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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
管理番号 1259445
審判番号 不服2008-16564  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-30 
確定日 2012-07-04 
事件の表示 特願2000-558162「結晶性プロピレンポリマーと結晶化可能プロピレンポリマーとを含んでなる弾性ブレンド」拒絶査定不服審判事件〔平成12年1月13日国際公開、WO2000/01766、平成14年7月2日国内公表、特表2002-519497〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月29日(パリ条約による優先権主張 1998年7月1日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成17年3月25日に手続補正書が提出され、平成19年8月6日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年3月26日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成21年1月9日付けで前置審査の結果が報告され、当審において平成22年11月30日付けで審尋され、平成23年2月22日に回答書が提出され、同年5月24日付けで拒絶理由が通知され、同年11月29日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、平成23年11月29日付け手続補正書により補正された明細書及び図面(以下、単に「明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。
「第二プロピレンポリマー成分の連続相に分散した第一プロピレンポリマー成分相を含んでなる非架橋ブレンド組成物であって、
(a)前記第一プロピレンポリマー成分が、3μm×3μm×100μm未満の大きさの相で分散し、
(b)前記ブレンド組成物は、1重量%より多いが40重量%未満であり、DSCによって115℃以上の融点及び最低75J/gの融解熱を有する第一プロピレンポリマー成分と、
残り部分の、DSCによって30℃乃至100℃の間の融点および5.3J/g以上で75J/g未満の融解熱を有する第二プロピレンポリマー成分とを含み、
第一及び第二プロピレンポリマー成分の結晶度はプロピレンの立体規則によるものであり、
(c)前記ブレンド組成物の第一プロピレンポリマー成分は少なくとも90重量%のプロピレン単位を含み、前記第二プロピレンポリマー成分は80重量%より多いプロピレン単位を含み、
(d)第一及び第二プロピレンポリマー成分共にアイソタクチックプロピレン配列を含み、
(e)前記ブレンドは650%より大きい引張伸びを有する、前記非架橋ブレンド組成物。」

3.当審において通知した拒絶理由の概要
当審において平成23年5月24日付けで通知した拒絶理由は、「この出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない」との理由を含むものである。

4.拒絶理由の妥当性
そこで、本願の明細書の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものであるか否かについて検討する。

本願発明1では、「第二プロピレンポリマー成分の連続相に分散した第一プロピレンポリマー成分相を含んでなる非架橋ブレンド組成物であって、
(a)前記第一プロピレンポリマー成分が、3μm×3μm×100μm未満の大きさの相で分散し」と特定されている。
この点についての明細書の発明の詳細な説明における記載は以下のとおりである。

ア.「発明の分野
本発明は結晶度の異なる少なくとも二種類の熱可塑性成分のブレンドに関するものである。上記ブレンドは組成及び結晶度が異なる明確に相分離した複数領域を有する不均質な形態を有する。上記の形態を有する生成ブレンドはブレンドされていないそれら個々の成分に比較して、機械的歪回復度の劇的改善を示す。本発明は上記ブレンドのフレキシビリティの改善にも関係する。上記ブレンド成分の相対的量又は結晶度の変化又は上記ブレンドの形態の変化は、上記ブレンドの回復度及びフレキシビリティに影響を与える。
回復度を有するように設計された本発明のブレンド類は、より大きい結晶度の分散相と、より小さい結晶度の連続相とを含む。分散相の個々のドメインの大きさは非常に小さく、分散相の最小長さは5μm未満である。分散相のこの相の大きさは架橋せずに処理している間も維持される。フレキシビリティのために設計される本発明のブレンドはわずかに広い形態の巾を有する。というのは、比較的大きい結晶度の成分及び比較的小さい結晶度の成分が共連続性でもあり得るからである。どちらの場合も上記ブレンドの成分類は、この微細な形態を実現かつ保持するために相溶化剤の添加を必要としない程、相溶性でもある。」(段落0001?0002)

