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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1260088
審判番号 不服2011-4001  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-23 
確定日 2012-07-12 
事件の表示 特願2008-24986号「遊技球回収装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年8月20日出願公開、特開2009-183395号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成20年2月5日の特許出願であって、平成22年11月19日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月24日)、これに対し、平成23年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年11月5日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「遊技場の島設備に設置された遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れて遊技球検出器へ導き、該遊技球検出器を経た遊技球を島設備内の遊技球回収樋へ導出する遊技球回収装置であって、前壁部と後壁部と第1側壁部と第2側壁部に囲まれた領域内へ前記第2側壁部側から前記第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間であり、前記遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れる球受け空部と、該球受け空部の第1側壁部側へ前後方向に形成され前記球受け空部より流入する遊技球を下流である後方の球出口に導出する球流路と、が設けられた上面開放状の球受けボックスと、前記球受けボックスを前後方向へ移動可能に支持すると共に、前記球受けボックスよりも後方且つ下方に前記遊技球検出器を保持し、前記球受けボックスの球流路に連続する前後方向の流入部から側方に曲がる整流部を介して連なる流出部の最下流端が前記遊技球検出器に至る球誘導路が設けられた球受けボックス支持体と、前記球受けボックス支持体を支持する支持ピラーと、前記島設備における遊技機の背面側適所に固定され、前記支持ピラーを左右方向へ移動可能に支持する固定ベースと、を備え、前記球受けボックス支持体の球誘導路の流入部を、前記球受けボックスの球流路の下方に、当該球流路の球出口の前後方向変化可能範囲の全域に亘って重ねて設けることで、前記球受けボックスの前後方向への移動に伴う前記球流路における前記遊技球の導出位置の変位に応じて、前記球受けボックス支持体の球誘導路における前記流入部の遊技球導入位置を調整することができるようにしたことを特徴とする遊技球回収装置。」

