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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1259475
審判番号 不服2010-26063  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-18 
確定日 2012-07-04 
事件の表示 特願2008-505974「可変ガードインタバルを用いる多搬送波システムにおける同期方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日国際公開、WO2006/109134、平成20年 9月 4日国内公表、特表2008-536426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2006年4月11日(パリ条約による優先権主張・外国庁受理2005年4月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月26日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月18日に審判請求がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年8月6日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項9に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項9】
無線フレームを送信するステップであって,該無線フレームの少なくとも一つに少なくとも二つの異なるガードインタバルを規定し,1又は複数の前記無線フレームがトレーニングシンボルと,その後に続く前記ガードインタバルの一つと,システム情報用シンボルと,を含むステップと,
前記各シンボルを更に処理できるようにするため,前記トレーニングシンボル後の前記システム情報の位置を判定するステップであって,前記システム情報は前記ガードインタバルの少なくとも一つの長さを示すステップと,
を有する方法。」

2.引用発明
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された特表平9-512156号公報(以下、「引用例」という。)には、「持続波ネットワークにおける多重キャリア伝送」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「1.連続するOFDM伝送フレームの形式に構成されたOFDMシンボルの時間シーケンスが生成され、上記OFDM伝送フレームの各々が、1つ以上の制御シンボルを有するフレーム・ヘッダと複数のデータ・シンボルを有する有効データ領域とからなり、連続する各制御シンボルまたは各データ・シンボルの間にそれぞれ保護期間を有する、ディジタル符号化データで多重キャリア変調を行う方法において、
上記各OFDM伝送フレームの上記フレーム・ヘッダにおける上記制御シンボルに対する保護期間を、上記各OFDM伝送フレームの上記有効データ領域における上記データ・シンボルに対する保護期間よりも長くなるように選択することを特徴とする、ディジタル符号化データで多重キャリア変調を行う方法。
2.上記各OFDM伝送フレームの上記有効データ領域における上記データ・シンボルに対する上記保護期間の時間的長さが可変であることを特徴とする、請求項1に記載のディジタル符号化データで多重キャリア変調する方法。
3.請求項1または2に記載された方法に従って変調された多重キャリアを復調して元のディジタル符号化データを復元する方法において、受信した上記各OFDM伝送フレームの上記有効データ領域における上記データ・シンボルに対する保護期間の長さを求め、上記データ・シンボルの各検出タイミングを、検出した上記保護期間の長さの関数として決定することを特徴とする、多重キャリア復調して元のディジタル符号化データを復元する方法。」
(2頁2行-20行)

ロ.「変調器側では、連続するOFDMシンボル(制御シンボルおよびデータ・シンボル)の各シンボル相互間に保護(ガード)期間が挿入される。その保護期間が存在することによって、マルチパス(多重経路)伝搬に起因して復調器側で生じる連続OFDMシンボル間のクロストークまたは干渉を防止することができる。」
(3頁23行-27行)

