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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1259289 |
審判番号 | 不服2011-15973 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-07-25 |
確定日 | 2012-06-28 |
事件の表示 | 特願2007-164309「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 304〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成19年6月21日の出願であって、平成23年5月2日付け(5月10日発送) で拒絶査定され、これに対し、同年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。 2.平成23年7月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年7月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 平成23年7月25日付けの手続補正書(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、補正前(平成22年11月11日付けの手続補正書による)の 「 【請求項1】 遊技の状況に合わせて演出画像を表示可能な表示画面を備えた液晶表示装置と、前記表示画面に隣接配置される電飾表示器と、前記電飾表示器の前面に配置され、遊技盤の前面に沿って移動自在に構成された装飾体と、前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を制御する演出制御手段と、を備え、 前記演出制御手段は、前記装飾体が前記電飾表示器の前面から離れた位置に移動して前記電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となったときに、前記装飾体が移動するタイミングに合わせて前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を連動制御して、前記液晶表示装置の表示画面と前記電飾表示器の表示面とにより一体的な表示演出を行うことを特徴とするパチンコ遊技機。」から、 「 【請求項1】 遊技の状況に合わせて演出画像を表示可能な表示画面を備えた液晶表示装置と、前記表示画面に隣接配置される電飾表示器と、前記電飾表示器の前面に配置され、遊技盤の前面に沿って移動自在に構成された装飾体と、前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を制御する演出制御手段と、を備え、 前記演出制御手段は、前記装飾体が前記電飾表示器の前面から離れた位置に移動して前記電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となるタイミングに合わせて前記電飾表示器のランプ表示をオフからオンにすると共に、前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を連動制御して、前記液晶表示装置の表示画面と前記電飾表示器の表示面とにより一体的な表示演出を行うことを特徴とするパチンコ遊技機。」 に補正された。 本件補正は、「装飾体が前記電飾表示器の前面から離れた位置に移動して前記電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となるタイミングに合わせて前記電飾表示器のランプ表示をオフからオンにする」と補正することで、「電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となるタイミング」と、「(その)タイミングに合わせて前記電飾表示器のランプ表示をオフからオンにする」という技術事項を限定したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (2)引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開2007-54140号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、遊技球や遊技メダルなどの遊技媒体を用いて遊技を行うパチンコ機や回胴式遊技機などの遊技機に関する。」 (イ)「0029】 中央装置26のほぼ中央には、演出表示装置27が設けられている。演出表示装置27は、長方形の液晶画面27gを搭載しており、キャラクタ図柄や背景図柄などの種々の演出用図柄を変動停止表示することが可能となっている。また、中央装置26の中央上部には、装飾ランプ300が設けられており、その内部には装飾LED4iが内蔵されている。さらに、液晶画面27gの周辺には、稲妻の形状に象った可動部材320と、刃物の形状に象った可動部材340が搭載されており、遊技の状況に合わせて、これらの可動部材320,340が回動する。また、これらの可動部材320,340の内部には、装飾LED4j,4kが内蔵されている。