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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1260072
審判番号 不服2010-12722  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-10 
確定日 2012-07-12 
事件の表示 特願2002-381216「半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-214366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年12月27日の出願であって,平成21年10月5日に手続補正がされ,平成22年3月9日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年6月10日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされ,その後,平成23年10月20日付けで審尋がされ,同年12月26日に回答書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年6月10日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は,明細書の特許請求の範囲及び段落【0009】,【0010】,【0012】,【0017】?【0020】,【0027】及び【0028】を補正するものであって,特許請求の範囲の請求項1については,本件補正の前後で以下のとおりである。

〈補正前〉
「【請求項1】
基板と,前記基板上に形成され金属酸化物からなるゲート絶縁膜と,前記ゲート絶縁膜上に形成されたポリシリコンからなるゲート電極とを備えてなるMIS型の半導体装置であって,
前記ゲート絶縁膜は,アルミニウム及びハフニウムを含むと共に,前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチな第1の絶縁領域と,前記ポリシリコンからなるゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチな第2の絶縁領域とを有することを特徴とする半導体装置。」

〈補正後〉
「【請求項1】
基板と,該基板上に形成され金属酸化物のみからなるゲート絶縁膜と,該ゲート絶縁膜上に形成されたポリシリコンからなるゲート電極とを備えてなるMIS型の半導体装置であって,
前記ゲート絶縁膜は,アルミニウム及びハフニウムを含むと共に,前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である第1の絶縁領域と,前記ポリシリコンからなるゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチで,かつ,アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である第2の絶縁領域とを有することを特徴とする半導体装置。」

2.補正事項の整理
本件補正後の請求項1についての補正を整理すると次のとおりとなる。

〈補正事項a〉
補正前の請求項1の「金属酸化物からなるゲート絶縁膜」を,補正後の請求項1の「金属酸化物のみからなるゲート絶縁膜」とすること。

〈補正事項b〉
補正前の請求項1の「ハフニウムリッチな第1の絶縁領域」を,補正後の請求項1の「ハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である第1の絶縁領域」とすること。

〈補正事項c〉
補正前の請求項1の「アルミニウムリッチな第2の絶縁領域」を,補正後の請求項1の「アルミニウムリッチで,かつ,アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である第2の絶縁領域」とすること。

3.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討

上記〈補正事項a〉は,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ゲート絶縁膜」について,「金属酸化物のみからなる」として,より限定するものである。また,「ゲート絶縁膜」が「金属酸化物のみからなる」点は,本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)の,段落【0029】?【0030】に記載されている。
また,〈補正事項b〉は,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ゲート絶縁膜」について,その「ハフニウムリッチな」「第1絶縁領域」が,「ハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である」として,より限定するものであり,〈補正事項c〉についても同様に,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ゲート絶縁膜」について,より限定を行うものである。また,〈補正事項b〉に係る「ハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である第1の絶縁領域」及び〈補正事項c〉に係る「アルミニウムリッチで,かつ,アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である第2の絶縁領域」は,いずれも当初明細書等の段落【0031】に記載されている。

よって,〈補正事項a〉?〈補正事項c〉は,いずれも特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,上記各補正事項に係る事項は,いずれも当初明細書等に記載されている。よって,上記各補正事項は,いずれも,当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

上記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものであり,同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから,以下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすか)どうかを,補正後の請求項1に係る発明について検討する。

4.独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりものである。(再掲。以下「本願補正発明」という。)
「【請求項1】
基板と,該基板上に形成され金属酸化物のみからなるゲート絶縁膜と,該ゲート絶縁膜上に形成されたポリシリコンからなるゲート電極とを備えてなるMIS型の半導体装置であって,
前記ゲート絶縁膜は,アルミニウム及びハフニウムを含むと共に,前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である第1の絶縁領域と,前記ポリシリコンからなるゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチで,かつ,アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である第2の絶縁領域とを有することを特徴とする半導体装置。」

(2)先願明細書等に記載された発明
特願2002-193789(特開2004-39813号公報)
特願2002-193789は,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願の日前の特許出願であって,本願の出願後に出願公開がされ,また,その出願人が,本願の出願の時において,本願の出願人と同一でないものであるところ,その願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書等」という。)には,図1,4及び5とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加。以下同様。)

ア 発明の属する技術分野
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高温の熱処理後も非晶質状態を保持する高誘電体膜を備えた半導体装置に関し,とくにMOSトランジスタ(MOS型電界効果トランジスタ)に使用される高誘電率のゲート絶縁膜に関する。」