ハ.「 図3は、送信側のOFDM変調の基本的な特徴を示している。最小の伝送単位を表すOFDMシンボルを形成するために、ディジタル符号化データのブロック310を考える。そのデータを用いて、周波数領域320における複数の直交キャリアが変調される。この処理において、標準的ディジタル変調技術(例、QPSK、QAM、等)を適用して各キャリアを変調する。逆フーリエ変換330を用いて、持続時間T_(A)の周期(期間)の時間信号を合成する。この周期的時間信号は、データ・ブロック310の全体の情報を含んでおり、中間的に記憶された検出値340の形態で利用可能となるものであって、アナログ信号に変換され、シンボル持続時間T_(S)で送信される。ここで、シンボル持続時間T_(S)は、サイクル持続時間(周期)によって決まる最小限の有効シンボル時間T_(A)より長くなるように選択される。送信信号に対する付加時間または送信信号の延長時間は、持続時間T_(g)=T_(S)-T_(A)を有する保護期間(guard interval)として表される。
本発明によれば、制御シンボル(Steuerungssymbole)に対する保護期間T_(g strg)(T_(g cont))は、データ・シンボルに対する保護期間T_(g data)より長い長さに選択される。この選択は、OFDM伝送フレームにおけるOFDMシンボルの位置の関数の形で制御される切換え手段360によって実行される。ここで、保護期間T_(g strg)の長さは、広域の持続波ネットワークにおいて予想(想定)される臨界条件においても連続する制御シンボル間のクロストークが回避(防止)できるように選択される。保護期間T_(g data)は、相異なる保護期間の集合(群)370の中から選択することができるものであり、個々の事例において実現した送信機のネットワーク構成によって実際に各遅延時間に差が生じたときにも、連続するデータ・シンボル間に実質的にクロストークが生じないような長さに設定される。データ・シンボルの保護期間T_(g data)に対して選択した持続時間の長さは、制御シンボルの信号を用いて受信側に伝えられる。このようにして、例えば図2のa)?c)に示すような相異なる保護期間を有するOFDM伝送フレームが生成される。
受信側では、最初にOFDM伝送フレームに対して概略の粗い同期が取られる。受信した時間信号400は、最初に伝送されたOFDMシンボルのシンボル持続時間T_(S)において、検査(探査)されて最初にサイクル持続時間T_(A)が検出され(420)、周波数領域へのフーリエ変換(430)によって解析される。伝送されたデータ450は、個々のキャリアを復調して復元される。一方、精細な時間同期を取って同期を微調整するために、通常、最初(第1の)OFDMシンボルが基準シンボルとして用いられて、伝送チャンネルのインパルス応答の計算が可能となり、かつキャリア周波数の振幅および位相が復元できる。伝送チャンネルのインパルス応答を用いることによって、長い時間となるように選択された保護期間T_(g strg)の持続時間の範囲内でマルチパス・チャンネルおよび持続波ネットワークにおいて生じる全てのエコーの振幅と遅延時間を知ることができる。
後続の各OFDMシンボルを検査してサイクル持続時間T_(A)を検出するタイミングは、伝送フレームにおけるOFDMシンボルの位置の関数として、それぞれの保護期間の持続時間分だけ遅延される。制御490において、各制御シンボルおよび各データ・シンボルに対する保護期間の持続時間は、本発明に従って予め設定されている。そのデータ・シンボルに対する保護期間T_(g data)の持続時間は、先に、信号(制御シンボル)で伝えられて、取り得る相異なる保護期間495の集合(群)の中から選択される。」
(5頁13行-6頁28行)

上記イ.?ハ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記イ.には、連続する「OFDM伝送フレーム」の各々が、1つ以上の「制御シンボル」を有するフレーム・ヘッダと、複数の「データ・シンボル」を有する有効データ領域とから構成され、各制御シンボルや各データ・シンボルの間にはそれぞれ「保護期間」を設けることが記載されている。
上記ロ.には、保護期間が、マルチパス(多重経路)伝搬に起因して復調器側で生じる連続OFDMシンボル間のクロストークまたは干渉を防止するために設けられると記載されている。ここで、マルチパスを生じていることから、OFDM伝送フレームは「無線」で伝送されているといえる。

上記ハ.の記載及び【図2】?【図3】から、OFDM伝送フレームには二つの異なる保護期間(T_(g strg)とT_(g data))が設けられており、制御シンボルに対する保護期間T_(g strg)は固定長であり、データ・シンボルに対する保護期間T_(g data)は可変である。
また、上記ハ.には、「データ・シンボルの保護期間T_(g data)に対して選択した持続時間の長さは、制御シンボルの信号を用いて受信側に伝えられる。」と記載され、制御シンボルには、データ・シンボルにおける保護期間T_(g data)の長さを示す情報が含まれているといえる。
また、引用例の【図2】に記載されるように、フレーム・ヘッダは、基準シンボル、固定の保護期間T_(g strg)、制御シンボルの順に並ぶように構成されている。

上記ハ.には、「後続の各OFDMシンボルを検査してサイクル持続時間T_(A)を検出するタイミングは、伝送フレームにおけるOFDMシンボルの位置の関数として、それぞれの保護期間の持続時間分だけ遅延される。」との記載があり、データ・シンボルを処理するための検出タイミングを制御シンボルが含む情報で伝えられた可変の保護期間T_(g data)の持続時間に応じた位置の関数として得ることが記載されているといえる。