なお、演出表示装置27の画面上で表示される各種図柄については後述する。」 (ウ)「【0036】 A-3.制御回路の構成 : 次に、本実施例の遊技機1の制御回路の構成について説明する。図5は、本実施例の遊技機1における制御回路の構成を示したブロック図である。図示されているように遊技機1の制御回路は、多くの制御基板や、各種基板、中継端子板などから構成されているが、その機能に着目すると、遊技の基本的な進行や賞球に関わる当否についての制御を司る主制御基板200と、図柄やLEDや効果音を用いた遊技の演出の制御を司るサブ制御基板220と、貸球や賞球を払い出す動作の制御を司る払出制御基板240と、遊技球の発射に関する制御を司る発射制御基板260などから構成されている。これら制御基板は、各種論理演算および算出演算を実行するCPUや、CPUで実行される各種プログラムやデータが記憶されているROM、プログラムの実行に際してCPUが一時的なデータを記憶するRAM、周辺機器とのデータのやり取りを行うための周辺機器インターフェース(PIO)、CPUが演算を行うためのクロックを出力する発振器、CPUの暴走を監視するウォッチドッグタイマ、定期的に割り込み信号を発生させるCTC(カウンター・タイマ・サーキット)など、種々の周辺LSIがバスで相互に接続されて構成されている。また、図5中に示した矢印の向きは、データあるいは信号を入出力する方向を表している。尚、図5では、主制御基板200に搭載されたCPU201やRAM202、およびサブ制御基板220に搭載されたCPU221やROM223のみ図示されており、主制御基板200に搭載されているROMやPIO、サブ制御基板220に搭載されたRAMやPIO、更には、他の制御基板に搭載されているCPUや、RAM、ROMなどについては図示が省略されている。 【0037】 図示されているように主制御基板200は、始動口スイッチ17sや、大入賞口スイッチ31s、ゲートスイッチ36sなどから遊技球の検出信号を受け取って、遊技の基本的な進行や賞球に関わる当否を決定した後、サブ制御基板220や、払出制御基板240、発射制御基板260などに向かって、各種の動作を指令するコマンドを出力する。また、主制御基板200には、発射装置ユニット12から発射された遊技球を検出するカウントスイッチ8sも接続されている。更に、主制御基板200には、始動口17に設けられた一対の翼片部を開閉させるための普通電動役物ソレノイド17mや、大入賞口31dを開閉させるための大入賞口ソレノイド31m、更には、普通図柄や特別図柄の変動停止表示を行う図柄表示装置28などが中継端子板を介して接続されており、これら各種ソレノイド17m,31m、および図柄表示装置28に向かって信号を出力することにより、動作の制御も行っている。 【0038】 サブ制御基板220は、主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を行う。すなわち、前述した演出表示装置27を駆動するとともに、前述した可動部材320,340を回動させる駆動機構360を制御する演出制御基板230や、各種のスピーカ5y,6cを駆動するアンプ基板224、装飾用の各種LED4b?4gを駆動する駆動信号を装飾駆動基板226から出力することにより、遊技の演出を行う。また、装飾駆動基板226からの出力信号により、エラーLED表示部4hがエラー発生のレベルに応じて赤色またはオレンジ色で点灯または点滅する。さらに、装飾駆動基板226からの出力信号により、装飾LED4i?4kが点灯または点滅する。」 (エ)「【0056】 このように、図柄表示装置28で表示される特別図柄と、演出表示装置27で表示される3つのキャラクタ図柄27a,27b,27cとは、表示内容が互いに対応しており、それぞれの表示図柄が確定するタイミングも同じに設定されているため、どちらの表示を見ながら遊技をすることも可能である。しかし、図2に示すように、図柄表示装置28よりも演出表示装置27の方が目に付き易い位置に設けられており、表示画面も大きく、更に表示内容も分かり易いので、遊技者は演出表示装置27の画面を見ながら遊技を行うことが通常である。従って、演出表示装置27の表示画面上で初めに停止表示される左キャラクタ図柄27aと、続いて停止表示される右キャラクタ図柄27cとが同じ図柄であった場合には、最後に停止表示される中キャラクタ図柄27bも同じ図柄で停止して、いわゆる大当り状態になるのではないかと、遊技者は図柄の変動を注視することになる。このように、2つのキャラクタ図柄を同じ図柄で停止した状態で、最後の図柄を変動表示させる演出は、リーチ演出と呼ばれており、リーチ演出を行うことで遊技者の興趣を高めることが可能となっている。 【0057】 C.本実施例の装飾ランプおよび可動部材の構成 : 遊技機1では、一般に遊技者の興趣を効果的に高めることを狙って、上述した遊技の状況に合わせて種々の演出を行うとともに、装飾ランプ300に内蔵されている装飾LED4iを点灯または点滅している。また、上述した遊技の状況に合わせて可動部材320,340を回動するとともに、内蔵している装飾LED4j,4kを点灯または点滅している。以下では、装飾ランプ300、可動部材320,340の構成について説明した後、これらの動作について説明する。 【0058】 C-1.