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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1259342 |
審判番号 | 不服2011-11911 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-06 |
確定日 | 2012-06-25 |
事件の表示 | 特願2001-261559「顔画像処理方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月10日出願公開、特開2002-133446〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年8月30日(優先権主張:平成12年8月30日 米国)に出願されたものであって、平成22年11月10日付け拒絶理由に対して平成23年1月19日付けで手続補正書が提出されたが、平成23年2月8日付けで拒絶査定がされたものである。 これに対して平成23年6月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されている。 第2 平成23年6月6日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年6月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 当該補正書による補正後の請求項に係る発明は、平成23年6月6日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された次のものと認められる。 【請求項1】 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、少なくとも1つの光源が偏光されるステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理方法。 【請求項2】 請求項1に記載の方法において、少なくとも1つの光源は赤外線光の光源であることを特徴とする方法。 【請求項3】 請求項1に記載の方法において、前記複数の光源は周波数が異なることを特徴とする方法。 【請求項4】 第1の測定器および第2の測定器および処理装置を有するコンピュータシステムにおいて、前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、少なくとも1つの光源が偏光されるステップであって、当該光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあるものと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を導出ステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップであって、当該アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであるものと、 を実行させ、偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。 【請求項5】 第1の測定器および第2の測定器および処理装置を有するコンピュータシステムにおいて、前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、全ての光源が偏光されるステップであって、当該光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあるものと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップであって、当該アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであるものと、 を実行させ、偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。 【請求項6】 第1の測定器および第2の測定器および処理装置を有するコンピュータシステムにおいて、前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、全ての光源が偏光されるステップであって、当該光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあるものと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップであって、当該アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであるものと、を実行させ、偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。 【請求項7】 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータに汎用顔テンプレートを適用して前記レンジマップデータに関連するノイズを除去するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、ことを特徴とする顔画像処理方法。 【請求項8】 第1の測定器および第2の測定器および処理装置を有するコンピュータシステムにおいて、前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、当該光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあるものと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータに汎用顔テンプレートを適用して前記レンジマップデータに関連するノイズを除去するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップであって、当該アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであるものと、 を実行させ、偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。 