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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1260343 |
審判番号 | 不服2010-21907 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-09-29 |
確定日 | 2012-07-19 |
事件の表示 | 特願2004-269908「カメラシステム、および、カメラシステムの駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月30日出願公開、特開2006- 86845〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 [1]手続 本願は、平成16年9月16日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成21年12月22日(起案日) 手続補正 :平成22年 3月 4日 拒絶理由通知《最後》 :平成22年 4月23日(起案日) 手続補正 :平成22年 6月16日 補正却下の決定 :平成22年 7月 2日 (平成22年6月16日付け手続補正の却下) 拒絶査定 :平成22年 7月 2日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成22年 9月29日 手続補正 :平成22年 9月29日 前置審査報告 :平成22年11月15日 審尋 :平成23年10月 3日(起案日) (審尋に対する回答なし) [2]査定の理由 原査定の理由は、概略、以下のとおりである。 本願の請求項1ないし請求項8に係る発明(平成22年3月4日付け手続補正による)は、下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平1-147972号公報 刊行物2:特開2000-59695号公報 刊行物3:特開2004-104825号公報 刊行物4:特開2003-198945号公報 第2 補正の却下の決定 平成22年9月29日付けの手続補正について次のとおり決定する。 《補正の却下の決定の結論》 平成22年9月29日付けの手続補正を却下する。 《補正の却下の決定の理由》 [1]本件補正の内容 平成22年9月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである。(アンダーラインは、補正箇所) (補正事項) 請求項1について 「前記読み出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読み出しパルスを、全画素読出し方式によって前記読出しゲート部に供給する駆動回路」(補正前) とあるのを、 「前記読み出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読み出しパルスを、前記読み出しゲート部に全画素読み出し方式によって順次供給し、前記複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる駆動回路」(補正後) と補正する。 [2]本件補正の適合性 [2-1]補正の範囲 上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面(段落【0026】,【0047】,【0050】及び図2,図3)に記載した事項の範囲内においてする補正である。 [2-2]補正の目的 上記補正事項は、「駆動回路」につき、その駆動の制御態様を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 [2-3]独立特許要件 上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、独立特許要件について検討する。 1.補正後発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、下記のとおりである。 記(補正後発明) オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された複数のセンサ部と、 前記センサ部に蓄積された信号電荷を読み出す読み出しゲート部と、 前記読み出しゲート部により読み出された信号電荷を転送する転送部と、 前記転送部により転送された信号電荷量に応じて信号を出力する出力部と、 を有する固体撮像素子と、 前記読み出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読み出しパルスを、前記読み出しゲート部に全画素読み出し方式によって順次供給し、前記複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる駆動回路と、 前記複数のセンサ部のそれぞれにおいて信号電荷が複数回に分割されて前記出力部から出力された前記複数の信号を前記複数のセンサ部ごとに加算する信号処理回路と を有するカメラシステム。 2.引用刊行物の記載 (1)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平1-147972号公報(以下、刊行物1という。)には、「電荷移送型固体撮像素子」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 ア 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、半導体基板上に光電変換素子,および各素子の光学情報を取出す電荷移送素子(Charge Coupled Device,以下CCDと略称する。)を用いた固体撮像素子に関するものである。」(公報1頁右下欄7?12行) イ 「〔従来の技術〕 固体撮像素子は現行のテレビジョン放送で使用されている撮像用電子管並みの解像力を備えることを必要とし,このため垂直方向に500個,水平方向に800?1000個を配列した絵素(光電変換素子)マトリックスとそれに相当する走査素子が必要となる。したがって,上記固体撮像素子は高集積化が必要なMOS大規模回路技術を用いて作られ,構成素子として一般にCCDあるいはMOSトランジスタ等が使用されている。第2図はスメア雑音の小さいフレームインターライン方式(以下,FIT方式と略称する)のCCD固体撮像素子を示している。この素子は例えば、堀居ほか,“小型CCD固体撮像素子の検討”テレビジョン学会誌,37巻,p.788(1983)に記載されている。1は撮像領域であり,垂直CCDシフトレジスタ2,光電変換素子3(例えば光ダイオード),転送ゲート4,等から成っている。5は光ダイオードの貯えた信号電荷を一時蓄積する蓄積領域であり,選択ゲート6,蓄積用CCDシフトレジスタ7から成っている。また,8は蓄積用CCDシフトレジスタ7が1列ずつ送り出す各行の信号を出力9に向けて転送する水平CCDシフトレジスタである。 この構成の撮像素子においては、光ダイオード3から読出した信号電荷を、CCDシフトレジスタ2,7を高速で動作させることにより、撮像領域1から、蓄積領域5に高速(短時間)で転送する。」(公報1頁右下欄13?2頁左上欄20行) ウ 「〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら,上記FIT方式の素子も含めて一般にCCD撮像素子の開口率(すなわち受光面積)はMOS撮像素子の約1/2と低く,これが光感度の低下を招いている。また,光ダイオードに蓄積できる電荷量は垂直CCDシフトレジスタ2の電荷蓄積容量によって制限され,CCD撮像素子の蓄積電荷量(すなわちダイナミックレンジ)はMOS撮像素子の1/4?1/5と少ない。ここで,開口率を上げようとすると垂直CCDシフトレジスタなど光電変換に関係しない領域の面積を小さくする必要があるが,これはもともと小さい垂直CCDシフトレジスタの蓄積電荷量(ダイナミックレンジ)をさらに小さくしてしまう。したがって,FIT方式CCD撮像素子の性能を向上するためには垂直CCDシフトレジスタのダイナミックレンジを上げることが大切な課題となる。 