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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1260069
審判番号 不服2010-1591  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-25 
確定日 2012-07-12 
事件の表示 特願2005- 51646「ナノカーボン材料製造用触媒、触媒微粒子、ナノカーボン材料製造用触媒の製造方法及びナノカーボン材料製造システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 7日出願公開、特開2006-231247〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年2月25日の出願であって、平成21年6月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日付けで意見書並びに特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正書が提出され、同年10月20日付けで拒絶査定がなされ、平成22年1月25日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正書が提出されたものであり、その後、平成24年1月30日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知され、同年3月28日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年1月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成22年1月25日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)により特許請求の範囲の請求項1?19は、
「【請求項1】
炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
担体の表面に形成される活性金属と他の成分との割合を2:0.1?2:20とし、
活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
前記活性金属は、還元雰囲気にてナノ単位で微小析出させることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項3】
請求項2において、
複合酸化物担体の表面に形成された反応層と、該反応層から露出された活性金属とからなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項4】
請求項2において、
微小析出が300nm以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
複合酸化物がMgFe_(2)O_(4)であり、
MgとFeとの比が、0.1:2?20:2であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含んでなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項7】
請求項2において、
前記還元雰囲気は、複合酸化物が還元される酸素分圧以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒を造粒し、0.2?10mmの微粒子としてなることを特徴とする触媒微粒子。
【請求項10】
炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒の製造方法であって、
複合酸化物生成原料中に担体を浸漬させ、その後焼成して該担体の表面に2成分からなる複合酸化物を形成するに際し、
複合酸化物を構成する活性金属と他の成分との割合が2:0.1?2:20であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記得られた複合酸化物を還元雰囲気にて活性金属を微小析出させ、
複合酸化物担体の表面に形成された反応層と、該反応層から露出された活性金属とを形成することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、
微小析出が300nm以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、
前記還元雰囲気は、複合酸化物が還元される酸素分圧以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一つにおいて、
複合酸化物がMgFe_(2)O_(4)であり、
MgとFeとの比が、0.1:2?20:2であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一つにおいて、
前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含んでなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれか一つにおいて、
前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項17】
請求項10乃至16のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒の製造方法により得られたナノカーボン材料製造用触媒を造粒し、0.2?10mmの微粒子としてなることを特徴とする触媒微粒子。
【請求項18】
請求項17の触媒微粒子を用い、カーボン原料からナノカーボン材料を製造する製造装置と、
前記カーボン材料を製造装置から回収する回収装置と、
該回収されたカーボン材料から担体を分離するカーボン材料精製装置と、を具備することを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。
【請求項19】
請求項18において、
前記ナノカーボン材料を製造する製造装置が流動層反応装置であることを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。」
から
「【請求項1】
炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
前記ナノカーボン材料製造用触媒は担体の表面に形成された反応層を有し、前記反応層における活性金属と他の成分とのモル比を2:0.1?2:20とし、
活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
前記活性金属は、還元雰囲気にてナノ単位で微小析出させることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項3】
請求項2において、
微小析出が300nm以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
