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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1259087
審判番号 不服2010-27319  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-03 
確定日 2012-06-22 
事件の表示 特願2007-163439「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 3149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年6月21日の出願であって、平成22年5月14日付けで通知した拒絶理由に対して、同年7月20日付けで手続補正書が提出されたが、同年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審から送付した、審査官により作成された前置報告書の内容についての平成23年3月8日付けの審尋に対して、同年5月16日付けで、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。

2.本願発明
上記平成22年12月3日付けの手続補正書による補正は、平成22年7月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の、請求項6の発明特定事項である「歩進パルス」および「パルス数設定値」が、「累積された」ものであることを明りょうにしたものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって適法である。

そうすると、本願の請求項1?6に係る発明は、平成22年12月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
外部から与えられる加速度のデータを用いて、速度目標値の書替タイミング時に前回の速度目標値の算出に用いた一部の値(MEM)を記憶部から読み出して、この読み出した値に1加算操作した値(MEM+1)で、所定の定数を除算することにより今回の速度目標値とし、この除算で用いた値(MEM+1)を次回の速度目標値算出用に記憶部に一部の値(MEM)として記憶する漸化式に基づいて速度目標値を算出し、所定周期でクロックパルスをカウントし、このクロックパルスのカウント値が前記速度目標値に一致したときに歩進パルスを発生させることで、等加速度の加速もしくは減速を実現させるべく連続可変の歩進パルスを生成するパルス生成部と、
該パルス生成部からの歩進パルスに基づいて前記ステッピングモータに駆動パルスを供給する駆動部と、
移動位置あるいは移動量の目標値に応じて必要な前記歩進パルス数を意味するパルス数設定値を受け、前記歩進パルスのパルス数をカウントし、前記歩進パルスのカウント結果が該パルス数設定値と一致した時点で、前記パルス生成部から前記駆動部への前記歩進パルスの供給を遮断するパルス出力制御部と、
前記駆動部から駆動パルスの供給を受けて駆動されるステッピングモータと、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。」

3.原査定の拒絶理由の概要
原審の審査官が通知した平成22年5月14日付け拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

『 理 由

( 中 略 )

理由4
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1乃至3
・引用文献1及び2
・備考:
引用文献1には、モータ制御回路が、画像形成装置に備えられるとともに、回転式現像装置を回転させるためのステッピングモータに対し制御パルスを供給するパルス生成部を含むこと、及び、モータ制御回路が、スタート時からカウントされるステップ数がステップ回数Aに到達するまで、ステッピングモータが加速度Aで加速するようパルス生成部を制御し、ステップ数がステップ回数Bに到達するまで、ステッピングモータが加速度Bで加速するようパルス生成部を制御し、パルスのカウント数がステップ回数Cに到達するまで、ステッピングモータが定速度Cで回転するようパルス生成部を制御し、ステップ数がステップ回数Dに到達するまで、ステッピングモータが加速度Dで減速するようパルス生成部を制御し、ステップ数がステップ回数Eに到達するまで、ステッピングモータが加速度Eで減速するようパルス生成部を制御すること(パルス出力制御部に相当)が、記載されている(例えば、段落0043乃至段落0061、図1乃至図5を参照)。
また、引用文献2には、クロックカウンタがカウントアップされ、カウント数がコンペア値と一致すると1パルスを発生させること、及び、コンペア値を、一定時間経過するたびに、加速度を加味した定数を含む漸化式により、漸化的に増加させ又は減少させること(パルス生成部に相当)が、記載されている(例えば、段落0028乃至段落0039、図1を参照)。
してみると、引用文献1に記載される発明において、パルス生成部に対し、引用文献2に記載されるような技術を適用して、請求項1に係る発明のようにすることは、当業者ならば容易になし得ることである。

( 中 略 )

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2005-328681号公報
2.特開平10-327598号公報

( 以 下 略 )』

4.原査定の概要
平成22年8月31日付け拒絶査定の概要は、以下のとおりである。

『 この出願については、平成22年 5月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由2及び理由4によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見出せません。

