の処理はロボツト装置1と同様になされる。
【0022】またロボツト装置20は、周囲及び自己の状態をインターフエイス21から所定の伝送路を介してリモコン22に送信してプレーヤに通知するようになされている。すなわちロボツト装置20は、視覚情報信号S2及びセンサ信号S6による周囲及び自己の状態を表す情報、及び視覚情報信号S2及び音声情報信号S3による対戦相手の位置を表す情報、及び被弾信号S13による対戦相手の攻撃が命中した場合の被害状況を表す情報をインターフエイス21で取りまとめ、情報信号S15としてリモコン22に送信する。リモコン22は情報信号S15を受信して、予めリモコン22に設けられているモニタやスピーカ(図示せず)に出力することにより、上述した各情報をプレーヤに通知する。なおロボツト装置20は被弾信号S13がインターフエイス21に与えられた場合、ROMに予め記憶されている爆発音等の効果音の音声データS5を読み出して音声処理部6に供給し、所定の音声処理を施した後でスピーカ7から音声出力する。」

(d)「【0023】(1-2)運動制御部の基本構成
図3(A)において、9は基本構成による運動制御部を示し、自律行動処理部2(図1)や、インターフエイス21(図2)を介してプレーヤから与えられる動作命令信号S7に応じて、実際に関節部等を駆動する駆動制御手段である。運動制御部9は姿勢センサ8から与えられるセンサ信号S6をコントロール部23に入力すると共に、自律行動処理部2又はインターフエイス21に供給している(図1及び図2)。ここで姿勢センサ8は方位角センサや上下方向センサからなり、ロボツト装置1又は20の姿勢状態を検出して得られる姿勢情報をセンサ信号S6として送出している。また運動制御部9は自律行動処理部2又はインターフエイス21から与えられる動作命令信号S7をコントロール部23に入力する。
【0024】コントロール部23は動作命令信号S7及びセンサ信号S6に基づき、各関節がとるべき角度を決定する。コントロール部23は決定した目標の関節角度を示す角度指示信号S16を、実際に駆動させる関節部に設けられたサーボ部24に供給する。サーボ部24は角度指示信号S16を入力すると共に、現状の関節部の角度をセンサ12から供給されるセンサ信号S10によつて検出する。サーボ部24はセンサ信号S10に基づき、角度指示信号S16で示される角度に関節部を駆動するための電流値を算出し、得られた電流値でなる制御信号S9をアクチユエータ11に供給して関節部を駆動する。ここでサーボ部24にはサーボの感度や時定数等を決定する制御パラメータS17が設定されている。具体的に制御パラメータS17はメモリ等に記憶されており、サーボ部24に角度指示信号S16が与えられた際に当該メモリから読み出される。サーボ部24はこうして読み出される制御パラメータS17を用いて上述の電流値を算出する。」

(e)「【0025】…因みにここでは説明のために脚部を1つだけ示し、当該脚部の関節部を駆動するアクチユエータ11、センサ12及びサーボ部24を示したが、通常ロボツト装置1及び20には複数の関節部が設けられており、その数だけアクチユエータ11、センサ12及びサーボ部24の組も存在するようになされている。」

(f)「【0026】なお図3(B)及び(C)に、後述する説明の便宜のためにロボツト装置1及び20の入力系及び出力系を具体的に示す。図3(B)はロボツト装置1及び20の出力系を示し、対戦相手のロボツト装置に対する攻撃行動を実行する系である。ロボツト装置1及び20は自律行動処理部2又はインターフエイス21から送出する攻撃命令信号S8を武器制御部10に入力する。武器制御部10は武器13に制御信号S11を送出し、制御信号S11を受けた武器13は赤外線や超音波等でなる発射信号を出射する。また図3(C)はロボツト装置1及び20の入力系を示し、対戦相手からの攻撃を検出する系である。ロボツト装置1及び20は対戦相手の攻撃により入射される赤外線や超音波等でなる発射信号をセンサ14により検出して、命中判定部15にセンサ信号S12を供給する。命中判定部15はセンサ信号S12に基づいて攻撃が命中したか否かを判定すると共に、命中した場合に命中した部位がどこであるかや命中した攻撃に用いられた武器の種類等を判別し、これらの判定結果を表す被弾信号S13を生成して自律行動処理部2(図1)又はインターフエイス21(図2)に送出する。」

