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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1259450
審判番号 不服2009-14881  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-18 
確定日 2012-07-04 
事件の表示 平成11年特許願第102593号「高周波シール材料」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月20日出願公開、特開2000-294983号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年4月26日付け、平成21年2月10日付け、及び平成21年8月18日の手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアルカリ金属アイオノマー90?99重量部及びグリセリン1?10重量部よりなるアイオノマー組成物を主体とする高周波シール材料。」

2.引用刊行物とその記載事項
これに対して、当審において平成23年5月13日付けで通知した拒絶理由で引用した刊行物は、次のとおりである。
刊行物1:特開平8-267671号公報
刊行物2:特開昭57-8234号公報

(1)刊行物1(特開平8-267671号公報)の記載事項
刊行物1には、「積層フィルム」に関し、次の事項が記載されている。
ア.「【課題を解決するための手段】本発明は、アイオノマー組成物層と他の熱可塑性樹脂層とからなる少なくとも2層以上の積層フィルムであって、該アイオノマー組成物層が外表面層の少なくとも一方に設けられ、かつ該アイオノマー組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー100重量部に対し、分子内に水酸基を3個以上持つ分子量400以下の化合物が0.1?30重量部の割合で配合されてなるアイオノマー組成物であることを特徴とする積層フィルムである。」(段落【0005】)
イ.「アイオノマーに配合される分子内に水酸基を3個以上持つ分子量400以下の化合物は、炭素、水素及び酸素のみから構成される化合物であってもよく、また炭素、水素、酸素の他にさらに窒素のようなヘテロ原子を含有するものであってもよい。これらは分子量が400以下、好ましくは80?300であって、室温で液体状であっても固体状であってもよい。分子量が400を越えるものを用いても改良効果は小さい。
このような化合物の具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシルメチル)エタン、2,2-ジ(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、ソルビトール、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリヒドロキシ安息香酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどが例示できる。これらの中では、グリセリンまたはトリメチロールプロパンの如き脂肪族多価アルコールを用いるのがもっとも好ましい。」(段落【0012】【0013】)
ウ.「本発明の積層フィルムは、このようなアイオノマー組成物層を少なくとも一方の外表面層に配することによりフィルム表面を非帯電性とするとともに、これに他の熱可塑性樹脂層を組み合わせ、積層することにより、引裂強度やヒートシール強度等を改善し、透湿度の小さいフィルムを提供するものである。アイオノマー組成物層は一方の外表面層のみでもよいが、両表面ともアイオノマー組成物層とし、内部に熱可塑性樹脂層を含む1層又は2層以上を挟んだサンドイッチ構造とすることもできる。」(段落【0022】)
エ.上記ア.の「アイオノマー組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー100重量部に対し、分子内に水酸基を3個以上持つ分子量400以下の化合物が0.1?30重量部の割合で配合されてなるアイオノマー組成物」の記載から、成果物全体を100重量部とした場合のそれぞれの配合割合はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー76.9?99.9重量部、分子内に水酸基を3個以上持つ分子量400以下の化合物0.1?23.1重量部となる。
オ.上記ウ.の記載から、フィルムを重ねてヒートシールすることにより積層フィルムを形成するものであるから、ヒートシール材料が記載されていることが把握される。

これらの記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー76.9?99.9重量部及びグリセリン0.1?23.1重量部よりなるアイオノマー組成物を主体とする、積層フィルムに用いるヒートシール材料。」

(2)刊行物2(特開昭57-8234号公報)の記載事項
刊行物2には、「ヒートシール性樹脂組成物」に関し、次の事項が記載されている。
カ.「又、更に本発明組成物はガラス瓶、ガラス容器の蓋材のシール層としても優れたと言う性を有しており、ガラス面とヒートシールが可能で充分なシール強度と密封性を有し、かつ開封が容易で、かつ開封部にシール層樹脂の断片を残さないものである。このようなガラス瓶、ガラス容器の蓋材としての用途の一例として、牛乳、ヨーグルト、プリン、サワー、乳酸飲料などの容器が挙げられる。又、本発明組成物はヒートシール用途だけでなく、より広い面積において熱融着を行わせるサーマルラミネーションにも用いることが可能で、その場合本発明組成物とラミネートすべき材料としては、各種プラスチックフイルム、シートの他、紙、不織布、鋼板、銅板などの金属板、樹脂コート金属板、ガラス合成などが挙げられる。又、本組成物はいわゆるシールバーによるヒートシールが可能であるばかりでなく、インパルスシール、熱風シール、高周波シール、超音波シールなど各種のシール方式にも適用が可能なものである。」(第6ページ左上欄第12行?右上欄第10行を参照)

3.発明の対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、その機能又は作用からみて、後者の「エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー」は、前者の「エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアルカリ金属アイオノマー」に相当する。また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーの重量部について、刊行物1発明の「76.9?99.9」という数値範囲は、本願発明の「90?99」という数値範囲と重複一致する。また、グリセリン重量部について、刊行物1発明の「0.1?23.1」という数値範囲は、本願発明の「1?10」という数値範囲と重複一致する。また、刊行物1発明の「ヒートシール材料」と本願発明の「高周波シール材料」とは、「シール材料」である点で共通する。よって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、
[一致点]
「エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアルカリ金属アイオノマー90?99重量部及びグリセリン1?10重量部よりなるアイオノマー組成物を主体とするシール材料。」 である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点]
本願発明は、「高周波シール材料」であるのに対し、刊行物1発明は、ヒートシール材料である点。