備考
1.理由4について
(1)請求項1及び2
出願人は、平成22年7月20日付け手続補正書により、請求項1で特定されていた「等加速度の加速もしくは減速をステッピングモータに実現させる速度目標値を演算式に基づいて算出し」なる事項を、「外部から与えられる加速度のデータを用いて、速度目標値の書替タイミング時に前回の速度目標値の算出に用いた一部の値(MEM)を記憶部から読み出して、この読み出した値に1加算操作した値(MEM+1)で、所定の定数を除算することにより今回の速度目標値とし、この除算で用いた値(MEM+1)を次回の速度目標値算出用に記憶部に一部の値(MEM)として記憶する漸化式に基づいて速度目標値を算出し」と補正し、請求項1で特定されていた「前記歩進パルスが該パルス数設定値と一致した時点で」なる事項を、「前記歩進パルスのカウント結果が該パルス数設定値と一致した時点で」と補正し、請求項1で特定されていた「前記ステッピングモータにより駆動される被駆動物」なる事項を削除した(下線は、出願人が付与したもの)。
しかしながら、引用文献2の段落0020には、「パルスコンペア値の書替タイミング時に、前回のパルスコンペア値(CM)の算出に用いた一部の値を記憶部(MEM)から読み出して、この値(MEM)に1加算操作した値で、所定の定数(a)を除算することにより、今回のパルスコンペア値(CM)とし、この除算で用いた値(MEM+1)を次回のパルスコンペア値算出用に記憶部に記憶する」と記載されており、段落0034には、「ここで、aは加速度、モータとアンテナのギア比、モータの所要パルス数、パルスコンペア値を設定する時間間隔による定数である」と記載されていることから(下線は、当審が付与したもの)、引用文献2には、「外部から与えられる加速度のデータを用いて、速度目標値の書替タイミング時に前回の速度目標値の算出に用いた一部の値(MEM)を記憶部から読み出して、この読み出した値に1加算操作した値(MEM+1)で、所定の定数を除算することにより今回の速度目標値とし、この除算で用いた値(MEM+1)を次回の速度目標値算出用に記憶部に一部の値(MEM)として記憶する漸化式に基づいて速度目標値を算出し」なる事項に対応する事項が記載されているといえる。
なお、出願人は、平成22年7月20日付け付の意見書において、次のように主張する(下線は、当審が付与したもの)。

すなわち、大容量の駆動パターンを格納したテーブルを用いる必
要がなくなり、一方、大容量のテーブルを使用しない代わりに演算
(除算)を用いる場合における除算の余りによる位置不正確の問題
も解消されるという、効果が本願発明により得られます。
なお、請求項2についても、請求項1と同様な特徴を有し、請求
項1と同様な効果を奏する発明になっております。
〔4-1-2〕引用文献:
〔4-1-2-1〕引用文献1の記載内容:
引用文献1には、ステッピングモータを、テーブルのデータに従
って加速または減速させる発明が記載されております。
これは、本願の従来例の説明(段落[0004])で、制御に大
容量のテーブルが必要になると説明したものに該当します。
ここで、引用文献1では、大容量のテーブルを用いずに本願発明
のような演算によって正確に制御することは記載も示唆もされてお
りません。
〔4-1-2-2〕引用文献2の記載内容:
引用文献2には、大容量のテーブルを用いる代わりに、漸化式に
よりステッピングモータを加速または減速させる発明が記載されて
おります。
これは、本願の従来例の説明(段落[0005]?[0007]
)で示したもので、大容量のテーブルが不要になる代わりに、除算
で余りに起因する誤差が生じて、位置制御が正確に行えない問題が
あると説明したものです。
ここで、引用文献2では、本願発明のように演算の余りによる誤
差相当を生じさせない正確な位置制御を実行することは記載も示唆
もされておりません。

しかしながら、出願人が当該意見書において主張するように(上記下線部を参照)、引用文献2に記載された発明によれば、大容量のテーブルが不要になるのであるから、請求項1に係る発明により奏されると出願人が主張する「大容量の駆動パターンを格納したテーブルを用いる必要がなくな」るとの効果は、引用文献1及び2に記載された発明から予測し得る範囲に留まるものといえる。
また、請求項1に係る発明により奏されると出願人が主張する「大容量のテーブルを使用しない代わりに演算(除算)を用いる場合における除算の余りによる位置不正確の問題も解消される」との効果は、請求項1において特定されている発明特定事項のうち、どの発明特定事項により奏されるのかが、発明の詳細な説明には何ら説明されていないし、当該意見書においても何ら説明されていないし、当該効果がどうして奏されるのかが、出願時の技術常識を考慮しても、理解できないのであるから、当該効果は、引用文献1及び2に記載された発明と比較した場合の有利な効果とはいえない。
してみると、請求項1に係る発明について出願人が主張する効果は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実としてこれを参酌する必要はなく、請求項1に係る発明は、依然として、特許法第29条第2項に基づいて特許が受けられないものというべきである。
よって、出願人の主張は、これを採用することができない。
以上のことは、請求項2に係る発明についても当て嵌まる。