(g)「【0027】(1-3)第1実施例による運動制御部の構成
図3との対応部分に同一符号を付して示す図4において、25は運動制御部を示し、上述したロボツト装置1(図1)に配されている。可動部を駆動制御する制御手段である運動制御部25は基本構成でなる運動制御部9(図3)にパターン切換え部26、発射反動パターンメモリ27及び被弾衝撃パターンメモリ28を追加した構成でなり、自律行動処理部2(図1)から与えられる動作命令信号S7をコントロール部23に入力すると共に、姿勢情報を表すセンサ信号S6をコントロール部23に入力する。コントロール部23は動作命令信号S7及びセンサ信号S6に基づき、各関節がとるべき角度を決定する。コントロール部23は決定した関節角度を示す角度指示信号S16をパターン切換え部26に送出する。なお、コントロール部23は与えられたセンサ信号S6を自律行動処理部2に供給している。
【0028】…
【0029】一方、自律行動処理部2から攻撃命令信号S8を与えられた武器制御部10は攻撃制御手段であり、攻撃手段である武器13に供給する制御信号S11をパターン切換え部26及び発射反動パターンメモリ27に供給する。具体的に武器制御部10は攻撃命令信号S8を与えられた場合、武器13に制御信号S11を送出して武器13から赤外線や超音波でなる信号を出射させると共に、パターン切換え部26及び発射反動パターンメモリ27に制御信号S11を供給して、パターン切換え部26に配されているスイツチをオン状態に切り換えると共に発射反動パターンメモリ27に予め記憶されたデータを読み出させる。ここで発射反動パターンメモリ27に記憶されているデータは、武器を発射した際の反動によつて生じるであろうロボツト装置1の動きを模倣する運動パターンである。なお、パターン切換え部26は発射反動パターンメモリ27からのデータの読み出しが完了すると、スイツチをオフ状態に戻す。
【0030】パターン切換え部26は、ロボツト装置1が攻撃を行つた場合、制御信号S11を読出し信号として発射反動パターンメモリ27から読み出されるデータを入力すると共に、当該制御信号S11によつてオン状態となつたスイツチを介して加算部に供給することにより、入力したデータを角度指示信号S16に加算してサーボ部24に送出する。サーボ部24は、こうして発射反動パターンメモリ27から読み出されたデータを加算した角度指示信号S16に応じてアクチユエータ11に供給する電流値を算出して送出することにより、武器を発射した際の反動により生じる動きを模倣してアクチユエータ11を駆動する。」

(h)「【0033】以上の構成において、攻撃命令信号S8を武器制御部10に供給して武器13による攻撃を行つた場合、武器制御部10から送出する制御信号S11が運動制御部25に入力される。制御信号S11は運動制御部25に配されたパターン切換え部26及び発射反動パターンメモリ27に与えられる。制御信号S11は発射反動パターンメモリ27の読み出し信号として用いられ、発射反動パターンメモリ27からは武器の発射時に生じるであろう運動パターンのデータが読み出される。読み出されたデータはパターン切換え部26のスイツチに入力される。ここで当該スイツチは制御信号S11によつてオン状態に切り換えられており、発射反動パターンメモリ27から読み出されたデータはスイツチを介して加算部に与えられる。
【0034】パターン切換え部26の加算部にはコントロール部23から動作命令信号S7に応じて送出される角度指示信号S16が入力されており、角度指示信号S16は加算部によつて発射反動パターンメモリ27から読み出されたデータと加算されてサーボ部24に与えられる。サーボ部24は、こうして発射反動パターンメモリ27から読み出されたデータを加算した角度指示信号S16に応じて、制御パラメータS17を用いてアクチユエータ11に供給する電流値を算出して送出することにより、武器を発射した際の反動により生じる動きを模倣してアクチユエータ11を駆動する。」