反応層に少なくとも活性金属と他の成分から成る複合酸化物を有することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項5】
請求項4において、
前記複合酸化物がMgFe_(2)O_(4)であり、
MgとFeとのモル比が、0.1:2?20:2であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含んでなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項7】
請求項2乃至3のいずれか一つにおいて、
前記還元雰囲気は、複合酸化物が還元される酸素分圧以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒を造粒し、0.2?10mmの微粒子としてなることを特徴とする触媒微粒子。
【請求項10】
炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒の製造方法であって、
複合酸化物生成原料中に担体を浸漬させ、その後焼成して該担体の表面に2成分からなる複合酸化物を形成するに際し、
複合酸化物を構成する活性金属と他の成分とのモル比が2:0.1?2:20であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記得られた複合酸化物を還元雰囲気にて活性金属を微小析出させ、
複合酸化物担体の表面に形成された反応層と、該反応層から露出された活性金属とを形成することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、
微小析出が300nm以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、
前記還元雰囲気は、複合酸化物が還元される酸素分圧以下であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一つにおいて、
複合酸化物がMgFe_(2)O_(4)であり、
MgとFeとのモル比が、0.1:2?20:2であることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一つにおいて、
前記活性金属にMo又はWのいずれか一種又は両方の助触媒を含んでなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれか一つにおいて、
前記ナノカーボン材料が単層ナノカーボンチューブであることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒の製造方法。
【請求項17】
請求項10乃至16のいずれか一つのナノカーボン材料製造用触媒の製造方法により得られたナノカーボン材料製造用触媒を造粒し、0.2?10mmの微粒子としてなることを特徴とする触媒微粒子。
【請求項18】
請求項17の触媒微粒子を用い、カーボン原料からナノカーボン材料を製造する製造装置と、
前記カーボン材料を製造装置から回収する回収装置と、
該回収されたカーボン材料から担体を分離するカーボン材料精製装置と、を具備することを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。
【請求項19】
請求項18において、
前記ナノカーボン材料を製造する製造装置が流動層反応装置であることを特徴とするナノカーボン材料の製造システム。」
に補正された。

本件補正前後の請求項1の記載を検討すると、本件補正前の請求項3には、「請求項2において、
複合酸化物担体の表面に形成された反応層と、該反応層から露出された活性金属とからなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。」であることが記載され、本件補正前の請求項2は、「請求項1において、
前記活性金属は、還元雰囲気にてナノ単位で微小析出させることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。」であり、本件補正前の請求項1は、「炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
担体の表面に形成される活性金属と他の成分との割合を2:0.1?2:20とし、
活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。」であるのに対し、本件補正後の請求項1は、「炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
前記ナノカーボン材料製造用触媒は担体の表面に形成された反応層を有し、前記反応層における活性金属と他の成分とのモル比を2:0.1?2:20とし、
活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。」であって「前記活性金属は、還元雰囲気にてナノ単位で微小析出させること」について記載がない。してみると、この点についての本件補正は、単なる請求項の削除とみることはできず、少なくとも、「前記活性金属は、還元雰囲気にてナノ単位で微小析出させること」という本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項を削除し、本件補正後において活性金属を還元雰囲気にてナノ単位で微小析出させることに関し何らの特定のないものに拡張する新たな請求項1を特定するものである。
さらに、本件補正後の請求項4は、「請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
反応層に少なくとも活性金属と他の成分から成る複合酸化物を有することを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。」であるが、対応する請求項は、本件補正前の特許請求の範囲には見当たらない。してみると、この点についての本件補正は、いわゆる増項補正である。
そして、これらの補正事項は、本件補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるとは認められず、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にもあたらないことは明らかであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定するいずれかの事項を目的とするものであるとは認められない。
したがって、これらの補正事項を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成22年1月25日付けの手続補正は前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1?19に係る発明は、平成21年8月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。
【請求項1】
炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
