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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1259614
審判番号 不服2011-8464  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-05 
確定日 2012-07-06 
事件の表示 特願2010-143121「延伸性布材を素材とする商品持ち帰り用網状袋とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月22日出願公開、特開2011-255955〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年6月8日の出願であって、同年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月5日に拒絶査定を不服として審判請求がなされると同時に手続補正がなされたが、同年11月1日付けで当審から拒絶理由が通知されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年4月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるものであると認められるところ、請求項1には、以下のとおり記載されている。

「商店からの商品持ち帰り用袋であって、包装素材に平面状の角形又は円形の延伸性布材を使用し、該素材平面の中心部を底面とし、その周辺部に前記中心部から定間隔毎に複数の同心円上又は同心多角形上に部分円弧状又は部分直線状の短い切り込みを、該中心部に対し、互い違いの位置に設け、更に再外周角部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、四角の形状そのままの用布の各四隅に配置するものであり、而して、該中心部に持ち帰り商品を置き、前記手下げにより全体を引き上げたとき、網状袋を形成することを特徴とする延伸性布材を素材とする商品持ち帰り用網状袋。」

ここで、本願請求項1における「再外周角部」は、「最外周角部」の誤記と認められる。
また、本願請求項1における「再外周角部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、四角の形状そのままの用布の各四隅に配置する」との記載が、同請求項における「包装素材に平面状の角形又は円形の延伸性布材を使用し」との記載と整合しないが、明細書及び図面を参酌すると、包装素材に「円形」の延伸性布材を使用した場合に「再外周角部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、四角の形状そのままの用布の各四隅に配置する」こととは、「最外周部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、円形の用布の最外周部の四箇所に等間隔に配置する」ことであると認められる。
したがって、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりであると認められる。

「商店からの商品持ち帰り用袋であって、包装素材に平面状の角形又は円形の延伸性布材を使用し、該素材平面の中心部を底面とし、その周辺部に前記中心部から定間隔毎に複数の同心円上又は同心多角形上に部分円弧状又は部分直線状の短い切り込みを、該中心部に対し、互い違いの位置に設け、更に最外周角部又は最外周部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、四角の形状そのままの用布の各四隅又は円形の用布の最外周部の四箇所に等間隔に配置するものであり、而して、該中心部に持ち帰り商品を置き、前記手下げにより全体を引き上げたとき、網状袋を形成することを特徴とする延伸性布材を素材とする商品持ち帰り用網状袋。」

3 引用発明
これに対して、平成23年11月1日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-147561号公報(以下、「引用例1」という。)、登録実用新案第3015622号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開2008-266837号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ以下の事項及び各発明が記載されている。

[引用例1]
(1)「【請求項1】 可撓性、伸縮性を有するシート材の中央部から周辺部に亘って多数の切込線を形成するとともに、周辺部に紐状部材を挿通したことを特徴とする包装材。
【請求項2】 前記切込線は、シート材の中央部から周辺部に亘って放射状かつ同心円状に、半径方向に等間隔で形成してあることを特徴とする請求項1に記載の包装材。
(中略)
【請求項5】 前記シート材は、可撓性、伸縮性、保形性が良好で、破損し難く、皺になり難い軟質プラスチックシート又は合成紙であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の包装材。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、品物を収容して携帯したり、店頭等において吊下するのに好適な包装材に関する。
【0002】
【従来の技術】品物を収納して携帯したり、店頭等において吊下する場合に、その品物の形状、寸法に対応した適宜形状、寸法を有する紙製又はプラスチック製の収納袋を使用することが多い。一方、このような収納袋は、使用しない場合には、適当な大きさに折り畳んで保管していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、品物の形状、寸法に対応して常に多種形状、寸法の収納袋を用意しておくのは、無駄が多くて効率的ではないし、収納袋の形状、寸法が品物に適合しない場合には、収納袋内で品物が移動し易く、携帯時には持ち難いし、吊下時には見栄えが悪い。又、折り畳んで保管するのでは、嵩張って保管し難いし、皺になって見栄えも悪くなる。
【0004】本発明は、このような従来の問題点を解決すべく為されたものであり、その目的とするところは、品物の形状、寸法に柔軟に対応することができ、しかも、嵩張ったり、皺になったりしない包装材を提供することにある。」