【請求項9】 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータを処理装置によりフィルタリングするステップと 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理方法。 【請求項10】 第1の測定器および第2の測定器および処理装置を有するコンピュータシステムにおいて、前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、当該光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあるものと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータをフィルタリングするステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップであって、当該アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであるものと、 を実行させ、偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。 【請求項11】 複数の異なる光源で1つの顔を照射する手段であって、少なくとも1つの光源が偏光される手段と、 前記照射からレンジマップデータを測定する手段と、 前記照射からイメージデータを測定する手段と、 前記レンジマップデータから3次元面を導出する手段と、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算する手段と、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算する手段と、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理システム。 【請求項12】 請求項11に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの光源は赤外線光の光源であることを特徴とするシステム。 【請求項13】 請求項11に記載のシステムにおいて、前記複数の光源は周波数が異なることを特徴とするシステム。 【請求項14】 複数の異なる光源で1つの顔を照射する手段であって、全ての光源が偏光される手段と、 前記照射からレンジマップデータを測定する手段と、 前記照射からイメージデータを測定する手段と、 前記レンジマップデータから3次元面を導出する手段と、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算する手段と、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算する手段と、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理システム。 【請求項15】 第1の測定器と、 第2の測定器と、 処理装置と、 前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、少なくとも1つの光源が偏光されるステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を導出ステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップと、 を実行させるプログラムを記録した記録媒体と、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理システム。 【請求項16】 請求項15に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの光源は赤外線光の光源であることを特徴とするシステム。 【請求項17】 請求項15に記載のシステムにおいて、前記複数の光源は周波数が異なることを特徴とするシステム。 【請求項18】 第1の測定器と、 第2の測定器と、 処理装置と、 前記処理装置に、 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、全ての光源が偏光されるステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を導出ステップと、 前記3次元面に対する面法線を計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを計算するステップと、 を実行させるプログラムを記録した記録媒体と、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理システム。 この補正は、補正前の請求項1、4?11、14、15、18にの発明特定事項を限定的に減縮したものであるから、当該補正は特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、これを平成18年改正前特許法と記す)第17条の2第4項第2号))に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1ないし18の内、請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 以下、平成23年6月6日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明を「本願補正後発明」とする。 2.公知刊行物の記載 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(特開平11-326057号公報)には、対応する図面(特に図1、図9)と共に、以下の内容が記載されている。 (ア)「(57)【要約】 【課題】 三次元物体の形状と色を同期させて計測する計測装置において、表面反射光と内部拡散光とを区別して計測することにより、色も正確に計測できるようにする。また、これにより三次元物体の色彩値、分光反射率を得、また光沢度も評価できるようにする。 【解決手段】 レンジファインダ20等の三次元形状の計測装置と測色装置40からなり、互いの計測値を同期させて出力する三次元物体の計測装置1Aにおいて、測色装置40を、測定対象物2に偏光を照射する偏光照射部41、その偏光の測定対象物2からの反射光を偏光フィルタ42を通して受光する受光器43から構成する。」 (イ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 測定対象物の三次元形状の計測と測色とを同期させて行う三次元物体の計測方法において、測色用照射光に偏光を使用し、その偏光の測定対象物からの反射光を偏光フィルタを通して受光することにより、測定対象物の測色を内部拡散光又は表面反射光に基づいて行うことを特徴とする三次元物体の計測方法。 【請求項2】 測定対象物の三次元形状の計測と測色にそれぞれ使用する光源及び測定対象物からの反射光を受光する受光器を、測定対象物に対して同時に移動させ、測定対象物の三次元形状の計測部位と測色部位とを同時に走査することにより三次元形状の計測と測色とを同期させる請求項1記載の三次元物体の計測方法。 【請求項3】 照射した偏光の測定対象物からの反射光を、偏光フィルタを通してカラーCCDカメラで受光し、内部拡散光の測色値としてRGB値を出力するか、該RGB値を、測定対象物の三次元形状に基づいて照度補正し、照度補正後のRGB値に基づいて三刺激値XYZ、色彩値L*a*b*もしくは色彩値L*u*v*を出力するか、又は照度補正後のRGB値に基づいて主成分分析法により算出した分光反射率を出力する請求項1又は2記載の三次元物体の計測方法。」 (ウ)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、図9に示すように、一般に皮膚S等の物体に自然光Lが入射すると、その一部は表面で反射し(表面反射光L1)、他は物体内部へ入射し、散乱と吸収を繰り返し、再度表面から射出する(内部拡散光L2)。ここで、表面反射光L1は皮膚表面の小じわや毛穴等の凹凸情報を持ち、内部拡散光L2は、シミ、そばかす、色むら等の色に関する情報をもつ。そのため、物体の表面凹凸形状に関わらず、色自体を計測する場合には、その物体の内部拡散光L2を計測することが必要となる。」 (エ)「【0013】本発明の計測装置によれば、互いに出力値を同期させることのできる三次元形状の計測装置と測色装置とからなるので、物体の三次元形状と色との情報を併せ持った計測値を容易に得ることができる。さらにこの場合、測色装置が、測定対象物の内部拡散光を計測するようにした場合には、表面凹凸の影響を受けることなく、測定対象物の三次元形状を構成する任意の表面部位について、内部拡散光に基づいた測色結果を正確に得ることが可能となる。また、この内部拡散光に基づく測色結果をRGB値で得た場合、そのRGB値に基づいて三刺激値(XYZ)、色彩値(L*a*b*、L*u*v*等)、分光反射率特性も正確に得ることが可能となる。」 (オ)「【0017】この計測装置1Aは、図6及び図7に示した従来の計測装置1と同様に、人の顔等の測定対象物2を固定するセンターテーブル3と測定対象物2の周囲を矢印Aのように回転移動するディジタイザユニット10Aからなっている。 【0018】ディジタイザユニット10Aには、三次元形状の計測装置として公知のスリット光投影法により測定対象物2の三次元形状を測定するレンジファインダ20と、測色装置40とが内蔵されている。このレンジファインダ20は、レーザ光を発する形状計測用光源21、形状計測用光源21から発せられたレーザ光を垂直スリット光に変化させ、測定対象物2上に投影するレンズ系22及びこのスリット光を測定対象物2が切断する際の断面形状を画像解析するために使用する白黒CCDカメラ23からなっている。なお、この白黒CCDカメラ23に代えてカラーCCDカメラを設けてもよい。 【0019】また、レンジファインダ20は、ディジタイザユニット10Aを測定対象物2の周りに矢印A方向に回転移動させて測定対象物2の検出部位を走査したときの白黒CCDカメラ23の出力に基づいて測定対象物2の三次元形状を算出する演算手段(図示せず)を、ディジタイザユニット10A外に有している。 【0020】一方、ディジタイザユニット10A内の測色装置40は、この計測装置1Aに特徴的な装置であり、測定対象物2に偏光を照射する偏光照射部41、偏光照射部41から発せられた偏光の測定対象物2からの反射光を偏光フィルタ42を通して受光する受光器43からなっている。また、測色装置40は、受光器43で検出された偏光の検出値に基づいて測定対象物2の内部拡散光又は表面反射光の計測値を出力する演算手段(図示せず)を、ディジタイザユニット10A外に有している。 【0021】測色装置40の偏光照射部41は、光源44及び偏光フィルタ45からなっており、この光源44としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フリッカーフリー蛍光灯等を使用することができる。偏光フィルタ45としては、市販品を特に制限なく使用することができる。 【0022】受光器43の前面の偏光フィルタ42としては、偏光照射部41の偏光フィルタ45と同様のものを使用することができるが、測定対象物2の内部拡散光、表面反射光又はこれら双方のいずれを検出するかに応じて、受光器43の前面の偏光フィルタ42と偏光照射部41の偏光フィルタ45の互いの偏光方向のなす角度が適宜直角又は同一方向となるようにする。即ち、測定対象物2の色を正確に計測するために内部拡散光を選択的に検出するには、受光器43の前面の偏光フィルタ42と偏光照射部41の偏光フィルタ45の偏光方向が直角になるようにして、表面反射光が偏光フィルタ42を通過しないようにする。また、測定対象物2の表面反射光を選択的に検出するには、受光器43の前面の偏光フィルタ42と偏光照射部41の偏光フィルタ45の偏光方向が同一となるようにし、測定対象物2に入射した光の偏光方向が維持されている表面反射光が偏光フィルタ42を透過できるようにする。」 (カ)「【0031】この計測装置1Aでは、以上のようにして測色装置40で求められる内部拡散光又は表面反射光に基づく計測値を、レンジファインダ20により求められる計測値と同期させて出力するので、測定対象物2の三次元形状の各点ごとに正確に色彩、明度、分光反射率、光沢、質感等の情報をもった画像を形成することができる。 【0032】したがって、例えば人の顔を測定対象物2とした場合にこの計測装置1Aで得られるフルカラー円筒投影画像は、図8に示した従来のフルカラー円筒投影画像に比して、図3に示したように、陰影による暗さと皮膚自体の色の暗さとが区別されたものとなる。 」 したがって、これら(ア)?