担体の表面に形成される活性金属と他の成分との割合を2:0.1?2:20とし、
活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の外国語特許出願であって(優先日:平成17年2月7日(2005.2.7)、米国)、その出願後に国際公開された特願2007-558033号(国際公開第07/092021号)(以下、「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の各記載がある。
(イ)「 An activated catalyst capable of growing single-walled carbon nanotubes when reacted with carbonaceous gas, and a method for making such an activated catalyst, is provided. The activated catalyst is formed by reacting a source of A with a source of B at a temperature sufficiently low so as to form a complex oxide having a formula A_( x) B_( y) O_( z) , wherein x/y≦2 and z/y ≦4, A is a Group VIII element, and B is an element different from A and is an element whose simple oxide, in which B is at the same valence state as in the complex oxide, is not reducible in the presence of hydrogen gas at a temperature less than about 900 #C, and then activating the complex oxide by reducing said complex oxide at a temperature less than about 950℃
Element A may comprise cobalt, iron, nickel, or a mixture thereof. Element B is selected from aluminum, lanthanum, magnesium, silicon, titanium, zinc, zirconium, yttrium, calcium, strontium and barium and may preferably be magnesium. The complex oxide may have a spinel crystallography, wherein the spinels comprise a group of oxides that have very similar structures. The general formula of the spinel group is AB _(2) O_( 4) . The element A represents a divalent metal ion such as magnesium, ferrous iron, nickel, manganese and/or zinc. The element B represents trivalent metal ions such as aluminum, ferric ion, chromium and/or manganese. When A is cobalt and B is magnesium, the complex oxide may comprise Co _(2) MgO _(4) spinel and the calcining temperature (in air) may be less than about 800 ℃ and greater than about 400 ℃. Reduction of the catalyst may occur under flowing hydrogen and the activated catalyst may be passivated as an additional process step. 」(段落[0016]?[0017])「 炭素質ガスと反応させた時、単層壁炭素ナノチューブを成長することができる活性化触媒及びそのような活性化触媒を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
活性化触媒は、Aの原料とBの原料とを、錯体酸化物で、式A_(x)B_(y)O_(z)、(式中、x/y≦2及びz/y≦4であり、Aは第VIII族元素であり、BはAとは異なった元素であり、その簡単な酸化物で、その中のBが前記錯体酸化物の場合と同じ原子価状態になっている簡単な酸化物が約900℃より低い温度で水素ガスの存在下で還元することができない元素である)を有する錯体酸化物を形成するのに充分低い温度で反応させ、次に、前記錯体酸化物を約950℃より低い温度で還元することにより前記錯体酸化物を活性化することにより形成される。
元素Aは、コバルト、鉄、ニッケル、又はそれらの混合物を含むことができる。元素Bは、アルミニウム、ランタン、マグネシウム、珪素、チタン、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選択され、好ましくはマグネシウムである。錯体酸化物は、結晶学的には、スピネル解析結晶構造を有し、そのスピネル類は非常に類似した構造を有する酸化物群を含む。スピネル群の一般式はAB_(2)O_(4)である。元素Aは、マグネシウム、第一鉄、ニッケル、マグネシウム及び/又は亜鉛のような二価金属イオンを表す。元素Bは、アルミニウム、第二級、クロム及び/又はマンガンのような三価金属イオンを表す。Aがコバルトであり、Bがマグネシウムである場合、錯体酸化物はCo_(2)MgO_(4)スピネルを含むことができ、か焼温度(空気中)は、約800℃より低く、約400℃より高くすることができる。触媒の還元は、水素を流しながら行なってもよく、活性化触媒は、付加的処理行程として不動態化してもよい。」(特表2008-529957号公報段落【0016】?【0018】)