イ 従来の技術
「【0002】
【従来の技術】
微小なMOSトランジスタの高速動作及び低電圧動作を確保するため,SiO_(2)より誘電率の高い高誘電率物質をゲート絶縁膜として使用する試みがなされている。例えば,HfO_(x),ZrO_(x)等の高誘電率金属酸化物からなる非晶質薄膜をゲート絶縁膜とするMOSトランジスタが提案されている。
【0003】
しかし,これらの金属酸化物は,800℃以上の温度で容易に結晶化する。このため,非晶質金属酸化物をゲート絶縁膜として使用すると,ゲート絶縁膜を堆積した後に施されるソース・ドレイン領域の活性化熱処理により非晶質ゲート絶縁膜が結晶化してしまう。かかるゲート絶縁膜の結晶化は,ゲート絶縁膜の下地であるシリコン基板の表面に低誘電率のSiO_(2)膜を生成させ,ゲート絶縁膜の実効膜厚を増加させる。また,結晶化はクラスター状に起こるため,ゲート絶縁膜の電気的特性及び物理的特性の場所的なゆらぎを発生させる。このため,トランジスタの特性が安定しない。
【0004】
かかる高誘電率金属酸化物の結晶化を抑制する方法が,特開2000-12840号公報及び特開2001-77111号公報に開示されている。前者は,TaO_(Y)-AlO_(X),TaO_(Y)-SiO_(X),又はこれらの混合酸化物からなる非晶質薄膜をゲート絶縁膜とする。後者は,HfO_(Y)又はZrO_(Y)と,三価の金属の酸化物,例えばAl,La又はScの酸化物との混合酸化物からなる非晶質薄膜をゲート絶縁膜とする。これらの混合酸化物からなる非晶質薄膜は,Ta,Hf又はZrの酸化物から生ずる高い誘電率を有しつつ,800℃以上の熱処理によっても結晶化を起こさない。このため,高い誘電率を有する均一なゲート絶縁膜を安定して製造することができる。
【0005】
しかし,これらの結晶化が抑制された非晶質薄膜では,高誘電率を有するTa,Hf又はZrの酸化物に,これより低誘電率の酸化物,例えばSiO_(X)又は三価の金属の酸化物を混合している。このため,これらの非晶質薄膜は,Ta,Hf又はZrの酸化物のような高い誘電率を有することはできない。」

ウ 発明が解決しようとする課題
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように,従来の高誘電率を有する金属酸化物からなる非晶質高誘電体膜は,結晶化温度が低く容易に結晶化するため,ゲート絶縁膜として用いた場合にトランジスタ特性のばらつきを発生しやすいという問題があった。
また,結晶化を抑制するため金属酸化物に低誘電率の酸化物を混合した非晶質薄膜は,高い誘電率を得難いという問題がある。
【0007】
本発明は,熱処理での結晶化が抑制され,かつ高い誘電率を有する非晶質高誘電体膜を提供することを目的としている。」