本発明の目的は,上記の問題点を解決することにあり,FIT方式CCD撮像素子の開口率及びダイナミックレンジの拡大された電荷移送型固体撮像素子を提供することにある。」(公報2頁右上欄14行?左下欄14行) エ 「〔問題点を解決するための手段〕 上記本発明の目的は,同一半導体基板上に,光電変換素子群と,転送スイッチと,上記光電変換素子群のたくわえた光信号電荷を運ぶ走査素子とから成る撮像領域と,この撮像領域で検出した光信号を一時的に蓄積する蓄積領域とを集積化した固体撮像素子において,上記転送スイッチに加えるパルス電圧を制御することにより,上記光電変換素子のたくわえた光信号電荷を複数回に分割して読出す手段と前記読出された信号電荷を逐次上記走査素子の高速転送動作により上記蓄積領域に送り込む手段とを具備して成ることを特徴とする電荷移送型固体撮像素子によって達成される。 そして,上記本発明の特徴点を更に具体的に説明すると,撮像領域を構成する光電変換素子の蓄積した光信号電荷を,転送スイッチに印加するスイッチパルス電圧を制御することにより,1フィールド期間もしくは1フレーム期間の間に,前記蓄積された光信号電荷を複数回に分割して読出し,この分割して垂直CCDシフトレジスタに読出した信号電荷を読出す毎に,垂直CCDシフトレジスタの高速転送動作により蓄積領域へ送り込むようにしたところに特徴がある。 上記光電変換素子に蓄積された光信号電荷を複数回に分割して読出し,垂直CCDシフトレジスタを介して蓄積領域へ送り込むタイミングとしては,何回に分割してもかまわないが,実用的には2?5回に分割することが好ましく,より好ましくは3?4回である。また,1回に送り出す(読出す)光信号電荷量は,分割回数の平均値としてもよく,また,分割回数をN回とした場合,最初の1回目を1/Nの量とし,残りの電荷量をN-1回で均等もしくは不均等に分割してもよく,分割の仕方については任意の方法でよい。いずれにしても本発明で重要なのは,光電変換素子に蓄積された光信号電荷を複数回に分割して垂直CCDシフトレジスタから高速に蓄積領域に送り込むことである。」(公報2頁左下欄15行?3頁左上欄12行) オ 「〔作用〕 上述のとおり,本発明電荷移送型置体撮像素子においては、光電変換素子に蓄積された画像信号電荷を,転送ゲートを複数回(N回)に分割してスイッチングさせて垂直CCDに呼出し,この電荷を高速動作により蓄積領域に運ぶことができる。 したがって,垂直CCDの電荷蓄積容量を大きくしなくとも転送ゲートのスイッチング回数を所定の回数に分割して動作させれば光電変換素子に蓄積された電荷は十分に移送可能である。」(公報3頁左上欄13?右上欄2行) カ 「〔実施例〕 以下,本発明を実施例を用いて詳細に説明する。第1図は本発明の骨子となる実施例を示す図で,電荷移送型固体撮像素子の平面パターンを模式的に示したものである。第1図(a)において,2′は垂直CCDシフトレジスタ(以下,垂直CCDと称する),3′は光ダイオードであり,これらは撮像領域1′を構成している。10は取込みゲート,11は蓄積用CCDシフトレジスタ(以下,蓄積用CCDと称する)であり,これらは蓄積領域5′を構成している。1フィールド期間,或いは1フレーム期間の間に光ダイオードに貯えられた光信号電荷Qは転送ゲート4′を複数回(N回:Nは2以上の正の整数)に渡って開閉することにより,垂直CCDを介して蓄積領域を構成する蓄積用CCD11に送り込まれる。この分割転送動作を第1図(b)に示した転送ゲート駆動パルス(RP)を用いて説明する。RPcは従来のCCD撮像素子の転送ゲート4(第2図に図示)を駆動するためのパルスで,本発明の素子と構成,動作,等を比較するために掲載したものである。このパルスは垂直帰線期間(tBL)の間に,転送ゲートを1回導通状態に置くことを示している。-方,RP_(N)は本発明の素子の転送ゲート4′(第1図(a)に図示)を駆動するためのパルスであり,ここに一例として示したパルスは垂直帰線期間の間に転送ゲート4′を2回導通状態に置くことを示している。転送ゲートをN回に渡って導通状態に置くには垂直帰線期間の間にN個のパルスを発生させるようにすればよいが,ここでは,動作説明を簡単にするため,N=2の場合を例にとって本発明の素子の動作を説明する。」(公報3頁右上欄3行?左下欄14行) キ 「(1)時間t11おいて“M”レベルの電圧振幅を持つパルスRP_(N)を転送ゲート4′に印加する。第1図(c)は撮像領域を構成する画素の構造を模式的に示した説明図であり,4′-Eは転送ゲート電極,2′-Eは垂直CCDを構成する電極,3′-Dは光ダイオード用拡散層(例えばN個),12は半導体基板(例えばP型),2′-Bは垂直CCDを埋込み型チャンネルにするための不純物層(例えばn型),13は電極2′-E,4′-Eと基板を絶縁分離するためのゲート酸化膜(例えばSiO2)である。前記のパルスRP_(N)(t11)の印加により画素部の各領域にはφt12のような電位が形成される。ここで,φt11(4′)はMレベル転送ゲートパルスRP_(N)(t11〉により転送ゲート下に形成される電圧,φ(2′)は電荷読出し時に垂直CCD電極に印加する所定の電圧レベルを有した垂直CCD駆動用パルス(VP,図示せず)により,垂直CCD電極下に形成される電位である。また,φ(3′L)は前回の読出し(前のフィールド,或は前のフレームにおける読出し)の際にHレベル転送ゲートパルスにより電荷読出し完了後に光ダイオードが置かれる電位(以下,リセット電位と称する),φ(3′u)はフィールド期間(TF(1)=TF(2)),或は,フレーム期間(TF(1)+TF(2))に入射した光により光ダイオードに貯えられる電荷Qにより形成される電位である。この電位φ(3′u)の上限は第2図Cに点線で示すように上限はLレベルの転送ゲートパルスRP_(N)により転送ゲート下に形成される電位によって決められる。蓄積電荷による電位上昇分をΔV(=φ(3′u)-φ(3′L))とすると,MレベルパルスRP_(N)(t11)により転送ゲート下の電位φt11(4′)をφ(3′L)+ΔV/2(或いはφ(3′u)-ΔV/2)に設定するようにすればよい。このような電位に設定することにより,光ダイオードの電荷は電位φ(3′u)から電位φ(3′u)-ΔV/2になるまで転送ゲート4′を介して垂直CCDに読出されることになる。すなわち,第1回の読出しにより光ダイオードに蓄積した電荷Qの半分(Q/2)が垂直CCDに送り込まれることになる。垂直CCDに送り込まれた電荷Q/2は,この後,垂直CCD2′(第1図(a)に図示)の高速転送動作により蓄積領域5′に送り込まれる。」(公報3頁左下欄15行?4頁左上欄17行) ク 「(2)第1回目の蓄積領域への電荷転送が完了すると,時間t12でHレベルをもつ転送ゲートパルスRP_(N)(t12)が転送ゲート4′に印加される。垂直CCDの電極下は第1回目の読出し時と同様の電位φ(2′)(第1回目と同一の電位に設定する必要はなく,転送ゲート下より低い電位になるようにすればよい),また転送ゲート下はRP_(N)(t12)により電位φt12(4′)(=φ(3′L))に設定される。したがって,光ダイオードの電位はφ(3′u)-ΔV/2から,電荷の読出しが完了するとφ(3′L)に降下する。この結果,光ダイオードの電位はΔV/2だけ下降し,光ダイオードに残されていた残り半分の電荷が転送ゲートを介して垂直CCDに送り込まれることになる。第2回目に読出されたこの電荷は,この後,垂直CCDの高速転送動作により蓄積領域5′に送り込まれる。この高速転送は垂直帰線期間内(tBL)に行われる。」(公報4頁左上欄18行?右上欄15行) ケ 「(3)第2フイールドの垂直帰線期間においても、前回のフィールドと同じレベルをもつ転送ゲートパルスRP_(N)(t21),RP_(N)(t22)を転送ゲート4′に印加することにより,光ダイオードの貯えた電荷は第1回,第2回に分けて,前回と同様の動作により蓄積領域5′に送り込まれる。 以上,光ダイオードに蓄積された電荷を2回に分けて読出し,2回の垂直CCDの高速動作によりこの電荷を蓄積領域5′に送り込む動作を説明した。転送パルスを垂直帰線期間にN回発生するようにすれば,電荷をN回に分割して運ぶことができるようになる。