(ロ)「 In the literature, as well as on the production floor, it is commonly believed that microregions and even nanoregions (clusters of atomic dimensions) of Group VIII elements (typically, iron, cobalt, nickel) provide excellent nucleation sites from which nanotubes will readily grow. These regions may be metallic in nature from the outset or may be formed by the selective reduction of Group Vlll-containing compounds (the Group VIII element as a cation), as described below in the embodiments. The compounds disclosed herein are oxides.」(段落[0033])「 文献では、製造現場と同様、第VIII族元素(典型的には鉄、コバルト、ニッケル)のミクロ領域及び更にはナノ領域(原子規模のクラスター)が、ナノチューブが容易に成長する優れた核生成部位を与えると一般に考えられている。これらの領域は、最初から金属の性質を持っていてもよく、或は種々の態様として下に記載するように、第VIII族(陽イオンとして第VIII族元素を)含有する化合物の選択的還元により形成されてもよい。ここに開示する化合物は酸化物である。」(特表2008-529957号公報段落【0025】)
(ハ)「 Not wishing to be bound by a particular theory, it is believed that without an appropriate chemical and, perhaps, physical interaction between the complex oxide catalyst (A- rich) and its support (B-rich), the micro or nanoregions of Group VIII (A-rich) activated catalyst will tend to agglomerate to form bigger regions (sintering) upon heating to a temperature that is equal to or greater than half of its melting temperature ( °K). A strong interaction with the support will tend to stabilize these small catalytic regions even at such temperatures. By forming a complex oxide system, not only is there a strong interaction between A and B, but further, as discussed above, each metal site is separated in an orderly manner which may further improve the resistance to sintering. Thus, a selective (or controlled) reduction will result in the formation of small metal particles from component A, separated and stabilized by the much less reducible metal oxide of B.」(段落[0079])「 特定の理論によって束縛されたくはないが、錯体酸化物触媒(Aに富むもの)とその支持体(Bに富むもの)との間の適当な化学的及び、恐らく、物理的相互作用を起こすことなく、第VIII族(Aに富む)活性化触媒のミクロ又はナノ領域が、その溶融温度(°K)の半分に等しいか又はそれより高い温度まで加熱することにより凝集して一層大きな領域を形成する(焼結する)傾向を持つであろうと考えられる。支持体との強い相互作用は、そのような温度でさえもそれらの小さな触媒領域を安定化する傾向があるであろう。錯体酸化物系を形成することにより、AとBとの間に強い相互作用が存在するのみならず、上で論じたように、更にそれぞれの金属位置が規則正しい仕方で分離され、そのことが更に焼結に対する抵抗性を向上することができる。このように、選択的(又は制御された)還元は、成分Aから小さな金属粒子の形成をもたらし、遥かに還元しにくいBの金属酸化物により分離され、安定化される結果になるであろう。」(特表2008-529957号公報段落【0073】)

各記載事項を検討すると、記載事項(イ)には、「炭素質ガスと反応させた時、単層壁炭素ナノチューブを成長することができる活性化触媒」及び「そのような活性化触媒を製造する方法」として「Aの原料とBの原料とを、錯体酸化物で、式A_(x)B_(y)O_(z)、(式中、x/y≦2及びz/y≦4であり、Aは第VIII族元素であり、BはAとは異なった元素であり、その簡単な酸化物で、その中のBが前記錯体酸化物の場合と同じ原子価状態になっている簡単な酸化物が約900℃より低い温度で水素ガスの存在下で還元することができない元素である)を有する錯体酸化物を形成するのに充分低い温度で反応させ、次に、前記錯体酸化物を約950℃より低い温度で還元することにより前記錯体酸化物を活性化することにより形成される」ことが記載されている。
そして、同記載事項には、「錯体酸化物はCo_(2)MgO_(4)スピネルを含むことができ」ることも記載されている。
これら記載事項(イ)の内容を本願発明の記載振りに則って整理すると、先願明細書等には、
「Aの原料とBの原料とを、Co_(2)MgO_(4)スピネルを含むことができる錯体酸化物で、式A_(x)B_(y)O_(z)、(式中、x/y≦2及びz/y≦4であり、Aは第VIII族元素であり、BはAとは異なった元素であり、Bが前記錯体酸化物の場合と同じ原子価状態になっている簡単な酸化物が約900℃より低い温度で水素ガスの存在下で還元することができない元素である)を有する錯体酸化物を形成するのに充分低い温度で反応させ、次に、前記錯体酸化物を約950℃より低い温度で還元することにより前記錯体酸化物を活性化することにより形成される、炭素質ガスと反応させた時、単層壁炭素ナノチューブを成長することができる活性化触媒」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比
本願発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「単層壁炭素ナノチューブ」は、「ナノカーボン材料」の一種であり(本願発明請求項16参照)、先願発明の「炭素質ガス」は、本願発明の「炭素原料」に相当するから、先願発明の「炭素質ガスと反応させた時、単層壁炭素ナノチューブを成長することができる活性化触媒」は、本願発明の「炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒」に相当すると認められる。そして、先願発明の「錯体酸化物」は、「Co_(2)MgO_(4)スピネルを含むことができる」から「複合酸化物」であり、先願発明の「簡単な酸化物」は、「simple oxide」の直訳であり、単一金属の酸化物のことであって、先願発明の「Aは第VIII族元素であり、BはAとは異なった元素であ」る「元素Aは、コバルト、鉄、ニッケル、又はそれらの混合物を含むことができる。」もので、「元素Bは、アルミニウム、ランタン、マグネシウム、珪素、チタン、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選択され、好ましくはマグネシウムである。」から、AとBは、それぞれ、本願発明の「担体の表面に形成される活性金属と他の成分」に相当することは明らかである。さらに、先願発明の「式A_(x)B_(y)O_(z)、(式中、x/y≦2・・・)」であることは、本願発明の「活性金属と他の成分との割合を2:0.1?2:20」であることと、「活性金属と他の成分との割合を2:1?2:20」とする範囲で重複する。
