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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1260351 |
審判番号 | 不服2011-1817 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-26 |
確定日 | 2012-07-19 |
事件の表示 | 特願2006-296601「通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日出願公開、特開2008-113381〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願(以下、「本願」という。)は、平成18年10月31日の出願であって、原審において、平成22年3月16日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年5月24日付けで手続補正がなされたが、平成22年10月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年1月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正の却下の決定 [結論] 平成23年1月26日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「IP(Internet Protocol)網に接続され端末IDが割り当てられる複数の通信端末間の通信接続をサーバ装置にて実行する通信システムにおいて、 前記複数の通信端末は、 相手側の通信端末との間で通信が行なわれている状態で保留操作がなされた場合に、前記サーバ装置に対しConsultation Hold(協議保留)を起動するための情報を送信する送信手段を備え、 前記サーバ装置は、 保留操作元となる通信端末から送信される情報を受信する受信手段と、 前記受信手段で受信した情報を解析し、この解析した情報が前記Consultation Holdを起動するための情報である場合に、通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Holdを起動するConsultation Hold実行手段と、 前記Consultation Holdが実行されている状態で、前記保留操作元の通信端末から前記Consultation Holdとは異なる付加サービスを起動するための情報を受信した時、当該付加サービスを起動する付加サービス実行制御手段とを具備したことを特徴とする通信システム。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「IP(Internet Protocol)網に接続され端末IDが割り当てられる複数の通信端末間の通信接続をサーバ装置にて実行する通信システムにおいて、 前記複数の通信端末は、 相手側の通信端末との間で通信が行なわれている状態で保留操作がなされた場合に、前記サーバ装置に対し保留を要求するための情報を送信する送信手段を備え、 前記サーバ装置は、 保留操作元となる通信端末から送信される情報を受信する受信手段と、 前記受信手段で受信した情報を解析し、この解析した情報が前記保留を要求するための情報である場合に、前記サーバ装置が有し、通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Holdを起動するConsultation Hold実行手段と、 前記Consultation Holdが実行されている状態で、前記保留操作元の通信端末から前記Consultation Holdとは異なり前記サーバ装置が有する付加サービスを要求するための情報を受信した時、当該サーバ装置が有する付加サービスを起動する付加サービス実行制御手段とを具備したことを特徴とする通信システム。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「送信手段」が「送信」する「情報」について、「Consultation Hold(協議保留)を起動するための情報」を「保留を要求するための情報」と補正するとともに(以下、「補正事項1」という。)、 「Consultation Hold実行手段」及び「付加サービス」について、「サーバ装置が有し」ないし「サーバ装置が有する」という特定事項を付加すること(以下、「補正事項2」という。)を含む。 上記補正事項1及び2は、新規事項を追加するものではない。 しかし、上記補正事項1は、「Consultation Hold(協議保留)」という特定事項を、Consultation Hold(協議保留)以外の保留を含み得る「保留」と変更するとともに、「起動する」という特定事項を、「起動する」の下位概念とはいえない「要求する」と変更するものであるから、特許請求の範囲を減縮するためのものであるであるとはいえない。 また、補正前の請求項1の記載において、「前記サーバ装置は、・・・(中略)・・・を具備した」という記載中に示される「Consultation Hold実行手段」及び「付加サービス」は、その記載から、サーバ装置が有することは自明であって、上記補正事項2も、当該自明な事項を確認的に示す「サーバ装置が有し」ないし「サーバ装置が有する」という記載を付加したにすぎないから、特許請求の範囲を減縮するためのものであるであるとはいえない。 