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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1259313
審判番号 不服2009-21863  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-10 
確定日 2012-06-27 
事件の表示 特願2004-569997「様々なタイプおよび様々な物理位置からのアイテムを表示するためのファイルシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日国際公開、WO2004/097680、平成18年 9月21日国内公表、特表2006-521592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年5月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年2月9日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月13日付けで手続補正がなされたが、同年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年11月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「アイテムに対するエンティティとして使用される少なくとも1つのイメージをコンピュータの表示デバイスの表示画面に表示する方法であって、前記コンピュータは前記表示デバイス(47)、複数の前記アイテムを記憶する第1の記憶デバイス(39)、前記複数の各々に関連する複数のプロパティをデータベースの形態で記憶する第2の記憶デバイス(39)、入力デバイス(40または42)、ポインティングデバイス(42)およびプロセッサ(21)を有し、
前記入力デバイスによりクエリーを入力するステップと(302)、
前記プロセッサにより、前記クエリーに合致する、前記アイテムのプロパティを前記データベース上で検索することにより、1つの検索条件を満足する少なくとも1つのアイテムを検出するステップと(304、306)、
当該検出された少なくとも1つのアイテムを1つの仮想的なグループとみなし、前記プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダ(651)を作成するステップと(308)、
当該作成された仮想フォルダを前記プロセッサにより前記表示画面上に表示するステップと(308)、
前記ポインティングデバイスにより、表示されている仮想フォルダを選択するステップと(308)、
当該選択された仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージ(751?758)を、前記プロセッサにより前記表示画面に表示するステップと(308)
を備え、
前記仮想フォルダ内のアイテムのイメージの表示を該アイテムが実際に含まれる物理フォルダの表示(851-857)に切り替え可能であることを特徴とすることを特徴とする方法。」

3.引用例及び周知例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-188702号公報(以下、「引用例」という。)、及び原査定の備考欄において周知例として引用された特開平5-89173号公報(以下、「周知例」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例)
A.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 サーバのファイルシステムと異なるファイルシステムを持つクライアントとサーバとをネットワークにより接続して構成される分散ファイルシステムにおいて、前記クライアントは、前記サーバが持つ階層構造を持たないデータにより構成されるファイル内のデータを、階層構造により表わした階層情報として管理する階層情報保持手段と、該階層情報保持手段内の情報と前記サーバ内のファイルのデータとの対応情報を保持する対応情報保持手段と、サーバ内のファイルに対する操作が指示されたとき、前記階層情報及び対応情報に基づいて前記サーバのファイルをサーバのファイルシステムを介して操作する操作変換機構とを有する仮想ファイルシステムを備えて構成されることを特徴とする分散ファイルシステム。
・・・(中略)・・・
【請求項3】 前記クライアントは、表示機構を備え、該表示装置にクライアントの仮想ファイルシステムが持つサーバのファイルの対応情報を、自クライアントのファイルシステムのファイルと同一の形式で表示させ、クライアントのファイルシステムからサーバのファイルを自クライアントのファイルを操作する方法と同一の方法により操作することを特徴とする請求項1または2記載の分散ファイルシステム。」