4.当審の判断
(1)相違点について
引用発明は、高周波にてシール材料に熱を与えるものではないが、シール材料が熱により溶ける性質を利用してシールを行うものであり、刊行物2(第6ページ左上欄第12行?右上欄第10行を参照)には、シール材料に熱を与える手段として、インパルスシール、熱風シール、高周波シール、超音波シール等の各種の周知のシール方式が記載されている。
してみると、引用発明において、シール材料を溶着するための熱を与える手段として、刊行物2に記載された各種の周知のシール方式を試みる程度のことは、当業者が容易に想到し得るものであり、最終的にどのシール方式を採用するかは、当業者が、加熱形態の違い(内部加熱、外部加熱)が成果物へ与える影響、シール材料の組成に応じた溶着温度等を考慮して適宜選択すべき設計事項にすぎない。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び刊行物2に記載された周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、上記の当審の拒絶理由通知に対する平成23年7月5日付けの意見書(以下、「意見書」という。)において、
「出願人は、上記拒絶理由の『本願発明は、「高周波シール材料」であるのに対し、引用発明は、「積層フィルム」である点。』との対比結果は『ヒートシール』と『高周波シール』との相違点を重視せず、きわめて大ざっぱに、両者の特徴をとらえ、正確な対比が行われていない。出願人はこのような不適切な対比結果に基づく上記拒絶理由の判断には承服できない。」(「3-4」の項を参照。)、
「このような参考資料3の記載が示すように、『ヒートシール』と『高周波シール』とは、いずれも熱溶着を利用するシール方法であるが、加熱原理や用いる設備が異なり、適する樹脂材料や長所も異なる。技術常識上、『ヒートシール』と『高周波シール』とは別種のシール方法として認識されている。これらは同じ溶着物に対して併用されるもの、あるいは互換性のある技法ではない。」(「4」の項を参照。)、
「上記記載全体から、刊行物2記載の発明は専らヒートシールされる樹脂組成物であり、ヒートシールの結果易開封性を発現する樹脂組成物と認定するべきである。刊行物2(6頁右上欄6?10行)の高周波シールに関する記載は、刊行物2記載の樹脂組成物の主な特徴、目的、用途、効果を説明した後に、上記樹脂組成物の製造例(実施例)の説明(実施例)の前に、上記樹脂組成物の補足説明として、これがヒートシール以外の他のシール方法も適用できる可能性を述べたものである。この記載は、刊行物2に記載された発明「ヒートシール性樹脂組成物」の付随的性能を述べたものであって、刊行物2に記載された発明「ヒートシール性樹脂組成物」以外の先行技術にも適用できる事象を記載したものではない。この記載は決して高周波シールに関する技術常識を意味するものでない。」(「5-2」の項を参照。)
と主張している。
しかしながら、摘記事項ウ.の記載、及び刊行物2の記載(第6ページ左
上欄第12行?右上欄第10行を参照)から、引用発明の積層フィルム、刊行物2に記載のヒートシール性樹脂組成物は、熱を与えて溶かして、溶着するのに用いるシール材料である点で共通するものであることは明らかであり、「ヒートシール」と「高周波シール」とは、単にシール材料に熱を与える方式の違いに過ぎず、引用発明に刊行物2に記載されるヒートシール方式のうち、どの方式を採用するかは、諸条件を考慮した上で適宜選択すべきものであることは、上記4.(1)で述べたとおりである。
また、刊行物2に例示される各種のシール方式は、シール材料に熱を与えて溶着するために一般的に用いられる手段であり、刊行物2に記載されるヒートシール性樹脂組成物のみに対して特に有効なヒートシール方式であるとは認められず、「刊行物2に記載された発明『ヒートシール性樹脂組成物』以外の先行技術にも適用できる事象を記載したものではない。この記載は決して高周波シールに関する技術常識を意味するものでない。」との請求人の主張は採用できない。

また審判請求人は、意見書において、本願発明の「アルカリ金属アイオノマー」の「アルカリ金属」を「リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムから選ばれる」ものとする補正案を提示している。
しかしながら、刊行物1の段落【0010】には、「・・・アイオノマーのイオン源としてカリウムのかわりにリチウムやナトリウムを用いたのでは充分な帯電防止効果が期待できず、ルビジウムやセシウムは高価であるので、好んで用いるものではない。」との記載があり、カリウム以外のアルカリ金属である、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムを積極的ではないにせよ、選択可能とする示唆があることから、引用発明においてカリウムに代えてリチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムを用いたアルカリ金属アイオノマーとすることに、格別の困難性を見いだし得ない。したがって、「アルカリ金属」を上記の補正案のように限定しても、本審決の結論を左右するものではない。

5.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-07 
結審通知日 2012-05-09 
審決日 2012-05-23 
出願番号 特願平11-102593
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 所村 陽一
冨岡 和人
発明の名称 高周波シール材料  
代理人 中嶋 重光  
代理人 山口 和  

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