上記ハ.には、「一方、精細な時間同期を取って同期を微調整するために、通常、最初(第1の)OFDMシンボルが基準シンボルとして用いられて、伝送チャンネルのインパルス応答の計算が可能となり、かつキャリア周波数の振幅および位相が復元できる。」と記載され、フレーム・ヘッダの第1の制御シンボルは、「基準シンボル」であり、受信器において同期、インパルス応答、振幅、位相の計算等のために用いられている。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「無線によりOFDM伝送フレームを送信するステップであって、
連続したOFDM伝送フレームの各々にT_(g strg)とT_(g data)の二つの異なる保護期間を設け、OFDM伝送フレームの各々が基準シンボルと、その後に続く前記保護期間T_(g strg)と、制御シンボルとを含むステップを有し、
前記データシンボルを処理できるようにするため、前記制御シンボルの情報は、データ・シンボルにおける保護期間T_(g data)の長さを示す、
方法。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「OFDM伝送フレーム」は無線で伝送されているから、本願発明の「無線フレーム」に相当する。
引用発明のT_(g strg)とT_(g data)の二つの「保護期間」は、マルチパス(多重経路)伝搬に起因して復調器側で生じる連続OFDMシンボル間のクロストークまたは干渉を防止するためのものであることから、本願発明の「ガードインタバル」に相当している。
また、引用発明ではOFDM伝送フレームは「連続」しているので複数であり、本願発明の択一的表現である「1又は複数の無線フレーム」に相当する。
引用発明の「基準シンボル」は、受信器において同期、インパルス応答、振幅、位相の計算等のために用いられていることから、本願発明の「トレーニングシンボル」に相当する。
引用発明の「その後に続く前記保護期間T_(g strg)」は、本願発明の「その後に続く前記ガードインタバルの一つ」に相当する。
引用発明の「制御シンボル」は、保護期間T_(g data)の長さを示す情報を有しているから本願発明の「システム情報用シンボル」に相当する。
また、引用発明の「制御シンボルの情報」は、「データ・シンボルにおける保護期間T_(g data)の長さ」を示しており、これは、本願発明の「システム情報」が「前記ガードインタバルの少なくとも一つの長さ」を示すことに相当する。

したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「無線フレームを送信するステップであって,該無線フレームの少なくとも一つに少なくとも二つの異なるガードインタバルを規定し,1又は複数の前記無線フレームがトレーニングシンボルと,その後に続く前記ガードインタバルの一つと,システム情報用シンボルと,を含むステップとを有し,
前記システム情報は前記ガードインタバルの少なくとも一つの長さを示す,
方法」

(相違点)
(1)本願発明が「前記各シンボルを更に処理できるようにするため,前記トレーニングシンボル後の前記システム情報の位置を判定するステップ」を有しているのに対し、引用発明では、そのようなステップについて明記されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用例の【図2】には、OFDM伝送フレームの概略設計が示されており、制御シンボルの領域すなわちフレーム・ヘッダには、先ず「基準シンボル」があり、その後に固定の保護期間T_(g strg)、があり、その後に制御シンボルが並ぶことが見てとれる。
引用例の記載によれば、前記制御シンボルには、フレーム・ヘッダに後続する有効データ領域のデータ・シンボルにおける保護期間T_(g data)の長さを示す情報が含まれているとされているので、前記制御シンボルを検出する必要があるのは自明であり、当業者であれば、引用例の上記摘記事項ハ.に「後続の各OFDMシンボルを検査してサイクル持続時間T_(A)を検出するタイミングは、伝送フレームにおけるOFDMシンボルの位置の関数として、それぞれの保護期間の持続時間分だけ遅延される。」と記載されていることから、基準シンボル後の前記制御シンボルを検出するにあたり、基準シンボル検出終了後に固定の持続時間T_(g data)だけ遅延させた位置を判定することを容易に想到するものである。
そして、上記のようにして制御シンボルを検出できれば、制御シンボル中の有効データ領域のデータ・シンボルにおける保護期間T_(g data)の長さを示す情報を抽出することにより、当該制御シンボルを処理した上で、更に有効データ領域の各データシンボルを処理できるようになる
このように、当業者であれば、本願発明のように「前記各シンボルを更に処理できるようにするため,前記トレーニングシンボル後の前記システム情報の位置を判定するステップ」を設けることを適宜為し得るものである。
したがって、相違点は格別なものでない。
そして、本願発明の作用効果は、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-06 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-21 
出願番号 特願2008-505974(P2008-505974)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 正悟  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 宮田 繁仁
菅原 道晴
発明の名称 可変ガードインタバルを用いる多搬送波システムにおける同期方法  
代理人 下道 晶久  
代理人 鶴田 準一  
代理人 森 啓  
代理人 青木 篤  

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