( 以 下 略 )』

5.引用刊行物の記載事項及び刊行物1記載の発明
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された、
刊行物1:特開2005-328681号公報
刊行物2:特開平10-327598号公報
には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1
(1a)「【請求項1】
制御回路によって指示されたステッピングモータの制御内容を設定するレジスタと、
前記レジスタに設定された制御内容に基づいて、前記ステッピングモータの回転加速度と、その回転加速度を得るための制御パルスのパルス数と、を決定する回転加速度決定回路と、
前記回転加速度決定回路により決定された回転加速度を得るような制御パルスを生成して前記ステッピングモータに供給するパルス生成回路と、
前記制御パルス生成手段により生成された制御パルスのパルス数をカウントするカウンタと、
を備え、
前記回転加速度決定回路は、決定されたパルス数と、前記カウンタによりカウントされたパルス数に基づいて、前記回転加速度及び前記パルス数を切り換えるステッピングモータ制御装置。」

(1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御装置及び画像形成装置に係り、特に電子写真方式を適用した複写機やプリンタ等に用いて好適なステッピングモータ制御装置及び画像形成装置に関する。」

(1c)「【0042】
[回転式現像装置5の制御系]
図3は、フルカラープリンタ1における回転式現像装置5の制御系を示すブロック図である。
【0043】
フルカラープリンタ1は、回転式現像装置5のホームポジション(HP)を検知するホームポジションセンサ100と、ステッピングモータの制御を指示するCPU110と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であるモータ制御回路120と、モータ制御回路120で生成される制御パルスのパルス周波数に基づいて回転式現像装置5を回転させるステッピングモータ130と、を備えている。
【0044】
CPU110は、モータ制御回路120に対して、回転式現像装置5(ステッピングモータ130)の回転角度を表す回転角度信号や制御開始を指示するスタート信号などを供給する。このような構成により、回転式現像装置5の回転速度は、次のようにリニアに変化する。」

(1d)図3は次のとおり。


(1e)「【0045】
図4は、通常動作モードにおけるステッピングモータ130の回転速度の変化を示す図である。ステッピングモータ130は、所定回転角度回転する際には、加速領域では数段階のリニアな加速度により加速し(加速域A,B)、一定速度まで加速した後に定速になり(定速域C)、数段階のリニアな減速度で減速する(減速域D,E)。以下、加速域Aにおける加速度及びステップ回数をそれぞれ加速度A及びステップ回数Aという。加速域B、定速域C、減速域D、Eについても同様にする。
【0046】
加速域A、B、定速域C、減速域D、Eは、それぞれスタート時を基準にしてカウントされたステップ回数(パルス数)によって決定される。例えば、パルス生成がスタートすると、回転速度は加速域Aになる。ステップ回数がAを超えると、回転速度は加速域AからBに変わる。さらに、ステップ回数がBを超えると加速域Bから定速域Cに、ステップ回数がCを超えると定速域Cから減速域Dに、ステップ回数がDを超えると定速域Dから減速域Eに変わる。そして、ステップ回数がEに達すると、ステッピングモータ130の回転が停止する。
【0047】
ここで、モータ制御回路120は、具体的には図3に示すように、CPU110の命令(回転角度、スタート、HP検知有無など)や演算結果などを一時記憶するレジスタ121と、回転角度信号に基づいて回転加速度及びステップ回数を制御する加速度/ステップ回数制御部122と、ステッピングモータ130に供給すべき制御パルスを生成するパルス生成部123と、制御パルスをカウントするパルスカウンタ124と、を備えている。
【0048】
レジスタ121は、CPU110から指示された回転角度10度及びホームポジション検知オフを設定した後、これらの情報を加速度/ステップ回数制御部122に供給する。また、レジスタ121は、CPU110から指示されたスタート信号をパルス生成部123に供給する。
【0049】
加速度/ステップ回数制御部122は、レジスタ121で設定された回転角度に基づいて、回転加速度及びステップ回数を決定する。このため、加速度/ステップ回数制御部122は、回転加速度を決定するための加速度テーブルと、ステップ回数を決定するためのステップ回数テーブルを記憶している。」

