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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1259384 |
審判番号 | 不服2010-29500 |
総通号数 | 152 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-28 |
確定日 | 2012-07-05 |
事件の表示 | 特願2004- 36908「画像記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月 4日出願公開、特開2004-306589〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 (1)手続の経緯 本願は、平成16年2月13日(優先権主張平成15年3月25日)の出願であって、平成19年2月13日及び平成22年6月21日に手続補正がなされ、同年9月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、平成24年2月2日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月9日付けで手続補正がなされたものである。 (2)本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成24年4月9日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載の事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、平成24年4月9日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。 「光を照射することによって硬化するインクを吐出する記録ヘッドと、 記録媒体上の前記インクを硬化させるための光を照射する光源と、 前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後、前記インクを加熱する第1の加熱手段と、 前記第1の加熱手段による前記インクの加熱の前であって、前記記録ヘッドから前記記録媒体上へのインク吐出前に前記記録媒体に加熱を行い、当該記録媒体を狭持搬送する一対のローラにより構成された第3の加熱手段と、 前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後、前記記録媒体を加圧する加圧手段と、 前記第1の加熱手段及び前記加圧手段により加熱加圧処理がなされた記録媒体に対して加熱を行う第2の加熱手段と、 前記記録媒体上の任意の領域に対する最後のインク吐出から第1の所定時間経過後に、第1の加熱手段による前記インクへの加熱を開始し、前記インクの被加熱時間を第2の所定時間となるように制御する制御手段とを有し、 前記第2の所定時間が0.1?10秒の範囲となるように制御されることを特徴とする画像記録装置。」(以下「本願発明」という。) 2 刊行物の記載事項 当審拒絶理由で引用した「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-336295号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】着色剤と、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーと、光重合開始剤と、水性溶媒とを少なくとも含んでなる、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。 …(略)… 【請求項19】インク組成物の液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、 前記インク組成物として、請求項1?18のいずれか一項に記載のインク組成物を用いることを特徴とする、インクジェット記録方法。 【請求項20】前記インク組成物の液滴を記録媒体に付着させた後に硬化反応を行うことを含んでなる、請求項19に記載の記録方法。 【請求項21】前記硬化反応が紫外線照射をすることにより行なわれる、請求項20に記載の記録方法。」 イ 「【0083】本発明によるインクジェット記録方法にあっては、インク組成物を記録媒体付着させた後に、光照射を照射する。照射された光によって光重合開始剤がラジカル等を生じ、これによって、オリゴマー(例えば、ウレタン系オリゴマー)とモノマー(例えば、三官能以上の反応基を有するモノマー)とが重合反応を開始してインク組成物中の着色剤(例えば、アナターゼ型二酸化チタン)を記録媒体に固着する。