• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1260024
審判番号 不服2010-21683  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-27 
確定日 2012-07-11 
事件の表示 特願2001-519565「漏洩防止・再シール可能なコンテナ・キャップ・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月 8日国際公開、WO01/15989、平成15年 3月11日国内公表、特表2003-509291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2000年8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年8月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項2に係る発明は平成23年9月8日付け手続補正で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2の記載により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という)。
「【請求項2】漏洩防止・再シール可能なコンテナ・キャップ・アセンブリの開閉方法であって:
コンテナ・キャップ・アセンブリを片手でつかむ段階と;
親指タブでコンテナ・キャップ・アセンブリを開く段階であって、
a)キャップはコンテナと一体に取り付けられていて;
b)前記コンテナは上部と内表面と外表面とを有しており、前記コンテナが前記上部に円筒状の直立した縁を有していて、前記縁は、前記キャップの内壁面に接触する前記コンテナの部分として形成されており、前記縁は縁内壁面と縁外壁面とを有していて、従って前記縁内壁面は前記コンテナの前記内表面にほぼ平行であって;
c)前記キャップは外周面を有する円形ベースと、前記円形ベースの外周面から垂直かつ外方向に延伸している円筒状の管状スカートとを有しており、前記スカートが内壁を有していて、前記コンテナの開閉を容易にするための親指タブを含んでいて、
d)前記キャップは前記コンテナに付着したヒンジを有しており、前記ヒンジは、前記キャップを一つのピボット点において回転するようになっている少なくとも一つのヒンジリセス曲げ点を有していて、前記親指タブと前記ヒンジとは、前記キャップのほぼ両端部に位置していて、そして前記キャップの前記スカートから垂直かつ外向きに延びている、親指タブでコンテナ・キャップ・アセンブリを開く段階と;
前記コンテナ・キャップ・アセンブリを片手でつかむ段階と;
前記キャップの前記スカートを前記コンテナをかぶせ、そして前記コンテナの前記縁の少なくとも一部分が前記キャップの前記スカートの前記内壁の前記キャップのリセスに係合し、漏洩防止シールを形成するようになるまで、前記キャップの前記親指タブに十分な前方下向きの力を片手で作用する段階と;
前記コンテナ・キャップ・アセンブリを片手でつかむ段階と;
前記コンテナ及びキャップを開く段階と;
前記コンテナ・キャップ・アセンブリを片手でつかむ段階と;
再度、前記キャップの前記スカートを前記コンテナをかぶせ、そして前記コンテナの前記縁の少なくとも一部分が前記キャップの前記スカートの前記内壁の前記キャップのリセスに係合し、前記コンテナの前記縁と前記スカートの前記内壁との間に漏洩防止シールを形成するようになるまで、前記キャップの前記親指タブに十分な前方下向きの力を作用する段階と;
を含んでいる漏洩防止・再シール可能なコンテナ・キャップ・アセンブリの開閉方法。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成23年3月4日付けで通知した拒絶の理由3の概要は、
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特表平5-502845号公報
2.実願昭56-62879号(実開昭57-174355号)のマイクロフィルム
3.特開平7-223661号公報
4.実願昭59-83482号(実開昭60-195749号)のマイクロフィルム
5.特開平9-267850号公報
6.特開平11-314656号公報
7.特開平2-93196号公報」
というものである。