B.「【0024】図1は本発明の第1の実施形態による分散ファイルシステムの構成例を示すブロック図である。図1において、200はクライアント、201は対応情報保持機構、202は階層情報保持機構、203は表示機構、204は入力受付け機構、205は操作変換機構、206はクライアントのファイルシステム、207はクライアントのファイル、208はサーバのファイルシステム、209はサーバのファイル、210はサーバ、211は仮想ファイルシステムである。
【0025】本発明の第1の実施形態は、PCによるクライアント200と汎用機によるサーバ210とが図示しなすネットワークを介して接続されて構成されている。そして、クライアント200の内部には、クライアントのファイルシステム206と本発明による仮想ファイルシステム211とが備えられ、クライアントのファイルシステム206にはクライアントのファイル207が接続されている。また、サーバ210の内部には、サーバのファイルシステム208が備えられ、サーバのファイルシステム208にはサーバのファイルが接続されている。そして、本発明により設けられたクライアント200内の仮想ファイルシステム211は、対応情報保持機構201、階層情報保持機構202、表示機構203、入力受け付け機構204、操作変換機構205を備えている。なお、以下では、説明の便宜上、201、202はそれらを保持する機構だけでなく情報そのものも指示する符号として使用する。
【0026】図1に示す本発明の実施形態は、クライアント200をPCであるとしているので、クライアント200のファイルシステム206は、フォルダ及びファイルによる階層構造によりファイル207を管理している。このため、図示実施形態は、ネットワークを介して多数接続されているサーバ上のデータセットやメンバの中から、クライアント側で参照・更新したいサーバ上のデータセット・メンバに対し、これらをクライアント側で参照するとき、互いを識別するための便宜的な名称を持つ仮想的なファイルを備える仮想ファイルシステムをクライアント200内に用意している。そして、この仮想的なファイルをグループ化するための仮想的な構造として、仮想フォルダを用意する。この仮想フォルダは、他の仮想フォルダ及び仮想ファイルを含むことが可能であるため、仮想フォルダ及び仮想ファイルを用いて階層構造を表すことができる。この仮想フォルダ、仮想ファイルの名称(サーバ上のデータセット及びメンバのクライアント側での便宜的な名称)及び階層構造を記述する情報を、本発明の実施形態では階層情報と呼び、この情報を階層情報保持機構202の中に保持して、サーバ上のデータセット・メンバによるファイルを管理するために使用する。
【0027】対応情報保持機構201は、階層情報202に記載されている仮想フォルダ及び仮想ファイルと、サーバのデータセット及びメンバとの対応関係を記述する対応情報を保持している。これにより、クライアント200は、サーバのファイル209をクライアントのファイルシステム206と同様の方法で管理することができる。また、表示機構203は、階層情報202に記載されている仮想フォルダ・ファイル及びその関係情報を表示することにより、サーバのファイルの情報をクライアントのファイルシステム206と同様に、仮想フォルダと仮想ファイルとの階層構造として表示することができる。」

C.「【0028】図2は仮想ファイル及び仮想フォルダとファイルとの対応の例を説明する図、図3は図2に示す例における階層情報202の記述例を説明する図、図4は図2に示す例における対応情報201の記述例を説明する図である。
【0029】図2において、301は階層情報202に記載されている仮想フォルダ及び仮想ファイルの階層関係の情報を表示機構203に表示したイメージであり、サーバ内の2つの区分データセットのそれぞれを仮想的な階層として表示させたものである。階層情報202は、図3に示すように、仮想フォルダと仮想ファイルとの階層構造を、それぞれの名称と“()”(カッコ)との組み合わせで示すように構成されている。カッコ内の情報は、カッコ外に記載された仮想フォルダの下に位置することを示している。すなわち、階層情報202の一部である“Folder1(File11、File12)”は、Folder1の下にFile11、File12があることを示しており、図2に示す表示イメージ301の中で、仮想フォルダ及び仮想ファイル304?306として表示される構造を示している。
【0030】図1の対応情報201には、階層情報202とサーバのファイル209との対応付けが記載されている。図2に示す対応情報201は、仮想フォルダFolder1304とサーバの区分データセットUSR.DATA1 307とを対応させ、仮想ファイルFile11 305と区分データセットUSR.DATA1 307のメンバMEMBER1 308とを対応させている。同様に、対応情報201は、仮想フォルダFolder2 309とサーバの区分データセットUSR.DATA2 310とを、仮想ファイルFile21 311と区分データセットUSR.DATA2 310のメンバMEMBER1 312をそれぞれ対応させている。このような対応付けを行うことにより、クライアント200は、サーバ側のデータセットをあたかも自クライアント上のファイルであるかのように仮想的に表示することが可能になる。
【0031】図4に示す対応情報201の記述例において、対応情報201は、仮想フォルダ・仮想ファイル名401、対応する汎用機のデータセット・メンバの種別402、対応する汎用機のデータセット・メンバの名前403、属性情報404の組により構成されている。汎用機のデータセット・メンバの種別402は、サーバマシン(汎用機)のデータセット DATASETと、サーバマシン(汎用機)のデータセットのメンバ MEMBER とを含んでいる。汎用機のデータセット・メンバの名前403は、データセット・メンバのサーバ側のファイルシステム上の実際の名称を示す。また、属性情報404は、データセット種別(区分データセットか順データセットか等)、レコード形式(レコードが可変長か固定長か等)等のデータセットの属性情報が記述している。この属性情報404は、仮想フォルダの情報にのみ記載される。仮想フォルダの情報にデータセット名称403及び属性情報404が記載されていない場合、その仮想フォルダにはまだサーバ上のデータセットが対応付けられていないことを示す。」