そして、上記補正事項1及び2は、請求項の削除、誤記の訂正、又は、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものであるともいえない。 してみると、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれも目的としていない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 (2)独立特許要件 本件補正は上記(1)で示したように特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないが、仮に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)について以下検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。 [引用発明] 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2004-320289号公報(以下、「引用例1」という。)には、「VoIP電話システムおよびVoIP電話システムにおける通信制御方法」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、VoIP(Voice over Internet Protocol)電話システムおよびVoIP電話システムにおける通信制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 インターネットやイントラネットのようなIP(Internet Protocol)ネットワークを利用して音声信号を送る技術であるVoIPを用いて中継交換を行ない、電話通信サービスを行なうようにするIP電話が提供されている。 【0003】 このIP電話においては、発信側と受信側とはそれぞれに割り当てられたIPアドレスを用いて、電話音声をIPパケットにより伝送することにより、通話が可能となるものであり、安価な通話料で通話が可能となるため、普及が拡大している。」(4頁) (イ)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、上述のIP電話サービスを用いた電話通信においても、例えば企業向けのボタン電話システムと同様のサービスを提供できるVoIP電話システムが考えられている。図24は、このVoIP電話システムを用いた通信網の概要を説明するための図である。 ・・・(中略)・・・ 【0010】 この例の場合、例えば、それぞれのVoIP電話システム1A,1Bに対しては、IPネットワーク2内におけるシステム番号が付与されると共に、それぞれのVoIP電話システム1A,1B内の電話端末13A1?13nおよび13B1?13Bmに対しては、予め端末番号(例えば内線番号)が付与されており、主装置12A,12Bは、他のVoIP電話システムについての呼制御用のアドレスを前記システム番号に対応して記憶していると共に、それぞれのVoIP電話システム1A,1B内における電話端末の呼制御用のアドレスを、前記端末番号(内線番号)に対応して記憶している。 【0011】 後述するように、呼制御のためのメッセージ、この例では、SIP(Session Initiation Protocol)標準のメッセージが、主装置を介して、各VoIP電話システム1A,1B内の電話端末間において、やり取りされることにより、各VoIP電話システム内の電話端末間において、音声通話路を形成することが可能となる。」(5頁) (ウ)「【0023】 ところで、この種のVoIP電話システムでは、話中の呼を一旦保留し、その後、当該呼を他の電話端末に転送するようにできる機能や、ビジネスボタン電話機能として良く用いられる一斉音声呼び出しを実現する機能などの付加機能を備えることが、使い勝手の点で重要である。 ・・・(中略)・・・ 【0026】 しかしながら、すべてのVoIP用電話端末に保留、転送の機能を設けるのでは、VoIP用電話端末が高価格となり、好ましくない。また、通話の相手方の電話端末が、保留、転送の機能を持たない場合には、保留、転送が全くできなくなってしまうことになり、使い勝手が非常に悪くなるという問題がある。 ・・・(中略)・・・ 【0028】 この発明は、以上の点にかんがみ、VoIP電話端末に保留、転送の機能や一斉音声呼び出しの機能を設けなくとも、上述のような問題点を回避できるVoIPシステムを提供することを目的とする。」(7頁) (エ)「【0039】 [VoIP用電話端末のハードウエア構成例] この実施の形態のVoIP電話システムにおけるVoIP用電話端末13A1?13Anおよび13B1?13Bmは、全く同一のハードウエア構成を備える。図2に、VoIP用電話端末13A1のハードウエア構成例を、その代表として示す。この実施の形態のVoIP用電話端末は、図2に示すように、端末本体100と、ハンドセットHSとからなる。ハンドセットHSは、図示を省略したが、送話器を構成するマイクロホンと、送話アンプと、受話器を構成するスピーカと、受話アンプとを備えている。 【0040】 端末本体100は、コンピュータにより構成されており、CPU(Central Processing Unit)110に対して、システムバス111を介して、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、ディスプレイコントローラ114と、操作入力インターフェイス(図ではインターフェイスはI/Fと記載する。