3.当審の判断
(1)上記引用文献1には下記の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、樹脂成形バイアル(vials)のようなタンパープルーフ(tamper proof)の容器、キャッブの組立体に関する。容器へのアクセスが、該容器を開封したという眼に見える証拠を残してのみ可能となる容器を提供することが好ましい場合がある。例えば、このような容器は、液状の試料等の輸送や保管の際に試料を完全な状態に保持するのに有用である。バイアルの中の試料を完全な状態に保持することは、乳製品工業や薬品の試験においてますます重要になってきている。」(第2頁左下欄第4?11行)
(イ)「タンパ-プルーフのプラスチック製バイアル10は一体にプラスチック成形された容器12とキャップ14とを有している。キャップとバイアルとはそれぞれ米国特許第4,783,056号及び第4,812.116号に開示された工程と型とによって成形されても良い。上記の工程と型とによれば、キャップ、容器、タンバープルーフシール(後述する)を含むバイアル全体を単一の操作で成形することができる。上記特許の開示は参考として以下の説明の一部をなす。
キャップ14は容器に、一体に成形されたヒンジ16を介して連結されており、キャップは開放位置と閉鎖位置との間を該ヒンジのまわりに回動するようになっている。閉鎖位置では、キャップは容器12の縁18に圧入される。
容器12は、前記縁18の近傍で容器の外表面22から半径方向外側に向けて突出した一体のフランジ20を有している。
フランジ20は貫通孔24を有しており、該貫通孔の軸線は容器12の長手方向軸線28に略平行になるようにされている。
キャップ14は半径方向外側に向けて突出すると共に貫通孔32を備えたフランジ30を有している。キャップフランジ30は、キャップ14が閉じられたとき容器フランジ20上に重なって載るようになっており、それにより貫通孔32と24とが略同軸上に整列するようになっている。しかし、貫通孔の相対位置が多少ずれても本発明の機能には悪影響は生じない。好ましくは、キャップフランジ30は容器フランジ20を越えて延設され、キャップ14の開放を容易にするための親指をかけるタブ35を形成するようにされる。」(第3頁右上欄第11行?左下欄第13行)
(ウ)Fig.1、Fig.2から、円筒状の縁18が容器12の上部に直立していて、前記縁18の内壁面は前記容器の内表面にほぼ平行である点が見て取れる。
(エ)Fig.1、Fig.2から、キャップ14は円形ベースと、その外周から垂直に延伸している円筒状部分、半径方向外側に向けて突出するキャップフランジ30を有しており、前記キャップフランジ30には、そのほぼ両端部に位置して外向きに延びているタブとヒンジリセスを有するヒンジ16を設けている点が見て取れる。
(オ)「封止ストリップは単にタンパ-プルーフ機能を有するだけでなく…輸送中にキャップが外れることを防止するためにも役立つ。従って容器内容物がこぼれることを防止するという安全性をも有している。」(第3頁右下欄第25行?第4頁左上欄第4行)
(カ)「封止ストリップは容器と一体に形成されているため、一旦破断されると交換することは不可能であることが理解されよう。従って、ひも状シールが容器やキャップと別体に形成されていた従来技術の装置に関しては可能であったように、当初のひも状シールを別のひも状シールと交換することによって本発明のタンパ-プルーフ能力を打破することは不可能である。」(第3頁右下欄第15?21行)

上記(イ)より、閉鎖位置では、キャップは容器の縁に圧入され、(オ)より、当該位置では容器内容物がこぼれることが防止されるものと認められ、以上の記載から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「容器とキャップが一体に成形され、
前記容器が上部に円筒状の直立した縁を有していて、前記縁の内壁面は前記容器の内表面にほぼ平行であって、
前記キャップは円形ベースと、その外周から垂直に延伸している円筒状部分、半径方向外側に向けて突出するキャップフランジを有しており、前記キャップフランジには、そのほぼ両端部に位置して外向きに延びているタブとヒンジリセスを有するヒンジを設けているプラスチック製バイアルを開く方法であって、
前記容器の縁に、漏洩を防止するように圧入されたキャップを、タブに親指をかけて開くプラスチック製バイアルを開く方法。」

(2)対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の容器が外表面とを有し、縁は外壁面を有することは明らかであり、キャップにも内壁面と外壁面が存在するものと認められ、キャップ圧入時に容器の縁の外壁面が前記キャップの内壁面に接触するものと認められる。
また、引用発明の「容器」は本願発明の「コンテナ」に、「円筒状部分」及び「キャップフランジ」は「(管状)スカート」に、「タブ」は「親指タブ」に、「プラスチック製バイアル」は「コンテナ・キャップ・アセンブリ」に、それぞれ相当し、引用発明のヒンジは、キャップを一つのピボット点において回転するようになっているものと認められる。
したがって、本願発明と引用発明は、
「漏洩防止可能なコンテナ・キャップ・アセンブリを開く方法であって:
a)キャップはコンテナと一体に取り付けられていて;
b)前記コンテナは上部と内表面と外表面とを有しており、前記コンテナが前記上部に円筒状の直立した縁を有していて、前記縁は、前記キャップの内壁面に接触する前記コンテナの部分として形成されており、前記縁は縁内壁面と縁外壁面とを有していて、従って前記縁内壁面は前記コンテナの前記内表面にほぼ平行であって;
c)前記キャップは外周面を有する円形ベースと、前記円形ベースの外周面から垂直かつ外方向に延伸している円筒状の管状スカートとを有しており、前記スカートが内壁を有していて、前記コンテナの開放を容易にするための親指タブを含んでいて、
d)前記キャップは前記コンテナに付着したヒンジを有しており、前記ヒンジは、前記キャップを一つのピボット点において回転するようになっている少なくとも一つのヒンジリセス曲げ点を有していて、前記親指タブと前記ヒンジとは、前記キャップのほぼ両端部に位置していて、そして前記キャップの前記スカートから垂直かつ外向きに延びている、コンテナ・キャップ・アセンブリを、前記親指タブに親指をかけてキャップを開放するコンテナ・キャップ・アセンブリを開く方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、再度、キャップのスカートをコンテナにかぶせ、前記コンテナの縁が前記キャップのスカートの内壁のリセスに係合し、前記縁と前記内壁との間に漏洩防止シールを形成する段階を含む開閉方法であるのに対して、引用発明では、再度、キャップを容器にかぶせ、漏洩防止シールを形成する段階については特定されていない点。