D.「【0037】さて、図1に戻り、入力受け付け機構204は、表示機構203が表示した仮想的なファイル構成(異種のファイルシステムを持つクライアント及びサーバ上のファイルを混在表示する)に対する操作を受け付ける機構である。図2に示している表示の例において、入力受け付け機構204は、仮想フォルダや仮想ファイルに対してマウスによるドラッグ&ドロップ等の操作を受け付ける。また、操作変換機構205は、入力受付け機構204が受け付けた操作を、クライアントのファイルシステム206またはサーバのファイルシステム208に投入するコマンドに変換する機能を有する。」

ここで、上記C.の記載及び図1,2を見ると、図1の「サーバのファイル209」に図2の「区分データセットUSR.DATA1 307」及び「区分データセットUSR.DATA2 310」のデータが記憶されている例が示され、図4の「対応情報201の記述例」を見ると、「区分データセットUSR.DATA1 307」に含まれるメンバには「USR.DATA1 (MEMBER1)」及び「USR.DATA1 (MEMBER2)」、「区分データセットUSR.DATA2 310」に含まれるメンバには「USR.DATA2 (MEMBER1)」及び「USR.DATA2 (MEMBER2)」というように、それぞれ、メンバが属する区分データセット名「USR.DATA1」、「USR.DATA2」が対応して記憶されていると解され、その記憶の態様は、いわゆるデータベースの形態ということもできるものであると解される。
また、明示されていなくても、図1において、クライアント200がプロセッサを有していることは明らかである。

よって、上記A.?D.の記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「分散ファイルシステムにおけるサーバ上のデータセットのメンバに対応する少なくとも1つの仮想ファイルを前記分散ファイルシステムにおけるクライアント側の表示機構の表示画面に表示する方法であって、前記分散ファイルシステムは前記表示機構、複数の前記データセットのメンバを記憶するサーバのファイル、前記複数の各々に関連する複数の区分データセット名をデータベースの形態で記憶する対応情報保持機構、マウスおよびプロセッサを有し、
或る区分データセット名を有するデータセットの少なくとも1つのメンバを1つの仮想的なグループとみなし、前記プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップと、
当該作成された仮想フォルダ及び該仮想フォルダの中に含まれるメンバに対応する仮想ファイルを、前記プロセッサにより前記表示画面に表示するステップと
を備える方法。」

