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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1260168 |
審判番号 | 不服2011-3472 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-02-16 |
確定日 | 2012-07-09 |
事件の表示 | 特願2007-119563「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日出願公開、特開2008-277561〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年4月27日の特許出願であって、平成22年6月9日付けの拒絶理由の通知に応答して同年8月13日に手続補正がされたが、同年11月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成23年2月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、これと同時に手続補正がされ、当審による平成24年2月10日付けの拒絶理由の通知に応答して同年4月16日に手続補正がされるとともに同日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月16日に補正された本願の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「装置基板と; ダイボンドされる面と反対側の面に第1の素子電極及び第2の素子電極を有し前記装置基板の一面にダイボンドされて列をなし、配設ピッチが0.5mmから4.0mmの範囲で配設された複数の半導体発光素子と; 前記半導体発光素子の第1の素子電極とこの第1の素子電極を有した前記半導体発光素子に対し前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極とにワイヤボンディングにより接続されてこれら両素子電極にわたり前記一面から遠ざかるように前記第1の素子電極に対して高さが50μmよりも高く150μm以下となるように湾曲して設けられ、かつ、線径が20μm?30μmのボンディングワイヤであって、前記第1の素子電極に前記ボンディングワイヤの一端がボールボンディングにより接続されているとともに、前記第2の素子電極に設けたバンプを介して前記ボンディングワイヤの他端が前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極にワイヤボンディングで接続されて、前記各半導体発光素子同士を電気的に直列接続した前記ボンディングワイヤと; 蛍光体が分散して混入されていて、前記半導体発光素子、前記複数の半導体発光素子の隣接した配設ピッチ間及びボンディングワイヤをこれらが外部に露出しないように埋設したシリコーン樹脂からなる透光性の封止部材と; を具備したことを特徴とする照明装置。」 第3 主引例の記載事項と引用発明の認定 当審による拒絶理由の通知で引用した、本願出願前に頒布された特開2006-48934号公報(以下「主引例」という。)には、以下の記載がある。 「【0014】 図2は、AlN(窒化アルミニウム)などのセラミックをベース3とし、加えて、正方形としたLEDチップ2の適宜数(図示の場合は4個)を1列に整列させるものとしたときの構成例であり、まず、ベース3には導電塗料などで配線パターン3bが印刷され、上記ベース3上にはグリーンシートの積層、焼成などによりキャビティ3aが形成される。また、上記キャビティ3aの形成時には端子板5も同時に形成され外部からの給電に備えられている。 【0015】 そして、前記配線パターン3b上にはLEDチップ2がマウントされ、各LEDチップ2が金線7により直列に配線が行われ、しかる後に、キャビティ3aに適量の蛍光体6aが混入された透明シリコーン樹脂6が注入されて、本発明の灯具光源用LEDランプ1とされる。ここで、本発明の灯具光源用LEDランプ1では、キャビティ3aに注入されるシリコーン樹脂は、キャビティ3aの上面に対しほぼ面一の平面でありレンズ作用を実質的に生じないものとされている。」 上記記載が参照する図2(灯具光源用LEDランプ1の断面図)からは、上記記載にいう「『キャビティ3aに注入されるシリコーン樹脂』の『キャビティ3aの上面に対しほぼ面一の平面』」が、LEDチップ2と金線7の上にあることが看取できるから、透明シリコーン樹脂6は、LEDチップ2、複数のLEDチップ2の隣接した配設ピッチ間及び金線7をこれらが外部に露出しないように埋設しており、キャビティ3aは、複数のLEDチップ2及び金線7を包囲するとともに、LEDチップ2及び金線7の高さよりも高く設けられ、透明シリコーン樹脂6は、キャビティ3aの内側に充填されてLEDチップ2及び金線7を埋設して封止している。 