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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1260068
審判番号 不服2009-25422  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-24 
確定日 2012-07-12 
事件の表示 特願2004-547507「医薬組成物および化粧品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月13日国際公開、WO2004/039349、平成18年 2月23日国内公表、特表2006-506388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年10月 7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年10月31日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成21年 6月 3日付けで手続補正がなされたが、その後、平成21年 8月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年12月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は、平成21年 6月 3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
疎水性で高度に分散性の二酸化ケイ素を含有する医薬組成物および化粧品組成物において、二酸化ケイ素がDIN 55943により測定された、70?400g/lの突き固め密度を有し、
疎水性で高度に分散性の二酸化ケイ素のBET表面積が50?400m^(2)/gであり、
二酸化ケイ素が最大3.0質量%の水湿潤性含量を有することを特徴とする、疎水性で高度に分散性の二酸化ケイ素を含有する医薬組成物および化粧品組成物。」


3.引用例に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-220316号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 水相と油相と粉末成分を含有し、油相が水相中に球状を呈して分散する化粧料組成物であって、前記粉末成分として、疎水化シリカを用いることを特徴とする化粧料組成物。」(【特許請求の範囲】の欄)

(イ)「【0024】本発明に用いられる疎水化シリカは、一次平均粒子径が1?50nmのものが好ましく用いられ、特には5?20nmである。また、該疎水化シリカの比表面積(BET法による)が10?500m^(2)/gのものが好ましく、特には100?300m^(2)/gである。さらに、該疎水化シリカの見掛け比重が20?100g/lであるものが好ましく、特には50?90g/lである。一次平均粒子径、比表面積、見掛け比重が上記範囲内にあるものを用いることにより、少量で安定な球状の油成分をより一層効果的に得ることができる。
【0025】このような疎水化シリカは、「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL R976」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL RX200」(以上、いずれも日本アエロジル(株)製)等として市販されており、好ましく用いられる。」(段落【0024】及び【0025】)

(2)引用例1の記載事項(ア)?(イ)からみて、引用例1には、日本アエロジル(株)製の「AEROSIL R972V」などの疎水化シリカを含有する化粧料組成物の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。


4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明にいう「二酸化ケイ素がDIN 55943により測定された、70?400g/lの突き固め密度を有し、
疎水性で高度に分散性の二酸化ケイ素のBET表面積が50?400m^(2)/gであり、
二酸化ケイ素が最大3.0質量%の水湿潤性含量を有することを特徴とする、疎水性で高度に分散性の」なる条件を備えた二酸化ケイ素は、本願明細書の以下の記載
「【0044】
本発明によれば、適しており、既に商業的に入手可能である疎水性の高度に分散性の二酸化ケイ素型は、Aerosil(登録商標)R 972V、・・・(Nippon Aerosil Corporation)、・・・である。Aerosil(登録商標)R 972V、・・・は、特に好適である。」
によれば、Nippon Aerosil Corporation製のAerosil(登録商標)R 972Vを特に好適なものとすることがうかがえる。そして、本願明細書の段落【0061】?【0082】に記載された実施例において、「本発明による」とされる二酸化ケイ素は、もっぱらAerosil(登録商標)R 972Vであり、その付き固め密度は90g/l、水湿潤性含量は2.0%とされているから、該Aerosil(登録商標)R 972Vは、これらのパラメーターの点では、本願発明にいう上記条件を満たすものである。一方、本願明細書には、該Aerosil(登録商標)R 972VのBET表面積(審決注:技術的に正確には、「BET比表面積」と称すべきものである。)についての記載は見いだせないが、日本アエロジル株式会社のホームページのAerosil(R)R 972Vの製品情報の欄(http://www.aerosil.com/lpa-productfinder/page/productsbygroup/detail.html?pid=1864&lang=en&ret=2f6c70612d70726f6475637466696e6465722f706167652f70726f6475637473627967726f75702f6c6973742e68746d6c3f6c7066736974653d6165726f73696c26646566303d333735266c616e673d656e266465663d3126706167653d3126646566313d333636)によれば、その比表面積は130m^(2)/gであるとされていること、及び、1999年9月の日本アエロジル株式会社の製品パンフレットによれば、Aerosil R972VのBET法による比表面積は110±20m^(2)/gであるとされていること、を考慮すれば、本願明細書に記載の上記Nippon Aerosil Corporation製のAerosil(登録商標)R 972Vは、BET比表面積の点でも、本願発明にいう「BET表面積が50?400m^(2)/g」なる条件を満たすものとするのが合理的である。そうすると、本願発明にいう上記条件を満たす二酸化ケイ素は、該Aerosil(登録商標)R 972Vを包含するものといえる。また、本願明細書に記載の上記「Nippon Aerosil Corporation」は、引用例1に記載の上記「日本アエロジル(株)」と同義であることは明らかであることを考慮すると、本願明細書に記載の上記Nippon Aerosil Corporation製のAerosil(登録商標)R 972Vと、引用例1に記載の上記日本アエロジル(株)製の「AEROSIL R972V」とが、同じものであることは明らかである。
以上のことから、本願発明にいう上記条件を満たす二酸化ケイ素と、引用発明にいう「日本アエロジル(株)製の「AEROSIL R972V」などの疎水化シリカ」は、少なくとも「AEROSIL R972V」の点で一致すると認められる。また、本願発明にいう「医薬組成物および化粧品組成物」と引用発明にいう「化粧料組成物」は、化粧品組成物である点で重複することは明らかである。
してみると、本願発明と引用発明の間に相違点は見いだせない。