(周知例)
E.「【0024】図2は、本発明に係る構造化文書の検索のモデルを図示化したものであり、同図において、検索フォルダ210は検索式を持つフォルダであり、その検索式は「検索対象」、「検索条件」、「分類属性」の組みから構成されている。「検索対象」はフォルダ名であり、フォルダ内の全ての文書を検索対象としていることを意味する。「検索条件」は論理式であり、「構造要素名 演算子 値」を用いて記述する。「分類属性」は構造要素名であり、対応する構造化文書の構造要素の内容別に分類する。
【0025】例えば、検索対象220で表されるフォルダ名が「検索対象」という検索対象フォルダ230に存在する文書集合中、この場合は、検索対象フォルダ230内に存在する文書集合231、検索フォルダ230に存在するフォルダ232の下位に存在する文書集合233、234の各文書集合中、検索条件240に適合している文書だけが検索(選択)され、更に検索された文書は、分類属性250で表される構造要素の内容に応じて部分集合260、270に分類される。この分類された部分集合はそれぞれ仮想フォルダ280、290内に表示される。仮想フォルダ280、290はフォルダの実体が存在せず、検索/分類結果をフォルダの形で表現したビューである。
【0026】すなわち、この実施例では、検索フォルダ210の検索式を評価することで、検索フォルダ210の下位に、検索及び分類結果としての部分集合(文書集合)260、270を見せるためのビューである仮想フォルダ280、290が生成される。このため、検索及び分類結果をユーザに提示するためのデータ構造は、図2に示すように、根(ルート)である検索フォルダの下位に仮想フォルダが位置し、その仮想フォルダの下位に文書が位置している構造(以下、この実施例では分類構造という)になっている。なお、検索フォルダ、仮想フォルダはそれぞれ文書を分類して表示するためのオブジェクトである。このため、表示方式が変更されれば他のオブジェクトを導入することになる。
【0027】ここで、検索フォルダと仮想フォルダとの違いは、前者はユーザが定義/作成する実態であり、後者は検索毎に更新されるビューである。また前者は分類構造の根であり、後者は分類構造の中間位置に存在する(分類構造の末端は文書である)。
【0028】なお、従来のファイルシステムとのインタフェースを同じにするために、ここでは分類の道具として「仮想フォルダ」を導入している。この「仮想フォルダ」とは、検索式を持ち、その検索条件に合う文書集合があたかもその仮想フォルダの中にあるように見せるものである。仮想フォルダを生成することによって、ユーザの目的に合わせた一定の条件に合う文書の分類を実現することができる。このように本発明では、従来の階層ファイルシステム上にユーザの目的に合わせて多量の文書を自動的に分類してユーザに見せることができるようにしたものである。
【0029】図1は発明に係る構造化文書分類装置の第1の実施例を機能ブロック図で示したものである。
【0030】同図において、構造化文書格納手段110には文書(構造化文書)や複数の文書を所有するフォルダが格納される。構造化文書格納手段110からは、格納された文書やフォルダを識別子や名前で取り出すことができる。
【0031】検索条件指定手段120は、検索時に必要な情報、具体的には、構造化文書格納手段110に格納された複数の構造化文書やフォルダ(検索対象)と検索条件とを指定する(上記検索式内の「検索対象」と「検索条件」とを指定する)。その指定され情報は、構造化文書検索手段130に入力される。
【0032】構造化文書検索手段130は、構造化文書格納手段110内から、検索条件指定手段120で指定された文書の内容を検索して、検索条件に合う文書を検索する。例えば図2においては、検索対象220で指定された検索対象フォルダ230内に存在する文書集合231、233、234から、検索条件240に適合する部分集合260、270を有する部分集合群(この場合は、図2に示す部分集合260、270のように分類されておらず、ランダムな文書の集合になっている)を検索する。
【0033】分類属性指定手段140は、分類に必要な情報である構造要素名(分類属性)を指定する(上記検索式内の「分類属性」を指定する)。その指定された情報は構造化文書分類手段150に入力される。なお、分類属性の指定は1つであっても良いし、複数であっても良い。
【0034】ここで1つの分類属性が指定された場合は、1つの構造要素に注目して、それを分類属性として、検索時に文書集合を分類して、分類構造を生成する。
【0035】また複数の分類属性が指定された場合は、複数の構造要素名に対応する構造要素に対応付けられた文書の内容による分類を繰り返し、階層的な部分構造を生成する。つまり、複数存在する分類属性を順に1つずつ評価して再帰的に分類を続けて、分類構造を階層化して生成する。
【0036】なお、分類構造を生成しなければ、分類された文書を表示できないというものではないので、分類構造を生成しなくても良い。しかし、この実施例では、分類構造を生成するものとして説明する。なお分類構造を生成しない場合の表示については後述する。
【0037】構造化文書分類手段150は、構造化文書検索手段130によって検索された文書を、分類属性指定手段140で指定された構造要素名に対応付けられた文書の内容別に分類するとともに、その分類された文書を基に分類構造を生成する。例えば図2においては、分類属性250に従って、部分集合群を、部分集合260と、部分集合270とに分類するとともに、仮想フォルダ280、290を生成して分類構造を生成する。」

F.「【0042】この実施例では、検索/分類に関する操作はデスクトップ環境で行えるようになっており、アイコン表示されたフォルダ(フォルダアイコン)をマウスボタンでダブル・クリックすると、そのフォルダアイコンに対応するフォルダ内の文書や他のフォルダ(例えば仮想フォルダ)を見ることができる。」