(3)「【0012】本発明の包装材1は、図1に示すように、シート材を円形状に裁断したものであり、中央部には小孔を穿設せず、周辺部には円周方向に適宜間隔で挿通孔2,2,…を穿設し、これら挿通孔2,2,…に紐状部材3を挿通してある。又、中央部から周辺部に亘って放射状かつ同心円状に多数の小孔を穿設し、これら小孔の集合として、第1小孔群4及び第2小孔群5という2種の小孔群を形成してある。
【0013】第1小孔群4は、対となった小孔列4a ,4b よりなり、円周方向に45°間隔で形成されている。小孔列4a,4bは、中央部から周辺部に亘って直線状に等間隔で穿設された小孔4a_(01),4b_(01),4a_(02),4b_(02),…,4a_(10),4b_(10)よりなる。そして、全ての第1小孔群4において、同一順位の小孔は同心円O_(01),O_(02),…,O_(10)上に形成してある。
【0014】第2小孔群5も、対となった小孔列5a ,5b よりなり、円周方向に45°間隔で形成されている。小孔列5a,5bも、中央部から周辺部に亘って直線状に等間隔で穿設された小孔5a_(01),5b_(01),5a_(02),5b_(02),…,5a_(10),5b_(10)よりなる。そして、全ての第1小孔群4において、同一順位の小孔は同心円P_(01),P_(02),…,P_(10)上に形成してある。
【0015】第1小孔群4と第2小孔群5とは、円周方向に22.5°間隔ずれて形成してあり、又、同心円OとPとは、O_(01),P_(01),O_(02),P_(02),…,O_(10),P_(10)というように半径方向に等間隔に形成してある。
【0016】そして、第1小孔群4の一方の小孔列4aの同一順位の小孔4a_(x )(x=01,02,…,10)と、隣接する第1小孔群4の他方の小孔列4bの同一順位の小孔4b_(x )(x=01,02,…,10)との間には、同心円O_(x )(x=01,02,…,10)に沿った切込線6_(x )(x=01,02,…,10)が形成されている。又、第2小孔群5の一方の小孔列5aの同一順位の小孔5a_(x )(x=01,02,…,10)と、隣接する第2小孔群5の他方の小孔列5bの同一順位の小孔5b_(x )(x=01,02,…,10)との間にも、同心円P_(x )(x=01,02,…,10)に沿った切込線7_(x )(x=01,02,…,10)が形成されている。
【0017】尚、包装材1は、円形状のみならず、その機能を奏する限りにおいて、正方形状、星形状等適宜形状とすることができ・・・。」

(4)「【0020】本発明の包装材1は、上記構成を有するから、その中央部を一方の手指で押さえ、周辺部を他方の手指で引張れば、図2に示すように、携帯用包装材1が全体として伸長、拡大するとともに、切込線6_(x ),7_(x )が半径方向に開口する。よって、包装材1を伸長、拡大可能な範囲内で適宜形状、寸法に変形させることができる。」

(5)「【0022】先ず、図3(A)に示すように、包装材1の中央部に花瓶8の底面部を載置する。次に、包装材1の周辺部を手指で摘まみ、図3(B)に示すように、包装材1により花瓶8を包囲し、花瓶8の開口部で紐状部材3を縛着すれば、花瓶8を包装材1により外装することができる。
【0023】包装材1が全体として伸長、拡大するとともに、切込線6_(x ),7_(x )が半径方向に開口するから、包装材1は花瓶8の形状、寸法に対応して変形し、花瓶8に適合する。このように、1つの包装材1で種々形状、寸法の品物に対応することができるから、常に多種形状、寸法の収納袋を用意しておく必要はない。しかも、品物の形状、寸法に変形して適合するから、包装材内で品物が移動することもなく、携帯時には持ち易いし、吊下時には見栄えも良い。」

(6)図1及び図2には、切込線6_(x )(x=01,02,…,10)及び7_(x )(x=01,02,…,10)が円周方向に交互にずらして形成されていることが示されている。