3 刊行物について
原査定の拒絶理由において引用提示され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-348892号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
パチンコ機の背面側の取付ベース上に回収球タンクを設け、該回収球タンク上に球受皿を前後方向に移動可能に支持するとともに、該球受皿を前方向に付勢するバネを設けることにより該球受皿をパチンコ機背面の球排出口の下部に延出させ、かつ該球受皿の移動状態を検出する検知スイッチを設けてなることを特徴としたパチンコ球回収装置。」(【特許請求の範囲】)
イ 「本発明は、パチンコ機の背面側の取付ベース上に設けられ、パチンコ機から排出されるアウト球等の回収球を受けるパチンコ球回収装置に関するものである。」(段落【0001】)
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
ところで上記アウト球タンクの取付装置では、パチンコ機を交換したときに上記ロック部材を外して設置位置を再調整する必要があったが、その調整自体手間が掛かり、調整が適切に行われていないとパチンコ機から排出されるアウト球が詰まったりこぼれたりして不具合をまねくおそれがあった。また上記検知スイッチは、従来ではアウト球タンクの取付とは別途に取付られていたが、非常に狭くて煩雑な個所であるので適当な取付場所を得難いとともに、取付の手間,コストを要するものであった。」(段落【0005】)
エ 「【発明の効果】
球排出口の位置がパチンコ機のメーカーや機種によって異なっていても調整の必要がなく、アウト球等の回収球を確実に受けられる。よって調整の手間が省けパチンコ機の交換作業が簡単になる。また、前面枠の開閉状態を検知する検知スイッチの取付が容易となる。
図1は遊技場に設けられるパチンコ機設置島の横断面図で、1はパチンコ機2が設置される水平な取付ベース、3は該取付ベースの裏側に設けられた球回収樋である。図2?図4にも示したように、4は該パチンコ機2の背面側の取付ベース上に可変取付台5を介して取り付けられた長方形箱状の回収球タンクである。該可変取付台5は、取付ベース1の上面に基レール部材6がビス7により固着され、該基レール部材上に台幅方向に移動調節可能に外筒8内と内筒9とからなる伸縮自在なる支柱10が設けられ、該支柱上に回収球タンク4を支持している。このため、該回収球タンク4は該可変取付台5によって設定位置がパチンコ機幅方向および高さ方向に微調節可能なるように支持される。また、パチンコ機2は、機枠11の一側縁に前面枠12が開閉可能にヒンジされ、他側縁にその閉状態を保持するための周知の施錠装置が(図示せず)が設けられたものである。13,14は該前面枠12の前面に設けられた上皿および下皿である。
上記回収球タンク4は、底壁15と両側壁16とからなり、該底壁15は後方に向かい緩い傾斜状に形成され、その後側縁に球集合部17が形成され、該球集合部の下に計数装置18が設けられ、該計数装置の排出口にコイルバネからなるホース19設け、該ホースを球回収樋3に垂下させている。
また、回収球タンク4の前側に底壁20aと両側壁20b,前壁20cとからなる球受皿22が前記底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能なるように設けられる。該底壁20aは前記底壁15と同様に後方に向かい緩い傾斜状に形成される。なお、両側壁20bの上縁に長手切欠21aが形成され、該長手切欠に前記両側壁16の上縁内側に突設された係合爪21bが係止することで該球受皿22が脱落しないで前後方向に摺動できるようにしている。また、図4に示したように、この摺動をスムースにするために回収球タンク4の下面に一対のガイドローラ23が回転自在に設けられ、球受皿22の下面に該ローラと接するように垂下状に形成された板状のガイドレール24が形成されている。
また、25は回収球タンク4の下面に固着された検知スイッチ、26は球受皿22が摺動することにより該検知スイッチを作動させられるようにガイドレール24の一部にビス27により固着されたスイッチ作動板である。また、回収球タンク4の底壁15下面に一体に形成された筒状部28に圧縮状態のコイルバネ29を収容し、球受皿22の底壁20aより垂下されたリブ30を該バネの一端に係合させることにより、該バネの弾性により該球受皿22を前方向に付勢してなる。
このため、図3に矢印で示したように、バネ29の弾性により球受皿22が該パチンコ機背面の球排出口31の下部に延出し、該球受皿22の前壁20cがパチンコ機2の前面枠12背面に圧着することにより、該球排出口から排出されるアウト球等の回収球Pを該球受皿22に受けることができる。そして該球受皿に受けられた回収球は回収球タンク4の球集合部17から落下し、計数装置18を通ってホース19から球回収樋3に流落する。また、パチンコ機2が交換され球排出口31の位置が前後方向に変化しても、バネ29の弾性により球受皿22はバネ29の弾性により前方に移動することから常に球排出口31の直下部まで延出し、回収球を確実に受けることができる。」(段落【0008】?【0013】)
オ 上記記載事項エ及び図5には、球受け皿22について、底壁20aの上方空間であり、球排出口31から排出される回収球Pを受ける球受け空間を設け、球受け空間より流入する回収球Pを他方の側壁側の後方へ導くこと、前壁20cと両側壁20b、20bにより区画された領域内へ、球受け皿22の底壁20aが、一方の側壁20bから他方の側壁20b側に向かい緩い下り傾斜状に形成されることが示されている。

カ 上記記載事項エ及び図5には、回収球タンク4について、底壁15と両側壁16と後側縁に位置する後壁とからなること、底壁15は後方、かつ、一方の側壁16から他方の側壁16側に向かい緩い下り傾斜状に形成されることが示されている。

上記ア?エの記載事項、上記オ?カの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「パチンコ機設置島に設置されるパチンコ機2背面側の球排出口31から排出される回収球Pを受け、計数装置18へ落下させ、計数装置18を通った回収球Pをホース19から球回収樋3に流落させるパチンコ球回収装置であって、
前壁20cと両側壁20b、20bにより区画された領域内へ、後方、かつ、一方の側壁20bから他方の側壁20b側に向かい緩い下り傾斜状に形成された底壁20aの上方空間であり、球排出口31から排出される回収球Pを受け入れる球受け空間を設け、球受け空間より流入する回収球Pを他方の側壁20b側の後方へ導く皿状の球受け皿22と、
底壁15と両側壁16と後側縁に位置する後壁とからなり、球受け皿22が底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能なるように設けられ、底壁15は後方、かつ、一方の側壁16から他方の側壁16側に向かい緩い下り傾斜状に形成され、その後縁側に球集合部17が形成され、該球集合部17の下に計数装置18が設けられ、その後側縁に、下に計数装置18が設けられる球集合部17が形成された長方形箱状の回収球タンク4と、
上に回収球タンク4を支持する支柱10と、
背面側の取付けベース1の上面に固着され、支柱10を基レール部材6上に台幅方向に移動調節可能に設ける可変取付台5と、
回収球タンク4の前側に、前壁20cがパチンコ機2の前面枠12背面に圧着するようにバネ29の弾性により前方に移動する球受皿22の底壁20aが、回収球タンク4の底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能なるように設けられた、
球排出口の位置がパチンコ機のメーカーや機種によって異なっていても調整の必要がなく、アウト球等の回収球を確実に受けられるパチンコ球回収装置。」