G.「【0044】上述した構成において、構造化文書分類装置の処理動作を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0045】最初に、検索条件指定手段110によって、文書集合(検索対象)および検索条件を入力するとともに、分類属性指定手段140によって、構造要素名(分類属性)を入力することにより、検索/分類に必要な検索式を入力する(ステップ301)。その検索対象及び検索条件は構造化文書検索手段130に入力され、構造要素名(分類属性)は構造化文書分類手段15に入力される。
【0046】すると、構造化文書検索手段130は、得られた検索対象及び検索条件を評価し実行する。すなわち構造化文書格納手段110に格納されている検索対象の文書集合から、検索条件に適合する文書を検索して(ステップ302)、その検索結果としての文書を構造化文書分類手段150に渡す。
【0047】一方、構造化文書分類手段150は、検索式に分類属性が指定されているか否かを判断する(ステップ303)。ここで、分類属性(構造要素名)が指定されていれば、その分類属性と、検索された文書集合中の当該分類属性に対応する文書内容とに基づいて、その文書集合を分類し(ステップ304)、その後、分類構造を生成する(ステップ305)。更に、分類された文書集合を分類構造として文書表示手段160に出力する(ステップ306)。なお、ステップ303において分類属性が指定されていない場合は、検索された文書を文書表示手段160に出力する。」

H.「【0052】図5は、「検索対象」、「検索条件」、「分類属性」からなる検索式を指定するための検索フォルダのプロパティ・シート500を示したものであり、プロパティ・シート500には、構造化文書を検索するために必要な「検索対象」および「検索条件(式)」を指定するための各フィールド510、520と、文書を自動的に分類するたの分類項目として「分類属性」を指定するためのフィールド53とが設けられており、更に「検索条件」に対応して、複数の条件式が指定された場合に、その複数の条件式の「論理和」かあるいは「論理積」のいずれかを選択するボタン520Aが設けられている(これは、条件式は複雑な式を許しても良いが、ユーザ・インタフェースを簡単にするために簡単な表現形式にしている。)ここで、「検索対象」の指定に際しては、フォルダ名をフィールド510に指定する。これは、指定されたフォルダ名に対応するフォルダ内にある全ての文書を要素とする文書集合が検索対象となることを意味している。また「検索条件」の指定に際しては、「検索対象」で示された文書集合のうち、目的の文書に必要な条件式を、フィールド520に記述する。複数の条件式を設定した場合には、ボタン520A内の「AND」あるいは「OR」のいずれかの領域上にカーソルを移動してマウスボタンをクリックすることにより、「論理和」かあるいは「論理積」のいずれかを選択する。
【0053】上記条件式のフォーマットは「(構造要素名 演算子 値)」である。条件式の評価は、「条件式の構造要素名」に文書の構造要素の内容が代入されて演算子が評価される。条件式は論理式であり、真となった文書が選択される。
【0054】最後に「分類属性」の指定に際しては、「検索対象」と「検索条件」とを指定することにより得られた文書集合を分類するために必要な分類項目、つまり分類属性を、フィールド530に記述する。「分類属性」で指定される構造要素の内容別に文書が分類され、部分集合に分けられる。更にその部分集合に対応する仮想フォルダが自動的に作成される。
【0055】ここで、ユーザが、図5に示すように、フィールド510内にフォルダ名として「日米特許フォルダ」を指定し、フィールド520内に条件式として(国際特許分類=G06F 15/20)を記述し、またボタン520Aの「OR」を指示し、更にフィールド530内に構造要素名(分類属性)として「出願人」を記述したとする。
【0056】このようにして検索式が指定されると、構造化文書検索手段130は、フィールド510内に指定されたフォルダ名に対応する「日米特許フォルダ」を構造化文書格納手段110から検索するとともに、その「日米特許フォルダ」内の構造化文書集合から、フィールド520内に指定された条件式「国際特許分類=G06F15/20」に適合する文書を検索する。このとき、指定された条件式「国際特許分類=G06F 15/20」と同一の構造要素名に対応する構造要素を有している構造化文書のみが検索される。例えば、図4に示す構造化文書の構造要素404に対応する文書内容404Aを参照することで、当該文書が、検索対象の文書であるか否かを判定することができる。ここでは複数の文書が検索されるものとする。その検索された各構造化文書は構造化文書分類手段150に伝送される。
【0057】すると、構造化文書分類手段150は、フィールド530に指定された「出願人」という分類属性に従って渡された各構造化文書を分類して、各部分毎に部分集合にする。このとき、指定された「出願人」と同一の構造要素名で表された構造要素に対応する文書内容に従って分類することになる。例えば、図4に示す構造化文書の構造要素402に対応する文書内容402Aを参照することにより、細分類することができる。又、分類された各部分集合に対応して仮想フォルダを生成し、その後、部分集合と仮想フォルダとに基づいて分類構造を生成する。その分類構造の一例を図6に示す。
【0058】図6に示す例では、ルートである検索フォルダ610の下位に「AA会社」、「BB会社」、「CC会社」の各出願人毎にそれぞれ対応して分類された各部分集合620A、630A、640Aを表示すべくビューとしての各仮想フォルダ620、630、640が生成されている。
【0059】この図に示した状態が内部状態であって、検索/分類処理が終了した状態でもある。このとき、文書表示手段160には、例えば、検索フォルダ610に対応するウィンドウ内に、例えば、仮想フォルダ620、630、640をそれぞれ示す各仮想フォルダアイコンと、対応する出願人「AA会社」、「BB会社」、「CC会社」とが表示されることとなる。」