したがって,垂直CCDの電荷蓄積容量は1回で全部を送る従来の読出し方式の場合に較べると,1/Nに減らしても構わないことになる。すなわち,垂直CCDのチャンネル幅を縮少すること,或は垂直CCDの段数を増やし(ビット数を増やし),多種類の光信号電荷を送ることができるようになる。また,前述の説明では読出しをN回に分け毎回等量の電荷(Q/N)を送る動作を示したが,異なる量の電荷を送るようにしても勿論構わない(例えば,2回読出しの場合第1回目でQ/3,第2回目で2Q/3という量を読出すようにしてもよい)。」(公報4頁右上欄16行?左下欄18行) コ 「次に,上記のようにN回に分けて読出した電荷を蓄積領域5′で同一記憶セルに集める方法について実施例を用いて説明する。なお,同一の光ダイオードから読出した電荷は出力時にはN回分を加算した形で取出す必要がある。但し,出力部9(素子内部でも外部でもよい)にメモリ等が用意されている場合は加算の必要はなく,各回分を独立に取出すようにしてもよい。」(公報4頁左下欄19行?右上欄6行) サ 「第5図(a)は,第1回目の電荷q1,第2回目の電荷q2を第3図,或は第4図に示したような方法により蓄積用CCDll-1,11-2に送り込んだ電荷を加算回路を設けることなく取出す実施例を示している。ここでは,2つに分割した電荷q1,q2は矢印17-1,17-2で示すように各々独立に水平CCD8′に送り込まれ周知の電荷移送方法により,矢印17-3で示すように水平CCDの転送動作により2つの電荷が加算される。 第5図(b)において,第1回目の電荷q1,第2回目の電荷q2は第3図,或は第4図に示したような方法により蓄積用CCDll-1,11-2に送り込まれる。電荷q1,q2は矢印19-1,19-2で示すように各々独立に水平CCD8′-1,8′-2に送り込まれる。水平CCD内を転送された電荷q1,q2は水平CCDの出力端に設けた加算回路18で加算された後,出力9から順次取出される。 第5図(c)は電荷q1,q2を水平CCD8′-1,8′-2により転送し,直接に(加算しないで)出力9-1,9-2に取出すようにした構成を示している。q1,q2の加算は出力9-1,9-2の後に設けた加算回路(図示せず)で行う。この加算回路は素子の中に集積化してもよいし,或は素子外部に別途設けるようにしてもよい。」(公報5頁左上欄18行?左下欄1行) シ 「〔発明の効果〕 以上,実施例を用いて詳細に説明したように,本発明によれば,光電変換素子の貯えた信号電荷を複数回(N回:Nは2以上の正の整数)に分けて垂直CCDシフトレジスタによって蓄積領域へ運ぶことができるので,垂直CCDシフトレジスタのダイナミックレンジをN倍に拡大することができるという効果がある。したがって,これまで問題とされてきた垂直CCDシフトレジスタの狭いダイナミックレンジは解消することができる。また,本発明によれば垂直CCDシフトレジスタのチャンネル幅を従来の1/Nに縮少しても従来と同様のダイナミックレンジを確保することが可能になる。これは,将来,画素数の増加(高解像度化)を図る場合,或は,感度の向上を図る場合に非常に優れた手段となり,本発明のもたらす実用的価値は極めて大きい。」(公報5頁左下欄2?18行) (以上、刊行物1の記載) (2)刊行物1に記載された発明 以上の刊行物1の記載からみて、刊行物1には、次の構成を有する発明が記載されている。 (a)前掲エ、オ、カによれば、刊行物1に記載された発明は、「複数の光電変換素子(光ダイオード)3′」を有する。 (b)前掲エ、オ、カによれば、刊行物1に記載された発明は、「光電変換素子(光ダイオード)3′に蓄積された光信号電荷を読み出す転送スイッチ(転送ゲート)4′」を有する。 (c)前掲エ、オ、カによれば、刊行物1に記載された発明は、「転送スイッチ(転送ゲート)4′により読み出された光信号電荷を高速動作により蓄積領域に送り込む垂直CCDシフトレジスタ2′」を有する。 (d)前掲カ、コ、サ(特に第5図(C)の実施例)によれば、刊行物1には、光信号電荷は、垂直CCDシフトレジスタ2′から蓄積領域5′に送り込まれ、水平CCD8により転送され、出力部(9-1、9-2)から取り出されることが記載されているから、刊行物1に記載された発明は、「垂直CCDシフトレジスタ2′により転送された光信号電荷を出力する出力部(9-1、9-2)」を有する。 (e)前掲イ、カによれば、「固体撮像素子」は「光ダイオード」、「垂直CCDシフトレジスタ2」、「水平CCDシフトレジスタ」、「転送ゲート4」等を有する全体の構成であるから、前記(a)ないし(d)の構成を有する「固体撮像素子」ということができる。 (f)前掲エによれば、刊行物1には、光電変換素子の蓄積した光信号電荷を、転送スイッチに印加するスイッチパルス電圧を制御することにより、1フィールド期間もしくは1フレーム期間の間に、前記蓄積された光信号電荷を複数回に分割して垂直CCDシフトレジスタ(2′)に読み出させることが記載されている。 すなわち、「前記蓄積された光信号電荷を複数回に分割して垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出」しているのは、「転送スイッチ」であり、「転送スイッチ」には「スイッチパルス電圧」が供給されていて、「スイッチパルス電圧」が制御されることにより、「蓄積された光信号電荷を複数回に分割して垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出させる」構成であるといえる。 よって、転送スイッチが、光電変換素子に蓄積された光信号電荷を複数回に分割して垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出すように、転送スイッチに印加されるスイッチパルス電圧が供給され、そのようにスイッチパルス電圧が供給されることにより、光電変換素子から電荷が読み出される、と言い換えることができる。 また、前掲キには、時間t11においてMレベルの電圧振幅を持つ転送ゲートパルスRP_(N)が転送ゲート4′に印加されることで、光ダイオードの電荷は電位φ(3′u)から電位φ(3′u)-ΔV/2になるまで転送ゲート4′を介して垂直CCDに読出される(すなわち,第1回の読出しにより光ダイオードに蓄積した電荷Qの半分(Q/2)が垂直CCDに送り込まれる)ことが、前掲クには、時間t12でHレベルを持つ転送ゲートパルスRP_(N)が転送ゲート4′に印加されることにより、光ダイオードの電位はφ(3′u)-ΔV/2から,電荷の読出しが完了するとφ(3′L)に降下する(この結果,光ダイオードの電位はΔV/2だけ下降し,光ダイオードに残されていた残り半分の電荷が転送ゲートを介して垂直CCDに送り込まれる。)ことが記載されている。 すなわち、転送ゲート4′に印加する転送ゲートパルスの電圧振幅のレベルをMレベルとHレベルと制御することにより、転送ゲート4′から読み出される電荷が複数回に分割して読み出されるよう制御しているということができる。 そして、前掲オには「本発明電荷移送型置体撮像素子においては、光電変換素子に蓄積された画像信号電荷を,転送ゲートを複数回(N回)に分割してスイッチングさせて垂直CCDに呼出し,この電荷を高速動作により蓄積領域に運ぶことができる。 したがって,垂直CCDの電荷蓄積容量を大きくしなくとも転送ゲートのスイッチング回数を所定の回数に分割して動作させれば光電変換素子に蓄積された電荷は十分に移送可能である。」とあるから、前記「転送スイッチ」が「転送ゲート」といえることは明らかである。 さらに、前掲キには「また,φ(3′L)は前回の読出し(前のフィールド,或は前のフレームにおける読出し)の際にHレベル転送ゲートパルスにより電荷読出し完了後に光ダイオードが置かれる電位(以下,リセット電位と称する)」とあり、Hレベル転送ゲートパルスで読み出されるとリセット電位になるのであるから、Hレベル転送ゲートパルスでの読み出しにより、蓄積された信号電荷の全てが読み出されたといってよいことは明らかである。 