4 対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「パチンコ機設置島に設置されるパチンコ機2背面側の球排出口31から排出される回収球Pを受け、計数装置18へ落下させ」ることは、その構成及び機能からみて、本願発明の「遊技場の島設備に設置された遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れて遊技球検出器へ導」くことに相当し、以下同様に、
「計数装置18を通った回収球Pをホース19から球回収樋3に流落させる」ことは、「遊技球検出器を経た遊技球を島設備内の遊技球回収樋へ導出する」ことに、
「パチンコ球回収装置」は、「遊技球回収装置」に、
「背面側の取付けベース1の上面に固着され、支柱10を基レール部材6上に台幅方向に移動調節可能に設ける可変取付台5」は、「島設備における遊技機の背面側適所に固定され、支持ピラーを左右方向へ移動可能に支持する固定ベース」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「前壁20cと両側壁20b、20bにより区画された領域内へ、後方、かつ、一方の側壁20bから他方の側壁20b側に向かい緩い下り傾斜状に形成された底壁20aの上方空間であり、球排出口31から排出される回収球Pを受け入れる球受け空間を設け」ることと、本願発明の「前壁部と後壁部と第1側壁部と第2側壁部に囲まれた領域内へ第2側壁部側から第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間であり、遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れる球受け空部」「が設けられ」ることとは、前者において、前壁20cと両側壁20b、20bと底壁20aとにより区画された領域は、空部を構成するものであるから、両者は、「少なくとも第2側壁部側から第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間であり、遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れる球受け空部が設けられる」ことで共通し、以下同様に、
「球受け空間より流入する回収球Pを他方の側壁20b側の後方へ導く」ことと「球受け空部の第1側壁部側へ前後方向に形成され球受け空部より流入する遊技球を下流である後方の球出口に導出する球流路」「が設けられること」とは、「形成され球受け空部より流入する遊技球を下流に導出する」ことで、
「皿状の球受け皿22」と「上面開放状の球受けボックス」とは、「上面開放状の球受け部」である点で、
「球受け皿22が底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能なるように設け、底壁15は後方に向かい緩い下方傾斜状に形成され、その後縁側に球集合部17が形成され、該球集合部17の下に計数装置18が設けられ」ることと、「球受けボックスを前後方向へ移動可能に支持すると共に、球受けボックスよりも後方且つ下方に遊技球検出器を保持」することとは、前者において、回収球Pが底壁15から球集合部17と計数装置18と順に転がるように、球集合部17が底壁15の上でスライドする球受け皿22の下方に位置していることは明らかであるから、両者は、「球受け部を前後方向へ移動可能に支持すると共に、球受け部よりも後方且つ下方に遊技球検出器を保持」することで、
「後縁側に、下に計数装置18が設けられる球集合部17が形成された長方形箱状の回収球タンク4」と「球受けボックスの球流路に連続する前後方向の流入部から側方に曲がる整流部を介して連なる流出部の最下流端が遊技球検出器に至る球誘導路が設けられた球受けボックス支持体」とは、「流出部が遊技球検出器に至る球誘導路に設けられた球受け部支持体」である点で、
それぞれ共通する。
「上に回収球タンク4を支持する支柱10」と、「球受けボックス支持体を支持する支持ピラー」とは、「球受け部支持体を支持する支持ピラー」である点で、
「回収球タンク4の前側に、前壁20cがパチンコ機2の前面枠12背面に圧着するようにバネ29の弾性により前方に移動する球受皿22の底壁20aが、回収球タンク4の底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能なるように設けられた」ことと、「球受けボックス支持体の球誘導路の流入部を、球受けボックスの球流路の下方に、当該球流路の球出口の前後方向変化可能範囲の全域に亘って重ねて設けることで、球受けボックスの前後方向への移動に伴う球流路における遊技球の導出位置の変位に応じて、球受けボックス支持体の球誘導路における流入部の遊技球導入位置を調整することができるようにしたこと」こととは、前者において、「球受皿22の底壁20aが、回収球タンク4の底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能なるように設けられ」ていることにより、回収球タンク4底壁15の球受皿22底壁22aから回収球Pが流入する部分は、球受皿22が移動により前後方向に摺動しても、回収球Pの導入位置を調整することができ、かつ、球受皿22の摺動可能な範囲において、どの摺動位置においても「球受皿22の底壁20a」と「回収球タンク4の底壁15」とは重ねて設けられているといえることから、両者は、「球受け部支持体の流入部を、球受け部の下方に、球受け部の前後方向変化可能範囲の全域に亘って重ねて設けることで、球受け部の前後方向への移動に伴う導出位置の変位に応じて、球受け部支持体の流入部の遊技球導入位置を調整することができるようにしたこと」で、
それぞれ共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「遊技場の島設備に設置された遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れて遊技球検出器へ導き、該遊技球検出器を経た遊技球を島設備内の遊技球回収樋へ導出する遊技球回収装置であって、
少なくとも前記第2側壁部側から前記第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間であり、前記遊技機の背面側から排出される遊技球を受け入れる球受け空部が設けられ、前記球受け空部より流入する遊技球を下流に導出する上面開放状の球受け部と、
前記球受け部を前後方向へ移動可能に支持すると共に、前記球受け部よりも後方且つ下方に前記遊技球検出器を保持し、流出部が前記遊技球検出器に至る球誘導路に設けられた球受け部支持体と、
前記球受け部支持体を支持する支持ピラーと、
前記島設備における遊技機の背面側適所に固定され、前記支持ピラーを左右方向へ移動可能に支持する固定ベースと、
を備え、
球受け部支持体の流入部を、球受け部の下方に、球受け部の前後方向変化可能範囲の全域に亘って重ねて設けることで、球受け部の前後方向への移動に伴う導出位置の変位に応じて、球受け部支持体の流入部の遊技球導入位置を調整することができるようにした遊技球回収装置。」