イ.「熱安定性、耐熱性、耐光性であり、概して熱可塑性エラストマー(TPE)用途に適する、好都合な加工性を有するポリオレフィンブレンド組成物が必要である。本発明者は、結晶性プロピレンポリマー(以後、「第一ポリマー成分、(FPC)」という)及び結晶化可能プロピレンα-オレフィンコポリマーポリマー(以後、「第二ポリマー成分(SPC)」という)をブレンドすることによって、好都合な加工性が得られ、一方では、低下された曲げ弾性率及び高められた引張強度、伸び、回復性及び全体的靭性がさらに提供されることを見いだした。以後、本明細書においてSPC2と記されるもう一つの結晶化可能プロピレンα-オレフィンコポリマーである第三の重合成分(これはFPCとSPCの間の結晶度を有する)を添加することも可能である。SPC2も狭い組成物分布を有し、メタロセン触媒で製造される。SPC2の添加は、よりすぐれた形態に導き、FPCとSPCとのブレンドの諸特性を改善する。」(段落0012)

ウ.「発明の概要
本発明は主として結晶性立体規則ポリプロピレンであるFPC、及びC_(2)、C_(4)-C_(20)α-オレフィン(好ましくはエチレン)とプロピレンとの結晶化可能コポリマーであるSPCをブレンドすることによって形成されるヘテロ相の形態を有するブレンドに関する。」(段落0014)

エ.「SPC2は、使用する場合、上記のSPCと同じ特性を有する。……。上記ブレンドへのSPC2の添加は、SPC2を全く含まない同様な組成のブレンドに比較して、ブレンド中の諸相の分散を改良する。」(段落0023)

オ.「本発明は、異なる結晶度のドメインからなる不均質相の形態を有する、成分FPC、SPC及びSPC2のブレンドの生成に関する。弾性回復の改善に関するブレンド類はより低い結晶度の連続相及びより高い結晶度の分散相を有する。分散相のドメインは小さく、平均最小軸が5μm未満である。分散相のより大きい軸は100μmにもなる。上記分散相は、ポリマー類の熱力学的混合により、FPCと若干量のSPC2及びSPCとの結晶性混合物からなる。連続相は、分散相には含まれない、ポリマーの残部からなる。低い曲げ弾性率を目的とするブレンド類は、追加により小さい及びより大きい結晶度の連続相を有する不均質相の形態を有することができる。
アイソタクチックポリプロピレン、及びプロピレンとエチレンとのコポリマーの単相ブレンドからなる一般に入手できるプロピレン反応器コポリマー類は本発明の範囲には含まれない。なぜならばそれは目立った分散相又は連続相をもたない単相だからである。結晶性ポリマーが連続相であるヘテロ相形態を有する、本発明のFPC及びSPCの組み合わせによって作られるポリプロピレンブレンドは本発明から除外される。」(段落0025?0026)

カ.「本発明の好適実施態様の詳細な説明
本発明のブレンド組成物は一般に二成分からなる:(1)アイソタクチックポリプロピレンを含む結晶性FPC及び(2)α-オレフィン(プロピレン以外の)とプロピレンとのコポリマーを含んでなる結晶化可能SPC。本発明の特殊の実施形態は、α-オレフィン(プロピレン以外の)とプロピレンとのコポリマーを含んでなる結晶化可能SPC2を含む。本発明の特殊の実施形態は添加成分としてプロセス油を含む。
上記ブレンドは、実質的に全てのFPCと若干のSPC及びSPC2を含む、より結晶性の高いポリマー混合物が、ブレンドの残部を含むより低結晶性のポリマー混合物の連続相中のドメインに分散している、という不均質相の形態を有する。分散ドメインのサイズは小さく、上記形態は相溶化剤がなくても安定している。」(段落0028?0029)