I.「【0071】ここで、もう少し具体的に説明すると、検索フォルダ(/動的分類フォルダ)をダブル・クリックすると、ウインドウが開いて、出願人毎に分類された部分集合を表示すべく仮想フォルダに対応する仮想フォルダアイコンが表示される。その表示状態の一例を図10に示す。
【0072】更に、例えば出願人「CC会社」に対応する仮想フォルダ(/動的分類フォルダ/CC会社)に対応する仮想フォルダアイコン1000をダブル・クリックすると、公開年毎に分類された部分集合を表示すべく仮想フォルダに対応する仮想フォルダアイコンが表示される。その表示状態の一例を図11に示す。
【0073】そして、例えば「1987年」に対応する仮想フォルダアイコン1100をダブルクリックすると、出願人が「CC会社」であって、公開年が「1987年」である部分集合(つまり構造化文書)のリストが文書表示手段160の表示画面上に表示される。そのリストの中から所望の構造化文書の項目を指定することにより、その文書の内容が表示されることとなる。
【0074】また構造化文書がどのようにして分類されたかを知るためには、仮想フォルダアイコンをダブル・クリックして、仮想フォルダのプロパティ・シートをオープンすべき旨の指示をすれば良い。例えば図10に示す「CC会社」の仮想フォルダアイコン1000をダブル・クリックして、仮想フォルダのプロパティ・シートをオープンすべき旨の指示をすることにより、細分類可能な仮想フォルダのプロパティ・シートが表示される。その表示状態を図12に示す。プロパティ・シート1200からは、検索対象として「検索フォルダ(動的分類フォルダ)」が、検索条件として「出願人=CC会社」が、分類属性として「公開年」がそれぞれ指定されていることが分かる。
【0075】また、図11に示す「1987年」の仮想フォルダアイコン1100をダブルクリックして、仮想フォルダのプロパティ・シートをオープンすべき指示をすることにより、もう分類しない仮想フォルダのプロパティ・シートが表示される。その表示状態の一例を図13に示す。プロパティ・シート1300からは、検索対象として「仮想フォルダ(/動的分類フォルダ/CC会社)」が、検索条件として「公開年=1987年」がそれぞれ指定されていることが分かる。
【0076】上述したように階層的な関係になっている仮想フォルダを順次指示してオープンすることにより、目的とする文書の内容を見ることができる。」

ここで、上記I.の段落【0076】に、「上述したように階層的な関係になっている仮想フォルダを順次指示してオープンすることにより、目的とする文書の内容を見ることができる。」と記載されていることから、最終的に「目的とする文書の内容を見る」段階の一つ前の段階では、「文書」に対応する何らかのアイコンが表示されるものと解される。

よって、上記E.?I.の記載及び関連する図面を参照すると、周知例には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「周知例記載の技術」という。)
「仮想フォルダ内の文書を表示する方法において、
入力デバイスにより検索/分類に必要な検索式を入力するステップと、
前記検索/分類に必要な検索式に合致する、前記文書の属性を構造化文書格納手段上で検索することにより、1つの検索/分類条件を満足する少なくとも1つの文書を検出するステップと、
当該検出された少なくとも1つの文書を1つの仮想的なグループとみなし、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップと、
当該作成された仮想フォルダを表示画面上に表示するステップと、
マウスボタンにより、表示されている仮想フォルダを選択するステップと、
当該選択された仮想フォルダの中に含まれる文書に対応するアイコンを前記表示画面に表示するステップと
を備えること。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「分散ファイルシステム」を構成する「サーバ」及び「クライアント」は、いずれもコンピュータにより構成されていると解されるから、引用例記載の発明における「サーバ」及び「クライアント」からなる「分散ファイルシステム」全体は、本願発明における「コンピュータ」に相当する構成であるということができる。

