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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) G06F
管理番号 1260009
審判番号 不服2009-14001  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-06 
確定日 2012-07-11 
事件の表示 特願2000-591542「高度な処理能力をもつ電子装置での統計的分析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 6日国際公開、WO00/39715、平成14年10月 8日国内公表、特表2002-533844〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成11年12月28日の出願であって、その請求項に係る発明は、特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して、平成23年 7月 7日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。
なお、前記拒絶理由の内容は以下のとおりである。
『1.手続の経緯
本願は、平成11年12月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年12月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年8月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年2月12日付けで手続補正がなされたが、同年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月6日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。そして、同年11月13日付けで審査官から前置報告がなされ、平成22年11月30日付けで当審より審尋がなされ、平成23年6月7日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成21年8月6日付けの手続補正について
本件拒絶理由通知と同日付けの補正却下の決定により、平成21年8月6日付けの手続補正は却下されることとなった。
その補正の却下の決定の内容は以下のとおりのものである。

[理由]

「第1.手続の経緯
本願は、平成11年12月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年12月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年8月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年2月12日付けで手続補正がなされたが、同年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月6日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。そして、同年11月13日付けで審査官から前置報告がなされ、平成22年11月30日付けで当審より審尋がなされ、平成23年6月7日付けで回答書が提出されたものである。

第2.審判請求時の補正について
平成21年8月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の記載を含むものである。

「【請求項1】
高度な処理能力を有する電子装置での統計分析を用いて故障状態を検出し、前記高度な処理能力を有する電子装置から中央監視部へ送信する必要があるデータの量を削減する方法であって、
電気信号をセンスして、前記電気信号の1つのパラメータの複数の値を示す複数のセンス信号を提供する工程と、
前記センス信号のうちの少なくとも2つから前記パラメータの統計値を確定する工程と、
前記センス信号の1つと前記統計値を比較して、前記センス信号の1つの値が前記統計値から統計的に有意な量だけ外れていれば逸脱事象信号を生成する工程と、
前記高度な処理能力を有する電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る工程と
を備えることを特徴とする方法。」(以下、この特許請求の範囲の請求項1を「補正後の請求項1」という。)

第3.補正の適否
1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討
(1)補正後の請求項1は、その記載からして、少なくとも次の発明事項(a)を含む。

(a)高度な処理能力を有する電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る工程。

ここで、前記(a)は、逸脱事象信号及び不処理データを常に中央監視部に送るものであって、逸脱事象信号及び不処理データ以外のデータを中央監視部に送らない態様を含む。

しかしながら、特許法第184条の4第1項の国際出願日(平成11年12月28日)における特許法第184条の3第2項の国際特許出願の明細書若しくは図面の特許法第184条の4第1項の翻訳文、又は国際出願日における国際特許出願の図面(以下、「翻訳文等」という)には、
「【0009】
… 言い換えれば、データ(観察値)が、期待平均値、即ち、公称値等の期待値範囲から統計的に有意な量だけ逸脱していることをユーザに警告する。逸脱事象信号をI/Oポート62を介して中央監視部(不図示)やディスプレイ54に送信する、即ち、警報(不図示)を発するために使ってもよい。」、
「【0010】
統計分析アルゴリズムは高度な処理能力を有する電子装置自体で実行されるため、有意な偏差値のみを送信すればよいので、即ち、生データとは逆に価値のある情報が送信されるので、送信が必要なデータ量を劇的に削減する。また、必要ならば、不処理のデータも転送してもよい。」、
「【0019】
統計分析アルゴリズムでは有意な偏差値のみを伝送する必要があるので、遮断装置30から中央監視部(不図示)に送信が必要なデータ量は劇的に削減される。また、データ量が少ないため、この情報を分析することは至極容易である。」
(注:下線は、参考のために当審で付与したもの)と記載されているに過ぎない。
すなわち、翻訳文等には、「有意な偏差値のみを送信」することが明記され、これにより、中央監視部に送信が必要なデータ量を劇的に削減する効果を奏することが記載されている。なお、不処理のデータの送信については、単に「必要ならば、不処理のデータも転送してもよい。」とするものに過ぎない。
したがって、翻訳文等では、遮断装置は、有意な偏差値のみを送信するものであって、必要に応じて不処理のデータも送信するものであり、逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送るようにする態様(すなわち、逸脱事象信号及び不処理データを常に中央監視部に送るものであって、逸脱事象信号及び不処理データ以外のデータを中央監視部に送らない態様)は、翻訳文等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

したがって、補正後の請求項1に記載された発明特定事項(a)は、翻訳文等に記載されておらず、かつ、その記載から自明なものでもない。

(2)以上のように、本件補正は、翻訳文等に記載した範囲内でしたものではないので、外国語特許出願に係る明細書又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項に基づき、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.結論
平成21年8月6日付け手続補正は、特許法第184条の4第1項の国際出願日における特許法第184条の3第2項の国際特許出願の明細書若しくは図面の特許法第184条の4第1項の翻訳文、又は国際出願日における国際特許出願の図面に記載した範囲内でしたものではないので、外国語特許出願に係る明細書又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項に基づき、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。」