[相違点2]
本願発明では、コンテナ・キャップ・アセンブリを片手でつかんで開閉し、親指タブに前方下向きの力を片手で作用させて閉じるのに対して、引用発明では、このように特定されていない点。

まず、上記相違点1について検討する。
本願明細書の【発明の詳細な説明】では親指タブに「前方下向きの力を作用する」ことが記載されているとは認められないが、段落【0007】、【0009】、【0015】、【0018】等には、「前面から単一動作で親指タブに下方向に力を加える」との記載があり、前記記載はこのことを意味するものと解される。
そして、リセスが係合することで漏洩防止シールを形成するようにして、キャップによる再封を可能とすることは周知技術であり(例えば、上記引用文献5の段落【0025】?【0026】及び図3?4、又は引用文献7の第2頁右上欄第16?20行及び第5図参照)、また、一般に容器本体とそのキャップ間のシール性は当該容器の使用形態に応じて適宜定め得る設計的事項であって、引用発明のプラスチック製バイアルを液状の試料等の輸送や保管に使用する際に、そのシールを容器が逆さになっても内容物が漏洩しないものとすることは当業者が適宜なす程度の事項にすぎないと認められるので、引用発明において、キャップと縁のシール面に当該構成を適用して、再度、キャップの円筒状部分を容器にかぶせ、前記容器の縁を前記キャップの円筒状部分の内壁のリセスに係合させて、前記縁と前記内壁との間に、容器が逆さになっても内容物が漏洩しない漏洩防止シールが形成することは当業者が容易になし得たものと認められる。さらに、漏洩検出のために青色液体を用いることは周知技術であって(例えば、特開昭62-129731号公報参照)、液体の着色に青色水晶染色粉を用いたことに格別な技術的意義は認められず、逆さにしたときの漏洩を調べる際に、容器から漏洩した着色液体を確認し易いように白色紙の上で容器を逆さにして、テストをすることは当業者が適宜なす程度の事項にすぎないので、「青色水晶染色テスト」の手法を用いて容器のシール性を判定したことは当業者が適宜なし得たことにすぎないと認められる。
また、本願発明においては、コンテナ・キャップ・アセンブリを開く段階と親指タブに前方下向きの力を作用する段階(コンテナ・キャップ・アセンブリを閉じる段階と認められる)が繰り返し存在するが、キャップの開閉を繰り返すことに格別な技術的意義を認められず、この点は当業者が適宜なし得たものと認められる。
次に、上記相違点2について検討すると、容器本体にヒンジを介してキャップを結合し、キャップを片手でつかんで片手のみで開閉可能とすることは周知技術であり(例えば、上記引用文献2の第2頁第6?20行、第1図?第3図、又は引用文献4の第2頁第14行?第3頁第2行参照)、また、指掛け用のタブを設けてある場合に当該タブに指で力を作用させることは当業者が適宜なす程度の事項にすぎないと認められ、引用発明において、プラスチック製バイアルを片手でつかみ、タブに親指をかけてキャップを開くとともに、タブに前方下向きの力を片手で作用させて閉じるものとすることは当業者が容易になし得たものと認められる。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび
以上より、本願発明は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものであり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-09 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-28 
出願番号 特願2001-519565(P2001-519565)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 晋  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 亀田 貴志
熊倉 強
発明の名称 漏洩防止・再シール可能なコンテナ・キャップ・アセンブリ  
代理人 篠崎 正海  
代理人 鶴田 準一  
代理人 大橋 康史  
代理人 青木 篤  
代理人 島田 哲郎  
代理人 三橋 庸良  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