したがって、主引例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ベース3と; 前記ベース3上に印刷された配線パターン3bにマウントされて1列に整列した4個のLEDチップ2と; 前記各LEDチップ2同士を直列に配線する金線7と; 蛍光体6aが混入されていて、前記LEDチップ2、前記複数のLEDチップ2の隣接した配設ピッチ間及び金線7をこれらが外部に露出しないように埋設した透明シリコーン樹脂6と; を具備し、 複数のLEDチップ2及び金線7を包囲するとともに、前記LEDチップ2及び金線7の高さよりも高く設けられたキャビティ3aを更に備え、前記透明シリコーン樹脂6は、前記キャビティ3aの内側に充填されて前記LEDチップ2及び前記金線7を埋設して封止する、 灯具光源用LEDランプ1。」 第4 副引例の記載事項の認定 当審による拒絶理由の通知で引用した、本願出願前に頒布された特開2002-314136号公報(以下「副引例」という。)には、以下の1ないし5の記載がある。 1 「【0015】図1?図3は、本発明による管状の半導体発光装置の第1の本実施の形態を示す。・・・」 2 「【0017】・・・各半導体発光素子(3)の各電極間は順次ボンディングワイヤ(9)を介して電気的に直列に相互に接続される。」 3 「【0018】・・・配線基板(2)上の所定の位置に接着剤(図示せず)で固定される青色LEDチップは、幅0.34mm、高さ0.1mmの外形寸法を有し、必要な明るさを得る個数、例えば5個?7個が用いられる。」 4 「【0020】・・・配線基板(2)に半導体発光素子(3)を固定した後、半導体発光素子(3)の各電極間及び導体パターン(7)とを0.15mm程度のループ高さでボンディングワイヤ(8, 9)で接続し」 5 「【0023】本発明による管状半導体発光装置の図4?図6に示す第2の実施の形態では・・・」 上記1及び5より、上記2ないし4を含む副引例の【0015】ないし【0022】の記載及び上記1が参照する図1?図3は、同じ実施例である「第1の本実施の形態」に関するものである。 図1及び図2からは、各半導体発光素子(3)の配線基板(2)に向いた面とは反対側の面に、ボンディングワイヤ(9)と接続される部分が2箇所あり、7個の半導体発光素子(3)がなす列が延びる方向に隣接する2つの半導体発光素子(3)において、近い箇所同士が、ボンディングワイヤ(9)で接続されていることが看取できる。 上記2より、ボンディングワイヤ(9)の両端が接続されるのは「各半導体発光素子(3)の各電極」であるから、上記「2箇所」には2個の電極(以下「第1電極」及び「第2電極」という。)がある。 上記3より、上記2,4及び図1,2における「半導体発光素子(3)」は、「青色LEDチップ」であり、配線基板(2)に接着剤で固定される。 してみると、副引例には、次の青色LED発光装置が記載されていると認められる。 「配線基板と; 接着剤で固定される面と反対側の面に第1電極及び第2電極を有し、前記配線基板の一面に接着剤で固定されて列をなす複数の青色LEDチップと; 前記青色LEDチップの第1電極と、この第1電極を有した前記青色LEDチップに対し前記列が延びる方向に隣接した前記青色LEDチップの第2電極とにワイヤボンディングにより接続されてこれら両電極にわたり前記青色LEDチップの前記配線基板に接着剤で固定される面とは反対側の面から遠ざかるように0.15mm程度のループ高さで湾曲して設けられ、前記各青色LEDチップ同士を電気的に直列接続した前記ボンディングワイヤと; を具備した青色LED発光装置。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「ベース3」、「4個のLEDチップ2」、「金線7」、「蛍光体6a」、「透明シリコーン樹脂6」及び「灯具光源用LEDランプ1」は、それぞれ、本願発明の「装置基板」、「複数の半導体発光素子」、「ボンディングワイヤ」、「蛍光体」、「シリコーン樹脂からなる透光性の封止部材」及び「照明装置」に相当する。 引用発明において、「4個のLEDチップ2」が「ベース3上に印刷された配線パターン3bにマウントされて1列に整列した」ことは、「複数の半導体発光素子」が「装置基板の一面に搭載されて列をなして配設された」点で、本願発明において、「複数の半導体発光素子」が「装置基板の一面にダイボンドされて列をなし、配設ピッチが0.5mmから4.0mmの範囲で配設された」ことと共通している。 