(カ)の記載及び図面の内容を総合すると、刊行物1には、次の(キ)なる発明が記載されていると認められる。 (キ)測定対象物の三次元形状の計測と測色にそれぞれ使用する複数の異なる光源21、44で人の顔等等の測定対象物を照射するステップであって、一方の光源44は偏光フィルタで45で偏光されるステップと、 前記照射から測定対象物の三次元形状をCCDカメラ23により測定するステップと、 前記照射から測定対象物からの反射光を偏光フィルタを通して受光器43により測定するステップと、 偏光された光源を用いることによって表面反射光が抑止され、画像中に内部拡散光のみを残す内部拡散光計測値を、CCDカメラにより求められる計測値と同期させて出力することにより、測定対象物の三次元形状の各点ごとに正確に色彩、明度、分光反射率、光沢、質感等の情報をもった画像を形成するステップを実行するものであって、 前記光源が、ディジタイザユニットにCCDカメラ、受光器とともに固定して設けられ、 偏光された光源を用いることによって、表面反射光が抑止され、画像中に内部拡散光のみを残す、 ことを特徴とする顔画像処理方法。 3 対比 本願補正後発明と刊行物1発明とを対比する。 (1)刊行物1発明の「CCDカメラ23」、「受光器43」は、それぞれ、本願補正後発明の「第1の測定器」、「第2の測定器」に相当し、刊行物1発明において、CCDカメラ23により測定される「測定対象物の三次元形状」、受光器43により測定される「測定対象物からの反射光」は、それぞれ、本願補正後発明における「レンジマップデータ」、「イメージデータ」に相当する。 (2)刊行物1発明は、CCDカメラと受光器の複数の測定部で測定した値を処理することにより人の顔等の測定対象物を計測するものであるから、顔画像を処理するものである。 (3)刊行物1発明における「光源」は、ディジタイザユニットとして、CCDカメラ、受光器とともに固定して設けられるものであるから、「光源」は測定装置に対して一定位置にあるものである。 (4)本願補正後発明において、 「 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するもの」 という技術事項は、 “前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理し、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップを有し” ということであるから、該技術事項は、 “レンジマップデータから3次元面を導出し、導出された3次元面上のポイントにイメージデータを処理して得られた拡散反射率を対応付ける”工程を意味している。 一方、刊行物1発明における、「画像中に内部拡散光のみを残す内部拡散光計測値を、CCDカメラにより求められる計測値と同期させて出力する」という技術事項は、CCDカメラにより得られる測定対象物の表面像と内部拡散計測値を対応付けることである。 したがって、本願補正後発明と刊行物1発明は、両者とも、測定されたレンジマップデータ(測定対象物の表面像)とイメージデータ(内部拡散計測値)を対応付けるものといえる。 そうすると、本願補正後発明と刊行物1発明とは、 次の(ク)において一致し、(ケ)、(コ)において相違する。 [一致点] (ク)複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、少なくとも1つの光源が偏光されるステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 を有し、 測定されたレンジマップデータとイメージデータを対応付け、 偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残すものであり、 光源は測定装置に対して一定位置にあり、 ことを特徴とする顔画像処理方法。 [相違点] (ケ)測定されたレンジマップデータとイメージデータを対応付けることが、本願補正後発明において、 「 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、」 とされているのに対し、刊行物1発明は、 「偏光された光源を用いることによって表面反射光が抑止され、画像中に内部拡散光のみを残す内部拡散光計測値を、CCDカメラにより求められる計測値と同期させて出力することにより、測定対象物の三次元形状の各点ごとに正確に色彩、明度、分光反射率、光沢、質感等の情報をもった画像を形成する 」 ことである点。 (コ)本願補正後発明が、「前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にあり、」というものであるのに対し、刊行物1発明では、ディジタイザユニット(本願補正後発明における「測定装置」に相当)は、測定対象物の周囲を回転移動するものであり、「静止した」ものではない点。 4 当審の判断 上記相違点(ケ)?(コ)について検討する。 (1)相違点(ケ)について 前記したように、本願補正後発明において、 「 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するもの」 とは、 “前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理し、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップを有し” ということであるから、該ステップは、 “レンジマップデータから3次元面を導出し、導出された3次元面上のポイントにイメージデータを処理して得られた拡散反射率を対応付けること”に他ならない。 一方、拒絶理由通知において提示した公知刊行物2(特開平10-124680号公報)にも記載されているように、三次元物体の三次元モーフィングとして、物体表面をモデルを三角形ポリゴンで分割し、各ポリゴンの表現として面法線ベクトルを用いることはコンピュータアニメーションにおける周知の技法である。 してみれば、刊行物1発明において、三次元面(三次元物体の表面)を、面法線ベクトルで定義されるポリゴンによって表現することは当業者が適宜採用可能な態様である。 刊行物2には、刊行物1発明と同様、1人の顔の三次元モデルを生成する場合について記載されており、刊行物1発明を刊行物2に記載されている発明に適用することは容易に想起することである。 