エ 課題を解決するための手段(その1)
・「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の第一の構成では,基板上に形成される非晶質高誘電体膜の材料を,高誘電率を有する金属酸化物と絶縁性酸化物とを成分として含む混合酸化物とする。この混合酸化物は,金属酸化物と絶縁性酸化物とを成分とするものが好ましい。しかし,誘電体特性及び絶縁特性を満たすならば,金属酸化物と絶縁性酸化物とを主たる成分とし,他の酸化物を含ませることもできる。
【0009】
この金属酸化物として,高誘電体となる遷移金属の酸化物,例えば,比誘電率が略30のHfO_(x),12?25のZrO_(x),25?65のTa_(2)Ox,略55のTiO_(x)若しくは100以上のBST(BiSrTi酸化物),又はこれらを成分とする混合酸化物を用いることができる。とくに,HfO_(x)及びZrO_(x)は,ゲート絶縁膜としての優れた特性を有しており好ましい。また,他の遷移金属の酸化物,例えば,Y_(2)O_(x),LaO_(x),PrO_(x),GdO_(x),V_(2)O_(x),Nb_(2)O_(x),Cr_(2)O_(x),Mo_(2)O_(x)若しくはWO_(x),又はこれらの混合酸化物を用いてもよい。なお,上述した非晶質の混合酸化物は,酸素濃度が化学量論的組成から30%程度ずれていてもよく,この範囲の酸素濃度を本明細書中ではO_(x)と表記する。
【0010】
絶縁性酸化物は,非晶質高誘電体膜の絶縁特性を劣化させない程度の絶縁性を有する酸化物であって,例えば2酸化シリコン(SiO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))又は酸窒化シリコン(SiON)を用いることができる。また,絶縁性酸化物として,非晶質相の結晶化温度が上述の非晶質金属酸化物より高い酸化物を用いてもよい。これらの絶縁性酸化物は,よく知られているように,金属酸化物との混合酸化物からなる非晶質高誘電体膜において,活性化熱処理の際に非晶質高誘電体膜の結晶化を抑制する。
【0011】
さらに本発明の第一の構成では,非晶質高誘電体膜中の組成が膜厚方向に変化する組成分布を有する。即ち,基板近傍では金属酸化物が多く絶縁性酸化物が少ない。他方,基板から離れるにつれて金属酸化物の割合が少なくなり絶縁性酸化物の割合が多くなる。
上述した本発明の構成は,本発明の発明者が明らかにした非晶質金属薄膜の結晶化に関す
る以下の知見に基づき発明された。
【0012】
・・・ (略) ・・・
【0015】
図2及び図3を参照して説明した上述の2つのシミュレーション結果は,金属酸化物層20の結晶化は,基板1との界面から離れた位置に生成された結晶核を契機とし金属酸化物層20全体へ伝播することを示している。このとき,基板1近傍の金属酸化物層20は,本来自発的な結晶化が起こらないにもかかわらず,界面から離れた位置で始まった結晶化の伝播により結晶化してしまう。即ち,非晶質の金属酸化物層20の結晶化は,初めに基板から離れた位置で結晶化が起こり,これが伝播して全体が結晶化する。
【0016】
このように結晶核の生成位置により結晶化の進行情況が異なるのは,結晶核と接する金属酸化物のポテンシャルに関連すると本発明の発明者は考えている。
無歪み状態での結晶核及び非晶質金属酸化物のポテンシャル周期は,いずれも平均すると金属酸化物の結晶格子に近い周期を有している。従って,基板から遠いため基板との格子不整の影響が小さな位置では,金属酸化物のポテンシャル周期は結晶核のポテンシャル周期と略一致する。このため,結晶核が成長しやすく,また結晶核の生成エネルギも小さい。
【0017】
他方,基板と金属酸化物の格子不整(非晶質では平均原子間距離の不整合を意味する。)に起因して,基板近傍の金属酸化物は大きく歪んでいる。従って,基板近傍では,結晶核のポテンシャル周期と周囲の金属酸化物とのポテンシャル周期との差が大きい。このため,結晶核の成長が阻害され,また結晶核の生成エネルギーも大きい。
【0018】
このように,基板近傍では結晶核が生成しにくく,かつ結晶核の成長も抑制される。これに対して,基板から離れた位置では,結晶核が生成しやすく,かつ容易に結晶核が成長する。このシミュレーション結果は,HfO_(x) を5nmの厚さに堆積すると非晶質膜となるが,同一堆積条件で25nm堆積すると結晶質膜となるという本発明の発明者が行った実験事実をよく説明している。」