(1f)図4は次のとおり。


(1g)「【0056】
加速度/ステップ回数制御部122は、このような加速度テーブル及びステップ回数テーブルを用いることによって、1パルス毎の周波数を予め設定することなく、リニアに加速度が変化するパルス生成部123に指示することができる。
【0057】
また、加速度/ステップ回数制御部122は、ホームポジションセンサ100によるホームポジション検知、及びパルスカウンタ124でカウントされたステップ回数に基づいて、エラーが発生したか否かを判定して、エラー発生時にはエラービットを立てることも行う。
【0058】
パルス生成部123は、レジスタ121からスタート信号が供給されると、加速度/ステップ回数制御部122からのパルスH/L切り替え信号(速度初期値、加速度)に基づいて、制御パルスの生成を開始する。なお、制御パルスのパルス変動幅は、加速度/ステップ回数制御部122によって変更される。そして、パルス生成部123は、制御パルスをステッピングモータ130及びパルスカウンタ124に供給する。これにより、ステッピングモータ130は、制御パルスのパルス周波数に応じた回転速度でステッピングモータ130を回転駆動させる。
【0059】
一方、パルスカウンタ124は、パルス生成部123で生成された制御パルスのステップ回数をカウントし、このステップ回数を加速度/ステップ回数制御部122に供給する。また、パルスカウンタ124は、ホームポジションセンサ100によってホームポジションが検知されると、その検知時を基準にして制御パルスのステップ回数(以下「検知ステップ回数」という。)をカウントし、この検知ステップ回数を加速度/ステップ回数制御部122に供給する。」

(1h)「【0062】
[通常動作モード]
通常動作モードとは、ホームポジションを検知することなく、ステッピングモータ130の回転速度を加速域、定速域、減速域に分けてステッピングモータ130を回転させる動作モードをいう。以下では、ステッピングモータ130を10度回転させる例を挙げて説明するが、80度、90度、350度回転させる場合も同様である。
【0063】
CPU110は、ステッピングモータ130を10度回転させるときは、回転角度信号(角度10度)、スタート信号、及びホームポジション検知オフ信号をシリアルにモータ制御回路120に供給する。なお、ホームポジション検知オフ信号は、ホームポジションセンサ100の検知を必要としないことを表す信号である。
【0064】
モータ制御回路120のレジスタ121は、回転角度10度及びホームポジション検知オフを設定した後、これらの情報を加速度/ステップ回数制御部122に供給する。レジスタ121は、その一方で、スタート信号をパルス生成部123に供給する。
【0065】
加速度/ステップ回数制御部122は、加速度テーブル及びステップ回数テーブルを参照して、レジスタ121で設定された角度「10」に対応する加速域A、加速域B、定速域C、減速域D、減速域Eの情報を以下のように順に読み出す。
【0066】
(加速域A)
最初に、加速度/ステップ回数制御部122は、角度「10」に対応する加速域Aの情報(速度初期値「3.333」、加速度A「-0.17」、ステップ回数A「10」)を読み出す。速度/ステップ回数制御部122は、これらの情報に基づいて、加速域Aにおける制御パルスの生成をパルス生成部123に指示する。
【0067】
具体的には、加速度/ステップ回数制御部122は、パルス生成部123に対して、ステップ回数1について、パルス周期3.333[ms]の制御パルスを生成するように指示する。その後、ステップ回数2以降について、ステップ毎にパルス周期が0.17[ms]ずつ小さくなるように指示する。
【0068】
これにより、パルス生成部123によって生成される制御パルスは、ステップ回数1ではパルス周期3.333[ms]であり、ステップ回数2以降ではパルス周期が0.17[ms]ずつ小さくなる。
【0069】
そして、加速度/ステップ回数制御部122は、パルスカウンタ124でカウントされたステップ回数が10(=ステップ回数A)を超えると、加速域Bの処理に移行する。
【0070】
(加速域B)
次に、加速度/ステップ回数制御部122は、角度「10」に対応する加速域Bの情報(加速度B「-0.02」、ステップ回数B「47」)を読み出す。加速度/ステップ回数制御部122は、パルス生成部123に対して、ステップ毎に制御パルスのパルス周期が0.02[ms]ずつ小さくなるように指示する。そして、加速度/ステップ回数制御部122は、パルスカウンタ124でカウントされたステップ回数が47(=ステップ回数B)を超えると、加速域Cの処理に移行する。
【0071】
(定速域C)
加速度/ステップ回数制御部122は、次に、角度「10」に対応する定速域Cの情報(加速度C「0」、ステップ回数C「63」)を読み出す。加速度/ステップ回数制御部122は、パルス生成部123に対して、各ステップの制御パルスのパルス周期が一定になるように指示する。そして、加速度/ステップ回数制御部122は、パルスカウンタ124でカウントされたステップ回数が63(=ステップ回数C)を超えると、減速域Dの処理に移行する。なお、加速度/ステップ回数制御部122は、減速域D及びEについても同様の処理を行う。そして、加速度/ステップ回数制御部122は、パルスカウンタ124でカウントされたステップ回数が111(=ステップ回数E)に達すると、制御パルスの生成停止を各回路に指示する。
【0072】
この結果、ステッピングモータ130は、モータ制御回路120で生成された制御パルスのパルス周波数に応じて回転駆動され、図4に示すように、5段階でリニアに回転速度が変化しながら10度回転して停止する。」