キ.「(H)一種類より多くのSPCをFPCとの単一ブレンドに用いてもよい。……。FPCとSPCとのブレンドと組み合わせたSPC2の使用は、これらのブレンドの界面剤として作用すると考えられる。得られる形態は高度に結晶性の成分の微細な分散と、結晶性のより小さな相の連続相とからなる。このような形態は上記ブレンド類の弾性回復特性を導く。」(段落0045)

ク.「ブレンドの形態
ブレンドの形態はこれらブレンドの透過型電子顕微鏡検査によって示される。この方法では、試料を1%RuO_(4)水溶液に3日間さらした。RuO_(4)が、連続する結晶性のより小さいポリマー相の非晶質領域に浸透し、他方、大部分がFPCからなる、結晶性のより大きいドメインは本質的に影響されない。連続領域内でRuO_(4)は非晶質ポリマーの微小域を染色し、結晶性ポリマーのラメラはコントラストによって見える。ブレンドを凍結ミクロトームで-196℃で、約0.3乃至3μm厚さの薄い切片にした。結晶性領域は染色されず、連続相が染色されて、連続相が分散相から識別され、ポリマーのラメラの微小構造が観察できる切片が認められるまで、各試料につき数切片を分析した。
引張歪からのすぐれた弾性回復を示す本発明のブレンドは、結晶性相の明らかに分散した微小ドメインが存在する微小構造を示した。これは図1に示される。ブレンドの組成及び弾性回復特性は下表にH7として示される。これらのドメインは伸長しており、約0.2μm×1μmの寸法を有する。図2は、下表にK7として記される本発明の別のブレンドを示す。これは寸法0.6μm×2.0μmの分散相を有する。このブレンドにSPC2を添加したものが顕微鏡写真BB7に示される(図3)。この場合は分散相のサイズが減少し、各次元で0.2μmを有する伸長粒子になることを示している。そこでSPC2は分散連続相中の結晶性相の分散粒子の大きさを減らす作用物質としてはたらくと考えられる。これは、FPC及びSPCのブレンドにSPC2を添加した形態学的結果である。」(段落0063?0064)

ケ.「ブレンドの特性:弾性回復
本発明の利点は、FPC及びSPCを含み、任意にSPC2及び/又はある量のプロセス油を含む組成物であって、引張歪からの優れた弾性回復を示す組成物を製造できることである。これらの弾性ブレンドは連続結晶化可能相に分散した結晶性相を含む形態を有する。分散した結晶相は、熱力学的混合により、多量のFPCと若干のSPC類とを含み、一方、連続相はポリマーブレンドの残部からなる。」(段落0068)

コ.「ブレンドの特性:曲げ弾性率
上記発明の利点は、FPC及びSPCを含んでなり、任意量のプロセス油を含む組成物であって、低い曲げ弾性率を有する組成物が製造できることである。これらのブレンドは連続性結晶化可能相に分散した結晶性相を有する。上記結晶性相は熱力学的混合により、大部分がFPCであり、若干のSPC類を含む。他方、連続相はポリマーブレンドの残部からなる。」(段落0076)

サ.「ブレンドは、第一ポリマー成分、第二ポリマー成分、任意量のプロセス油及びその他の構成成分類を含む全ての72gの成分類をブラベンダ強力混合機で、185℃から220℃までの範囲に制御された温度で3分間混合することによって調製した。高剪断ローラーブレードを用いて混合し、ノバルティス・コーポレーション(Novartis Corporation)から入手できる抗酸化剤、イルガノックス-1076約0.4gを上記ブレンドに加えた。混合の終わりに、混合物を取り出し、6"×6"(約15.24cm×15.24cm)の型にプレスし、215℃で3乃至5分間プレスして025"(約0.635cm)厚さのパッドにした。この時間の終わりに、上記パッドを冷却し、取り出し、1日アニーリングした。」(段落0088)