オ 課題を解決するための手段(その2)
・「【0019】
本発明は,かかる知見に基づき発明された。図1は本発明の原理を説明する断面図であり,図1(a)は基板上に形成された本発明に係る非晶質高誘電体膜を,図1(b)はその組成分布を表している。
本発明の第一の構成の非晶質高誘電体膜は,図1を参照して,基板1近傍では金属酸化物(図1(b)中の曲線Aを参照)が多く絶縁性酸化物(図1(b)中の曲線Bを参照)が少ない。従って,基板1近傍の非晶質高誘電体膜2は,高い誘電率を有する金属酸化物の組成比が大きく,高い誘電率を有する。他方,基板1から離れるにつれて金属酸化物の割合が少なくなり結晶化を抑制する絶縁性酸化物の割合が多くなる。従って,基板1から離れた位置にある非晶質高誘電体膜2の結晶化が抑制される。即ち,本構成の非晶質高誘電体膜は,結晶化を起こしやすい基板から離れた位置では誘電率の低下を許容して結晶化を抑制する組成とし,結晶化を起こしにくい基板近傍では誘電率を低下する組成を少なくして高誘電率を有する組成とする。
【0020】
かかる構成では,基板から離れた位置での結晶化の発生が抑制されるので,ここから伝播して引き起こされる非晶質高誘電体膜全体の結晶化を回避することができる。一方,基板近傍では高誘電率の組成を有するから,非晶質高誘電体膜の実効誘電率は高くなる。このような高誘電率の組成の非晶質高誘電体膜は一般的に結晶化しやすいが,本構成では基板近傍に配置されるため結晶化は十分に抑制されている。従って,結晶化が抑制されかつ高い実効誘電率を有する非晶質高誘電体膜が提供される。
【0021】
これを従来のものと比較すると,従来の混合酸化物からなる非晶質高誘電体膜では,全体が均一な組成で構成されている。従って,従来は,基板から最も遠い位置にあり結晶化が最も起こりやすい部分でも結晶化が起こらない組成により非晶質高誘電体膜全体を構成しなければならない。このような組成は,本構成での基板から最も離れた位置の組成,即ち絶縁性酸化物が最も多くそのため誘電率が最も低い部分の組成に該当する。このため,従来の非晶質高誘電体膜の実効誘電率は本発明のものより低くなる。
【0022】
本第一の構成において,金属酸化物の組成比分布は,高い誘電率を有しかつ結晶化しにくい組成分布でなければならない。実験によれば,金属酸化物の組成比が50%,厚さ65nmの非晶質高誘電体膜は,1000℃,数秒間の熱処理により結晶化してしまう。従って,基板から離れた位置では金属酸化物の組成比は50モル%以下であることが望ましい。例えば,金属酸化物の組成比を,基板近傍で40?100モル%,より好ましくは60?100モル%とし,基板から最遠の位置で0?40モル%,より好ましくは0?20モル%とすることが好ましい。ここで,0モル%及び100モル%とは,意図的には金属酸化物を含有しない組成,及び金属酸化物以外の成分を意図的には含有しない組成との意味である。
【0023】
上述したシミュレーションは,非晶質のSiO_(2)を基板としている。この基板を結晶質のSiO_(2)に代えても,また結晶質のSiに代えても,同様の結果が得られた。このことは,結晶化の傾向は非晶質高誘電体膜の下地である基板の平均原子間距離に依存し,基板の結晶質と非晶質との相違は大きな影響を与えないことを示唆している。
【0024】
なお,本発明に係る該非晶質高誘電体膜は,非晶質高誘電体膜を使用する半導体装置一般に適用することができる。とくに,電界効果トランジスタのゲート絶縁膜として優れている。また,キャパシタの誘電体として使用し,リーク電流を少なくすることもできる。」

カ 発明の実施の形態
・「【0025】
【発明の実施の形態】
本発明を,ゲート絶縁膜に適用した実施形態例の製造工程を参照して説明する。
図4は本発明の第一実施形態例断面工程図であり,MOSトランジスタの製造工程を表している。図4(a)を参照して,シリコン基板1a表面にフィールド酸化膜6により画定されたトランジスタ形成領域を形成し,そのトランジスタ形成領域に表出するシリコン基板1a表面を酸化して,厚さ0.5?1nmのSiO_(2)薄膜1bを形成する。このSiO_(2)薄膜1bは,この上に堆積される非晶質高誘電体膜2とシリコン基板1aとの反応により,その界面に不均一な厚さのSiO_(2)層が形成されるのを防止するためのもので,その必要がなければ形成しなくてもよい。
【0026】
次いで,図4(b)を参照して,CVD法(化学的気相堆積法)を用いて,シリコン基板1a上全面に厚さ4nmの非晶質高誘電体膜2を堆積する。CVD法は,基板温度を500℃とし,Hf又はZrの原料ガスとSiO_(2)又はAl_(2)O_(3)の原料ガスとを混合して全圧が65Paになるように供給した。ここで,Hf又はZrの原料ガスのSiO_(2)又はAl_(2)O_(3)の原料ガスに対する混合比を,堆積が0.5nm進行するごとにHf又はZrの組成比が5%増加するように堆積の進行とともに階段状に増加した。もちろん,原料ガスの混合比の他,組成比を変化する他の方法を用いても差し支えない。
【0027】
図5は本発明の第一実施形態例組成分布図であり,非晶質高誘電体膜の組成分布を表している。上記のCVD法による非晶質高誘電体膜2の堆積の結果,図5を参照して,シリコン基板1aの表面に形成されたSiO_(2)薄膜1b上に,HfO_(x)又はZrO_(x)とSiO_(2)又はAl_(2)O_(3)との混合酸化物からなる非晶質高誘電体膜2が形成された。なお,図5には,説明を簡単にするためHfO_(x)とSiO_(2)との混合酸化物のみ記載している。
【0028】
高誘電率を有する金属酸化物の成分,例えばHfO_(x)は,図5中の実線(イ)を参照して,基板1との界面では60モル%であり,基板1界面から離れるにつれ直線的に減少し,非晶質高誘電体膜の表面では20モル%になった。他方,結晶化を抑制する酸化物,例えばSiO_(2)は,金属酸化物の分布とは逆に,40モル%から80モル%まで基板界面から離れるにつれ増加している。
【0029】
次いで,図4(c)を参照して,非晶質高誘電体膜2上にゲート電極3を形成し,ゲート電極3の外側に延在する非晶質高誘電体膜2及びSiO_(2)薄膜1bをエッチングして除去する。次いで,ゲート電極3をマスクとするイオン注入により低濃度領域4aを形成後,ゲート電極3の側壁にサイドウオール3aを形成し,イオン注入により高濃度領域4bを形成する。
【0030】
次いで,図4(d)を参照して,ランプアニールにより1000℃,10秒間の活性化熱処理を行い,イオン注入された低濃度領域4a及び高濃度領域4bを活性化して活性化された低濃度領域5a及び高濃度領域5bからなるソース・ドレイン領域を形成する。
この工程により製造されたMOSトランジスタのゲート絶縁膜(厚さ0.5nmのSiO_(2)薄膜1bと厚さ4nmの非晶質高誘電体膜2からなる積層膜)は,高い実効誘電率を有するとともに,完全に非晶質相の状態を保持していた。」