これらの記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ステッピングモータの制御を指示するCPU110と、ASICであるモータ制御回路120と、モータ制御回路120で生成される制御パルスのパルス周波数に基づいて回転式現像装置5を回転させるステッピングモータ130と、を備えたフルカラープリンタ1において、
モータ制御回路120は、CPU110の命令や演算結果などを一時記憶するレジスタ121と、回転角度信号に基づいて回転加速度及びステップ回数を制御する加速度/ステップ回数制御部122と、ステッピングモータ130に供給すべき制御パルスを生成するパルス生成部123と、制御パルスをカウントするパルスカウンタ124と、を備え、
加速度/ステップ回数制御部122は、記憶している加速度テーブル及びステップ回数テーブルの情報に基づいて、パルスH/L切り替え信号により制御パルスの生成をパルス生成部123に指示し、
パルス生成部123は、レジスタ121からスタート信号が供給されると、加速度/ステップ回数制御部122からのパルスH/L切り替え信号に基づいて、制御パルスの生成を開始し、制御パルスをステッピングモータ130及びパルスカウンタ124に供給し、
これにより、ステッピングモータ130は、制御パルスのパルス周波数に応じた回転速度で回転駆動され、
パルスカウンタ124は、パルス生成部123で生成された制御パルスのステップ回数をカウントし、
モータ制御回路120にスタート信号が供給されると、加速度/ステップ回数制御部122が、加速度テーブル及びステップ回数テーブルを参照して、パルスH/L切り替え信号によりパルス生成部123に制御パルスの生成を指示し、加速度/ステップ回数制御部122が、スタート時からパルスカウンタ124でカウントされたステップ回数がステップ回数Aに到達するまで、ステッピングモータが加速度Aで加速するようパルス生成部を制御し、カウントされたステップ回数がステップ回数Bに到達するまで、ステッピングモータが加速度Bで加速するようパルス生成部を制御し、カウントされたステップ回数がステップ回数Cに到達するまで、ステッピングモータが定速度Cで回転するようパルス生成部を制御し、カウントされたステップ回数がステップ回数Dに到達するまで、ステッピングモータが加速度Dで減速するようパルス生成部を制御し、カウントされたステップ回数がステップ回数Eに到達するまで、ステッピングモータが加速度Eで減速するようパルス生成部を制御して、カウントされたステップ回数がステップ回数Eに達すると、制御パルスの生成停止を各回路に指示する、
フルカラープリンタ。」