これにより、金属やプラスチック等の水性媒体を浸透することが不可能な媒体表面にも鮮明でかつ膜強度、耐薬剤性に優れた印字を行うことができるものと考えられる。光照射は、可視光照射、紫外線照射であってもよく、特に紫外線照射が好ましい。 【0084】本発明の好ましい態様によれば、紫外線照射を行う場合、紫外線照射量は、100mJ/cm^(2)以上、好ましくは500mJ/cm^(2)以上であり、また、10,000mJ/cm^(2)以下、好ましくは5,000mJ/cm^(2)以下の範囲で行う。かかる程度の範囲内における紫外線照射量であれば、十分硬化反応を行うことができ、また紫外線照射によって着色剤が退色してしまうことも防止できるので有利である。 【0085】紫外線照射は、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプが挙げられる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。 【0086】また、本発明によるインクジェック記録方法では、光照射と同時またはその後に加熱してもよい。任意成分として水性溶媒を含んでなるインク組成物を記録媒体に付着する場合、記録媒体に残存する水分を特に加熱手段を用いて除去することにより、重合反応を効率良く行うことができる。その結果、記録媒体に印字された印字物の固着性を高め、膜強度や耐薬剤性を向上させることが可能となる。 【0087】加熱は、記録媒体に熱源を接触させて加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブ(2,450Mhz程度に極大波長を持つ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど記録媒体に接触させずに加熱する方法などが挙げられる。」 ウ 「【0094】評価試験a 上記組成のインク組成物(例1a?5a)をそれぞれインクジェット記録装置の記録ヘッドに充填し、記録媒体であるプリント基板上に付着させて印字を行った。その後、50℃10分間乾燥後、紫外線照射量2,000mJ/cm^(2)で紫外線照射を行った。 【0095】インクジェット記録装置はインクジェットプリンターMJ510C(セイコーエプソン社製)を使用した。紫外線照射に使用した照射ランプは、メタルハライドタイプで、365nmの波長のものを用いた。上記インク組成物および上記記録媒体に印字された印字物について、以下の試験を行い評価した。」 エ 「【0105】評価試験b 上記組成のインク組成物(例1b?3b)をそれぞれインクジェット記録装置の記録ヘッドに充填し、記録媒体であるプリント基板上に付着させて印字を行った。その後、50℃ 10分間乾燥後、紫外線照射を行った。インクジェット記録装置はインクジェットプリンターMJ510C(セイコーエプソン社製)を使用した。紫外線照射に使用した照射ランプは、メタルハライドタイプで、365nmの波長のものを用いた。」 オ 上記アないしエからみて、引用例には、 「着色剤と、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーと、光重合開始剤と、水性溶媒とを少なくとも含んでなる、光硬化型インクジェット記録用インク組成物を、インクジェット記録装置の記録ヘッドに充填し、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物の液滴を記録媒体に付着させ、その後に、紫外線照射ランプを用いて光照射をし、前記光重合開始剤にラジカル等を生じさせ、これによって、前記ウレタン系オリゴマーと前記三官能以上の反応基を有するモノマーとの重合反応すなわち硬化反応を行わせて、前記インク組成物中の前記着色剤を前記記録媒体に固着させ、その後に、前記記録媒体に熱源を接触させて加熱して、印刷を行うようにしたインクジェット記録装置。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「光照射」、「重合反応すなわち硬化反応」、「インクジェット記録用インク組成物」、「光硬化型インクジェット記録用インク組成物」、「インクジェット記録装置の記録ヘッド」、「記録媒体」、「『光照射』をする『紫外線照射ランプ』」、「紫外線照射ランプを用いて光照射をし、前記光重合開始剤にラジカル等を生じさせ、これによって、前記ウレタン系オリゴマーと前記三官能以上の反応基を有するモノマーとの重合反応すなわち硬化反応を行わせて、前記インク組成物中の前記着色剤を前記記録媒体に固着させ、その後」、「『インク組成物中の前記着色剤』を『固着させ』た後の『記録媒体』に『接触』させて『加熱』する『熱源』」及び「インクジェット記録装置」は、それぞれ、本願発明の「光を照射すること」、「硬化する」、「インク」、「光を照射することによって硬化するインク」、「インクを吐出する記録ヘッド」、「記録媒体」、「光を照射する光源」、「前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後」、「前記インクを加熱する第1の加熱手段」及び「画像記録装置」に相当する。 (2)引用発明において、「第1の加熱手段(熱源)」による前記「インク」への「加熱」は、「記録媒体」に、「記録ヘッド(インクジェット記録装置の記録ヘッド)」に充填した「インク(光硬化型インクジェット記録用インク組成物)」の液滴を付着させ、その後に、「光を照射する光源(紫外線照射ランプ)」を用いて光照射をして硬化反応を行わせて「記録媒体」に固着させた後であり、インクジェット記録の技術分野の技術常識からして、上記の「記録ヘッドに充填したインクの液滴を記録媒体に付着させ」ることは、記録ヘッドからインクを液滴にして吐出することにより行うものであると解されるから、上記「第1の加熱手段による前記インクへの加熱」を開始する時期は、前記「記録媒体」上の任意の領域に対する最後のインク吐出から所定の時間が経過後になるものと解される。 また、上記「第1の加熱手段による前記インクへの加熱」により、前記「インク」が加熱される時間にはある長さの時間が必要であることは当業者に自明であるから、前記インクは第1の加熱手段により所定時間加熱されるものと解される。 そして、インクジェット記録装置は、その各装置要素の駆動を制御する制御手段を備えていること、及び、インクジェット記録装置における、記録媒体の搬送や、加熱手段による加熱の制御等は、制御手段により行うようになされていることは、いずれも当業者に自明の事項である。 したがって、引用発明は、本願発明の「前記記録媒体上の任意の領域に対する最後のインク吐出から第1の所定時間経過後に、第1の加熱手段による前記インクへの加熱を開始し、前記インクの被加熱時間を第2の所定時間となるように制御する制御手段とを有し」との事項を備えているといえる。 (3)引用発明の「光源(紫外線照射ランプ)」は、光照射を、光硬化型インクジェット記録用インク組成物の液滴を記録媒体に付着させた後に行って、ウレタン系オリゴマーと前記三官能以上の反応基を有するモノマーとの重合反応すなわち硬化反応を行わせるから、本願発明の「光源」と、「記録媒体上の前記インクを硬化させるための光を照射する」点で一致する。 (4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、 「光を照射することによって硬化するインクを吐出する記録ヘッドと、 記録媒体上の前記インクを硬化させるための光を照射する光源と、 前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後、前記インクを加熱する第1の加熱手段と、 前記記録媒体上の任意の領域に対する最後のインク吐出から第1の所定時間経過後に、第1の加熱手段による前記インクへの加熱を開始し、前記インクの被加熱時間を第2の所定時間となるように制御する制御手段とを有する画像記録装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1: 本願発明では、 前記画像記録装置が、「前記第1の加熱手段による前記インクの加熱の前であって、前記記録ヘッドから前記記録媒体上へのインク吐出前に前記記録媒体に加熱を行い、当該記録媒体を狭持搬送する一対のローラにより構成された第3の加熱手段」と、「前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後、前記記録媒体を加圧する加圧手段」と、「前記第1の加熱手段及び前記加圧手段により加熱加圧処理がなされた記録媒体に対して加熱を行う第2の加熱手段」とを有しているのに対して、 引用発明では、 前記「画像記録装置(インクジェット記録装置)」が「記録媒体」を搬送する手段を有していることは当業者に自明であるが、 前記「画像記録装置」は、 前記「第1の加熱手段(熱源)」による前記「インク」の加熱の前であって、前記「記録ヘッド」から前記「記録媒体」上へのインク吐出前には、前記「記録媒体」に加熱を行う加熱手段を有しておらず、 前記「光源(紫外線照射ランプ)」が前記「記録媒体」上の前記「インク(インク組成物)」に光を照射して硬化反応が行われた後、前記「インク」を加熱する「第1の加熱手段(熱源)」は、前記「記録媒体」に接触して該「記録媒体」を加熱するものであるが、その接触が「加圧」とまでいえるものかどうかは明らかでなく、 前記「第1の加熱手段(熱源)」以外の「加熱手段」を有してはいない点。 相違点2: 本願発明では、前記制御手段が前記インクの被加熱時間を第2の所定時間となるように制御するところの前記第2の所定時間が「0.1?10秒の範囲」であるのに対して、 引用発明では、前記制御手段が前記インクの被加熱時間をどれほどの時間になるように制御するのかは不明である点。 