装飾ランプおよび可動部材の構成 : 図9は、装飾ランプ300および可動部材320,340からなる装飾部材の構成を示す説明図である。前述したように、装飾ランプ300の内部には、装飾LED4iが内蔵されている。また、可動部材320,340の内部にも、装飾LED4j,4kが内蔵されている。これらの装飾LED4i?4kは、装飾駆動基板226からの出力信号により、遊技の状況に合わせて適宜点灯または点滅するようになっている。」 (オ)「【0062】 C-2.装飾ランプおよび可動部材の動作 : 図10は、可動部材320,340が回動する前の定位置に配置されたときの様子を示した説明図である。可動部材320,340は、いずれも液晶画面27gの外側である定位置に配置されている。すなわち、可動部材320は、液晶画面27gの上部に設けられた装飾ランプ300を覆うように配置されており、可動部材340は、液晶画面27gの右側に配置されている。図10に矢印で示すように、駆動機構360は、可動部材320,340を定位置から下方に向かって回動させるために、可動部材320の回動軸322を時計回りに回動させるとともに、可動部材340の回動軸342を反時計回りに回動させる。 【0063】 図11は、可動部材320,340が定位置から下方に向かって回動している途中の様子を示した説明図である。可動部材320,340が回動して交差すると、可動部材340は可動部材320の手前側に配置される。このため、あたかも稲妻の形状に象った可動部材320と刃物の形状に象った可動部材340とが戦っているような演出を行うことが可能となる。特に、可動部材320,340が回動して交差したときには、刃物の形状に象った可動部材340が、稲妻の形状に象った可動部材320の手前側になるので、刃物の形状に象った可動部材340で、稲妻の形状に象った可動部材320を切り裂いたかのような演出を行うことができる。 【0064】 図12は、可動部材320,340が最下端まで回動したときの様子を示した説明図である。可動部材320,340が交差した後、さらに下方に向かって回動すると、やがて可動部材320,340は、最下端に配置される。すなわち、可動部材320は、回動して液晶画面27g上の左側に配置され、可動部材340は、回動して液晶画面27g上の下側に配置される。そして、可動部材320,340が最下端まで回動すると、装飾駆動基板226からの出力信号により、内蔵されている装飾LED4j,4kを点灯するとともに、装飾ランプ300に内蔵されている装飾LED4iを点灯する。」 (カ)「【0072】 もちろん、可動部材320,340を回動させることなく、内蔵されている装飾LED4j,4kを点灯させることとしても良い。こうしても、可動部材320,340の全体を光らせて目立たせることができるので、インパクトのある演出に寄与することができる。 【0073】 加えて、可動部材320,340が最下端まで回動すると、内蔵されている装飾LED4j,4kを点灯させるとともに、装飾ランプ300に内蔵されている装飾LED4iを点灯させているので、これらの動作に合わせて信頼度の高い予告演出を行うことも可能となる。もちろん、可動部材320,340の動作と、内蔵されている装飾LED4j,4kの点灯とを組み合わせて、予告演出の信頼度に軽重を付与することとしても良い。 【0074】 例えば、信頼度の軽重として、可動部材320が最下端まで回動して内蔵の装飾LED4jが点灯した場合や、可動部材340が最下端まで回動して内蔵の装飾LED4kが点灯した場合や、可動部材320,340が最下端まで回動して内蔵の装飾LED4j、4kが点灯した場合などが考えられる。また、これらに装飾ランプ300に内蔵されている装飾LED4iの点灯を組み合わせて、予告演出の信頼度に軽重を付与することとしても良い。更に、装飾LED4i?4kの点灯色を異ならせても良い。例えば、装飾LED4iを緑色に、装飾LED4jを青色に、装飾LED4kを赤色にして点灯させても良い。また、これらの点灯あるいは点滅間隔を変更することとしても良い。こうすれば、装飾ランプ300、可動部材320,340や装飾LED4i?4kを予告演出にも用いることができるので、遊技者の興趣を飛躍的に高めることが可能となる。」 以上、(ア)-(カ)の記載、および図面を総合すると、引用例1には、 「中央装置26のほぼ中央に設けられ、キャラクタ図柄や背景図柄などの種々の演出用図柄を変動停止表示することが可能な液晶画面27gを搭載した演出表示装置27と、 中央装置26の中央上部かつ液晶画面27gの直上部に設けられた装飾ランプ300と、 前記装飾ランプ300の前面に配置される可動部材320と、 図柄やLEDを用いた遊技の演出の制御を司るサブ制御基板220と、 前記演出表示装置27を制御する演出制御基板230と、 前記装飾ランプ300の装飾LED4iを含む各種LEDを制御する装飾駆動基板226と、を備え、 前記装飾駆動基板226は、前記可動部材320が前記装飾ランプ300を覆う定位置から前記液晶画面27g上を時計回りに下方に回動して前記液晶画面27g上の左側にある最下端に配置されると、前記装飾ランプ300の前記装飾LED4iを点灯させるパチンコ機」の発明が開示されていると認めることができる。 (以下、この発明を「引用発明」という。) (3)対比 引用発明の「液晶画面27gを搭載した演出表示装置27」は、「キャラクタ図柄や背景図柄などの種々の演出用図柄を変動停止表示する」ものであって、これらの表示は「遊技の状況に応じた」ものであることは明らかであるので、本願補正発明の「液晶表示装置」に相当する。 引用発明の「装飾ランプ300」は液晶画面27gの直上部に設けられているから「(液晶画面27gに)隣接配置」されているといえ、本願補正発明の「電飾表示器」に相当する。 引用発明の「装飾ランプ300の装飾LED4i」は、本願補正発明の「電飾表示器のランプ」に相当する。 引用発明の「可動部材320」は、パチンコ機における液晶画面が遊技盤面と略平行に設けられることが、きわめて一般的であることを考慮すると、装飾ランプ300の前面から液晶画面27g上を回動することは、同時に遊技盤面に沿って移動することを意味するから、本願補正発明の「装飾体」に相当する。 引用発明の「サブ制御基板220」は、「図柄やLEDや効果音を用いた遊技の演出の制御を司る」と記載されており、その「図柄」は「演出表示装置27の液晶画面27gで表示される」ものであること、「LED」は「LED4b?4i」であることは明らかである。 また、「演出表示装置27」の制御に関して、直接的には演出制御基板230が行っている点及び装飾ランプ300の装飾LED4iの点灯、点滅制御は直接的には装飾駆動基板226が行っている点が引用例1の発明の詳細な説明に記載されているが、演出制御基板230及び装飾駆動基板226は、主制御基板200からのコマンドを受けたサブ制御基板220によって制御されているといえるから、「サブ制御基板220」は、演出表示装置27及び装飾LED4iの制御を司っていることになることは自明である。 よって、演出制御基板230及び装飾駆動基板226を含む引用発明の「サブ制御基板220」は、本願補正発明の「演出制御手段」に相当する。 引用発明の「パチンコ機」は、本願補正発明の「パチンコ遊技機」に相当する。 以上のことから、両者は、 〈一致点〉 遊技の状況に合わせて演出画像を表示可能な表示画面を備えた液晶表示装置と、 前記表示画面に隣接配置される電飾表示器と、 前記電飾表示器の前面に配置され、遊技盤の前面に沿って移動自在に構成された装飾体と、前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を制御する演出制御手段と、を備え、 前記演出制御手段は、前記装飾体が前記電飾表示器の前面から離れた位置にあるときに前記電飾表示器のランプ表示をオフからオンにするパチンコ遊技機。 である点で一致し、以下の点で相違している。 〈相違点1〉 電飾表示器のランプ表示のオフからオンに制御するタイミングに関して、本願補正発明では、「装飾体が電飾表示器の前面から離れた位置に移動して電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となるタイミング」であるのに対して、 引用発明では、「本願補正発明の装飾体に相当する可動部材320が(移動範囲の最遠部である)液晶画面27g上の左側にある最下端に配置されたタイミング」である点。 〈相違点2〉 液晶表示装置の表示画面と電飾表示器の表示面において表示される演出に関して、本願補正発明では、「液晶表示装置の表示画像と電飾表示器のランプ表示を連動制御して、前記液晶表示装置の表示画面と前記電飾表示器の表示面とにより一体的な表示演出」を行なっているのに対して、 引用発明では、本願補正発明の液晶表示装置に相当する演出表示装置27の表示画面と本願補正発明の電飾表示器に相当する装飾ランプ300の装飾LED4iがどのような表示演出を行っているのか不明である点。 (4)判断 〈相違点1〉について 本願補正発明の「装飾体」のような可動体、同じく「電飾表示器」のような発光体は、パチンコ遊技機の技術分野において引用例をあげるまでもなく普通に用いられている周知の演出用部材である。そして、可動体の動きの制御、発光体の点灯・消灯制御を、遊技状況に合わせて最適な演出効果を発揮できるように設計することは当然のことである。 とすれば、装飾体の移動におけるどのタイミングで電飾表示器のランプをオンにするかは、当業者が適宜設計する程度の技術事項に過ぎず、また本願補正発明のように可動体が動きだしたタイミングで発光体をオン状態にすることは周知技術(以下、「周知技術1」という。)でもある。 必要ならば、以下の文献を参照されたい。 周知文献1:特開2006-247207号公報(特に【0028】) 周知文献2:特開2005-143687号公報(特に【0072】-【0075】) 周知文献3:特開平9-285607号公報(特に【0055】-【0056】) よって、引用発明に周知技術1を適用して、装飾ランプ300の前面に位置して、特に装飾ランプ300の装飾LED4iを隠蔽している可動部材320が動き出した時に装飾LED4iを点灯させ、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 〈相違点2〉について 引用例1の段落【0057】には、「上述した遊技の状況に合わせて種々の演出を行うとともに、装飾ランプ300に内蔵されている装飾LED4iを点灯または点滅している。」と記載されている。 