引用発明において、「金線7」が「各LEDチップ2同士を直列に配線する」ことは、「ボンディングワイヤ」が「各半導体発光素子同士を電気的に直列接続する」点で、本願発明において、「ボンディングワイヤ」が「半導体発光素子の第1の素子電極とこの第1の素子電極を有した前記半導体発光素子に対し前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極とにワイヤボンディングにより接続されてこれら両素子電極にわたり前記一面から遠ざかるように前記第1の素子電極に対して高さが50μmよりも高く150μm以下となるように湾曲して設けられ、かつ、線径が20μm?30μmのボンディングワイヤであって、前記第1の素子電極に前記ボンディングワイヤの一端がボールボンディングにより接続されているとともに、前記第2の素子電極に設けたバンプを介して前記ボンディングワイヤの他端が前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極にワイヤボンディングで接続されて、前記各半導体発光素子同士を電気的に直列接続した」ことと共通している。 引用発明の「蛍光体6aが混入されていて、LEDチップ2、複数のLEDチップ2の隣接した配設ピッチ間及び金線7をこれらが外部に露出しないように埋設した透明シリコーン樹脂6と;を具備し、複数のLEDチップ2及び金線7を包囲するとともに、前記LEDチップ2及び金線7の高さよりも高く設けられたキャビティ3aを更に備え、前記透明シリコーン樹脂6は、前記キャビティ3aの内側に充填されて前記LEDチップ2及び前記金線7を埋設して封止する」は、本願発明の「蛍光体が分散して混入されていて、半導体発光素子、複数の半導体発光素子の隣接した配設ピッチ間及びボンディングワイヤをこれらが外部に露出しないように埋設したシリコーン樹脂からなる透光性の封止部材と; を具備した」に相当する。 以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。 <一致点> 「装置基板と; 前記装置基板の一面に搭載されて列をなして配設された複数の半導体発光素子と; 前記各半導体発光素子同士を電気的に直列接続するボンディングワイヤと; 蛍光体が分散して混入されていて、前記半導体発光素子、前記複数の半導体発光素子の隣接した配設ピッチ間及びボンディングワイヤをこれらが外部に露出しないように埋設したシリコーン樹脂からなる透光性の封止部材と; を具備した照明装置。」 <相違点1> 本願発明は、複数の半導体発光素子が、「ダイボンドされる面と反対側の面に第1の素子電極及び第2の素子電極を有し装置基板の一面にダイボンドされて列をなし、配設ピッチが0.5mmから4.0mmの範囲で配設され」るのに対して、引用発明は、複数の半導体発光素子が、どのような電極を備えるのか、装置基板にどのように搭載されるのか、及び配設ピッチがどの程度であるのか不明である点。 <相違点2> 本願発明は、ボンディングワイヤが、「半導体発光素子の第1の素子電極とこの第1の素子電極を有した前記半導体発光素子に対し前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極とにワイヤボンディングにより接続されてこれら両素子電極にわたり前記一面から遠ざかるように前記第1の素子電極に対して高さが50μmよりも高く150μm以下となるように湾曲して設けられ、かつ、線径が20μm?30μmのボンディングワイヤであって、前記第1の素子電極に前記ボンディングワイヤの一端がボールボンディングにより接続されているとともに、前記第2の素子電極に設けたバンプを介して前記ボンディングワイヤの他端が前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極にワイヤボンディングで接続されて、前記各半導体発光素子同士を電気的に直列接続」するのに対して、引用発明は、ボンディングワイヤが、どのように各半導体発光素子同士を電気的に直列接続するのか不明である点。 第6 判断 上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。 1 <相違点1>について 副引例には、複数の半導体発光素子(青色LED)が、「ダイボンド(接着剤で固定)される面と反対側の面に第1電極及び第2電極を有し、装置基板(配線基板)の一面にダイボンド(接着剤で固定)されて列をなして配設された照明装置(青色LED発光装置)」が記載されている(上記「第4 副引例の記載事項の認定」参照。)。 よって、引用発明において、複数の半導体発光素子を、「ダイボンドされる面と反対側の面に第1の素子電極及び第2の素子電極を有し装置基板の一面にダイボンドされて列をなして配設され」るものとすることは、副引例の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得る。 その際、配設ピッチをどの程度とするかは設計事項である。