シ.「実施例4:
上記の方法により表4の全ての組成のブレンドを調製した。
【表4】

表4:成形した1のFPCと1のSPCとの二成分ブレンドの曲げ弾性率、引張弾性率及び残留伸び。
この実施例において、第一のポリマー成分、エスコレン(Escoren)4292、エクソン・ケミカル社(米国テキサス州ヒューストン)から入手できるホモアイソタクチックポリプロピレンと、一つの第二ポリマー成分(表4のSPC1)とのブレンド類を上記の方法を用いて調製した。これらのブレンドは上の表からわかるように、異なる組成範囲で調製された。この表の全ての組成は本発明の範囲内にあり、本範囲内の特性を有する。ブレンドの特性は成形されたもので測定した。
実施例5:
【表5】

〔表5の続き省略〕

表5:成形した1のFPCと2のSPCとの二成分ブレンドの曲げ弾性率、引張弾性率及び残留伸び。
この実施例において第一重合成分、エスコレン4292、エクソン・ケミカル社(米国テキサス州ヒューストン)から入手できるホモアイソタクチックポリプロピレンと、2種類の第二重合成分(表5のSPC1及びSPC2)とのブレンドを、上記の方法を用いて調製した。SPC2はML(1+4)@125が14であり、エチレン含有量が7.3重量%であった。SPC1の組成及びMLが、使用した種々のSPC1について表に記されている。これらブレンドは上の表に示されるように異なる組成範囲で調製された。これら組成物の全ては本発明の範囲内にあり、本発明の特性を有する。これらブレンドの特性は成形して測定した。
実施例6:
〔表6省略〕
表6:表4及び5に記載した1のFPCと1のSPCとの二成分ブレンド及び1のFPCと2のSPCとの三成分ブレンドのヒステリシス及び残留伸びを、(1)新しい場合、(2)室温で21日間アニーリングした後、及び(3)200%に瞬間的延伸した後で測定した。」(段落0103?0108)

ス.「【図1】

【図2】

【図3】

」(【図面】の【図1】?【図3】)

本願発明1は、摘示アの記載からみて、結晶度の異なる少なくとも二種類の熱可塑性ブレンドに関するものであって、このブレンドは組成及び結晶度が異なる明確な相分離した複数領域を有する不均質な形態を有するものである。そして、この不均質な形態を有する生成ブレンドはブレンドされていないそれら個々の成分に比較して、機械的歪回復度の劇的改善を示すものである。
この「不均質な形態」について、本願発明1では、
「第二プロピレンポリマー成分の連続相に分散した第一プロピレンポリマー成分相を含んでなる非架橋ブレンド組成物であって、
(a)前記第1プロピレンポリマー成分が、3μm×3μm×100μm未満の大きさの相で分散し」
との発明を特定するために必要と認める事項(以下、「発明特定事項」という。)を備えるものである。
一方、本願明細書の発明の詳細な説明においては、摘示ア、ウ、オ、カ、ケ及びコの記載からみて、より低い結晶度の連続相(α-オレフィンとプロピレンとの結晶化可能コポリマーである第二プロピレンポリマー成分相:SPC)中に、より高い結晶度の分散相(主として結晶性立体規則ポリプロピレンである第一プロピレンポリマー成分相:FPC)を含むものと認められるが、その分散相の大きさについては、「分散相の個々のドメインの大きさは非常に小さく、分散相の最小長さは5μm未満である。」(摘示ア)及び「分散相のドメインは小さく、平均最小軸が5μ未満である。分散相のより大きい軸は100μmにもなる。」(摘示オ)と記載されているのみである。
また、本願明細書の発明の詳細な説明中の実施例に関する記載をみると、実施例4?12では分散相の大きさについて直接触れられていないが(なお、実施例1?3はブレンド組成物に関するものではない。)、摘示クに図面の図1?3(摘示ス)を参照しつつ、
「引張歪からのすぐれた弾性回復を示す本発明のブレンドは、結晶性相の明らかに分散した微小ドメインが存在する微小構造を示した。これは図1に示される。ブレンドの組成及び弾性回復特性は下表にH7として示される。これらのドメインは伸長しており、約0.2μm×1μmの寸法を有する。図2は、下表にK7として記される本発明の別のブレンドを示す。これは寸法0.6μm×2.0μmの分散相を有する。このブレンドにSPC2を添加したものが顕微鏡写真BB7に示される(図3)。この場合は分散相のサイズが減少し、各次元で0.2μmを有する伸長粒子になることを示している。」
と記載されているのみであって、分散相のサイズが測定された3つのサンプルH7、K7及びBB7は、摘示サ及びシからみて、それぞれ以下のポリマー成分のブレンド物である。(これらのブレンド組成物が、本願発明1における(b)?(d)として記載されている発明特定事項を充足するものであるかどうか、直接的には明らかではないが、その点は措く。)
H7(実施例4及び6)
第一プロピレンポリマー成分(FPC):エスコレン4292(エクソン・ケミカル社のホモアイソタクチックポリプロピレン)
第二プロピレンポリマー成分(SPC):エチレン含有量が12.0重量%でMLが25.3のものを77.8重量%
K7(実施例4及び6)
第一プロピレンポリマー成分(FPC):エスコレン4292(同上)
第二プロピレンポリマー成分(SPC):エチレン含有量が14.8重量%でMLが28.9のものを77.8重量%
BB7(実施例5及び6)
第一プロピレンポリマー成分(FPC):エスコレン4292(同上)
第二プロピレンポリマー成分(SPC):エチレン含有量が14.7重量%でMLが38.4のものを77.8重量%
第二プロピレンポリマー成分(SPC2):エチレン含有量が7.3重量%でMLが14のものを11.1重量%