キ 発明の効果
「【0041】
【発明の効果】
上述したように,本発明によれば結晶化しにくくかつ実効誘電率が高い誘電体膜を形成することができるので,MOSトランジスタ又はキャパシタの性能向上に寄与するところが大きい。」

ここで,上記カの段落【0025】には,「トランジスタ形成領域に表出するシリコン基板1a表面を酸化して」形成された「厚さ0.5?1nmのSiO_(2)薄膜1b」について,「このSiO_(2)薄膜1bは,この上に堆積される非晶質高誘電体膜2とシリコン基板1aとの反応により,その界面に不均一な厚さのSiO_(2)層が形成されるのを防止するためのもので,その必要がなければ形成しなくてもよい」と記載されているから,先願明細書等には,当該「SiO_(2)薄膜1b」を備えないトランジスタも記載されているといえる。
また,上記カの段落【0027】には,「HfO_(x)又はZrO_(x)とSiO_(2)又はAl_(2)O_(3)との混合酸化物からなる非晶質高誘電体膜2」と記載されているから,先願明細書等には,HfO_(x)とAl_(2)O_(3)との混合酸化物からなる非晶質高誘電体膜2も記載されているといえ,この際,上記オの段落【0019】?【0022】の記載及び図1に記載された組成分布を参照すると,HfO_(x)とAl_(2)O_(3)との混合酸化物からなる非晶質高誘電体膜2についても,図1又は図5に示された組成分布と同様に,基板1近傍においては,HfO_(x)の組成比がAl_(2)O_(3)の組成比よりも大きく,基板1から離れるにつれて,HfO_(x)の組成比が減少し,その一方,結晶化を抑制するAl_(2)O_(3)の組成比は増大し,基板1から最遠の位置では,Al_(2)O_(3)の組成比がHfO_(x)の組成比よりも大きくなるものといえる。

以上を総合すると,先願明細書等には,以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「シリコン基板1aと,
該シリコン基板1a上に形成された,非晶質高誘電体膜2からなるゲート絶縁膜と,
該非晶質高誘電体膜2からなるゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極3と,
を備えるMOSトランジスタであって,
前記非晶質高誘電体膜2は,高誘電率を有するHfO_(x)と,結晶化を抑制するAl_(2)O_(3)との混合酸化物からなり,その組成分布が,基板1近傍においては,HfO_(x)の組成比がAl_(2)O_(3)の組成比よりも大きく,基板1から離れるにつれて,HfO_(x)の組成比が減少し,その一方,Al_(2)O_(3)の組成比は増大し,基板1から最遠の位置では,Al_(2)O_(3)の組成比がHfO_(x)の組成比よりも大きくなるものである,
MOSトランジスタ。」

(3)本願補正発明と先願発明との対比
ア 先願発明における「シリコン基板1a」及び「MOSトランジスタ」は,本願補正発明における「基板」及び「MIS型の半導体装置」に相当する。

イ 先願発明における「ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極3」と,本願補正発明の「ゲート絶縁膜上に形成されたポリシリコンからなるゲート電極」とは,「ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極」である点で共通する。