4 判断 上記相違点1及び2について検討する。 (1)相違点1について ア 記録媒体を、少なくとも一方が加熱ローラ(加熱部材)である一対のローラで挟持して搬送しながら加熱加圧するようになっているインクジェットプリンタは、本願優先日前に周知であり(以下「周知技術1」という。例.当審拒絶理由で引用した特開2000-103044号公報(【請求項1】、【請求項2】、【0014】?【0019】、【0035】?【0043】、【0051】?【0052】、【0062】?【0066】、図1参照。)、同じく当審拒絶理由で引用した特開平3-169644号公報(3頁右下欄4?11行、4頁左下欄19行?同頁右下欄9行、第1図参照。)、同じく当審拒絶理由で引用した特開2001-162783号公報(【請求項1】、【0010】?【0012】、【0051】、【0058】、【0065】?【0068】、【0090】、【0186】?【0187】、図3参照。))、周知技術1によれば、加熱部材が直接記録媒体と接触するので、発熱部材からの記録媒体への熱の伝達効率が非接触方式の乾燥手段より格段に向上すること、及び、周知技術1によれば、押圧により、記録媒体上に吐出されたインクに光沢性を持たせることができることは、当業者に自明な事項である(上記特開2000-103044号公報の【0018】、【0019】及び【0051】の記載、上記特開平3-169644号公報の4頁左下欄19行?同頁右下欄9行参照。)。 イ インクジェットプリンタにおいて、吐出されたインクを短時間で乾燥させるために記録紙などの記録媒体を予熱しておくことは、本願優先日前に周知であり(以下「周知技術2」という。例.当審拒絶理由で引用した特開2002-11860号公報(【請求項4】、【0006】?【0008】、【0020】?【0023】、【0026】?【0027】、【0038】?【0039】、【0041】?【0042】、【0046】?【0048】、【0055】、【0057】、【0059】?【0060】、【0069】?【0070】、図1、図15参照。)、同じく当審拒絶理由で引用した特開平4-214383号公報(【請求項2】、【0010】?【0011】、【0013】参照。)、同じく当審拒絶理由で引用した特開平8-174812号公報(【0013】、【0021】?【0023】、【0042】?【0044】参照。))、記録媒体を予備加熱手段と記録媒体にインクを吐出した後に加熱する加熱手段との両方を備えたインクジェットプリンタも周知である(以下「周知技術3」という。例.特開2002-347226号公報、特開平2-182461号公報(3頁右上欄8?14行、第1図参照。))。 ウ 記録媒体上のインクを乾燥するための加熱手段を複数段で構成することはインクジェットプリンタの分野においても周知である(以下「周知技術4」という。例.特開平5-104706号公報(【0013】?【0015】、図1参照。)、特開平10-278312号公報(【0011】、図3参照。)、特開平11-291611号公報(【0103】?【0109】、図10参照。))。 エ 引用発明において、前記「第1の加熱手段(熱源)」を、前記「記録媒体」を挟持して搬送しながら加熱加圧する、少なくとも一方が加熱ローラ(加熱部材)である一対のローラで構成し、その記録媒体搬送方向下流側に1以上の加熱手段を設けて複数段で構成する加熱手段となすとともに、吐出されたインクが短時間で乾燥するように、前記「画像記録装置(インクジェット記録装置)」の前記「記録ヘッド」よりも搬送方向上流の記録媒体搬送路に、少なくとも一方が加熱ローラ(加熱部材)である一対のローラを備えて前記「記録媒体」を予熱できるようにすることは、当業者が周知技術1ないし4に基づいて容易に想到することができた程度のことである。 オ 上記エにおける「画像記録装置の記録ヘッドよりも搬送方向上流の記録媒体搬送路に、少なくとも一方が加熱ローラ(加熱部材)である一対のローラを備えて記録媒体を予熱できる」ようにしたもの、「記録媒体を挟持して搬送しながら加熱加圧する、少なくとも一方が加熱ローラ(加熱部材)である一対のローラで構成した第1の加熱手段(熱源)」及び「その記録媒体搬送方向下流側に設けた1以上の加熱手段」は、それぞれ、本願発明の「前記第1の加熱手段による前記インクの加熱の前であって、前記記録ヘッドから前記記録媒体上へのインク吐出前に前記記録媒体に加熱を行い、当該記録媒体を狭持搬送する一対のローラにより構成された第3の加熱手段」、「前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後、前記記録媒体を加圧する加圧手段」及び「前記第1の加熱手段及び前記加圧手段により加熱加圧処理がなされた記録媒体に対して加熱を行う第2の加熱手段」に相当する。 