[相違点1]
球受け部が、本願発明では、前壁部と後壁部と第1側壁部と第2側壁部に囲まれた領域内へ第2側壁部側から第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間であり、球受け空部の第1側壁部側へ前後方向に形成され球受け空部より流入する遊技球を下流である後方の球出口に導出する球流路が設けられた上面開放状の球受けボックスであるのに対して、刊行物に記載された発明では、前壁20cと両側壁20b、20bにより区画された領域内へ、後方、かつ、一方の側壁20bから他方の側壁20b側に向かい緩い下り傾斜状に形成された底壁20aの上方空間である球受け空部を設け、球受け空部より流入する回収球Pを他方の側壁側の後方へ導く皿状の球受け皿である点。

[相違点2]
球受け部について、本願発明では、球受けボックスの球流路に連続する前後方向の流入部から側方に曲がる整流部を介して連なる流出部の最下流端が遊技球検出器に至る球受け流路が設けられるのに対して、刊行物に記載された発明では、その後側縁に、下に計数装置18が設けられる球集合部17が形成される点。

[相違点3]
球受け部支持体の流入部を、球受け部の下方に、球受け部の前後方向変化可能範囲の全域に亘って重ねて設けることで、球受け部の前後方向への移動に伴う導出位置の変位に応じて、球受け部支持体の流入部の遊技球導入位置を調整することができるようにするための構成が、本願発明では、球受けボックス支持体の球誘導路の流入部を、球受けボックスの球流路の下方に、当該球流路の球出口の前後方向変化可能範囲の全域に亘って重ねて設けることで、球受けボックスの前後方向への移動に伴う球流路における遊技球の導出位置の変位に応じて、球受けボックス支持体の球誘導路における流入部の遊技球導入位置を調整することができるようにした構成であるのに対して、刊行物に記載された発明では、回収球タンク4の前側に、前壁20cがパチンコ機2の前面枠12背面に圧着するようにバネ29の弾性により前方に移動する球受皿22の底壁20aが、回収球タンク4の底壁15上をスライドし前後方向に摺動可能となるように設けられた構成である点。