以下同じ)116と、LANインターフェイス118と、パケット分解/生成部119と、音声データ入出力インターフェイス120とが接続されている。 【0041】 ディスプレイコントローラ114には、ディスプレイ115が接続されており、このディスプレイ115の表示画面には、CPU110の制御にしたがった表示が行われる。 【0042】 また、操作入力インターフェイス116には、テンキー、カーソルキーやその他の操作キーを含む操作入力部117が接続されている。CPU110は、操作入力インターフェイス116を介して操作入力部117を通じて使用者がいずれの入力キーを操作したかを認識し、その認識結果に基づいて、キー入力操作に応じた処理をROM112のプログラムに従って実行する。 【0043】 ROM112には、VoIP用電話端末としての発信時や着信時の処理シーケンスを実行するプログラム、保留、転送の要求入力を受け付け、保留、転送時の処理を実行するためのプログラムなどが記憶されている。 【0044】 RAM113は、主としてROM112のプログラムがCPU110によって実行される際にワークエリアとして使用される。 【0045】 LANインターフェイス118は、IPネットワークを構成するLAN11Aを通じて送られてくるパケット化データを取り込み、また、LAN11Aにパケット化データを送出するための機能を備える。 【0046】 パケット分解/生成部119は、LANインターフェイス118により取り込んだパケット化データを分解して、制御データや音声データを得る機能と、送信する制御データや音声データをパケット化して送出するパケット化データを生成する機能を有する。このパケット分解/生成部119は、パケット化データを分解したり、生成したりするためのバッファメモリを備える。 【0047】 なお、このパケット分解/生成部119のパケット分解処理機能や生成処理機能は、CPU110と、ROM112とにより、ソフトウエアとして実現することもできる。 【0048】 音声データ入出力インターフェイス120は、パケット分解されて得られた音声データをアナログ音声信号に変換してハンドセットHSに供給し、また、ハンドセットHSから入力されるアナログ音声信号をデジタル信号に変換して取り込む機能を備える。」(9?10頁) (オ)「【0049】 [主装置のハードウエア構成例] 次に、この実施形態のシステムにおける主装置12A,12Bのハードウエア構成例を説明する。主装置12Aと12Bとは全く同一の構成であるので、図3に、主装置12Aの構成を代表として示す。 【0050】 この実施形態の主装置は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されるもので、図3に示すように、CPU210に対して、システムバス211を介してROM212と、RAM213と、LANインターフェイス214と、パケット処理部215と、プロトコル処理部216と、サービス処理部217と、メディア制御部218と、管理メモリ部219とが接続されている。 【0051】 ROM212には、呼に関連する制御のための処理シーケンスを実行するためのプログラムなどの主装置が実行する処理プログラムが記憶されている。RAM213は、主としてROM212のプログラムがCPU210によって実行される際にワークエリアとして使用される。 【0052】 また、LANインターフェイス214は、LAN11Aを通じて送られてくるパケット化データを取り込み、また、LAN11Aにパケット化データを送出するための機能を備える。 【0053】 パケット処理部215は、LANインターフェイス214により取り込んだパケット中の制御のためのメッセージデータを解読するために、受信したパケットを分解し、また、送信する制御のためのデータをパケット化する機能を有する。パケット処理部215は、パケット化データを分解/生成したり、パケットの送受信処理したりするために一時保存するためのバッファメモリを備える。 【0054】 プロトコル処理部216は、授受するパケットのプロトコルを管理する。サービス処理部217は、保留、転送、一斉音声呼び出しなどのサービス処理をするために用いられる。メディア制御部218は、音声通話路の制御のための処理を行なう。プロトコル処理部216、サービス処理部217およびメディア処理部218は、ROM212に記憶されるプログラムとしてソフトウエア的に構成される場合もある。 【0055】 管理メモリ部219には、自システムに割り当てられたシステム番号や、他のVoIP電話システムに割り当てられたシステム番号とIPアドレスとの対応関係、それぞれのVoIP電話システム1A,1B内におけるVoIP用電話端末の呼制御用のアドレスを、前記端末番号(内線番号)に対応して記憶している。 【0056】 [メディアスイッチのハードウエア構成例] 次に、この実施形態のシステムにおけるメディアスイッチ15A,15Bのハードウエア構成例を説明する。メディアスイッチ15Aと15Bとは全く同一の構成であるので、図4に、メディアスイッチ15Aの構成を代表として示す。 【0057】 この実施形態のメディアスイッチは、例えばパーソナルコンピュータにより構成されるもので、図4に示すように、CPU310に対して、システムバス311を介してROM312と、RAM313と、LANインターフェイス314と、パケット処理部315と、音声データパケットアドレス変換部316と、保留音発生部317とが接続されている。 【0058】 ROM312には、音声通話路生成、保留、転送の制御のための処理シーケンスを実行するためのプログラムなどのメディアスイッチ15Aが実行する処理プログラムが記憶されている。