以上のことから、「転送ゲート4′が、光電変換素子に蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して、垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出すように、転送ゲート4′に印加されるスイッチパルス電圧(時間t11においてMレベル、時間t12でHレベル)を供給し、そのようにスイッチパルス電圧が供給されることにより、光電変換素子から電荷が読み出される」といえる。 (g)前掲コ、サによれば、刊行物1には、同一の光電変換素子(光ダイオード)3′に蓄積された光信号電荷を複数回(例えば、2回)に分割して、その2つに分割した電荷q1,q2を水平CCD8′-1,8′-2により転送し、直接に(加算しないで)出力9-1,9-2に取出すようにして、出力9-1,9-2の後に設けた加算回路で加算することが記載されており、刊行物1に記載された発明は「光電変換素子(光ダイオード)3′から複数回に分割され読み出された電荷q1,q2を出力部9-1,9-2から出力し光電変換素子(光ダイオード)3′ごとに加算する加算回路」を有する。 (h)上記(a)ないし(e)で検討したとおり、刊行物1に記載された発明は、「固体撮像素子」を有し、また、前掲サによれば「出力9-1,9-2の後に設けた加算回路(図示せず)で行う。この加算回路は素子の中に集積化してもよいし,或は素子外部に別途設けるようにしてもよい。」とあるから、(垂直・水平)CCDを有する固体撮像素子と、素子外部に設けられた加算回路とを有するということができる。 そして、この固体撮像素子と加算回路とをあわせて、撮像手段ということができることは、当業者であれば明らかである。 (i)まとめ 以上の(a)ないし(h)によれば、刊行物1に記載された発明(引用発明)として、以下のとおりのものを認定することができる。 「複数の光電変換素子(光ダイオード)3′と、 前記光電変換素子(光ダイオード)3′に蓄積された光信号電荷を読み出す転送スイッチ(転送ゲート)4′と、 前記転送スイッチ(転送ゲート)4′により読み出された光信号電荷を高速動作により蓄積領域に送り込む垂直CCDシフトレジスタ2′と、 垂直CCDシフトレジスタ2′により転送された光信号電荷を出力する出力部(9-1、9-2)と、 を有する固体撮像素子と、 転送ゲート4′が、光電変換素子に蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して、垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出すように、転送ゲート4′に印加されるスイッチパルス電圧(時間t11においてMレベル、時間t12でHレベル)を供給し、そのようにスイッチパルス電圧が供給されることにより、光電変換素子から電荷が読み出され、 前記光電変換素子(光ダイオード)3′から複数回に分割され読み出された電荷q1,q2を出力部9-1,9-2から出力し光電変換素子(光ダイオード)3′ごとに加算する加算回路と、 を有する撮像手段」 3.対比 補正後発明と引用発明とを対比してみると、次のことが認められる。 (a)「オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された複数のセンサ部」について 補正後発明の「複数のセンサ部」は、発明の詳細な説明を参酌すると「センサ部10は、入射光量に応じた信号電荷を生成し、当該信号電荷を蓄積する。」(【0019】)とあり、引用発明の「複数の光電変換素子(光ダイオード)3′」は、「受光した光量に応じた電荷を生成し、上記電荷を蓄積する」ものであることは技術常識であるから、補正後発明と引用発明とは「複数のセンサ部」を有する点で相違がない。 もっとも、該「複数のセンサ部」が、補正後発明は「オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された(複数のセンサ部)」であるのに対し、引用発明は「複数のセンサ部」に、そのような構成を有しない点で相違する。 (b)「前記センサ部に蓄積された信号電荷を読み出す読み出しゲート部」について 引用発明は「前記光電変換素子(光ダイオード)3′に蓄積された光信号電荷を読み出す転送スイッチ(転送ゲート)4′」を有しており、上記(a)で検討したとおり、引用発明の「光電変換素子」は、補正後発明の「センサ部」といえるから、引用発明の「前記光電変換素子(光ダイオード)3′に蓄積された光信号電荷を読み出す転送スイッチ(転送ゲート)4′」は、補正後発明の「前記センサ部に蓄積された信号電荷を読み出す読み出しゲート部」ということができる。 (c)「前記読み出しゲート部により読み出された信号電荷を転送する転送部」について 引用発明は「前記転送スイッチ(転送ゲート)4′により読み出された光信号電荷を高速動作により蓄積領域に送り込む垂直CCDシフトレジスタ2′」を有しており、引用発明の「転送スイッチ(転送ゲート)4′」が、補正後発明の「読み出しゲート部」といえることは、上記(b)で検討したとおりであるから、引用発明の「前記転送スイッチ(転送ゲート)4′により読み出された光信号電荷を高速動作により蓄積領域に送り込む垂直CCDシフトレジスタ2′」は、補正後発明の「前記読み出しゲート部により読み出された信号電荷を転送する転送部」と相違しない。 (d)「前記転送部により転送された信号電荷量に応じて信号を出力する出力部」について 引用発明は、「垂直CCDシフトレジスタ2′により転送された光信号電荷を出力する出力部(9-1、9-2)」を有する。 引用発明の「垂直CCDシフトレジスタ2′」が、本願発明の「転送部」といえることは、上記(c)にて検討したとおりであるから、引用発明は「前記転送部により転送された信号電荷量を出力する出力部」を有しているということができる。 補正後発明は「信号電荷量に応じて信号を出力」するのであるから、出力する信号は「信号電荷量に応じた信号」すなわち「信号電荷量に関する信号」ということができ、引用発明の出力部が出力する「光信号電荷」も「信号電荷量に関する信号」ということができるから、いずれも「信号電荷量に関する信号」を出力しているということができる。もっとも、補正後発明は「信号電荷量に関する信号」が、「信号電荷量に応じた信号」であるのに対し、引用発明は、「信号電荷量に関する信号」が「光信号電荷」である点で相違する。 以上まとめると、引用発明は「前記転送部により転送された信号電荷量に関する信号を出力する出力部」を有する点で補正後発明と相違がないものの、補正後発明の「出力部」は、出力する「信号電荷量に関する信号」が「信号電荷量に応じた信号」であるのに対し、引用発明の「出力部」が出力する「信号電荷量に関する信号」は「光信号電荷」である点で相違する、ということができる。 (e)「固体撮像素子」について 補正後発明は、「複数のセンサ部」、「読み出しゲート部」、「転送部」、「出力部」を有する固体撮像素子であるのに対し、引用発明の固体撮像素子は、「複数のセンサ部」、「読み出しゲート部」、「転送部」、「出力部」を有しているから、この点で相違がない。 (f)「前記読み出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読み出しパルスを、前記読み出しゲート部に全画素読み出し方式によって順次供給し、前記複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる駆動回路」について 引用発明は「転送ゲート4′が、光電変換素子に蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して、垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出すように、転送ゲート4′に印加されるスイッチパルス電圧(時間t11においてMレベル、時間t12でHレベル)を供給し、そのようにスイッチパルス電圧が供給されることにより、光電変換素子から電荷が読み出され」ている。 補正後発明の「読み出しゲート部」、「センサ部」、「転送部」が、それぞれ、引用発明の「転送ゲート4′」、「光電変換素子3′」、「垂直CCDシフトレジスタ2′」といえることは、上記(a)ないし(c)にて検討したとおりである。 