しかしこれらの3つのサンプルにおける分散相のサイズの記載から、本願発明1における
「第二プロピレンポリマー成分の連続相に分散した第一プロピレンポリマー成分相を含んでなる非架橋ブレンド組成物であって、
(a)前記第1プロピレンポリマー成分が、3μm×3μm×100μm未満の大きさの相で分散し」
との発明特定事項は導き出すことはできない。
すなわち、摘示ア及びオからは、分散相の最小長さ又は平均最小軸が5μm未満であり、分散相のより大きい軸は100μmにもなることが記載されてはいるが、これは「3μm×3μm×100μm未満の大きさ」を示すものではない。そして、実際に分散相の大きさを測定した上記3つのサンプルにおいては、
H7:約0.2μm×1μm
K7:0.6μm×2.0μm
BB7:各次元で0.2μmを有する伸長粒子
と、かなり小さなサイズのものであって(なお、H7及びK7は二次元で記載されており、図1及び図2からも残る次元の大きさは不明である。)、その上、摘示イ、エ及びキの記載のとおり、SPC2を添加して分散相のサイズを微細なものとした方がブレンド物の諸特性が改善されることが示されていることにかんがみれば、上記3つのサンプルのブレンド組成物において奏される諸特性が、「3μm×3μm×100μm未満の大きさ」というこれらのサンプルと比較してかなり大きな分散相のサイズの上限値のみを規定する本願発明1に係るブレンド組成物全体について、同様に得られるものということはできない。
したがって、このような実施例における3つのサンプルの分散相のサイズの記載から、本願発明1で特定される「3μm×3μm×100μm未満の大きさ」の分散相のサイズにまで拡張ないし一般化できるものということはできない。

そうすると、本願発明1は、少なくとも上記の点において本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、明細書における特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、当審において平成23年5月24日付けで通知した拒絶理由の理由1は妥当なものであり、この理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-01 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-21 
出願番号 特願2000-558162(P2000-558162)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C08L)
P 1 8・ 4- WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉備永 秀彦  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 藤本 保
大島 祥吾
発明の名称 結晶性プロピレンポリマーと結晶化可能プロピレンポリマーとを含んでなる弾性ブレンド  
代理人 山崎 行造  

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