そうすると、両者は、
「炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
担体の表面に形成される活性金属と他の成分との割合を2:1?2:20とした、
ナノカーボン材料製造用触媒。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点]
本願発明では、担体の表面に形成される「活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなる」のに対して、先願発明では、「錯体酸化物を形成するのに充分低い温度で反応させ、次に、前記錯体酸化物を約950℃より低い温度で還元することにより前記錯体酸化物を活性化することにより形成される」点。

5.[相違点]についての判断
本願発明における、「活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなる」ことの技術的意義は、「このように活性金属である鉄に対し、マグネシウムを前記範囲とすることにより、従来技術のような担体(例えばMgO)に鉄(Fe)が単独で担持されているような場合には、図8に示すように、担体17の表面で鉄の凝集が生じ、大径の鉄からなる活性金属となって、多層のナノカーボン材料を生成することになるのを防止するようにしている。
すなわち、マグネシウムの割合が図6に示すように少ないような場合には、鉄の移動をマグネシウムが阻止し、鉄が単独で存在することとなり、単層のナノカーボン材料となる。また、マグネシウムを過剰とすることで、図7に示すように、鉄をマグネシウムにより孤立させることで、凝集を積極的に防止することになる。」(本願明細書段落【0044】)であり、活性金属の凝集防止による多層のナノカーボン材料の生成防止にあるものと認められる。そして、先願発明においても単層壁炭素ナノチューブを成長することができる活性化触媒の製造に際し、記載事項(ハ)に「それぞれの金属位置が規則正しい仕方で分離され、そのことが更に焼結に対する抵抗性を向上することができる。このように、選択的(又は制御された)還元は、成分Aから小さな金属粒子の形成をもたらし、遥かに還元しにくいBの金属酸化物により分離され、安定化される結果になるであろう。」と記載されるように、「成分Aから小さな金属粒子の形成をもたらし、遥かに還元しにくいBの金属酸化物により分離され」、「ミクロ領域及び更にはナノ領域(原子規模のクラスター)が、ナノチューブが容易に成長する優れた核生成部位を与える」(記載事項(ロ))ものと認められる。
そうすると、「分離され」るということは「単独で存在又は孤立させ」ることに相当することは明らかだから、本願発明の「活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなる」は、実質的に、先願明細書等においても、記載されているに等しいというべきであり、上記相違点は、実質的な相違点とすることができない。
よって、本願請求項1に係る発明は、先願発明と同一である。

第4 本願補正発明について
1.平成22年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたが、手続補正が適法であるとして、ここで予備的に検討する。
本願の請求項1?19に係る発明は、平成22年1月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
「炭素原料を用いてナノカーボン材料を生成するナノカーボン材料製造用触媒であって、
前記ナノカーボン材料製造用触媒は担体の表面に形成された反応層を有し、前記反応層における活性金属と他の成分とのモル比を2:0.1?2:20とし、
活性金属を他の成分により単独で存在又は孤立させてなることを特徴とするナノカーボン材料製造用触媒。」

2.引用文献の記載事項
平成21年6月22日付けの拒絶理由通知書で引用された引用文献等2は、上記「第3(2)」における「先願」に相当し、同項の(イ)?(ハ)は、「先願明細書等」に記載された事項である。

3.対比・判断
本願補正発明は、本願発明の「活性金属」を「前記ナノカーボン材料製造用触媒は担体の表面に形成された反応層を有し、前記反応層における活性金属」として限定するものである。
しかしながら、先願明細書等の記載事項(ハ)に「支持体との強い相互作用は、そのような温度でさえもそれらの小さな触媒領域を安定化する傾向があるであろう。錯体酸化物系を形成することにより、AとBとの間に強い相互作用が存在するのみならず、上で論じたように、更にそれぞれの金属位置が規則正しい仕方で分離され、そのことが更に焼結に対する抵抗性を向上することができる。このように、選択的(又は制御された)還元は、成分Aから小さな金属粒子の形成をもたらし、遥かに還元しにくいBの金属酸化物により分離され、安定化される結果になるであろう。」と記載されるように、選択的還元(反応)が先願発明においても利用されていることが明らかであるから、先願発明においても、触媒は、還元反応層を有し、成分Aは、小さな金属粒子として形成されているものと認められる。
そして、先願発明は上記のとおり、上記「第2 4.?5.」に記載した理由により、本願補正発明の特定事項を全て含むものであるから、本願補正発明と実質的に同一である。
してみると、本願補正発明は、引用文献等1に記載された発明と実質的に同一である。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に記載された発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-08 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-28 
出願番号 特願2005-51646(P2005-51646)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (B01J)
P 1 8・ 16- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 國方 恭子
中澤 登
発明の名称 ナノカーボン材料製造用触媒、触媒微粒子、ナノカーボン材料製造用触媒の製造方法及びナノカーボン材料製造システム  
代理人 高村 順  
代理人 酒井 宏明  

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