ウ 先願発明における「非晶質高誘電体膜2からなるゲート絶縁膜」は,「非晶質高誘電体膜2」が「高誘電率を有するHfO_(x)と,結晶化を抑制するAl_(2)O_(3)との混合酸化物からな」るところ,「HfO_(x)」及び「Al_(2)O_(3)」は,それぞれ,ともに金属元素である「Hf」(ハフニウム)及び「Al」(アルミニウム)の酸化物であるから,本願補正発明の「金属酸化物のみからなるゲート絶縁膜」であって,「アルミニウム及びハフニウムを含む」ものに相当するといえる。

エ 先願発明における「非晶質高誘電体膜2からなるゲート絶縁膜」が,絶縁物であることは明らかである。また,「前記非晶質高誘電体膜2」「の組成分布が,基板1近傍においては,HfO_(x)の組成比がAl_(2)O_(3)の組成比よりも大き」いことと,本願補正発明の「前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である第1の絶縁領域」「を有すること」とは,「前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチな絶縁領域を有する」点で共通する。

オ 先願発明における,「非晶質高誘電体膜2」について「基板1から最遠の位置」とは,「非晶質高誘電体膜2からなるゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極3」に最も近接した部分であることは明らかである。よって,先願発明における「前記非晶質高誘電体膜2」が,「基板1から最遠の位置では,Al_(2)O_(3)の組成比がHfO_(x)の組成比よりも大きくなるもの」であることと,本願補正発明の「前記ポリシリコンからなるゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチで,かつ,アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である第2の絶縁領域とを有すること」とは,「ゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチな絶縁領域とを有する」点で共通する。

カ したがって,先願発明と本願補正発明とは,
「基板と,該基板上に形成され金属酸化物のみからなるゲート絶縁膜と,該ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備えてなるMIS型の半導体装置であって,
前記ゲート絶縁膜は,アルミニウム及びハフニウムを含むと共に,前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチな絶縁領域と,前記ゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチな絶縁領域とを有することを特徴とする半導体装置。」
である点で一致する。

キ 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
本願補正発明は,「ポリシリコンからなるゲート電極」を備えるが,先願発明は「ゲート電極」を備えるものの,「ポリシリコンからなる」点までは特定されていない点。

《相違点2》
本願補正発明は,「基板の近傍に形成されたハフニウムリッチで,かつ,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である第1の絶縁領域」及び「ゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチで,かつ,アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である第2の絶縁領域」を備えるが,先願発明は,「基板の近傍に形成されたハフニウムリッチな第1の絶縁領域」及び「ゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチな第2の絶縁領域」に相当する構成は有するものの,それらがそれぞれ「ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である」こと,及び「アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である」ことに相当する構成は備えない点。

(4)当審の判断
《相違点1について》
MOSトランジスタのゲート電極をポリシリコンにより形成することは,例えば,前記 第2,4.(2)イに摘記した先願明細書等の段落【0004】に「【従来の技術】」として提示された,特開2000-12840号公報にも示されているように,従来より周知の技術である。
・周知例1: 特開2000-12840号公報
本願の出願日前に,日本国内において頒布された刊行物である特開2000-12840号公報には,図1とともに次の記載がある。
・「【0010】
【詳細な記述】図1を参照すると,絶縁ゲート電界効果トランジスタデバイスの本質的な要素が示されており,それはシリコン基板11,ソース13及びドレイン14を含む。nチャネルデバイスの場合のn形領域が示されているが,CMOSデバイスの場合はp形でもよい。フィールド酸化物は12と示されており,ゲート構造はゲート誘電体15及びゲート誘電体16を含む。典型的な場合,ゲート誘電体はポリシリコンであるが,他の導電性材料,特にTiN又はTaNを用いることができる。」(審決注:「ゲート誘電体16」は「ゲート電極16」の誤記と認められる。)
・「【0033】その後,周知の技術,たとえばCVD又はスパッタリングにより,ゲート電極を堆積させ,MOSデバイスを完成させる。ゲート材料は典型的な場合ポリシリコンで,それはシリコンデバイスプロセスで,広く用いられている。しかし,他のゲート電極材料,特にTiN,WN又はWSiも使用できる。」

それゆえ,先願明細書等には,先願発明に係るMOSトランジスタにおいて,「ゲート電極3」が「ポリシリコンからなる」ものであることが記載されているに等しいものといえる。
よって,相違点1は実質的な相違点ではない。