そして、複数のLEDチップを基板上に一列に配置して直列に配線した発光装置において、LEDチップの配設ピッチ0.5mmから4.0mmは、以下の(1)及び(2)の文献の記載からみて、設計事項の範囲内で当業者が適宜選択し得る通常の大きさである。 (1) 特開2007-95722号公報(当審による拒絶理由の通知の備考で引用) 「【0049】・・・LEDチップ105a、105b、105cが第一の金属部材102a、102b、102cにそれぞれ配置される間隔は、約0.8mmの等間隔とさせてある。」 (2) 特開2006-107850号公報 「【0024】・・・発光素子1の大きさは、長さLが3mm程度で、幅Wが2mm程度のものが用いられ、横方向のピッチp1が3±0.5mm程度、縦方向のピッチp2が4±0.5mm程度になるように配線パターンが形成され」 したがって、引用発明において、本願発明の相違点1に係る構成を備えることは、副引例の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 2 <相違点2>について 副引例には、ボンディングワイヤが、「半導体発光素子(青色LEDチップ)の第1電極と、この第1電極を有した前記半導体発光素子(青色LEDチップ)に対し前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子(青色LEDチップ)の第2電極とにワイヤボンディングにより接続されてこれら両電極にわたり前記半導体発光素子(青色LEDチップ)の前記装置基板(配線基板)にダイボンド(接着剤で固定)される面とは反対側の面から遠ざかるように0.15mm程度のループ高さで湾曲して設けられ、前記各半導体発光素子(青色LEDチップ)同士を電気的に直列接続した照明装置(青色LED発光装置)」が記載されている(上記「第4 副引例の記載事項の認定」参照。)。 よって、引用発明において、ボンディングワイヤを、「半導体発光素子の第1の素子電極とこの第1の素子電極を有した前記半導体発光素子に対し前記列が延びる方向に隣接した前記半導体発光素子の第2の素子電極とにワイヤボンディングにより接続されてこれら両素子電極にわたり前記一面から遠ざかるように湾曲して設けられ、前記各半導体発光素子同士を電気的に直列接続」するものとすることは、副引例の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得る。 その際、遠ざかる高さをどの程度とするか、ボンディングワイヤの線径をどの程度の大きさとするか、及びボンディングワイヤの両端をどのようにボンディングするかは設計事項である。そして、遠ざかる高さを第1の素子電極に対して高さが50μmよりも高く150μm以下となるようにすること、ボンディングワイヤの線径を20μm?30μmとすること、及び第1の素子電極にボンディングワイヤの一端をボールボンディングにより接続し、第2の素子電極に設けたバンプを介してボンディングワイヤの他端を記列が延びる方向に隣接した半導体発光素子の第2の素子電極にワイヤボンディングで接続することは、以下の(1)ないし(3)にそれぞれ示すとおり、周知技術に基づいて、当業者が適宜選択し得たことである。 (1) 遠ざかる高さの程度について LEDチップの直列接続がボンディングワイヤによりなされる半導体発光装置を製造する際には、ボンディングマシーン等でどのようにボンディングするか設計しなければならないのであるから、半導体発光素子の素子電極のある側の面からの、ボンディングワイヤ湾曲部分の高さをどう定めるかは設計事項である。また、その高さが50μmより高く150μm以下であることも、通常採用される範囲内であるか同範囲と格別相違しない。以下のアないしウの文献の記載はそれを裏づける。 ア 特開2002-151745号公報 「【0015】また、本発明においては、逆ワイヤーボンドにより形成されるワイヤーのアーチは、発光ダイオード上面から30μm ?50μm の高さを有している。 【0016】ワイヤーのアーチを低くする程、半導体装置が小型化するものの、ワイヤーが発光ダイオードのエッジに接触して断線する可能性が高くなるので、ワイヤーのアーチの高さを発光ダイオード上面から30μm ?50μm 程度に設定するのが良い。」 同公報の図3には、湾曲したワイア5の高さが、発光ダイオード4の上面から離れる方向に30?50μmであることが記載されている。 上記記載は、半導体発光素子の素子電極のある側の面からの、ボンディングワイヤ湾曲部分の高さは、低ければ半導体装置が小型化できるが、低過ぎればワイヤーが発光ダイオードのエッジに接触して断線する可能性が高くなることを勘案して定めるべき設計事項であることを示している。 また、上記記載における「30?50μm程度」は、「高さが50μmよりも高く150μm以下」と50μm近傍で重なっている。 