(i)「【0037】このようにロボツト装置1は、武器発射時の反動で生じる運動パターンを記憶した発射反動パターンメモリ27及び、被弾した際の衝撃により生じる運動パターンを記憶した被弾衝撃パターンメモリ28を配した運動制御部25を設け、制御信号S11及び被弾信号S13を読み出し信号として用いて、発射反動パターンメモリ27又は被弾衝撃パターンメモリ28から武器の発射時又は被弾時の運動パターンを読み出すと共に、制御信号S11又は被弾信号S13によつてパターン切換え部26のスイツチをオン状態に切り換えて上述の運動パターンを加算部に与えて、コントロール部23から送出する角度指示信号S16と加算してサーボ部24に供給するようにした。
【0038】これによりロボツト装置1は、武器発射時の反動や被弾時の衝撃、また被弾によるダメージを模倣した動きを行つてこれらの効果を擬似的に表現することができ、従来のような音響や画像のみの効果表現に比して、より現実的な効果表現を実現することができる。こうした武器発射時の反動や被弾時の衝撃、また被弾によるダメージを模倣した動きは発射反動パターンメモリ27及び被弾衝撃パターンメモリ28に予め記憶されたデータに基づいてなされるため、記憶しておくデータを変更することにより自由に設定を変更し得る。」

(j)「【0078】サーボ部24は角度指示信号S16を入力すると共に現状の関節部の角度をセンサ12(図3)から供給されるセンサ信号S10によつて検出する。サーボ部24はセンサ信号S10に基づき、角度指示信号S16で示される角度及び駆動速度で関節部を駆動するための電流値を算出し、得られた電流値でなる制御信号S9をアクチユエータ11に供給して関節部を駆動する。ここでサーボ部24にはメモリ61から制御パラメータS17が供給されており、サーボの感度や時定数等を決定するために、駆動部の機械的特性に応じた係数として設定されている。サーボ部24はこの係数を用いて上述の電流値を算出することにより、関節部の駆動が滑らかになるように制御している。」

(k)「【0084】(6)他の実施例
なお上述の第1?第5実施例においては、自律行動処理部2(図1)により自律的に行動を決定するロボツト装置1に運動制御部25、30、40、50又は60を設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、外部から与えられる指示命令に従つて行動を実行するロボツト装置20(図2)に適用してもよい。」

