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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1260011 |
審判番号 | 不服2009-14879 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-18 |
確定日 | 2012-07-11 |
事件の表示 | 特願2002-538911「ヒドロコドン放出制御製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月10日国際公開、WO02/36099、平成16年 4月22日国内公表、特表2004-512354〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2001年10月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年10月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答して平成20年4月8日に手続補正書とともに意見書が提出されたが、平成21年4月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成21年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年8月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正は、補正前(平成20年4月8日付けの手続補正書参照)の請求項1?27及び30を削除し、補正前の請求項28及び29をそれぞれ補正後(平成21年8月18日付けの手続補正書参照)の請求項1及び2とするものであって、補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 (a)(i)ヒドロコドンまたは製薬上許容しうるその塩の鎮痛有効量を含む薬剤層と、(ii)ポリアルキレンオキシドおよびカルボキシアルキルセルロースからなる群から選択されるオスモポリマーを含む置換層と、を含む二層コア部;および (b)該ヒドロコドンまたは製薬上許容しうるその塩の放出のための通路を配置した、二層コア部を包囲する半透過性壁部、 を含有する徐放性経口浸透圧製剤であって、 該製剤は、37℃でpH1.6?7.2の水性緩衝液900ml中で100rpmでUSPバスケット法により測定した場合に、1時間で0?35%、4時間で10?70%、8時間で20?75%、12時間で30?80%、18時間で40?90%、かつ24時間で60%より高値のヒドロコドンまたは製薬上許容しうるその塩のインビトロ放出速度を有し;インビトロの放出速度はpHに実質的に非依存性であり、即ち、ある所定の時間において、あるpHにおいて放出されるオピオイドの量と他のpHにおける放出量との差が、水性緩衝液900ml中で100rpmで米国薬局方XXII(1990)のUSPパドル法を用いてインビトロで測定した場合に、多くとも10%である、前記徐放性経口浸透圧製剤。 【請求項2】 前記製薬上許容しうるヒドロコドンの塩が重酒石酸ヒドロコドンである、請求項1に記載の製剤。」 また,補正前の請求項28及び29は次のとおりである。 「【請求項28】 (a)(i)ヒドロコドンまたは製薬上許容しうるその塩の鎮痛有効量を含む薬剤層と、(ii)オスモポリマーを含む置換層と、を含む二層コア部;および (b)該ヒドロコドンまたは製薬上許容しうるその塩の放出のための通路を配置した、二層コア部を包囲する半透過性壁部、 を含有する徐放性経口浸透圧製剤であって、 該製剤は、37℃でpH1.6?7.2の水性緩衝液900ml中で100rpmでUSPバスケット法により測定した場合に、1時間で0?約35%、4時間で約10?約70%、8時間で約20?約75%、12時間で約30?約80%、18時間で約40?約90%、かつ24時間で約60%より高値のヒドロコドンまたは製薬上許容しうるその塩のインビトロ放出速度を有し;インビトロの放出速度はpHに実質的に非依存性であり、即ち、ある所定の時間において、あるpHにおいて放出されるオピオイドの量と他のpHにおける放出量との差が、水性緩衝液900ml中で100rpmで米国薬局方XXII(1990)のUSPパドル法を用いてインビトロで測定した場合に、多くとも10%である、前記徐放性経口浸透圧製剤。 【請求項29】 前記製薬上許容しうるヒドロコドンの塩が重酒石酸ヒドロコドンである、請求項19?28のいずれかに記載の製剤。」 上記補正によって、少なくとも、(ア)補正前の請求項1?27及び30が削除され、また、補正後の請求項1(補正前の請求項28)において、(イ)補正前の「オスモポリマー」が「ポリアルキレンオキシドおよびカルボキシアルキルセルロースからなる群から選択されるオスモポリマー」と補正され、(ウ)補正前の「1時間で0?約35%、4時間で約10?約70%、8時間で約20?約75%、12時間で約30?約80%、18時間で約40?約90%、かつ24時間で約60%より高値の」が「1時間で0?35%、4時間で10?70%、8時間で20?75%、12時間で30?80%、18時間で40?90%、かつ24時間で60%より高値の」と補正されたものと認められるので、以下、これらの点について検討する。 (ア)の点の補正は、補正前の請求項1?27及び30を削除したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の(以下、単に「平成18年改正前」ともいう。)特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 (イ)の点の補正は、補正前の請求項28に記載した発明を特定するために必要な事項である「オスモポリマー」について、「ポリアルキレンオキシドおよびカルボキシアルキルセルロースからなる群から選択される」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (ウ)の点の補正は、拒絶査定において「「約」なる記載は、特許請求の範囲を不明確とするもので適切でない」と指摘されたことを受けて、「約」を削除したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そこで,本願補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)特許法第36条第6項第1号の要件について 特許法第36条第6項第1号の規定によれば、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることと規定されているので、以下この点について検討する。 (3)本願補正発明の背景 浸透圧放出製剤は、本願出願日前から知られている徐放性製剤の一類型であり、個々の薬剤に求められる徐放特性に応じて特定の放出特性を有するように製造されている(例えば、瀬崎仁編「ドラッグデリバリーシステム」(株式会社南江堂 1986年4月15日発行)の「VI-2. 経口投与を目的とした放出制御型製剤」(114?117頁)には、薬剤層とプッシュ層からなる二層コアが、通路を有する半透過性壁で囲まれた構造を有する経口浸透圧製剤が記載され(図6(c)参照)、各種の薬剤を含有し、様々な放出特性を有する経口浸透圧製剤の例が記載されている(表2参照)。)。 また、ヒドロコドンを含むオピオイド系鎮痛剤については、徐放性が求められている薬剤であることは本願出願日前において周知である(例えば、原審の拒絶査定で引用された引用文献1、3、4及び5には、オピオイド鎮痛薬を約24時間にわたって持続放出する持続放出性製剤の発明が記載され、オピオイド鎮痛薬としてヒドロコドンが例示されている(引用文献1のクレーム1及び17;引用文献3の請求項1、4、6及び11;引用文献4の請求項1及び5;引用文献5の請求項1及び17)。また、同引用文献2には、少なくとも12時間にわたってインビトロ放出を持続するヒドロコドン製剤が具体的に記載され(例6及び図4参照)、理想的には毎日1回の投与とすることを示唆する記載もある(1頁6?9行参照)。)。 このような従来技術を踏まえると、特定の薬剤放出特性をもった浸透圧製剤に係る本願発明にあっては、そこで特定された薬剤放出特性をもたせるための技術手段、すなわち、具体的にどのような成分を選択し、また、選択された成分をどのような割合で組み合わせて、或いは、それらの各配合成分をどのように調製したら,本願補正発明で特定された放出特性をもたせられるか、などといった事項について、発明の詳細な説明において開示がなされていないならば、本願補正発明が発明の詳細な説明に記載されているとすべきでないことは明らかである。 このような観点から本願発明の詳細な説明の記載を検討する。 (4)本願明細書の発明の詳細な説明の記載について 本願補正発明に係る浸透圧製剤の調製法に関しては、明細書【0015】段落を見ると、経口浸透圧製剤が、薬剤層とプッシュ層からなる二層コアが、通路を有する半透過性壁で囲まれた構造を有するものであることが記載されているに止まり、本願補正発明で特定された放出特性をもたせるための技術的手段、すなわち、具体的にどのような成分を選択し、また、選択された成分の配合割合をどうするか、或いは、それらの各配合成分をどのように調製するか、などといった事項について何ら具体的な説明はなされていない。 また、明細書【0086】?【0096】段落などの記載を見ても、主として、使用する成分及びその分子量等の物性について多数例示されているに止まり、本願補正発明で特定された放出特性をもたせるための技術的手段、すなわち、具体的にどのような成分を選択し、また、選択された成分の配合割合をどうするか、或いは、それらの各配合成分をどのように調製するか、などといった事項について何ら具体的な説明はなされていない。 そして、本願補正発明に係る浸透圧製剤に対応する唯一の具体的と解される実施例3の記載をみても、本願補正発明で特定されているインビトロ放出特性に関して明らかにされておらず、このような製剤が本願補正発明で特定された薬剤放出特性を有するものであることが示されているものとすることができない。 そうすると、本願補正発明に係る特定の放出特性を有する浸透圧製剤について、どのようなしたら所望の製剤が得られるかについて、当業者が理解できるように発明の詳細な説明に記載されているとものとはいえず、このような本願発明の詳細な説明の記載では、当業者が本願補正発明の内容を把握し得るものとすることはできない。 したがって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとはいえない。 (5)請求人の主張について 請求人は平成23年10月31日付けの回答書において、概略、 ・実施例3では詳細に製剤の製造方法が記載されており、そのように製造された製剤が請求項1に特定されたインビトロ放出速度を満たすであろうことは、段落【0011】に記載されている ・実施例1及び2の製剤は、実施例3の製剤と部分的に構成が異なるものの、請求項1に特定されたインビトロ特性を満たしていることが示されているから、実施例3の製剤も請求項1に特定されたインビトロ特性を満足するであろうことが確からしいことが推認できる 旨の主張をしている。 しかし、段落【0011】にも実施例3にも、実施例3の製剤が本願補正発明で特定された放出特性を有するとの明示的な記載は無く、本願明細書に接した当業者であっても、実施例3の製剤が段落【0011】に記載された条件を実際に満たすことまで理解できるとは認められない。 また、実施例1及び2の製剤は浸透圧製剤ではないから、それらの測定結果は、徐放性経口浸透圧製剤において、本願補正発明で特定された放出特性をもたせるための技術手段の説明にはならない。そもそも、実施例1及び2の製剤のインビトロ放出速度の測定結果は、pH7.5における1、2、4、8及び12時間の測定値に過ぎず、18時間又は24時間の放出速度を満足することを示していないし、放出速度がpHに非依存性であることについても何ら示していない。 したがって、上記の請求人の主張を採用することはできない。 (6)独立特許要件についてのまとめ よって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (7)むすび 以上のとおり,本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願請求項1に係る発明について 平成21年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?30に係る発明は、平成20年4月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?30に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 ヒト患者への24時間おきの投与に適する固体経口放出制御製剤であって、重酒石酸ヒドロコドンの鎮痛有効量および放出制御物質を含む複数の多粒子マトリクスを含み;ヒト患者への投与後に0.55?約0.85のC_(24)/C_(max)比を有し;かつ、少なくとも約24時間治療効果を有し、 前記多粒子が圧縮されて錠剤となっており、 該錠剤が、放出制御コーティングでコーティングされ、 該錠剤は、37℃で人工胃液(SGF)700ml中で1時間、その後37℃でpH7.5のリン酸塩緩衝液900mlに交換して100rpmでUSPバスケット法により測定した場合に、1時間放出において重酒石酸ヒドロコドンの少なくとも10?約45重量%、4時間放出において重酒石酸ヒドロコドンの少なくとも20重量%、8時間放出において重酒石酸ヒドロコドンの約20?約65重量%、かつ、12時間放出において重酒石酸ヒドロコドンの約45?約85重量%もの重酒石酸ヒドロコドンのインビトロの溶解放出速度を提供する、前記固体経口放出制御製剤。」 (2)原査定の理由の概要 原査定の理由3は、「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものであって、より具体的には、「本願明細書の実施例には、重酒石酸ヒドロコドンを有効成分とし、特定の放出制御物質、及び特定の多粒子マトリックスを含み、特定の放出制御コーティングでコーティングされた錠剤組成物の処方例が記載され、それらの1?12時間における溶解性試験結果も記載されている。しかしながら、上記溶解性試験データのみに基づいて、実際にヒト患者への投与後に各請求項に規定される特定の数値範囲のC_(24)/C_(max)比を有し、かつ、少なくとも24時間の治療効果を達成できるとは到底認められない」というものである。 (3)当審の判断 本願発明では「C_(24)/C_(max)比」というパラメータを用いた特定を含むものであるが、該パラメータは通常この分野で用いられているものとはいえないし、また、それゆえ、例えば、米国薬局方に定められた測定法に基づくインビトロ放出速度との関連性についても当業者に知られていたものとすることもできない。 このような前提の下、以下検討する。 本願発明は、「0.55?0.85のC_(24)/C_(max)比を有し」なる特定を含む製剤である。しかしながら、「C_(24)/C_(max)比」というパラメータについては、上記したように、この分野において通常使用されているものではないことから、このようなパラメータについて本願発明で特定される範囲を有する製剤について、例えば、その調製法等、具体的にどのような手段によれば所望とするパラメータを有する製剤が得られるのかについて、発明の詳細な説明に開示しなければ、本願発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるとすべきでないことは明らかである。 然るに、以下に述べるように、本願発明の詳細な説明の記載は、本願発明に係る製剤を得るための具体的手段について記載されているものとすることができない。 