イ 特開2003-347345号公報 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、パッケージの薄型化の要求が高まるに伴い、ワイヤーのループ高さも制限されるようになった。そこで、図6(a)に示すようなこれまでのワイヤーに替えて、(b)に示すような低ループワイヤーや、(c)に示すような逆ボンディングなどによる低ループ化が測られたが、前者はループ高さが100μm以下に制御することができず、後者はワイヤーボンダーに追加ソフトが必要となり、新たに大きな設備投資が要求される。そして、さらにこれらは共にワイヤー長が短くなるため、パッケージの際、樹脂の応力によりワイヤーが断線してしまう、という問題があった。 【0004】そこで、本発明は、従来の半導体装置及びその製造方法、製造装置における欠点を取り除き、大きな設備投資を必要とすることなく、高い信頼性をもって低ループ化を図ることの可能な半導体装置及びその製造方法、製造装置を提供することを目的とするものである。」 上記記載は、半導体発光素子の素子電極のある側の面からの、ボンディングワイヤ湾曲部分の高さは、パッケージの薄型化の要求からは低い方がよいが、ワイヤー長が短くなると、パッケージの際、樹脂の応力によりワイヤーが断線してしまうというのであるから、パッケージの薄型化と断線防止を勘案して定めるべき設計事項であることを示している。 また、上記記載は、従来ループ高さが100μm以下に制御することができなかった点を本発明は解決するというのであるから、本発明はループ高さ100μm以下を目指すものである。 ウ 特開2006-203080号公報 「【0050】 本発明者らはさらに、図10に示すAuワイヤ50のループ形状を最適化するための試験を実施した。具体的には、Auワイヤ50のループ形状を変化させて、Auワイヤ50とサブマウント20との接触の有無を調べる試験とともに、いわゆるワイヤプルテストを実施した。 図10に示すように、Auワイヤ50のうち最も基板10から離間している部分の基板10からの距離をAとし、Auワイヤ50のうち最もサブマウント20から離間している部分の接合部11Bからの距離をBとする。サブマウントの幅T1は600μm、高さT2は150μmである。なお、Auワイヤは、太さが25μmのものを用いた。(【0051】は省略。) 【0052】 ここで、距離Aを180μmで固定して・・・」 上記記載は、ボンディングワイヤのループ形状が、試験等で好適な値を求めるべき設計事項であることを示している。 また、上記記載より、T2は150μm、Aは180μmであるから、上記記載が参照する図10において、ループ高さに相当するA-T2は、180μm-150μm=30μmである。 なお、請求人は、平成24年4月16日に提出した意見書において、「引用文献2の段落番号0020には、0.15mm程度のループ高さを有することが記載されているが、引用文献2の記載からするとこのループ高さの基準となる位置については記載がない。また、引用文献2の記載内容からすると、このループ高さの基準は、配線基板面からの高さを規定していると解釈することが妥当であると思料する。」と主張している。 たしかに、副引例(上記「引用文献2」)には、「【0020】・・・半導体発光素子(3)及びボンディングワイヤ(8, 9)の保護と光取り出し効率向上のため、半導体発光素子(3)の表面及びボンディングワイヤ(8, 9)にシリコーン樹脂等の保護部材(図示せず)を0.2mm程度の塗布厚さで塗布してもよい。【0021】・・・配線基板(2)の厚さは0.2mm、青色半導体発光素子(3)の高さは0.1mm、ボンディングワイヤ(8, 9)のループ高さは0.15mm、保護部材の塗布の厚さは0.2mmであり、配線基板(2)の下面から保護部材の上面までの間隔は0.4mmである」との記載がある。ループ高さを青色半導体発光素子の上面からの高さとすると、配線基板下面から保護部材の上面までの間隔は、配線基板の厚さ0.2mm、半導体発光素子の高さ0.1mm、ループ高さ0.15mmの和の0.45mmであるかこれに保護部材の塗布厚さ0.2mmをさらに加えた0.65mmとなって、「配線基板(2)の下面から保護部材の上面までの間隔は0.4mmである」と矛盾する一方、ループ高さを配線基板の上面からの高さとすると、配線基板下面から保護部材の上面までの間隔は、配線基板の厚さ0.2mmとループ高さ0.15mmの和の0.35mmであるかこれに保護部材の塗布厚さ0.2mmをさらに加えた0.45mmとなって、「配線基板(2)の下面から保護部材の上面までの間隔は0.4mmである」と概ね符合する。よって、請求人の主張するとおりに、副引例の記載におけるループ高さの基準は、配線基板面からの高さを規定していると解釈することが妥当でないとまではいえない。