引用発明のスイッチパルス電圧は、転送ゲート4′が、光電変換素子に蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して、垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出すような動作をするために必要なパルスであるから、転送ゲート4′を動作させるパルスすなわち(ゲート)駆動パルスということができる。 そして、引用発明において、転送ゲート4′が所望の動作をするためには、(ゲート)駆動パルスを、「時間t11においてMレベル」、「時間t12でHレベル」のように所望のタイミングで、所望の電圧を与えるパルスとする必要があるから、そのようなタイミングで電圧を与えるパルスとなる制御を行うための制御回路が必要であることは自明のことであり、該(必要な)制御回路は、駆動パルスを制御するための制御回路であるから、駆動回路ということができる。 すなわち、駆動回路は、(転送ゲート4′が、光電変換素子に蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して、垂直CCDシフトレジスタ2′に読み出すように)電圧が制御された、複数の読み出しパルスをゲート部に供給しているといえる。 以上まとめると、引用発明は「読み出しゲート部が、センサ部に蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように、電圧が制御された、複数の読み出しパルスをゲート部に供給し、複数のセンサ部から信号電荷を前記転送部へ読み出させる駆動回路」を有しているということができる。 補正後発明の「振幅が制御された複数の読み出しパルス」について、発明の詳細な説明を参酌すると、「上記の目的を達成するため、本発明のカメラシステムは、・・・前記読み出しゲート部に与える読み出しパルスの電圧が異なるように制御して、全ての前記センサ部に蓄積された電荷を複数回に分割して読み出す駆動手段と」(出願当初明細書【0010】)とあるから、「電圧が制御された複数の読み出しパルス」ということもでき、引用発明の「電圧が制御された、複数の読み出しパルス」と相違がない。 補正後発明の「(全画素読み出し方式によって)順次供給し」、「(前記転送部へ)順次読み出させる」の「順次」について検討する。 上記「順次」について、発明の詳細な説明を参酌すると、以下の記載がある。 「上記の本発明のカメラシステムでは、駆動手段により全ての読み出しゲート部に第1の読み出しパルスが与えられて、センサ部に蓄積された一部の信号電荷が転送部に読み出される。読み出された信号電荷は、転送部により出力部へと転送される。出力部では、信号電荷量に応じた信号電圧が信号処理回路へと出力される。 2回の分割読み出しを行う場合には、駆動手段により全ての読み出しゲート部に第2の読み出しパルスが与えられて、センサ部に蓄積された残りの信号電荷が全て転送部に読み出される。読み出された信号電荷は、転送部により出力部へと転送される。出力部では、信号電荷量に応じた信号電圧が信号処理回路へと出力される。」(【0011】) 「読み出し用駆動回路42は、駆動制御回路41からの制御信号に基づいて、全ての読み出しゲート部12にたとえば、読み出しパルスを供給する。本実施形態では、読み出し用駆動回路42は、2種類以上の振幅の異なる読み出しパルスR1,R2を発生する。そして、読み出しゲート部12は、全てのセンサ部10に蓄積された信号電荷を複数回に分割して読み出す。」(【0026】) 「本実施形態では、図5(b)に示すように、第1回目の読み出しにおいて、読み出し用駆動回路42により全ての読み出しゲート部12(より詳細には読み出しゲート部12を構成する転送電極13)に第1の読み出しパルスR1を与えて、センサ部10に蓄積された信号電荷の一部を垂直転送部11に読み出す。・・・第1回目の読み出しにおいて、垂直転送部11に読み出された信号電荷は、垂直転送部11により垂直方向Vに転送され、水平転送部14により水平方向Hに転送される。水平転送部14から出力部15に転送された信号電荷は、出力部15により信号電荷量に応じた電圧に変換される。そして、A/D変換回路51により当該信号電圧はデジタル信号に変換されて、フレームメモリ53に記憶される。・・・n=2の場合、最終の第2回目の読み出しには、完全読み出しができる十分な振幅をもつ第2の読み出しパルスR2を与える。これにより、図5(c)に示すように、第1回目の読み出しでは読み出されなかった信号電荷の全てが垂直転送部11に読み出される。・・・第2回目の読み出しにおいて、垂直転送部11に読み出された信号電荷は、垂直転送部11により垂直方向Vに転送され、水平転送部14により水平方向Hに転送される。水平転送部14から出力部15に転送された信号電荷は、出力部15により信号電荷量に応じた電圧に変換される。そして、A/D変換回路51により当該信号電圧はデジタル信号に変換されて、フレームメモリ54に記憶される。」(【0050-【0061】) 以上の記載からみて、読み出しパルスR1がまず与えられ、上記読み出しパルスR1が与えられた後、読み出しパルスR2があたえられること(すなわち、読み出しパルスR1と読み出しパルスR2が順次与えられること)は記載があるが、読み出しパルスR1(または、読み出しパルスR2)は、全ての読み出しゲート部に与えられると記載されるのみで、該パルスが、各ゲート部それぞれに対して順番に(順次)与えられるという記載はないから、補正後発明の「(全画素読み出し方式によって)順次供給し」、「(前記転送部へ)順次読み出させる」の「順次」は、「読み出しパルスを、(複数のセンサ部に対応する)ゲート部の全てに供給することを順次(複数回)行い、複数のセンサ部(の全て)から電荷を転送することを順次(複数回)行う」ことであると認める。 これに対して、引用発明は「転送ゲート4′に印加されるスイッチパルス電圧(時間t11においてMレベル、時間t12でHレベル)を供給」することにより、上記「時間t11においてMレベル」のパルス、「時間t12でHレベル」のパルスに応じて、光電変換素子に蓄積された信号電荷の全てが複数回に分割してに読み出されているのであるから、補正後発明の「読み出しパルスを、(複数のセンサ部に対応する)ゲート部に供給することを順次(複数回)行い、複数のセンサ部から電荷を転送することを順次(複数回)行う」構成を有している。 よって、引用発明は「前記読み出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読み出しパルスを、前記読み出しゲート部に順次供給し、前記複数のセンサ部から信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる駆動回路」を有している点で、補正後発明と相違がない。 もっとも、補正後発明は、上記読み出しゲート部に供給されるパルスが「全画素読み出し方式によって」供給され、センサから転送される電荷は「複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ読み出させる」のに対し、引用発明は、そのような構成ではない点で相違する。 (g)「前記複数のセンサ部のそれぞれにおいて信号電荷が複数回に分割されて前記出力部から出力された前記複数の信号を前記複数のセンサ部ごとに加算する信号処理回路」について 引用発明は、「前記光電変換素子(光ダイオード)3′から複数回に分割され読み出された電荷q1,q2を出力部9-1,9-2から出力し光電変換素子(光ダイオード)3′ごとに加算する加算回路」を有している。 引用発明と補正後発明とは「前記転送部により転送された信号電荷量に関する信号を出力する出力部」を有する点で共通していることは、前記(d)にて検討したとおりである。 また、引用発明の「光電変換素子(光ダイオード)3′」が補正後発明の「センサ部」に対応することは、前記(a)にて検討したとおりである。 よって、引用発明は「前記複数のセンサ部のそれぞれにおいて電荷が複数回に分割されて出力部から出力された複数の信号電荷量に関する信号をセンサ部ごとに加算する処理回路」を有しているということができる。 