3.本願発明について
平成21年8月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成21年2月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定されるものである。

4.最後の拒絶の理由
【理由1】平成21年2月12日付けでした手続補正は、下記の点で特許法第184条の4第1項の国際出願日における特許法第184条の3第2項の国際特許出願の明細書若しくは図面の特許法第184条の4第1項の翻訳文、又は国際出願日における国際特許出願の図面(以下「翻訳文等」という)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、外国語特許出願に係る明細書又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項で引用される、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1について
平成21年2月12日付け手続補正で補正された請求項1は、その記載からして、少なくとも次の発明特定事項(a)を含んでいる。

(a)高度な処理能力を有する電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る工程。

しかしながら、上記「2.平成21年8月6日付けの手続補正について」の「[理由]」の「第3.補正の適否」の「1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討」で指摘したように、前記請求項1に記載された前記発明特定事項(a)「高度な処理能力を有する電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る工程」は、翻訳文等に記載されたものではない。よって、請求項1は、翻訳文等に記載した事項の範囲内で補正されたものではない。

(2)請求項2?13について
請求項2?13は、請求項1を引用することから、「(1)請求項1について」で指摘したと同じ理由により、請求項2?13は、翻訳文等に記載した事項の範囲内で補正されたものではない。

(3)請求項14について
平成21年2月12日付け手続補正で補正された請求項14は、平成21年2月12日付け手続補正で補正された請求項1にかかる方法に関する発明を装置の観点から記載したものであるから、前記「(1)請求項1について」において指摘したのと同様の理由により、補正後の請求項14に記載された発明特定事項「…電子装置は、該電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る」は、翻訳文等に記載されたものではない。よって、請求項14は、翻訳文等に記載した事項の範囲内で補正されたものではない。

(4)請求項15?27について
請求項15?27は、請求項14を引用することから、「(3)請求項14について」で指摘したと同じ理由により、請求項15?27は、翻訳文等に記載した事項の範囲内で補正されたものではない。

以上のように、平成21年2月12日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の記載は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


【理由2】この出願は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1について
(1-1)請求項1記載の「高度な処理能力を有する電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る工程」は、上記【理由1】の「(1)請求項1について」で指摘したように、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(1-2)請求項1記載の「高度な処理能力を有する電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る工程」における「不処理データ」が具体的にどのデータを意味するのか、不明であり、さらに、前記「不処理データ」と、請求項1記載の「電気信号の1つのパラメータの複数の値を示す複数のセンス信号」、パラメータの統計値を確定するために用いる「前記センス信号のうちの少なくとも2つ」、前記統計値から統計的に有意な量だけ外れている「センス信号の1つの値」、及び「逸脱事象信号」との関係も不明であり、発明が明確でない。
また、発明の詳細な説明を参照しても、
「【0010】
統計分析アルゴリズムは高度な処理能力を有する電子装置自体で実行されるため、有意な偏差値のみを送信すればよいので、即ち、生データとは逆に価値のある情報が送信されるので、送信が必要なデータ量を劇的に削減する。また、必要ならば、不処理のデータも転送してもよい。」と記載されているに過ぎず、「不処理データ」が具体的にどのデータを意味するのか、不明である。(なお、「生データ」についても、具体的にどのデータを意味するのか、不明である。)

(2)請求項2?13について
請求項2?13は、請求項1を引用することから、「(1)請求項1について」で指摘した事項は、全て請求項2?13にも適用される。

(3)請求項14について
(3-1)請求項14記載の「電子装置は、該電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る」は、上記【理由1】の「(3)請求項14について」で指摘したように、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(3-2)請求項14記載の「電子装置は、該電子装置内での故障状態の発生前に前記逸脱事象信号及び不処理データのみを前記中央監視部に送る」における「不処理データ」が具体的にどのデータを意味するのか、不明であり、さらに、前記「不処理データ」と、請求項14記載の「電気信号の1つのパラメータの複数の値を示す複数のセンス信号」、パラメータの統計値を確定するために用いる「前記センス信号のうちの少なくとも2つ」、前記統計値から統計的に有意な量だけ外れている「センス信号の1つの値」、及び「逸脱事象信号」との関係も不明であり、発明が明確でない。
また、発明の詳細な説明を参照しても、
「【0010】
統計分析アルゴリズムは高度な処理能力を有する電子装置自体で実行されるため、有意な偏差値のみを送信すればよいので、即ち、生データとは逆に価値のある情報が送信されるので、送信が必要なデータ量を劇的に削減する。また、必要ならば、不処理のデータも転送してもよい。」と記載されているに過ぎず、「不処理データ」が具体的にどのデータを意味するのか、不明である。

(4)請求項15?27について
請求項15?27は、請求項14を引用することから、「(3)請求項14について」で指摘した事項は、全て請求項15?27にも適用される』

そして、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-08 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-27 
出願番号 特願2000-591542(P2000-591542)
審決分類 P 1 8・ 537- WZF (G06F)
P 1 8・ 55- WZF (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 勝巳漆原 孝治  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 田中 秀人
殿川 雅也
発明の名称 高度な処理能力をもつ電子装置での統計的分析方法  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  

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