また、仮に、引用発明を、引用例1の記載事項(ア)に基づいて、疎水化シリカを含有する化粧料組成物の発明であると認定すると、本願発明と引用発明とは二酸化ケイ素を含有する化粧品組成物の点で一致し、ただ、本願発明は、二酸化ケイ素として、上記Nippon Aerosil Corporation製のAerosil(登録商標)R 972Vなど、上記条件を備えるものを選択した点で、引用発明と相違することとなるが、引用例1には、該疎水化シリカの好ましいものとして上記「AEROSIL R972V」(日本アエロジル(株)製)すなわち上記Nippon Aerosil Corporation製のAerosil(登録商標)R 972Vが記載されているのであるから、これを引用発明において選択し、化粧品組成物に係る本願発明に想到することに当業者が格別の創意を要したものとはいえない。また、本願明細書の記載を検討しても、本願発明が化粧品組成物である場合については、何らかの効果を奏した旨の記載を見いだすことができない。この点に関し、審判請求人は、審判請求書の中で
「しかしながら、この水湿潤含量により、本願発明による医薬組成物および化粧品組成物は、本願明細書段落番号[0035]中に記載されているような、ダストの僅かな発生、著しく高い組成物の流動可能性、錠剤の改善された機械的安定性、ならびに同段落番号[0037]中に記載されているような、作用化合物の放出ならびに医薬組成物および化粧品組成物の崩壊時間が使用される疎水性の二酸化ケイ素の突き固め密度によって影響を及ぼされるという驚異的な作用効果を有しています。更に、実施例の記載により、ダストの発生が僅かであることが確認できるものと思量致します。」
と主張する。しかしながら、本願明細書に記載の、錠剤の改善された機械的安定性、作用化合物の放出、及び、医薬組成物の崩壊時間における効果は、もっぱら医薬組成物の場合に特有の効果であると認められるし、化粧品組成物の崩壊時間とはいかなる現象のことなのか想定し難い。そして、ダストの僅かな発生、及び、著しく高い組成物の流動可能性という効果は、本願発明の二酸化ケイ素自体、及び、それを配合した粉体を当業者が扱ってみれば、容易に認識できるものというほかはない。
したがって、化粧品組成物である場合の本願発明が引用例1の記載から予測し得ないほど優れた効果を奏し得たものとすることもできない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。あるいは、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-14 
結審通知日 2012-02-17 
審決日 2012-02-28 
出願番号 特願2004-547507(P2004-547507)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 中村 浩
内藤 伸一
発明の名称 医薬組成物および化粧品組成物  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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