もっとも、前記(d)にて検討したとおり、補正後発明の「出力部」は、出力する「信号電荷量に関する信号」が「信号電荷量に応じた信号」であるのに対し、引用発明の「出力部」が出力する「信号電荷量に関する信号」は「光信号電荷」である点で相違するのであるから、上記「加算する処理回路」にて処理される対象は、引用発明では「信号電荷量」であるのに対し、補正後発明では「信号電荷量に応じた信号」である点で相違する。 (h)「カメラシステム」について 補正後発明の「カメラシステム」は、発明の詳細な説明の「【0016】図1は、本実施形態に係るカメラシステムの概略構成図である。本実施形態に係るカメラシステムは、固体撮像素子(CCD)1と、固体撮像素子1の撮像部に入射光を導く光学系、たとえば入射光を撮像面上に結像させる光学レンズ2と、露光時間を決める光シャッタ3と、固体撮像素子1および光シャッタ3を駆動する駆動回路4と、固体撮像素子1の出力信号を処理する信号処理回路5とを有する。」の記載によれば、「固体撮像素子(CCD)1」、「(固体撮像素子1の撮像部に入射光を導く)光学系(たとえば光学レンズ2)」、「露光時間を決める光シャッタ3」、「(固体撮像素子1および光シャッタ3を駆動する)駆動回路4」、「(固体撮像素子1の出力信号を処理する)信号処理回路5」などを有する「撮像装置」ということができる。 一方、引用発明は「撮像手段」であるから、「撮像装置」ということができるが、上記補正後発明の「カメラシステム」ということはできない。 よって、引用発明は、「撮像装置」である点で補正後発明と対応するが、「カメラシステム」ではない点で相違する。 4.一致点 ・相違点 以上(a)ないし(h)の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との[一致点]・[相違点]は、それぞれ次のとおりのである。 [一致点] 複数のセンサ部と、 前記センサ部に蓄積された信号電荷を読み出す読み出しゲート部と、 前記読み出しゲート部により読み出された信号電荷を転送する転送部と、 前記転送部により転送された信号電荷量に関する信号を出力する出力部と、 を有する固体撮像素子と、 前記読み出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読み出しパルスを、前記読み出しゲート部に順次供給し、前記複数のセンサ部から信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる駆動回路と、 前記複数のセンサ部のそれぞれにおいて電荷が複数回に分割されて出力部から出力された複数の信号電荷量に関する信号をセンサ部ごとに加算する処理回路と、 を有する撮像装置。 [相違点] [相違点1] 「複数のセンサ部」が、補正後発明は「オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された(複数のセンサ部)」であるのに対し、引用発明は「複数のセンサ部」に、そのような構成を有しない点。 [相違点2] 補正後発明の「出力部」は、出力する「信号電荷量に関する信号」が「信号電荷量に応じた信号」であるのに対し、引用発明の「出力部」が出力する「信号電荷量に関する信号」は「光信号電荷」である点。 [相違点3] 補正後発明は、上記読み出しゲート部に供給されるパルスが「全画素読み出し方式によって」供給され、センサから転送される電荷は「複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ読み出させる」のに対し、引用発明は、そのような構成ではない点。 [相違点4] 「加算する処理回路」にて処理される対象は、引用発明では「光信号電荷」であるのに対し、補正後発明では「信号電荷量に応じた信号」である点。 [相違点5] 撮像装置が、 補正後発明では、「カメラシステム」であるのに対して、 引用発明では、「撮像手段」である点。 5.相違点の判断 そこで、上記各相違点について検討する。 [相違点1]について 固体撮像素子を用いたカメラのセンサ部として、「オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された複数のセンサ部」を採用することは、下記の周知文献1ないし3に記載されるとおり本件出願前周知のセンサであり、当業者であれば、引用発明においても普通に採用しようと想起し得たものである。 そして、 周知文献1には「本発明に係る固体撮像素子は、縦型オーバーフロードレイン方式の固体撮像素子であって」(【0010】)の記載に加えて、「本発明は、IT(インターライントランスファ)方式、FIT(フレームインターライントランスファ)方式のCCD固体撮像素子に適用できる。」(【0027】)の記載が、 周知文献2には「第1の固体撮像素子31aは、例えば、図2に示すようなフレームトランスファ型の固体撮像素子であり、撮像部、蓄積部、水平転送部及び出力部で構成される。・・・また、第1の固体撮像素子1aは、撮像部に発生する過剰な電荷を基板側へ吸収させるいわゆる縦型オーバーフロードレイン構造を有しており、」(【0022】)の記載に加えて、「以上の実施形態においては、第1及び第2のCCD31a、31bがフレームトランスファ型である場合を例示して説明したが、本願発明は、これに限られるものではなく、1画面分の情報電荷を一時的に保持することのできる蓄積部を備えるフレームインターライン型の固体撮像素子を用いた撮像装置にも適している。」の記載が、 周知文献3には「本発明は、上記目的を達成するため、光電変換部に発生した過剰電荷を掃き出すオーバーフロードレインを備えた固体撮像素子において、」(【0015】)の記載に加えて、「なお、以上の実施形態では、インターライン転送型固体撮像素子を例として説明したが、本発明はこれに限ることなく、リニア型、フレーム転送型、フルフレーム転送型、フレームインターライン転送型のCCD固体撮像素子、あるいはCMOS固体撮像素子等にも使用することができる。」(【0032】)の記載が、 周知文献4には「本発明では、光電変換素子に蓄積容量を超えて発生した電荷をオーバーフロードレインに掃き出すように構成された固体撮像素子において、」(【0018】)の記載に加えて、「実施例では、インターライン転送型およびフレーム転送型の固体撮像素子について説明したが、本発明は、リニア型やフレームインターライン転送型の固体撮像素子にも適用が可能なものである。」(【0024】)の記載が、 それぞれあって、「オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された複数のセンサ」を、引用発明が前提とする「フレームインターライン方式」の撮像装置に適用する阻害要因も認めることはできないから、引用発明において、「オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された複数のセンサ部」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点2]、[相違点4]について 引用発明の固体撮像素子において、出力部(9-1、9-2)から出力される「信号電荷量に関する信号」は、「光信号電荷」であるが、固体撮像素子で得られた「光信号電荷」は、画像として、信号処理されるために「信号電荷量に応じた信号」として出力することは、普通であり、固体撮像素子に、「光信号電荷」から「信号電荷量に応じた信号」に変換する変換部を設け、出力部から出力される信号を、「信号電荷量に応じた信号」とすることは、下記の周知文献2(【図2】の出力部1dから出力されるYa(t)、Yb(t)は【0018】で「出力部で情報電荷をその電荷量に応じた電圧値に変換し、1水平走査期間単位で1ライン毎に第1の画像信号Ya(t)を出力する。」とある。)、周知文献4(【0002】に「水平電荷転送レジスタ606の一端には、水平電荷転送レジスタを転送されてきた信号電荷を電圧信号に変換する電荷検出部607が設けられている。電荷検出部607からの信号出力は、出力部608を介して出力端子609より外部に出力される。」とある。)にあるとおり、当業者が普通に行うことである。 