(7)図3(B)には、包装材により、その中央部に載置した花瓶を包囲し、紐状部材を縛着して外装したときに、該包装材がその中央部を底面とする網状袋を形成することが示されている。

以上の記載事項によると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「可撓性、伸縮性を有するシート材の中央部から周辺部に亘って多数の切込線を形成するとともに、周辺部に紐状部材を挿通した包装材であって、前記シート材は正方形状であり、前記シート材の中央部を底面とし、前記切込線は、シート材の中央部から周辺部に亘って放射状かつ同心円状に、半径方向に等間隔に、円周方向に交互にずらして形成してある包装材。」

[引用例2]
(1)「【請求項1】 風呂敷本体の四隅部に、対角方向外側に連着部を有する略C形状の切目部を設け、この切目部で画定される切込舌片を連着部から対角外側に折曲げて手提げ穴が形成できるようにしたことを特徴とする風呂敷。」

(2)「【0014】
【実施例】
以下、本考案の第1の実施例を図1に従い具体的に説明する。
この第1の実施例による風呂敷は、一辺の長さが70cm位の大きさ有する正方形状の風呂敷本体1を布、不織布、紙、ビニールシート等の素材で形成し、この風呂敷本体1の四隅部に、対角方向外側に連着部2を有する略C形状(例えば長辺長さが80mm、短辺長さが35mm程度の楕円C形形状)の切目部3を設け、この切目部3で画定される略C形状の切込舌片4を連着部2から対角外側に図3の如く折曲げて手提げ穴5が形成できるようにしたものである。
【0015】
前記構成の風呂敷は、広げた状態の風呂敷本体1の中央に被包装物6を置き、この被包装物6を周りから包み込むように風呂敷本体1の四隅部分を一箇所に寄せ集め、この寄せ集めた手提げ部分の切込舌片4を対角外側に折曲げて手提げ穴5を形成し、この手提げ穴5に手を通して吊持する。このような使い方によって被包装物6を安定した状態で容易に持ち運ぶことができ、また重い物を手で吊り下げて持ち運ぶ場合でも手提げ穴5の穴縁部分が折曲舌片4で図3の如く重合補強されるので、手が痛くならず手提げ穴部分が裂ける問題も解消することができる。」

以上の記載事項によると、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「風呂敷本体の四隅部に、対角方向外側に連着部を有する略C形状の切目部を設け、この切目部で画定される切込舌片を連着部から対角外側に折曲げて手提げ穴が形成できるようにした風呂敷。」

[引用例3]
(1)「【0001】
本発明は、不織布からなる袋及びシートの製造方法、並びに該袋及びシート、より詳しくは、包装袋、買物袋、小物袋又は手提げ袋等の各種袋、並びに、レジャーシート例えばキャンピングシート、及び包装用シート及び風呂敷などのシートであって、着色された袋及びシートに関する。」

(2)「【0009】
また本発明において用いられる不織布袋又はシートの材料としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維(ナイロン繊維)、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプリピレン系繊維、ポリプロミックス系繊維、ポリクラール系繊維等の合成繊維、ビスコース繊維、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維及びアセテート繊維等の半合成繊維等を挙げることができる。」