(2)刊行物2
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】一定時間間隔毎に入力パルスをカウントし、入力パルス数を予め設定されたパルスコンペア値(CM)と比較し、これらの値が一致した場合に、出力パルスを送出して、ステッピングモータ等のモータを1ステップ駆動させるモータ駆動法において、
ある時間間隔毎に前記パルスコンペア値を求める際に、漸化式を用い、1回のインクリメント操作と1回の除算により前記パルスコンペア値を算出し、等加速度の加減速を実現する、ことを特徴とするモータ駆動方法。
【請求項2】一定時間間隔毎に入力パルスをカウントし、入力パルス数を予め設定されたパルスコンペア値(CM)と比較し、これらの値が一致した場合に、出力パルスを送出して、ステッピングモータ等のモータを1ステップ駆動させるモータ駆動方法において、
パルスコンペア値の書替時に、前回パルスコンペア値(CM)の算出に用いた一部の値を記憶部から読み出して、この値(MEM)に1加算操作した値で、所定の定数を除算することにより、今回のパルスコンペア値(CM)とし、前記除算で用いた値(MEM+1)を次回のパルスコンペア値算出用に前記記憶部に記憶する、ことを特徴とするモータ駆動方法。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工衛星その他の空間飛翔体を追尾するアンテナの駆動方法に関すし、特に、方位角を変更する垂直軸を有するアンテナを、駆動パルスを入力とするステッピングモータを用いて、軸周りに等角加速度で目的の速度へ加速、減速運動をさせることで追尾制御する駆動方法等、小型簡易な制御に用いて好適な駆動方法及び駆動装置に関する。」

(2c)「【0022】 図2は、本発明の一実施例を適用した装置構成を示す図である。また、図1は、本発明の一実施例におけるフローチャートである。
【0023】図2を参照すると、本発明の一実施例において、人工衛星6からの電波7を受信時、衛星通信用アンテナ1の受信出力は、方位角速度センサ2の出力によるアンテナ支持部の回転情報と共に、アンテナ制御部3に送られ、アンテナ1の状態、受信レベルの状況に応じて、衛星追尾のため、アンテナの駆動方向、駆動パターンの判断を行う。
【0024】その指令に基づいてアンテナの方位方向回転を決定し速度制御を行う。
【0025】ステッピングモータ4は駆動パルスにより回転し、ギア5を通じて、ギア付きの円盤状のアンテナ1を回転駆動する。」

(2d)図2は次のとおり。


(2e)「【0032】本実施例では、一定時間間隔毎のパルスコンペア値書替えの条件に合致するタイミングで(ステップS1のYes分岐)、設定するパルスコンペア値(CMP)を、次式(1)の関係を用いて得ている(ステップS2)。
【0033】
【数1】

【0034】ここで、aは加速度、モータとアンテナのギア比、モータの所要パルス数、パルスコンペア値を設定する時間間隔による定数である。
【0035】すなわち、本実施例では、次に設定するパルスコンペア値CMPn+1は、一つ前のCMPnを使用して、順次求められる。
【0036】実際の処理では、更に計算を簡略化するため、上式(1)の右辺の分母の値を一時記憶しておき(ステップS4のMEM←MEM+1)、次に設定すべきパルスコンペア値(コンペアレジスタCM)を求める際にこのMEMを使用し、一回ずつのインクリメント演算と除算で求める(ステップS2)。すなわちコンペアレジスタCMには、次式(2)の右辺の演算値が設定される。
【0037】CM←a/(MEM+1) …(2)」

(2f)図1は次のとおり。


6.対比・判断
本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「制御パルス」「ステッピングモータ130」「フルカラープリンタ1」は、
それぞれ、本願発明1の「歩進パルス」「ステッピングモータ」「画像形成装置」に相当する。