これらの記載事項及び図示内容(特に,【図2】?【図4】)を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プレーヤが操作するリモコン22から,ロボツトの運動パターンで武器13を発射した際の反動によって生じるであろう動きを模倣するための攻撃命令信号S8に関連する攻撃指示と,ロボツトの少なくとも1つの関節部の動作を前記反動によって生じるであろう動きとは別に制御するための動作命令信号S7を示す動作指示とを受信するインターフエイス21と;
ロボツトと;
前記攻撃指示に関連する攻撃命令信号S8を反動によって生じるであろう動きの運動パターンのデータに変換する武器制御部10及び発射反動パターンメモリ27と,前記動作命令信号S7を関節角度を示す角度指示信号S16に変換するコントロール部23と;
前記運動パターンのデータ及び角度指示信号S16を受信し,角度指示信号S16に運動パターンのデータを加算するパターン切換え部26と,該加算した信号に応じてロボツトの少なくとも1つのアクチュエータ11に供給する電流値を算出して送出し,少なくとも1つの関節部を動作させるサーボ部24と
を具えているロボツト装置20。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「プレーヤ」は本願発明の「オペレータ」に相当し,以下同様に,「プレーヤが操作するリモコン22」は,「オペレータが操作する機器」に相当する。
また,本願発明の「アニマトロニクス・フィギュア」は,通常,本願明細書の段落【0001】に記載されるように「ロボティクス・フィギュア」に分類されるものであるから,引用発明の「ロボツト」及び「ロボツト装置20」と,本願発明の「アニマトロニクス・フィギュア」及び「アニマトロニクスシステム」とは,それぞれ「ロボット」及び「ロボットシステム」である点で共通する。
さらに,引用発明の「運動パターン」は,本願発明の「固定した動き」に相当し,以下同様に,
・「反動によって生じるであろう動き」は,「固定ショー」に,
・「武器13を発射した際の反動によって生じるであろう動き」は,「ショーを構成する固定ショーの動作」に,
・「動きを模倣する」は,「動作を制御する」に,
・「攻撃命令信号S8」は,「固定ショー命令」に,
・「攻撃指示」は,「固定ショー選択入力」に,
・「関節部」は,「構成要素」に,
・「動作命令信号S7」は,「人形操作命令」に,
・「動作指示」は,「人形操作入力」に,
・「インターフエイス21」は,「受信モジュール」に,
・「運動パターンのデータ」は,「固定ショーの物理的動作命令」に,
・「関節角度を示す角度指示信号S16」は,「人形操作用の物理的動作命令」に,
・「武器制御部10及び発射反動パターンメモリ27」と「コントロール部23」とを合わせたものは,「変換ソフトウェアモジュール」に,
・「電流値」は,「合成動作命令」に,
・「加算する」こと及び「電流値を算出」することは,「合成動作命令を計算」することに,
・「送出」することは,「与える」ことに,
それぞれ相当する。
また,本願優先日前において,引用発明の「パターン切換え部26」及び「サーボ部24」に相当する構成を,ソフトウェアにより実現することは技術常識であるから,引用発明の「パターン切換え部26」と「サーボ部24」とを合わせたものと,本願発明の「動作ソフトウェアモジュール」とは,「合成動作命令を計算」し,「合成動作命令」をロボットに与えている「動作ソフトウェアモジュール」である点において共通する。
してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「オペレータが操作する機器から、ロボットの固定した動きでショーを構成する固定ショーの動作を制御するための固定ショー命令に関連する固定ショー選択入力と、ロボットの少なくとも1つの構成要素の動作を該固定ショーの動作とは別に制御するための人形操作命令を示す人形操作入力とを受信する受信モジュールと;
ロボットと;
前記固定ショー選択入力に関連する前記固定ショー命令を、固定ショーの物理的動作命令に変換し、前記受信した人形操作命令を人形操作用の物理的動作命令に変換する変換ソフトウェアモジュールと;
前記固定ショーの物理的動作命令及び前記人形操作用の物理的動作命令を受信し、前記固定ショーの物理的動作命令及び前記人形操作用の物理的動作命令から合成動作命令を計算し、該合成動作命令を該ロボットに与えることにより、少なくとも1つのアクチュエータが前記ロボットの少なくとも1つの構成要素を動作させることができる動作ソフトウェアモジュールと
を具えているロボットシステム。」

[相違点1]
「ロボット」について,本願発明では「アニマトロニクス・フィギュア」であるのに対して,引用発明では,関節部を有するロボットであること以外は不明である点。

[相違点2]
「動作ソフトウェアモジュール」について,本願発明では「合成動作命令をアニマトロニクス・フィギュアに与えることによって行われるアニマトロニクス・フィギュアの合成動作がクリップされて、前記合成動作の距離、速度、加速度の値が低減されて所定限界内に入るように、前記合成動作命令を計算する」と特定されているのに対して,引用発明では,そのような特定がない点。