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
本願発明における「延伸性布材」とは、明細書の段落【0010】に、その実施例として「弾性と伸縮性」がある「不織布」が挙げられたものであって、また平成24年1月17日付け意見書の「II.4.」において請求人が「通常スーパーで持ち帰り用に用いられている袋のように、若干伸びればよい」ものであると主張しているものであり、引用発明1における「可撓性、伸縮性を有するシート材」とは、上記「3[引用例1]」の「(1)」及び「(4)」のとおり、可撓性、伸縮性、保形性が良好で、破損し難く、皺になり難い軟質プラスチックシート又は合成紙であって、その中央部を一方の手指で押さえ、周辺部を他方の手指で引張れば、全体として伸長、拡大するものであるから、本願発明における「平面状の角形又は円形の延伸性布材」と引用発明1における「正方形状」の「可撓性、伸縮性を有するシート材」とは、「平面状の角形の延伸性シート材」である限りにおいて一致し、
引用発明1における「シート材の中央部を底面」とすることは、本願発明における「素材平面の中心部を底面」とすることに相当し、
引用発明1における「多数の切込線」を「シート材の中央部から周辺部に亘って放射状かつ同心円状に、半径方向に等間隔に、円周方向に交互にずらして形成」することは、本願発明における「その周辺部に前記中心部から定間隔毎に複数の同心円上に部分円弧状の短い切り込みを、該中心部に対し、互い違いの位置に設け」ることに相当し、
引用発明1における「周辺部に紐状部材を挿通した包装材」は、上記「3[引用例1]」の「(5)」及び「(7)」のとおり、包装材の中央部に品物を載置して、該包装材の周辺部を手指で摘んで前記品物を包囲し、周辺部に挿通した紐状部材を縛着して外装したときに、その中央部を底面とする網状袋を形成するものであるから、本願発明における「最外周角部又は最外周部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、四角の形状そのままの用布の各四隅又は円形の用布の最外周部の四箇所に等間隔に配置するものであり、而して、該中心部に持ち帰り商品を置き、前記手下げにより全体を引き上げたとき、網状袋を形成」する「商品持ち帰り用網状袋」と引用発明1における「周辺部に紐状部材を挿通した包装材」とは、「中心部に被包装物を置き、該被包装物を包囲するように周辺部を寄せ集めて前記被包装物を外装したときに、網状袋を形成する網状袋」である限りにおいて一致する。
したがって、本願発明と引用発明1とは

「袋であって、包装素材に平面状の角形又は円形の延伸性シート材を使用し、該素材平面の中心部を底面とし、その周辺部に前記中心部から定間隔毎に複数の同心円上又は同心多角形上に部分円弧状又は部分直線状の短い切り込みを、該中心部に対し、互い違いの位置に設け、而して、該中心部に被包装物を置き、該被包装物を包囲するように周辺部を寄せ集めて前記被包装物を外装したときに、網状袋を形成する延伸性シート材を素材とする網状袋」

である点で一致し、次の各点で相違する。

[相違点1]
本願発明における「網状袋」は「商店からの商品持ち帰り用」である点。

[相違点2]
本願発明では、包装素材が「延伸性布材」であるのに対し、引用発明1では「可撓性、伸縮性を有するシート材」である点。

[相違点3]
本願発明における「商品持ち帰り用網状袋」は、最外周角部又は最外周部に4ケの手下げ用切り込み孔を設け、前記手下げ用切り込み孔を、四角の形状そのままの用布の各四隅又は円形の用布の最外周部の四箇所に等間隔に配置するものであり、而して、該中心部に持ち帰り商品を置き、前記手下げにより全体を引き上げたとき、網状袋を形成するものであるのに対し、引用発明1における「包装袋」は、周辺部に紐状部材が挿通され、中心部に品物を載置し、周辺部を手指で摘んで該品物を包囲して、前記紐状部材を縛着して外装したときに、網状袋を形成するものである点。

5 判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1]
引用発明1は、上記「3[引用例1](2)」のとおり、品物を収納して携帯したり、店頭等において吊下する場合に従来使用されていた、紙製又はプラスチック製の収納袋が有する課題を解決すべくなされたものであり、該収納袋を商店から商品を持ち帰るために用いることも、本願出願前に普通に行われていたことであるから、引用発明1に係る「包装材」を「商店からの商品持ち帰り用」に用いることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]
包装材を、布や不織布などの布材から形成することは、例えば引用例2や引用例3に上記「3」の「[引用例2](2)」や「[引用例3]」の「(1)」?「(2)」のとおり記載されているように、本願出願前の当業者にとって周知の事項であり、該布材がある程度の延伸性を有するもの、すなわち平成24年1月17日付け意見書の「II.4.」において請求人が主張する「通常スーパーで持ち帰り用に用いられている袋のように、若干伸び」るものであることもよく知られたことであるから、引用発明1における「可撓性、伸縮性を有するシート材」に換えて上記布材を用いることは、当業者が容易に想到し得たものであり、その効果も予測し得た範囲のものである。