そして、刊行物1記載の発明において、「パルス生成部123」は、「ステッピングモータ130」を駆動させ、「パルスカウンタ124」によりカウントされて制御に用いられる「制御パルス」を供給するものであり、本願発明1における「ステッピングモータ」を駆動するために供給され、カウントされてパルス出力制御に用いられる「歩進パルス」を生成する「パルス生成部」と共通する。
また、刊行物1記載の発明における「ステッピングモータ130」は、「パルス制御部123」から供給された「制御パルス」のパルス周波数に応じた回転速度で回転駆動されるのであるから、本願発明1における「駆動部」に相当する構成を含んでいることは明らかである。
また、刊行物1記載の発明において、「加速度/ステップ回数制御部122」は、カウントされた制御パルスのステップ回数とステップ回数テーブルから読み出されたステップ回数とを比較し、一致した時点でパルス生成部の制御を変更するものであり、また、カウントされたステップ回数がステップ回数Eに到達したときに、制御パルスの生成停止を各回路に指示し、ステッピングモータに対する駆動制御が停止し、回転が停止するものであり、「加速度/ステップ回数制御部122」が、パルス生成部へのパルスH/L切り替え信号の送出を停止することにより、パルス生成部からステッピングモータへの駆動パルスの供給が遮断されることは、明らかであるから、該「加速度/ステップ回数制御部122」が本願発明1の「パルス出力制御部」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「歩進パルスを生成するパルス生成部と、
歩進パルスに基づいてステッピングモータに駆動パルスを供給する駆動部と、
移動位置あるいは移動量の目標値に応じて必要な前記歩進パルス数を意味するパルス数設定値を受け、前記歩進パルスのパルス数をカウントし、前記歩進パルスのカウント結果が該パルス数設定値と一致した時点で、前記パルス生成部から前記駆動部への前記歩進パルスの供給を遮断するパルス出力制御部と、
前記駆動部から駆動パルスの供給を受けて駆動されるステッピングモータと、
を備えた画像形成装置。」

[相違点]
ステッピングモータを駆動する情報の生成に関して、
本願発明1では、「パルス生成部」が「外部から与えられる加速度のデータを用いて、速度目標値の書替タイミング時に前回の速度目標値の算出に用いた一部の値(MEM)を記憶部から読み出して、この読み出した値に1加算操作した値(MEM+1)で、所定の定数を除算することにより今回の速度目標値とし、この除算で用いた値(MEM+1)を次回の速度目標値算出用に記憶部に一部の値(MEM)として記憶する漸化式に基づいて速度目標値を算出し、所定周期でクロックパルスをカウントし、このクロックパルスのカウント値が前記速度目標値に一致したときに歩進パルスを発生させることで、等加速度の加速もしくは減速を実現させるべく連続可変の歩進パルス」を生成しているのに対して、
刊行物1記載の発明では、「加速度/ステップ回数制御部122」が記憶している加速度テーブル及びステップ回数テーブルの情報に基づいて、「パルスH/L切り替え信号」により「制御パルス」の生成を「パルス生成部123」に指示し、「パルス生成部123」が「制御パルス」を生成している点。

相違点について検討する。

(相違点について)
刊行物2には、ステッピングモータの駆動に関して、アンテナ制御部が、クロックパルスをカウントし、クロックパルスのカウント値がパルスコンペア値と等しくなると、ステッピングモータへ駆動パルスとして1パルス入力し、カウント値をクリアする技術、及び、アンテナ制御部が、パルスコンペア値の書替タイミングにおいて、MEMを読み出し、加速度を加味した定数aを(MEM+1)で除算して得られた値でパルスコンペア値を更新し、(MEM+1)をMEMとして記憶する技術が、記載されている。

そうしてみると、刊行物1記載の発明において、ステッピングモータの駆動に関する情報である「制御パルス」の生成に関して、刊行物2に記載された、アンテナ制御部が、クロックパルスをカウントし、クロックパルスのカウント値がパルスコンペア値と等しくなると、ステッピングモータへ駆動パルスとして1パルス入力し、カウント値をクリアする技術、及び、アンテナ制御部が、パルスコンペア値の書替タイミングにおいて、MEMを読み出し、加速度を加味した定数aを(MEM+1)で除算して得られた値でパルスコンペア値を更新し、(MEM+1)をMEMとして記憶する技術を採用し、「パルス生成部」が「外部から与えられる加速度のデータを用いて、速度目標値の書替タイミング時に前回の速度目標値の算出に用いた一部の値(MEM)を記憶部から読み出して、この読み出した値に1加算操作した値(MEM+1)で、所定の定数を除算することにより今回の速度目標値とし、この除算で用いた値(MEM+1)を次回の速度目標値算出用に記憶部に一部の値(MEM)として記憶する漸化式に基づいて速度目標値を算出し、所定周期でクロックパルスをカウントし、このクロックパルスのカウント値が前記速度目標値に一致したときに歩進パルスを発生させることで、等加速度の加速もしくは減速を実現させるべく連続可変の歩進パルス」を生成するように構成をなすことは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。