ここで、この記載における「上述」とは、段落【0056】に記載されている演出表示装置27で表示される3つのキャラクタ図柄27a,27b,27cを用いた図柄変動演出であることは明らかであるから、引用発明として認定した装飾LED4iの点灯制御は、演出表示装置27で行われる演出に合わせている、つまり、本願補正発明における「液晶表示装置の表示画像と電飾表示器のランプ表示を連動制御して、前記液晶表示装置の表示画面と前記電飾表示器の表示面とにより一体的な表示演出」であることは、当業者にとって自明であるから、相違点2に係る本願補正発明の構成は引用例1に実質的に記載されている。 また、原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開2004-283246号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開2006-20671号公報(以下、「引用例3」という。)には、「液晶表示装置の表示画像と電飾表示器のランプ表示を連動制御して、前記液晶表示装置の表示画面と前記電飾表示器の表示面とにより一体的な表示演出(以下、「引用例2及び3に記載された技術事項」という。)を行なっているパチンコ遊技機が記載されており、引用発明に引用例2及び3に記載された技術事項を適用して相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 以上のように、本願補正発明は、引用発明及び引用例1に記載された技術事項(以下、引用発明及び引用例1に記載された技術事項を「引用例1に記載された事項」という。)と周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、または、引用発明、周知技術1と引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5)本願補正発明についてのまとめ 本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明及び引用文献に記載された発明 平成23年7月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成22年11月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。 そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。 「 【請求項1】 遊技の状況に合わせて演出画像を表示可能な表示画面を備えた液晶表示装置と、前記表示画面に隣接配置される電飾表示器と、前記電飾表示器の前面に配置され、遊技盤の前面に沿って移動自在に構成された装飾体と、前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を制御する演出制御手段と、を備え、 前記演出制御手段は、前記装飾体が前記電飾表示器の前面から離れた位置に移動して前記電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となったときに、前記装飾体が移動するタイミングに合わせて前記液晶表示装置の表示画像と前記電飾表示器のランプ表示を連動制御して、前記液晶表示装置の表示画面と前記電飾表示器の表示面とにより一体的な表示演出を行うことを特徴とするパチンコ遊技機。」(この発明を「本願発明」という。) 一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-54140号公報(引用例1)、特開2004-283246号公報(引用例2)及び特開2006-20671号公報(引用例3)に記載された発明は、前記「2.(2)及び2.(4)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は 前記2.で検討した本願補正発明から「電飾表示器が遊技者から視認可能な状態となるタイミング」という技術事項、「(その)タイミングに合わせて前記電飾表示器のランプ表示をオフからオンにする」という技術事項を除いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1に記載された事項と周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、または、引用発明、周知技術1と引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された事項と周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、または、引用発明、周知技術1と引用例2及び3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-04-26 |
結審通知日 | 2012-05-01 |
審決日 | 2012-05-16 |
出願番号 | 特願2007-164309(P2007-164309) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治、河本 明彦 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 秋山 斉昭 |
発明の名称 | パチンコ遊技機 |
代理人 | 鈴木 均 |