《相違点2について》
本願補正発明は,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】に記載された「ゲート電極の構成材料としてポリシリコン等の多結晶半導体を用いた場合でも,かつゲート絶縁膜の構成材料として高誘電率材料を用いつつ,EOTの劣化を抑制すると共に高誘電率材料の結晶化を抑制して信頼性を向上させることができる半導体装置及びその製造方法を提供すること」を解決しようとする課題とするものである。そして,同段落【0058】?【0059】に記載された,「絶縁膜は,構成材料として,高誘電率材料である酸化ハフニウムを含むので,例えば絶縁膜の全領域に亘って濃度を変化させながらハフニウムを分布させることによって,絶縁膜全体の比誘電率の低下を抑制し,所定のEOTを確保することができる。」,「しかも,電極の直下の所定の厚さの領域では,アルミニウムの濃度を比較的高くしたので,ゲート電極として多結晶半導体を使用し,絶縁膜として酸化ハフニウムを単独で使用した場合に生じた絶縁膜の比誘電率の低下を抑制し,静電容量の低下すなわちEOTの劣化を抑制でき,リーク電流を小さくすることができる。」,「さらに,第2の絶縁領域はもちろん,ハフニウムの濃度を比較的高くした第1の絶縁領域にも,アルミニウムを所定の濃度で含有させることによって,酸化ハフニウムの結晶化を抑制することができる。したがって,絶縁膜を貫通する粒界の発生を抑制し,リーク電流の増大を抑制することができる。これによって,絶縁破壊を抑制し,信頼性を向上させることができる。」,及び「このように,酸化ハフニウムの結晶化を抑制することができるので,表面ラフネスを改善させ,膜厚が薄い箇所で局所的に電界が集中するようなことを回避し,リーク電流を抑制できるため,信頼性を向上させることができる」という効果を奏するものである。
一方,先願発明は,前記 第2,4.(2)ウに摘記した「熱処理での結晶化が抑制され,かつ高い誘電率を有する非晶質高誘電体膜を提供すること」(段落【0007】)を解決しようとする課題とするものであり,同オに摘記した「基板1近傍では金属酸化物(図1(b)中の曲線Aを参照)が多く絶縁性酸化物(図1(b)中の曲線Bを参照)が少ない。従って,基板1近傍の非晶質高誘電体膜2は,高い誘電率を有する金属酸化物の組成比が大きく,高い誘電率を有する。他方,基板1から離れるにつれて金属酸化物の割合が少なくなり結晶化を抑制する絶縁性酸化物の割合が多くなる。従って,基板1から離れた位置にある非晶質高誘電体膜2の結晶化が抑制される。」(段落【0019】)という作用,及び同キに摘記した「結晶化しにくくかつ実効誘電率が高い誘電体膜を形成することができる」という効果を奏するものである。
ここで,上記の解決しようとする課題及び効果について,本願補正発明と先願発明とを比較すると,両者はいずれも,結晶化しにくく,かつ高い比誘電率を有する誘電体膜を構成するという点で共通するものと言える。また,前記《相違点1について》において検討したとおり,先願明細書等には,先願発明に係るMOSトランジスタにおいて,「ゲート電極3」が「ポリシリコンからなる」ものであることが記載されているに等しいから,本願補正発明についての,「ゲート電極の構成材料としてポリシリコン等の多結晶半導体を用いた」ことに係る効果は,先願発明においても奏されるものといえる。そうすると,解決しようとする課題及び効果について,本願補正発明と先願発明との間に顕著な差があるとは言えない。

ところで,先願発明における「非晶質高誘電体膜2」は,「高誘電率を有するHfO_(x)と,結晶化を抑制するAl_(2)O_(3)との混合酸化物からなり,その組成分布が,基板1近傍においては,HfO_(x)の組成比がAl_(2)O_(3)の組成比よりも大きく,基板1から離れるにつれて,HfO_(x)の組成比が減少し,その一方,Al_(2)O_(3)の組成比は増大し,基板1から最遠の位置では,Al_(2)O_(3)の組成比がHfO_(x)の組成比よりも大きくなるものである」ところ,先願明細書等には「基板1から離れるにつれて,HfO_(x)の組成比が減少し,その一方,Al_(2)O_(3)の組成比は増大」する構成について,具体的には,先願明細書等の図1及び図5に示されているように,基板1から離れるにつれてのHfO_(x)及びAl_(2)O_(3)の各組成比の減少又は増大が,連続してなされることが記載されてはいるものの,相違点2に係る,「ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定である」領域,及び「アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である」領域を設けるとの記載はない。しかしながら,先願発明書等の記載を見ても,基板1から離れるにつれてのHfO_(x)及びAl_(2)O_(3)の各組成比の減少又は増大が連続してなされることが,課題を解決するために必要な構成であるとの記載はない。
一方,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0057】には,「また,例えば第1実施例では,下層側領域5aと上層側領域5bとで,ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度をそれぞれ一定とする場合について述べたが,これらの領域内においても,基板側からゲート電極側に向けてハフニウム濃度が減少し,アルミニウム濃度が増加するように変化させるようにしても良い。」との記載がある。それゆえ,本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは,上述した,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された課題を解決し初期の効果を得るために,「基板の近傍に形成されたハフニウムリッチな絶縁領域」が「ハフニウム濃度及びアルミニウム濃度が略一定であ」って,「ゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチな絶縁領域」が「アルミニウム濃度及びハフニウム濃度が略一定である」こと,すなわち相違点2に係る構成,が必須であるとは認められない。