(本願発明1の効果について)
請求人は、平成22年7月20日付けの意見書において、次のように主張する。
「すなわち、大容量の駆動パターンを格納したテーブルを用いる必要がなくなり、一方、大容量のテーブルを使用しない代わりに演算(除算)を用いる場合における除算の余りによる位置不正確の問題も解消されるという、効果が本願発明により得られます。
なお、請求項2についても、請求項1と同様な特徴を有し、請求項1と同様な効果を奏する発明になっております。
〔4-1-2〕引用文献:
〔4-1-2-1〕引用文献1の記載内容:
引用文献1には、ステッピングモータを、テーブルのデータに従って加速または減速させる発明が記載されております。
これは、本願の従来例の説明(段落[0004])で、制御に大容量のテーブルが必要になると説明したものに該当します。
ここで、引用文献1では、大容量のテーブルを用いずに本願発明のような演算によって正確に制御することは記載も示唆もされておりません。
〔4-1-2-2〕引用文献2の記載内容:
引用文献2には、大容量のテーブルを用いる代わりに、漸化式によりステッピングモータを加速または減速させる発明が記載されております。
これは、本願の従来例の説明(段落[0005]?[0007])で示したもので、大容量のテーブルが不要になる代わりに、除算で余りに起因する誤差が生じて、位置制御が正確に行えない問題があると説明したものです。
ここで、引用文献2では、本願発明のように演算の余りによる誤差相当を生じさせない正確な位置制御を実行することは記載も示唆もされておりません。」

しかしながら、仮に刊行物1に記載された発明では大容量のテーブルが必要になるとしても、請求人が当該意見書において主張するように、刊行物2に記載された発明によれば、大容量のテーブルが不要になるのであるから、請求項1に係る発明により奏されると出願人が主張する「大容量の駆動パターンを格納したテーブルを用いる必要がなくな」るとの効果は、刊行物1及び2に記載された発明から予測し得る範囲に留まるものといえる。
また、請求項1に係る発明により奏されると請求人が主張する「大容量のテーブルを使用しない代わりに演算(除算)を用いる場合における除算の余りによる位置不正確の問題も解消される」との効果は、請求項1において特定されている発明特定事項のうち、どの発明特定事項により奏されるのかが、発明の詳細な説明には何ら説明されていないし、当該意見書においても何ら説明されていないし、当該効果がどうして奏されるのかが、出願時の技術常識を考慮しても、理解できないのであるから、当該効果は、刊行物1及び2に記載された発明と比較した場合の有利な効果とはいえない。
これに関して、請求人は平成23年12月3日付け審判請求書の請求の理由(C-b)において、「しかしながら、請求項1に係る発明の特定事項として「「パルス出力制御部」が歩進パルスカウント結果がパルス数設定値と一致した時点で歩進パルスを遮断するよう制御し、この歩進パルス遮断によって駆動部による駆動パルスが停止し、モータが停止する」という請求項1に明記された構成(発明特定事項)並びに制御により、従来は無視されていて誤差の原因となっていた除算余りに相当する部分までの位置制御が正確になされるという特有の効果が実現されるようになるものであって、その根拠は明細書段落番号[0053]等にも記載されている。」とも主張している。
しかし、請求項1に係る発明において、「速度目標値を算出する」過程で生ずる余りは、「パルス生成部」における「速度目標値を算出する」手段の中で蓄積されると考えられるが、「パルス生成部」における「歩進パルスを発生させる」手段や、歩進パルスをカウントしたりカウント数をパルス設定値と比較したりする「パルス出力制御部」に波及するかどうかは、発明の詳細な説明に詳しい記載がないため不明である。
さらに、仮に、請求人が主張するように、請求項1に係る発明の特定事項である「パルス出力制御部」により上記特有の効果を奏するとしても、刊行物1には、制御パルスのカウント回数が所定のカウント回数に達すると制御パルスの生成停止を各回路に指示する構成が記載されているのだから、該構成を備えた刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を組み合わせて得られた発明においても、当該特有の効果と同様の効果は奏されるはずであるから、当該特有の効果は、刊行物1及び2に記載された発明と比較した場合の有利な効果とはいえない。

(まとめ)
よって、本願発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、上記判断は、原査定の拒絶理由および原査定の判断と同様であり、何らかわるものではない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-18 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願2007-163439(P2007-163439)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵田 真彦神田 泰貴  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 画像形成装置  
代理人 井島 藤治  

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