すなわち、まず、「C_(24)/C_(max)比」というパラメータは、上記したようにこの分野で通常使用されるものではないことから、この値が本願発明で特定された値となる製剤の製造方法については、当業者に既に知られた方法があるということはないので、発明の詳細な説明において、当業者が理解できるように記載されている必要がある。 これに対して、本願発明に係る製剤の調製法に関しては、明細書【0038】?【0077】段落を見ると、放出制御マトリクス製剤の製造方法の例や、用いられる成分の例が一般的に記載される記載されているに止まり、本願発明で特定された「C_(24)/C_(max)比」を有する製剤について、例えば、その調製法等、具体的にどのような手段によれば所望とするパラメータを有する製剤が得られるのかについて、何ら具体的な説明はなされていない。 また、【0048】?【0049】段落の記載は、その記載内容から見て実施例1の製剤についての調製法を説明した記載と解され、しかも該実施例1に係る製剤は、本願発明に係る製剤であることが意図されているものと解されるものである。しかしながら、これらの段落の記載に加えて、マトリクス成分に関する説明がなされている【0039】?【0046】段落などの記載も参考にしたとしても、発明の詳細な説明において説明されている調製法により得られた製剤の全てが、「0.55?0.85のC_(24)/C_(max)比」というパラメータを有するものであるとは、技術的に到底首肯できないし、さらに、実施例1で製造された製剤が、このような特定のパラメータを有するものであることを直接的に示すデータが提示されているものでもない。 また、同様に、【0050】は、実施例2の製剤についての調製法を説明した記載と解され、しかも該実施例2は本願発明に係る製剤であることが意図されているものと解されるものであるが、当該【0050】の記載に加えて【0039】?【0046】などの記載も参考にしたとしても、これらの記載で説明されている調製法により得られた製剤の全てが、本願発明で特定された「C_(24)/C_(max)比」を有するものであるとは、技術的に到底首肯できないことであり、さらに、実施例2で製造された製剤についても、このパラメータが本願発明で特定される範囲となることが直接的に示されているものでもない。 (なお、実施例3については、本願発明における「多粒子が圧縮されて錠剤となっており」なる特定事項を満たすものではないことから、本願発明に係る製剤に対応するものではないと解される。) 一方、本願発明においては、米国薬局方(USP)を引用してインビトロ放出速度が併せて特定されているが、例えば、仮に、このようなインビトロ放出速度と「C_(24)/C_(max)比」との関連性・相関性が、当業者にとって知られていたというのであれば、発明の詳細な説明で「C_(24)/C_(max)比」の値が直接示されていなくとも、米国薬局方に基づくインビトロ放出速度に関する記載をもってこれに代えることが可能と考えられるし、また、請求項の記載でも、公知になっている両者の関係と整合する特定範囲となっているのであれば、これをもって所定の記載要件は満たされるものと判断することは可能と考えられる。しかし、本願発明の詳細な説明には、両者の関係が明らかにされている記載もないし、また、上記したように、そもそも「C_(24)/C_(max)比」というパラメータがこの分野において通常使用されているものとはいえないことから、米国薬局方に基づくインビトロ放出速度との関連性が当業者に知られていたものとすることができない。 してみると、たとえ、実施例1及び2において、米国薬局方に定められた測定法に基づくインビトロ放出速度が示されていたとしても、「C_(24)/C_(max)比」の値との関連が明らかでないのであるから、それら製剤が本願発明に係る製剤に対応するものであることの根拠とはいえないし、また、本願発明において、インビトロ放出速度に関する特定が併せてなされていたとしても、これらの条件を満たす製剤であれば、必ず「0.55?0.85のC_(24)/C_(max)を有する」ということもいえない。 そうすると、本願発明の詳細な説明の記載には、本願発明に対応する製剤について、唯一つの実例すら示されているものではないし、また、該製剤の調製法について明確に記載されているものとすることもできない。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において記載されたものとすることができない。 (4)むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-08 |
結審通知日 | 2012-02-14 |
審決日 | 2012-02-27 |
出願番号 | 特願2002-538911(P2002-538911) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 當麻 博文、小柳 正之 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
前田 佳与子 田名部 拓也 |
発明の名称 | ヒドロコドン放出制御製剤 |
代理人 | 大森 規雄 |
代理人 | 片山 英二 |
代理人 | 杉山 共永 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 鈴木 康仁 |