そして、刊行物1発明における三次元面をポリゴン化、すなわち面法線で表現した場合には、物体の表面画像の各画素位置に対応づけられている拡散反射率が、各画素位置ではなく、各ポリゴン毎に対応付けられることになるのは当然の帰結にすぎない。 ポリゴンは面法線ベクトルで定義されるのであるから、拡散反射率は、ポリゴン毎に対応づけるのではなく、三次元物体をポリゴンを三次元表現した場合の各面に対応付けるようにすることは、当業者であれば容易に想考し得ることである。 言い方を変えれば、三次元物体表面をポリゴンで表現したものにおいて、各ポリゴンで表現される面の情報の1つとして、刊行物1発明のように、その物体の面の拡散反射率を対応付けることに格別の困難性はなく、本願補正後発明は、当業者が容易に想到したものであるといえる。 なお、本願補正後発明において「アルベドマップ」という用語を用いている機能の内容は、物体の表面位置に位置における何らかのデータを対応付けることであって、刊行物1発明を周知の表現で表すことは、「前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算する」ことと等価である。 (2)相違点(コ)について 三次元画像を生成する際に、被写体を静止させて測定装置及び光源を回転させる(刊行物1発明)こと、測定装置及び光源を静止させて被写体を回転させる(本願補正後発明)ことは、被写体と測定装置の相対的関係には違いがないものであり、何れも周知の手法である。 そのどちらの手法を採用するかは当業者が適宜設計変更し得る程度のものにすぎない。 5.補正の却下についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成23年6月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成23年1月19日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項18までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。 【請求項1】 複数の異なる光源で1つの顔を照射するステップであって、少なくとも1つの光源が偏光されるステップと、 前記照射からレンジマップデータを第1の測定器により測定するステップと、 前記照射からイメージデータを第2の測定器により測定するステップと、 前記レンジマップデータから3次元面を処理装置により導出するステップと、 前記3次元面に対する面法線を前記処理装置により計算するステップと、 前記面法線および前記イメージデータを処理してアルベドマップを前記処理装置により計算するステップと、 を有し、 前記アルベドマップが、特殊タイプのテキスチャマップであり、当該特殊タイプのテキスチャマップでは、各サンプルが、顔の3D面の記述に加えて、面上の特定ポイントにおける顔面の拡散反射率を記述するものであり、 前記光源が、静止した測定装置に対して一定位置にある、 ことを特徴とする顔画像処理方法。 2.引用刊行物に記載の発明 原査定の拒絶理由に引用された刊行物1、2および、その記載事項は、前記「第2」における[理由]の2.あるいは4.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願請求項1に係る発明は、前記「第2における[理由]の1.」で検討した本願補正後発明から、光源が「偏光された光源を用いることによって、鏡面反射が抑止され、画像中に拡散成分のみを残す」ものであるという限定事項を省いたものである。 そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「第2における[理由]の4.」に記載したとおり、引用刊行物の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用刊行物の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2から請求項18に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 第4 まとめ 審判請求の理由について審理した結果は上記のとおりであり、拒絶査定を取り消す理由は存在しないから、結論のとおり審決する。 第5 付記 (1)審判請求人は、意見書及び審判請求書において、知財高裁平成21年10月22日判決(平成20(行ケ)10398)を引用しての主張をしている。 しかしながら、上記審決において論じたように、本願発明は引用した各刊行物に記載の発明を互いに適用したものと判断されるのであって、単に判断対象の発明の各構成要件に類似する構成が複数の文献に存在することが認められるという理由で判断したものではない。 したがって、当該主張は採用できない。 (2)審判請求人は平成23年10月31日付け提出の回答書において補正案を示し、補正書の提出の機会を求めている。 しかしながら、原審手続に瑕疵はなく、上記したように原審の判断にも誤りはないのであるから、補正を認める理由はない。 なお、補正案における「異なった位置から採取された複数のイメージに対するアルベドマップを前記処理装置により計算する」ことは、発明の詳細な説明に記載されている事項ではない。 回答書において補正の根拠と主張する段落【0012】【0088】には、アルベトマップを求める際に被写体が複数の光源によって照射されることは記載されているが、「異なった位置から採取された複数のイメージに対するアルベドマップを前記処理装置により計算する」ことは記載されていない。 したがって、仮に補正の機会を与えたからと言って、当該補正案を採用することにはならない。 |
審理終結日 | 2012-02-02 |
結審通知日 | 2012-02-03 |
審決日 | 2012-02-14 |
出願番号 | 特願2001-261559(P2001-261559) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 真木 健彦 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
古川 哲也 吉村 博之 |
発明の名称 | 顔画像処理方法およびシステム |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 中村 彰吾 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 千葉 昭男 |