すなわち、引用発明において、出力部からの出力を、「光信号電荷」ではなく、「信号電荷量に応じた信号」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 光電変換素子から出力された信号を、加算する処理回路として、 I)「光信号電荷」のまま加算して、その後「信号電荷量に応じた信号」と変換する構成と、 II)「光信号電荷」を「信号電荷量に応じた信号」に変換した後、加算する処理回路を設ける構成、 という二つの構成のいずれを選択するかについて、下記の周知文献5、周知文献6には、いずれの構成を採用してもよい実施例が開示されており、上記二つの構成のいずれを採用するかは、当業者が適宜選択し得た事項であることが理解できるから、引用発明において、出力部からの出力を、「光信号電荷」ではなく、「信号電荷量に応じた信号」とし、「信号電荷量に応じた信号」を出力した後、「信号電荷量に応じた信号」を加算する加算回路を設ける構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点3]について 引用発明は、発明の詳細な説明の「従来の技術」を参酌すると、「固体撮像素子は現行のテレビジョン放送で使用されている撮像用電子管並みの解像力を備えることを必要」とあるから動画の撮像を行うものであって、「フレームインターライン方式」のCCDを前提としている。また、発明の詳細な説明の実施例には「1フィールド期間,或いは1フレーム期間の間に光ダイオードに貯えられた光信号電荷Qは転送ゲート4′を複数回(N回:Nは2以上の正の整数)に渡って開閉することにより,垂直CCDを介して蓄積領域を構成する蓄積用CCD11に送り込まれる。」の記載もあることから、いわゆる、「インターレース(一行おきに画素を読み出し、奇数のフィールドと偶数のフィールドで得られた画像を合わせて1フレームの画像とするもの)」方式の読み出しを行っているものと認めることができる。 これに対して、補正後発明は、「全画素読み出し方式によって順次供給し、前記複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる」のであるから、いわゆる、「ノンインターレース」方式であるといえるから、相違点3は、引用発明は「インターレース方式」であるのに対し、補正後発明は「ノンインターレース方式」である点で相違するということができる。 ところで、動画を撮像するカメラにおいて、高画質化のために、「インターレース方式」から、「ノンインターレース方式」へ撮像部を変更することは、普通に行われていることであり、引用発明においても、高画質化のため、「ノンインターレース方式」の撮像部としようとすることは、当業者が普通に想起し得たことである。 そして、「フレームインターライン方式」のCCDであっても「インターレース方式」、「ノンインターレース方式」のいずれも自由に採用することができたことは、下記の周知文献7ないし10にあるとおり、よく知られたことであるから、引用発明において、「ノンインターレース方式」を採用し、「全画素読み出し方式によって順次供給し、前記複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる」構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点5]について 補正後発明の「カメラシステム」が、「固体撮像素子(CCD)1」、「(固体撮像素子1の撮像部に入射光を導く)光学系(たとえば光学レンズ2)」、「露光時間を決める光シャッタ3」、「(固体撮像素子1および光シャッタ3を駆動する)駆動回路4」、「(固体撮像素子1の出力信号を処理する)信号処理回路5」などを有する「カメラシステム」であることは、上記「3.対比(g)」にて検討したとおりである。 ところで、引用発明の「撮像装置」である「撮像手段」は、発明の詳細な説明の「従来の技術」を参酌すると「固体撮像素子は現行のテレビジョン放送で使用されている撮像用電子管並みの解像力を備えることを必要とし」とあるから、テレビジョン放送で放送される映像(すなわち動画像)を撮像するためのものであることは理解できる。 以上のことからみて、引用発明は、動画像を撮影するための「フレームインターライン方式」のCCD(を採用した撮像手段)ということができるが、「フレームインターライン方式」のCCDが、動画像の撮影を行うためだけのものではなく静止画の撮影も可能であることは、下記の周知文献10および11にあるとおりであり、静止画を撮影するためのカメラシステムは、「フレームインターライン方式」のCCDの他に、「光学系」、「光シャッタ」、「駆動回路」、「信号処理回路」を有していることも、同周知文献11および12にあるとおりである。 したがって、引用発明の「撮像手段」を、「光学系」、「光シャッタ」、「駆動回路」、「信号処理回路」等の構成を有する静止画撮影装置(すなわち補正後発明のカメラシステム)に適用しカメラシステムとすることは、当業者が容易になし得たことである。 〈効果等について〉 以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 したがって、補正後発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 記(周知文献1?12) 周知文献1:特開2003-347537号公報 周知文献2:特開2003-158682号公報 周知文献3:特開2001-352052号公報 周知文献4:特開2001-177769号公報 周知文献5:特開2004-128558号公報 (「【0135】 <(2)変形例> 以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。 【0136】 ◎例えば、CCD2の構造を改良し、いわゆる”加算読み出し”ができるようにしても良い。 【0137】 ここで言う”加算読み出し”とは、一般的なデジタルカメラ用のCCD撮像素子の被写体モニターモードで採用されている読み出し方法であり、高感度化、偽色対策のために用いられる。具体例としては、垂直CCDから水平CCDに電荷が転送される際に、水平方向の1ラインごとに電荷を転送するのではなく、垂直CCDが水平方向の複数ラインの電荷を水平CCDに転送した後に、水平CCDによる電荷の転送動作を行い、水平方向の複数ライン分の電荷が重畳して画素値として出力される読み出し方法などがある。」とあるように、この記載の前後で、画素値の加算を、「信号電荷量に応じた信号」で加算する構成と、「光信号電荷」を加算する構成とが記載されている。) 周知文献6:特開2004-140872号公報 (「【0048】次に加算制御では、図17に示される信号線156-1,153-1,152-1、および、169の制御で、PD150-1,PD150-2の電荷が、各々、容量162-1,164-1へ蓄積される。続いて、信号線156-2,153-2,152-2、および170の制御で、PD150-3,PD150-4の電荷が、各々、容量162-2,164-2へ蓄積される。この後、信号線167と信号線168を同時にオンすれば、PD150-1,PD150-2,PD150-3、およびPD150-4の電荷を加算した撮像信号が増幅器169を通して読み出される。またPD150-1,PD150-4の信号の電荷を容量162-1,容量164-1へ蓄積し、この後、信号線167と信号線168を同時にオンすれば、PD150-1,PD150-4の電荷を加算した撮像信号が増幅器169を通して読み出される。」の記載では、「光信号電荷」による加算が、 「【0058】 この場合の、色分離、画像処理は上記したものと同一である。 〔第2の実施の形態〕 複数の撮像モードを有する撮像装置では、例えば、図14に示される様に、加算モード用メモリ28と非加算モード用メモリ27を2系統用いる方法が考えられる。ここに蓄積された撮像データは、各々、図15で示される加算処理部21、または、非加算処理部22で個別の処理が行われる。この様な処理方式を行った場合、メモリの容量は、加算モード用+非加算モード用となり大きな容量が必要とされることになる。また、処理部も同様に2系統が用いられ、大規模で高速な処理部が必要とされることになる。 【0059】 これに対し、本実施形態では、加算モード時に画素間信号の加算を撮像素子4内で行い、非加算モード時はXアドレス選択部6とYアドレス選択部5で読み出し位置を指定し加算モード時と同じ画素数でズーム撮影を行えば図9の様に加算モードと非加算モード用メモリは共用メモリとすることができる。