(い)引用例記載の発明において、「分散ファイルシステムにおけるサーバ上のデータセットのメンバ」は、本願発明における「アイテム」に相当するものである。そして、上記「メンバ」は、上記サーバ上において、エンティティ(実体)を持つものである。
また、引用例の図2の、仮想フォルダ及び仮想ファイルの階層関係の情報を表示機構203に表示した「イメージ301」における「File11 305」や「File12 306」で示される「仮想ファイル」は、本願発明における「イメージ」に相当するものである。
よって、引用例記載の発明における「分散ファイルシステムにおけるサーバ上のデータセットのメンバに対応する少なくとも1つの仮想ファイル」は、本願発明における「アイテムに対するエンティティとして使用される少なくとも1つのイメージ」に相当するということができる。

(う)引用例記載の発明における「クライアント側の表示機構」、「サーバのファイル」は、それぞれ、本願発明における「表示デバイス」、「第1の記憶デバイス」に相当する。

(え)引用例記載の発明における「区分データセット名」、「対応情報保持機構」は、本願発明における「プロパティ」、「第2の記憶デバイス」に相当する。

(お)引用例記載の発明における「マウス」は、本願発明における「ポインティングデバイス」に相当する。
また、本願発明における「入力デバイス」には、「(40または42)」という参照符号が付されており、本願発明における「ポインティングデバイス(42)」も含まれるものと解されるから、引用例記載の発明における「マウス」は、本願発明における「入力デバイス」にも相当するということができる。
仮に、「入力デバイス」が、「ポインティングデバイス」以外の入力デバイスを指すとしても、引用例記載の発明において、「マウス」以外の、例えば「キーボード」等は、コンピュータシステムとしてごく普通に備える構成であると解されることから、引用例記載の発明においても、「マウス(ポインティングデバイス)」以外の入力デバイスをごく普通に備えていると解される。

(か)引用例記載の発明においては、「或る区分データセット名」を有する「データセットの少なくとも1つのメンバ」を「1つの仮想的なグループ」とみなし、プロセッサにより、該グループに対応する「仮想フォルダ」を作成するようにしている。
一方、本願発明においては、入力デバイスにより入力された「クエリー」に合致する「アイテムのプロパティ」をデータベース上で検索することにより、1つの検索条件を満足する「少なくとも1つのアイテム」を検出し、当該検出された「少なくとも1つのアイテム」を「1つの仮想的なグループ」とみなし、プロセッサにより、該グループに対応する「仮想フォルダ」を作成している。
ここで、上記「少なくとも1つのアイテム」(引用例記載の発明における「データセットの少なくとも1つのメンバ」に相当)は、入力デバイスにより入力されたクエリーに合致する或る「プロパティ」(引用例記載の発明における「区分データセット名」に相当)を有することには変わりないから、本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、「或るプロパティを有する少なくとも1つのアイテムを1つの仮想的なグループとみなし、プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップ」を備える点において、共通するということができる。

(き)上記(い)で述べたように、引用例記載の発明における「メンバ」、「仮想ファイル」は、それぞれ、本願発明における「アイテム」、「イメージ」に相当するものである。
そして、本願発明においては、「仮想フォルダ」を表示画面上に表示してから、表示されている該「仮想フォルダ」を選択した後に、当該選択された仮想フォルダの中に含まれる「アイテムのイメージ」を表示画面に表示するようにしているが、「仮想フォルダ」と「該仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージ」の両方を表示画面に表示することには変わりない。
よって、本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、「仮想フォルダ及び該仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージを、プロセッサにより表示画面に表示するステップ」を備える点において、共通するものであるということができる。