また,一般に,MOSトランジスタのゲート絶縁膜について,基板から離れるにつれて変化する組成の分布を設けることは一般的になされることであるところ,その具体的手段として,当該組成を連続的に変化させることも,段階的に変化させることで組成が一定な部分が生じるようにすることも,以下の周知例2に示されているように,適宜選択される周知の技術である。
周知例2: 特開2001-217238号公報
本願の出願日前に,日本国内において頒布された刊行物である特開2001-217238号公報には,図1及び図3とともに,次の記載がある。
・「【0014】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は,導体層,絶縁層,および半導体からなるMIS構造を有する半導体装置において,前記絶縁層は,二酸化シリコンよりもシリコン濃度がリッチな組成物からなり,かつ,そのシリコン濃度が前記半導体側から導体層側に向けて変化する分布を有していることを特徴としたものである。
【0015】その場合のシリコン濃度は,請求項2記載のように半導体側から導体層側へ連続的に増加または減少する分布としたり,あるいは,請求項3記載のように,半導体側から導体層側へ複数段階にわたって階段状に増加または減少する分布としたりすることができる。」
・「【0028】図1(b)から分かるように,この実施の形態1の場合,絶縁層13のシリコン濃度は,拡散層12側から導体層14側へ向けて連続的に増加するようになっている。」
・「【0042】図3(b)から分かるように,この実施の形態2の場合,絶縁層13のシリコン濃度は,拡散層12側から導体層14側へ向けて複数段階にわたって階段状に増加する分布を有している。」

よって,先願発明と本願補正発明とは,結晶化しにくくかつ高い比誘電率を有する誘電体膜を構成するという解決しようとする課題及び効果において共通し,また,先願明細書等及び本願明細書の双方を見ても,相違点2に係る構成の有無が,前記共通する解決しようとする課題を解決することに関して特段の影響を与えるものであるとは言えず,更に,基板から離れるにつれて変化する組成の分布を設けるにあたり,当該組成を連続的に変化させることも,段階的に変化させることで組成が一定な部分が生じるようにすることも周知の技術であったことを考慮すると,相違点2は,前記共通する課題を解決するための具体化手段における微差ということができる。
よって,相違点2は実質的な相違点ではない。

(5)小括
以上のとおりであるから,本願補正発明は先願発明と同一のものであると言える。また,本願補正発明の発明者は,先願発明の発明者と同一でないと認められるから,本願補正発明は,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年6月10日になされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成21年10月5日になされた手続補正により補正された明細書及び図面の記載から見て,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
基板と,前記基板上に形成され金属酸化物からなるゲート絶縁膜と,前記ゲート絶縁膜上に形成されたポリシリコンからなるゲート電極とを備えてなるMIS型の半導体装置であって,
前記ゲート絶縁膜は,アルミニウム及びハフニウムを含むと共に,前記基板の近傍に形成されたハフニウムリッチな第1の絶縁領域と,前記ポリシリコンからなるゲート電極の近傍に形成されたアルミニウムリッチな第2の絶縁領域とを有することを特徴とする半導体装置。」

2.先願発明
先願発明は,前記第2,4.「(2)先願明細書等に記載された発明」に記載したとおりのものである。

3.対比・判断
前記第2「1.本件補正の内容」?第2「3.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討」において記したように,本願補正発明は,本件補正前の請求項1(本願発明)について前記〈補正事項a〉?〈補正事項c〉に係る限定を付したものである。言い換えると,本願発明は,本願補正発明から前記限定を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2,4.「(3)本願補正発明と先願発明との対比」?第2,4.「(5)小括」において検討したとおり,先願発明と同一であるから,本願発明も同様の理由により,先願発明と同一である。
また,本願発明の発明者は,先願発明の発明者と同一でないと認められる。
よって,本願発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-09 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-28 
出願番号 特願2002-381216(P2002-381216)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 早川 朋一
近藤 幸浩
発明の名称 半導体装置及びその製造方法  
代理人 西村 征生  
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