また、カメラDSP12の処理も図10に示す色分離31、ホワイトバランス(以下WBと略す)処理41、ガンマ(以下、γと略す)補正34,42、黒白クリップ処理35,43、ローパス・フィルター処理37,44,45、等の一連の処理部を共有し1系統とすることができる。 【0060】 なお、加算モード時の加算処理はA/D11とDRAM13の間に図示しないライン・メモリと加算器によって行っても素子内の画素加算と同様のメモリ、および、処理構成を採ることが可能である。」の記載では、「信号電荷量に応じた信号」 による加算が行われている。 周知文献7:特開平9-181292号公報 「本発明は電荷転送素子(CCD)を用いた固体撮像素子とその駆動方法に関し、特に撮像部と蓄積部とを有する、いわゆるフレームインターライン転送型(FIT型)の固体撮像素子とその駆動方法に関する。」(【0001】)とあり、「撮像部の垂直CCDレジスタ3-1の不要電荷の掃き出し時と、フォトダイオードから読み出した奇数行(又は偶数行)の信号電荷を蓄積部への転送時とには、従来例と同様に垂直CCDレジスタのみを使用している。」(【0016】)の記載は、「インターレース方式」であり、「図4を参照して説明した第1の実施の形態と異なる点は、垂直CCDレジスタが2相駆動される点と、期間T2で全画素のフォトダイオードの電荷を読み出すノンインターレース駆動となっている点である。」の記載は、「ノンインターレース方式」である。 周知文献8:特開2000-150855号公報 「図2はインターライン型CCD固体撮像素子の従来例を示す平面図である。図面において、1は各画素の受光素子を成すフォトダイオード、2は各フォトダイオード1の一方の側(例えば左側)に設けられた読み出しゲート、3は垂直レジスタで、各画素のフォトダイオード1からの信号電荷を読み出しゲート2を介して読み出し、その読み出した信号電荷を垂直方向に転送する。4、5はポリシリコンからなる垂直転送電極で、4と5は層が異なる。該垂直転送電極4、5に読み出し電圧を印加することにより各読み出しゲート2を開いて各フォトダイオード1から信号電荷を一斉に(全部一斉に読み出す場合もあれば、1水平ライン置きにに一斉に読み出す場合もある。)垂直レジスタ3に読み出すことができ、例えば4層の転送パルスを印加することにより垂直転送をすることができるようになっている。」(【0002】)とあり、インターライン型CCDにおいて、「電荷を一斉に(全部一斉に読み出す場合もあれば、1水平ライン置きにに一斉に読み出す場合もある。)垂直レジスタ3に読み出す」(全部の場合が、「ノンインターレース方式」、「1水平ライン置き」が「インターレース方式」であることは明らかである。)とある。そして、【0010】には「本発明は、通常のインターライン型CCD固体撮像素子の他、フレームインターライン型CCD固体撮像素子にも適用することができる。」とあるから、「フレームインターライン型CCD」において、「インターレース方式」と「ノンインターレース方式」のいずれも採用可能であることが理解できる。 周知文献9:特開2002- 77931号公報 「【0025】このカラーCCD固体撮像装置1は、インターライントランスファ型のCCD固体撮像装置であり、全てのフォトダイオード2の電荷を同時に垂直CCDレジスタ4に転送し、かつ各電荷を垂直CCDレジスタ4で混合させずに各々独立した垂直CCDレジスタ4のパケットで垂直転送することが可能である、いわゆる全画素読み出しCCD撮像装置である。 【0026】なお、垂直CCDレジスタ4の延長領域を拡大して、フレームインターライントランスファ型のCCD固体撮像装置とすることもできる。」とあり、「全画素読み出しCCD」として、「フレームインターライントランスファ型のCCD固体撮像装置」が採用可能であることが記載されている。 周知文献10:特開2003-243641号公報 「【0017】本発明では、蓄積部を備えた全画素読み出し型のフレームインターライン転送型CCD(FIT-CCD)を容易に構成可能であり、この固体撮像装置における転送電極の電気抵抗を容易かつ確実に低減可能となる。」とあり、「フレームインターライン転送型CCD(FIT-CCD)」でも「全画素読みだし」が選択可能であることが理解できる。 周知文献11:特開平9- 65212号公報 【0020】にフレームインターライントランスファー型のCCDを用いてもよいとの記載がある、撮像素子が動画モードと静止画モードを有するカメラ。 周知文献12:特開2003-101890号公報 【0030】に撮像素子としてフレームインターライン方式CCDを採用してもよいとの記載を有する、動画および静止画を撮像することができる撮像装置。 6.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成22年9月29日付けの手続補正は上記のとおり却下する。 本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、本願明細書及び図面(平成22年3月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載した事項により特定されるとおりのもであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。 記(本願発明) オーバーフローバリアにより飽和信号電荷量が規定された複数のセンサ部と、 前記センサ部に蓄積された信号電荷を読み出す読み出しゲート部と、 前記読み出しゲート部により読み出された信号電荷を転送する転送部と、 前記転送部により転送された信号電荷量に応じて信号を出力する出力部と、 を有する固体撮像素子と、 前記読出しゲート部が前記センサ部で蓄積された信号電荷の全てを複数回に分割して読み出すように振幅が制御された複数の読出しパルスを、全画素読出し方式によって前記読出しゲート部に供給する駆動回路と、 前記複数のセンサ部のそれぞれにおいて信号電荷が複数回に分割されて前記出力部から出力された前記複数の信号を前記複数のセンサ部ごとに加算する信号処理回路と を有するカメラシステム。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平1-147972号公報(上記刊行物1に同じ)には、前記「第2[2][2-3]2.(1)」に摘記したとおりの事項が記載されており、刊行物1に記載された発明として、前記「第2[2][2-3]2.(2)」の引用発明を認定することができる。 3.対比・判断 本願発明は、その「駆動回路」に関し、補正後発明では「前記読み出しゲート部に全画素読み出し方式によって順次供給し、前記複数のセンサ部の全てから信号電荷を前記転送部へ順次読み出させる駆動回路」とあるのを、本願発明では「全画素読出し方式によって前記読出しゲート部に供給する駆動回路」としたものであって、「駆動回路」の駆動制御について、(下線で示した)限定事項の一部を省いたものということができる。 そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、前記「第2[2][2-3]」に記載したとおり、刊行物1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記刊行物1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2ないし8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-21 |
結審通知日 | 2012-05-22 |
審決日 | 2012-06-04 |
出願番号 | 特願2004-269908(P2004-269908) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 肇 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
奥村 元宏 千葉 輝久 |
発明の名称 | カメラシステム、および、カメラシステムの駆動方法 |
代理人 | 佐藤 隆久 |