5 当審による判断
(1)上記相違点1について
遊技球回収装置の技術分野において、前壁部と後壁部と第1側壁部と第2側壁部に囲まれた領域内へ第2側壁部側から第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間である球受け空部と、球受け空部の第1側壁部側へ前後方向に形成され球受け空部より流入する遊技球を下流である後方の球出口に導出する球流路とが設けられている、パチンコ機の種類に応じて球受けボックスの位置調整可能な遊技球回収装置は、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、原査定の拒絶の理由で提示され特開2006-238999号公報の段落【0052】?【0067】、【0082】?【0089】、【図2】には、起立壁21bから起立壁21d側に緩やかに下り傾斜する第1傾斜底部221と、起立壁21d側に球流路である第2傾斜底部222とを具備した上面開放状のタンク部2について、タンク部2を支持する支持部3を、前後、左右、上下に位置調整可能としたことが記載され、同じく原査定で提示された実願昭59-8313号(実開昭60-122182号)のマイクロフィルムの第6ページ第15行?第7ページ第14行、第3図には、前壁部と後壁部と第1側壁部と第2側壁部に囲まれた領域内へ第2側壁部側から第1側壁部側へ緩やかに下り傾斜するように形成した底壁部の上方空間であり、球受け空部の第1側壁部側へ前後方向に形成され球受け空部より流入する遊技球を下流である後方の球出口に導出する球流路が設けられた上面開放状の球受ケース9について、球受ケース9の位置を左右、前後、上下に移動可能とすることが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。
そして、刊行物に記載された発明において、球排出口31から排出される回収球Pを受け入れる球受け空間を有し、前後方向に摺動可能な皿状の球受け皿22に、上記周知の技術事項1であるパチンコ機の種類に応じて位置調整可能な球受けボックスを適用することは当業者が必要に応じてなし得たものであり、その際に、回収球タンク4を構成する「後側縁に位置する後壁」を球受け皿22の後側縁に転用して球受けボックスとして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
同じく、遊技球回収装置の技術分野において、球受けボックスの球流路に連続する前後方向の流入部から側方に曲がる整流部を介して連なる流出部の最下流端が遊技球検出器に至る球誘導路を有する、パチンコ機の種類に応じて球受けボックスの位置調整可能な遊技球回収装置は、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、上記特開2006-238999号公報の段落【0001】?【0034】、【0058】?【0067】、【図2】?【図3】には、前後方向の球流路である第2傾斜底部222から、タンク部側傾斜通路51へ球が流入する際、コーナ部において一列に球を整列することや、上記実願昭59-8313号(実開昭60-122182号)のマイクロフィルムの第6ページ第15行?第7ページ第14行、第3図には、球受ケース9の前後方向に形成された左方流路から計数メータ5に接続される流路12に球が流入する際、コーナー部において一列に整列することが示されている。以下「周知の技術事項2」という。)
そして、刊行物に記載された発明の回収球タンク4の球集合部17と、上記周知の技術事項2に示された球受けボックスの球誘導路とは、遊技球検出器に球を導く通路という点で共通する機能を有するものである。
してみると、刊行物に記載された発明において、回収球タンク4の球集合部17に、上記周知の技術事項2に示された、パチンコ機の種類に応じて位置調整可能な球受けボックスを具備する遊技球回収装置の球流路を適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(3)上記相違点3について
刊行物に記載された発明において、球受皿22に球流路を形成することについては、上記(1)において検討したとおりである。
また、刊行物に記載された発明において、回収球タンク4に球誘導路を形成することについては、上記(2)において検討したとおりである。
そして、刊行物に記載された発明に上記周知の技術事項1?2を適用して、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項に到達することは当業者が容易になし得たものである。

(4)小括
発願発明の効果についてみても、刊行物に記載された発明及び上記周知の技術事項1?2から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び上記周知の技術事項1?2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-10 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-29 
出願番号 特願2008-24986(P2008-24986)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石塚 良一  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
吉村 尚
発明の名称 遊技球回収装置  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 伸一  
代理人 加藤 恭介  

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