上記(あ)?(き)の事項を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「アイテムに対するエンティティとして使用される少なくとも1つのイメージをコンピュータの表示デバイスの表示画面に表示する方法であって、前記コンピュータは前記表示デバイス、複数の前記アイテムを記憶する第1の記憶デバイス、前記複数の各々に関連する複数のプロパティをデータベースの形態で記憶する第2の記憶デバイス、入力デバイス、ポインティングデバイスおよびプロセッサを有し、
或るプロパティを有する少なくとも1つのアイテムを1つの仮想的なグループとみなし、前記プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップと、
前記仮想フォルダ及び該仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージを、前記プロセッサにより前記表示画面に表示するステップと
を備える方法。」
である点。

(相違点)
相違点1:本願発明は、「入力デバイスによりクエリーを入力するステップ」と「プロセッサにより、クエリーに合致する、アイテムのプロパティをデータベース上で検索することにより、1つの検索条件を満足する少なくとも1つのアイテムを検出するステップ」とを備えるものであり、「或るプロパティを有する少なくとも1つのアイテムを1つの仮想的なグループとみなし、プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップ」が、「(前記検出するステップにより)当該検出された少なくとも1つのアイテムを1つの仮想的なグループとみなし、プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップ」であるのに対し、引用例記載の発明は、そのようなものではない点。

相違点2:本願発明は、「当該作成された仮想フォルダをプロセッサにより前記表示画面上に表示するステップ」と「ポインティングデバイスにより、表示されている仮想フォルダを選択するステップ」とを備えるものであり、「仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージを、プロセッサにより表示画面に表示するステップ」が、「当該選択された仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージを、前記プロセッサにより前記表示画面に表示するステップ」であるのに対し、引用例記載の発明は、そのようなものではない点。

相違点3:本願発明は、「仮想フォルダ内のアイテムのイメージの表示を該アイテムが実際に含まれる物理フォルダの表示に切り替え可能である」のに対し、引用例記載の発明は、そのようなものではない点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。

(相違点1,2について)
上記周知例記載の技術における「検索/分類に必要な検索式」、「文書」、「文書の属性」、「構造化文書格納手段」、「検索/分類条件」、「マウスボタン」、「文書に対応するアイコン」は、それぞれ、本願発明における「クエリー」、「アイテム」、「アイテムのプロパティ」、「データベース」、「検索条件」、「ポインティングデバイス」、「アイテムのイメージ」に相当する構成である。
してみれば、仮想フォルダ内のアイテムを表示するという引用例記載の発明と共通の技術分野に属する上記周知例記載の技術を引用例記載の発明に対して適用することにより、「入力デバイスによりクエリーを入力するステップ」、「プロセッサにより、クエリーに合致する、アイテムのプロパティをデータベース上で検索することにより、1つの検索条件を満足する少なくとも1つのアイテムを検出するステップ」、「当該検出された少なくとも1つのアイテムを1つの仮想的なグループとみなし、プロセッサにより、該グループに対応する仮想フォルダを作成するステップ」、「当該作成された仮想フォルダをプロセッサにより前記表示画面上に表示するステップ」、「ポインティングデバイスにより、表示されている仮想フォルダを選択するステップ」、及び「当該選択された仮想フォルダの中に含まれるアイテムのイメージを、前記プロセッサにより前記表示画面に表示するステップ」を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点3について)
一般に、ファイル管理システムにおいて、ファイルが実際に含まれる物理フォルダを表示するような表示形式は、例えば、特開2002-140216号公報の段落【0023】及び図3に「通常表示」形式として記載されているような、ごく一般的な表示形式にすぎない。
また、上記特開2002-140216号公報に見られるように、そのような「通常表示」形式とそれ以外の表示形式とを切り替え可能とすることも、ごく普通に行われていることである。
してみれば、引用例記載の発明において、「仮想フォルダの中に含まれるメンバに対応する仮想ファイル(仮想フォルダ内のアイテムのイメージ)」の表示を、ごく一般的な「アイテムが実際に含まれる物理フォルダの表示」に切り替え可能であるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知例記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知例記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-26 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-14 
出願番号 特願2004-569997(P2004-569997)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 工藤 嘉晃  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 飯田 清司
甲斐 哲雄
発明の名称 様々なタイプおよび様々な物理位置からのアイテムを表示するためのファイルシステム  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 柿沼 健一  

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