カ したがって、引用発明の「画像記録装置」を、「前記第1の加熱手段による前記インクの加熱の前であって、前記記録ヘッドから前記記録媒体上へのインク吐出前に前記記録媒体に加熱を行い、当該記録媒体を狭持搬送する一対のローラにより構成された第3の加熱手段」と、「前記光源が前記記録媒体上の前記インクに光を照射して硬化反応が行われた後、前記記録媒体を加圧する加圧手段」と、「前記第1の加熱手段及び前記加圧手段により加熱加圧処理がなされた記録媒体に対して加熱を行う第2の加熱手段」とを有しているものとなすこと、すなわち、引用発明において上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、上記エ及びオからして、当業者が周知技術1ないし4に基づいて容易になし得た程度のことである。 (2)相違点2について ア 本願の発明の詳細な説明には、第1の所定時間に関して、次の(ア)及び(イ)の記載がある。また、0.1?10秒以外の時間と比較した検討はなされていない。 (ア)「【0139】 加熱時間は例えば加熱ローラ41などの記録媒体の狭持時間を決定するローラの回転数を調節することで制御することが可能であり、0.1?10秒の範囲内で制御されることが好ましい。 【0140】 加熱量は、インクの乾燥に必要な最大の熱量に相当し、例えば下記の条件より算出される。 水系インクを用いた場合、インク付量10g/m^(2)に対して含水率70%とすると、インク中に含まれる乾燥させる水分量は7g/m^(2)になる。一方で、水の蒸発潜熱が2.254KJ/gであり、インク初期温度を20℃とし、100℃まで加熱する場合に必要な加熱量が0.335KJ/gになることから、乾燥に必要な最大熱量は、(2.254KJ/g+0.335KJ/g)×7g/m^(2)=18.12KJ/m^(2)となる。 【0141】 本発明において、記録ヘッド3から吐出された記録媒体上のインクの被加熱量は、 被加熱量=加熱温度×被加熱時間 と定義される。 したがって、被加熱量の制御は、加熱温度を制御する、および/またはインクの被加熱時間を制御することにより達成される。」 (イ)「 【0220】 第1の所定時間は、0.1秒?120秒の範囲で設定されることが好ましく、一方、第2の所定時間、0.1秒?10秒の範囲で設定されることが好ましい。第1の所定時間および第2の所定時間はともに、短いとインクの硬化が不十分なまま加熱処理を行うことになるため効果的に乾燥させることが困難であり、長いと生産性が落ちたり、コクリングが生じる虞がある。 【0221】 また、第1の所定時間および第2の所定時間は、制御装置81による動作を単純にするために固定してもよいが、画像の記録条件および記録媒体の種類に応じて変更されてもよい。適宜変更するようにすることで、記録条件および記録媒体の種類に応じて最適な条件で加熱加圧処理を行うことが可能になる。」 イ 上記アからすると、第2の所定時間は、被加熱量を制御するために、加熱温度を考慮して設定されるものであって、生産性等を考慮すると、0.1秒?10秒の範囲で設定されることが好ましく、画像の記録条件および記録媒体の種類に応じて変更されてもよいものであると解される。 したがって、本願発明の「第2の所定時間」をどれほどの長さにするかは、当業者が画像の記録条件および記録媒体の種類に応じて適宜決定すべき設計上の事項であって、本願発明の「第2の所定時間が0.1?10秒の範囲」である点に設計事項を超える技術上の意義は見出せない。 ウ 上記イのとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が適宜決定することができた程度の設計上の事項である。 (3)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1ないし4の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。 (4)したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1ないし4に基づいて容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 本願発明は、上記4のとおり、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1ないし4に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-01 |
結審通知日 | 2012-05-08 |
審決日 | 2012-05-21 |
出願番号 | 特願2004-36908(P2004-36908) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
小牧 修 |
特許庁審判官 |
東 治企 菅野 芳男 |
発明の名称 | 画像記録装置 |
代理人 | 特許業務法人光陽国際特許事務所 |