しかしながら、そのように解釈すると、副引例の記載における湾曲したボンディングワイヤの電極のあるLEDチップ上面からの高さは0.15mmから半導体発光素子の高さ0.1mmを減算した0.05mm=50μmであり、これは、本願発明の相違点2に係る構成における「高さが50μmよりも高く150μm以下」と50μmで一致する。 よって、該主張は、ボンディングワイヤを第1の素子電極に対して高さが50μmよりも高く150μm以下となるように湾曲して設けることが、副引例の記載に基づいて、想到容易ではないことを立証するものではない。 (2) ボンディングワイヤの線径について 半導体発光素子に用いるボンディングワイヤの線径として20μm?30μmは通常の範囲であり、当業者が必要に応じて採用できるものである。 例えば、特開2002-151745号公報には次の記載がある。 「【0014】ワイヤーの径を細くする程、ワイヤーの端が小さくなるので、発光ダイオード上面の電極を小さくして、発光効率の向上を図ることができるものの、実用的なワイヤーの強度を維持するためには、ワイヤーの径を20μm?23μm に設定するのが良い。」 また、特開2006-203080号公報には、次の記載がある。 「【0050】・・・Auワイヤは、太さが25μmのものを用いた。」 (3) ボンディングワイヤの一端がボールボンディングにより接続され、他端が電極に設けたバンプを介して電極にワイヤボンディング接続される点について 電子部品におけるボンディングワイヤによるボンディングにおいて、ボンディングワイヤ端をボールボンディングで接続すること、ボンディングワイヤ端を電極に設けたバンプを介して接続すること、及びボンディングワイヤの一端と他端で接続の仕方を異ならせることは周知である。そのことを示す例として、以下のアないしエの文献の記載を挙げる。 よって、ボンディングワイヤの一端をボールボンディングによる接続とし、他端を電極に設けたバンプを介しての接続とすることは、周知技術に基づいて、当業者が適宜なし得たことと認められる。 ア 特開昭61-198741号公報 「従来、この種のワイヤボンディングにおけるポール形成装置は第6図に示すようにキャピラリ3の先端部より引き出したAl線やCu線などのワイヤ1に対して不活性ガスをノズル9より噴出し、スパーク放電電源部7を使ってスパーク放電によりワイヤlの先端にボール1aを形成し、そのポール1aをICチップの電極にボンディングした後、ワイヤ1をパッケージにボンディングしていた(特公昭57-39055号)。」(1頁右欄4ないし12行。) イ 特開2002-151745号公報 「【0010】・・・この逆ワイヤーボンドに際しては、まずボンディングワイヤー(Au線等)の先端にボールを形成して、このボールを第2配線パターン上にボンディングし、引き続いてワイヤーを第2配線パターンから発光ダイオード上面の電極へと引き延ばして、このワイヤーの端を発光ダイオード上面の電極にボンディングする。」 ウ 特開2006-203080号公報 「【0036】・・・はじめに半導体素子側のパターンにAuワイヤのイニシャルボールを接合して、つぎに基板側のパターンにAuワイヤの他端を接合することが慣例となっていた。」 エ 特開2003-347345号公報 「【請求項3】 フレーム上に半導体素子を載置する工程と、 前記半導体素子のボンディングパッド部と、前記フレームのリード部をワイヤーで接続する工程と、 前記ワイヤーをそのループ形状にその高さを制限するような形状に塑性加工する工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。」 以上のことから、引用発明において、本願発明の相違点2に係る構成を備えることは、副引例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 3 まとめ 上記1及び2より、引用発明において、本願発明の相違点1及び相違点2に係る構成を備えることは、副引例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 また、該構成を備えることによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、副引例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、副引例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-09 |
結審通知日 | 2012-05-10 |
審決日 | 2012-05-22 |
出願番号 | 特願2007-119563(P2007-119563) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 百瀬 正之 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 北川 創 |
発明の名称 | 照明装置 |
代理人 | 熊谷 昌俊 |