[相違点3]
引用発明1における「紐状部材」は、上記「3[引用例1]」の「(5)」及び「(7)」のとおり、包装材の周辺部に設けられ、その中央部に載置した品物を包囲した包装材を袋状とするために縛着されるものである。
引用発明2における「切目部」は、上記「3[引用例2](2)」のとおり、包装材である「風呂敷」の四隅部に設けられた、手提げ穴を形成するために設けられたものであって、該「切目部」にて形成される「手提げ穴」は、風呂敷本体の四隅部分を被包装物を周りから包み込むように一箇所に寄せ集めた風呂敷を、袋状に形成して持ち運ぶために用いられるものである。
引用発明1における「紐状部材」と引用発明2における「四隅部」に形成された「切目部」とは、いずれも正方形状の包装材の周辺部に設けられ、該包装材を被包装物を周りから包み込む袋状に形成するために用いられるものであるから、引用発明1における「周辺部に紐状部材を挿通」することに換えて、引用発明2における「四隅部」に「切目部」を設けることを採用し、該切目部にて形成される手提げ穴に手を通して吊持したとき、網状袋を形成するようになすことは、当業者が容易に想到し得たものであり、その効果も予測し得た範囲のものであって、格別なものではない。

なお、請求人は、平成24年1月17日付け意見書の「II.」の「1.」?「2.」において、「本件特許出願前におきまして、特許庁2階の研修部パソコン調査室において、本願ないし類似物の分野の先行技術の調査を致しました。・・・研修部の特許庁職員の方に、当方の資料もお見せし、調査目的を説明して、先行文献の公報を出して頂きました。
先ず、その中には特開平11-147561包装材は出てきていませんでした。また、今回の審判部の拒絶理由における、登録実用新案公報に記載された四隅に孔を設けた正方形の風呂敷状物の公報は以前の審査段階では出てきておりません。・・・最初の審査段階では前記登録実用新案第3015622号公報(四隅に孔を設けた風呂敷状物の公開公報は特許庁の(パソコン・・・の切り替えの)都合で、この時点では閲覧できなかった、換言すれば公開はされていなかった、という事実が証明されています。・・・前記出願前調査のパソコン操作をして頂いた特許庁職員の方も、審査官の方も専門家であり、その専門家の方がたが調査しても、その時点でパソコンに出て来なかった資料は、一般はそれ以上の調査はできないのですから、その資料は公開されていなかったと同じことであったといえます。
本願発明者は出願前、いずれもそれらの先行技術を見ることはできなかった事実は明らかでしたから、『公知技術に基づいて---容易に当該発明をなしえた』という今回の本願拒絶の理由は論理的に間違っている、ということになります。
2.従って、本件の場合は、特許出願前に、発明者が、誰であっても公知物を見ることは不可能であつたことは事実でありますから、『公知の資料に基づいて、容易にできた』とは論理上、いえないということになります。」と主張している(以下、「主張1」という。)が、拒絶の理由で引用された文献が、出願前に先行技術の調査を行った「範囲」に含まれていなかったとしても、それをもって当該文献が本願出願前に頒布された刊行物ではないとする理由はなく、また、審査官が拒絶の理由で引用しなかった文献を本願出願前に頒布された刊行物ではないとする理由もないから、上記主張1は採用できない。
また、請求人は、同意見書の「II.1.」において「審査官殿の最初の拒絶理由通知を、審判部が審査経過記録から削除させてしまったのも、審査、審判の公正を妨害しているものです。『四隅の下げ手を設けるものに限定していないから特許査定できない』と明記されていたからです。これを補正したのに特許査定しなかったのは不公正です。」と主張している(以下、「主張2」という。)が、原査定の備考欄の記載は、出願人が平成22年9月28日付け意見書において主張する効果を奏する構成が、請求項に記載されていないため、該主張を採用できない旨を記しただけのものであるし、当審において最初の拒絶理由を通知したことは、特許法第159条第2項で準用する同法第50条の規定に基づくものであって、何ら違法性はないから、上記主張2も採用できない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-19 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願2010-143121(P2010-143121)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 河原 英雄
一ノ瀬 薫
発明の名称 延伸性布材を素材とする商品持ち帰り用網状袋とその製造方法  
代理人 田中 貞夫  

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