5.判断
上記各相違点について以下に検討する。

(1)相違点1について
本願明細書の段落【0002】にも記載されるように,本願優先日前において,「アニマトロニクス・フィギュア」は,テーマパーク等でよく見られるものであって,その装置としてのシステムも周知である。
してみると,引用発明の「ロボット」及び「ロボットシステム」を,上記周知な「アニマトロニクス・フィギュア」及び「アニマトロニクスシステム」に置き換えて,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(2)相違点2について
制御対象に印加される直前の物理量である操作量及び操作量変化率を制限することは,実用制御としてよく知られたPID制御の教科書である
A.システム制御情報学会 編,須田信英 著者代表,システム制御情報制御ライブラリー6『PID制御』,初版,平成4年7月20日,株式会社朝倉書店,P.53-54(用語の定義については,P.1-2)
に,「操作量の絶対値が大きすぎたり,操作量の変化率が速すぎると,操作部や制御対象に無理がかかり,実用上望ましくない.そこで操作量の絶対値,変化率あるいはその両方を制限するリミッタを組み込むことが多い.」と記載されるように,制御工学の分野で一般的に利用されている周知技術であり,当該「リミッタ」については,例えば,
B.特開平9-212203号公報
(【図5】の「トルクリミット部91」に関する記述を特に参照)
C.特開昭61-134803号公報
(第4図の「リミッタ手段60」に関する記述を特に参照)
D.特開昭59-32013号公報
(第1図の「リミッタ12」に関する記述を特に参照)
に開示されている。
また,位置と速度とを制御することも一般的であることを考慮すれば,上記周知技術に基づいて,位置及び速度とともに,速度の変化量である加速度を制限することも,当業者が適宜なし得た事項である。
してみると,制御対象に無理がかからないようにするために,引用発明において制御対象に印加される直前の物理量である「電流値」,すなわち「合成動作命令」に,上記周知技術を適用して,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(3)請求人の主張について
(イ)審判請求書での主張
審判請求人は,審判請求書の3.(2)欄において,引用例(審判請求書では「引用文献2」と記載)について,以下のように主張している。
「引用文献2には、審査官殿が指摘されますように、『ロボット』に対して『指示命令』を与えて自律行動から模倣動作に移行させる技術について記載されていますが、本質的に、これはロボット動作の『切り替え制御』に分類されるべきものであり、『固定した動きでショーを構成する固定ショーの動作を制御するための少なくとも1つの固定ショー命令』と、『アニマトロニクス・フィギュアの固定した動きでショーを構成する固定ショーの動作とは別に制御するための人形操作命令』とを組み合わせて組合せ命令を形成し、この組合せ命令をアニマトロニクス・フィギュアに与えて実行するよう構成するものとは相違しております。」
しかしながら,上記4.欄において対比したように,上記主張における「固定した動きでショーを構成する固定ショーの動作を制御するための固定ショー命令」と、「固定した動きでショーを構成する固定ショーの動作とは別に制御するための人形操作命令」とを組み合わせて組合せ命令を形成することについては,引用例に開示されている。
請求人の「『切り替え制御』に分類されるべきもの」との主張は,引用発明において,攻撃指示がない場合や,上記摘記事項(g)に記載された「発射反動パターンメモリ27からのデータの読み出しが完了」した場合に,「固定ショー命令」が「人形操作命令」に加算されなくなることを指摘しているものと解されるが,本願発明においても,オペレータによる「固定ショー選択入力」がなければ,「固定ショー命令」が「0(ゼロ)」となって「人形操作命令」に加算されなくなるのであるから,「固定ショー命令」の有無により制御内容が切り替わる点において,引用発明と本願発明との間に相違はない。
よって,上記主張は採用できない。
なお,この点については,当審による拒絶理由通知の中でも指摘したが,平成23年12月28日付けの意見書では,これに応答する主張はない。

(ロ)意見書での主張
審判請求人は,平成23年12月28日付け意見書の(4-2)欄において,引用例には上記相違点2にかかる構成が開示されていないことから,本願発明は引用発明に基づいて容易に発明することができない旨を主張しているが,上記(2)欄に記載した理由により,当該主張は採用できない。

(4)作用・効果の予測性について
本願発明の全体構成により奏される作用・効果は,引用発明及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

(5)まとめ
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-20 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-06 
出願番号 特願2006-549231(P2006-549231)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 鈴野 幹夫
仁科 雅弘
発明の名称 アニマトロニクス・フィギュアの現実的な動作を生成する計算環境  
代理人 杉村 憲司  
代理人 英 貢  
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