RAM313は、主としてROM312のプログラムがCPU310によって実行される際にワークエリアとして使用される。 【0059】 また、LANインターフェイス314は、LAN11Aを通じて送られてくるパケット化データを取り込み、また、LAN11Aにパケット化データを送出するための機能を備える。 【0060】 パケット処理部315は、LANインターフェイス314により取り込んだパケット中の制御のためのメッセージデータを解読するために、受信したパケットを分解し、また、送信する制御のためのデータをパケット化する機能を有する。パケット処理部315は、パケット化データを分解/生成したり、パケットの送受信処理したりするために一時保存するためのバッファメモリを備える。 【0061】 音声データパケットアドレス変換部316は、発信端末や着信端末のメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号や、その際に用いる自身のメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号を記憶保持して、それらのアドレス情報を用いて、パケットの相手先アドレスを変換する処理を行なう。すなわち、音声データパケットは、メディアスイッチ宛てに送られてくるので、メディアスイッチは、その受信したパケットの宛先アドレスを、最終的に到達すべき電話端末のメディア待ち受け用アドレスおよびポート番号に変換して、LAN11Aに送り出すようにする。 【0062】 保留音発生部317は、通話中の呼を保留したときに、保留中であることを示す保留音をメディアスイッチから供給するようにするために設けられている。」(10?11頁) (カ)「【0090】 [呼の保留および転送処理] 図6は、呼の保留処理の説明のためのシーケンス図、図7および図8は、保留に続く呼の転送処理の説明のためのシーケンス図である。また、図10?図12は、主装置12Aあるいは12Bにおける呼の保留、転送の処理動作を示すフローチャートである。さらに、図13の一部および図14?図15は、メディアスイッチ15Aあるいは15Bにおける呼の保留、転送の処理動作を示すフローチャートである。 【0091】 なお、図6?図8のシーケンス図では、発信端末Xが保留要求を出し、その後、発信端末Xが、転送先として、VoIP電話システム1A内の他の電話端末Wを呼び出し、さらに、着信端末Yと転送先端末Wとの間で通話を行なわせるように転送要求した場合である。そこで、以下の説明においては、主装置の処理は、主装置12Aが行ない、また、メディアスイッチの処理は、メディアスイッチ15Aが行なうものである。 【0092】 主装置12Aは、上述したような通話状態において、発信端末Xあるいは着信端末Yのいずれかから終話要求があったかどうか判別し(図10のステップS121)、終話要求があったときには、終話処理を行ない(ステップS122)、この処理ルーチンを終了する。 【0093】 前記終話処理には、主装置12Aからメディアスイッチ15Aに対して終話による接続解除要求を送る処理が含まれる。メディアスイッチ15Aは、この接続解除要求を受信したと判別したときには(図13のステップS209)、メディアスイッチ15A内に記憶した音声データパケットアドレス変換のためのデータをリセットして(ステップS210)、処理ルーチンを終了する。 【0094】 一方、図6に示すように、発信端末Xが保留要求を主装置12Aに対して送出すると、主装置12Aは、その保留要求の受信を検知し(図10のステップS123)、着信端末Yに対して、当該保留要求を転送する(ステップS124)。ただし、図6に示すように、発信端末Xからの保留要求には、発信端末Xが音声データ送信のみをサポートすることを意味する情報が含まれるが、主装置12Aから着信端末Yに送られる保留要求には、メディアスイッチ15Aが音声データ送信のみをサポートすることを意味する情報が含まれる。 【0095】 着信端末Yは、自端末に保留機能がある場合には、その旨を主装置12Aに返し、自端末に保留機能がない場合には、保留エラーを返す。 【0096】 主装置12Aは、着信端末Yから保留機能がある旨のメッセージが返ってきたときには、当該着信端末Yの保留機能を用いて保留動作を行なうようにさせる(図10のステップS126)。また、主装置12Aは、着信端末Yから保留機能がないため、保留エラーのメッセージが返ってきたときには、メディアスイッチ15Aを用いた保留機能を起動させるようにし、メディアスイッチ15Aに、保留のメディア接続変更要求を送る(図10のステップS127)。 【0097】 メディアスイッチ15Aは、この保留のメディア接続変更要求を受け取ると(図14のステップS211)、保留要求してきた端末の相手方端末、すなわち、被保留端末と、メディアスイッチ15Aとの音声データの経路を保持するようにする。この例の場合には、発信端末Xが保留要求したので、被保留端末は、着信端末Yであり、メディアスイッチ15Aは、着信端末Yに対する音声データ送信の経路を保持するようにする(ステップS212)。 【0098】 そして、メディアスイッチ15Aは、接続変更ができたか否か判別し(ステップS213)、接続変更できなかったときには、主装置12Aに接続変更結果NGを通知し(ステップS214)、ステップS209に戻る。ステップS213で接続変更できたと判別したときには、メディアスイッチ15Aは、接続変更結果OKを主装置12Aに送出し(ステップS215)、保留音発生部317から保留音を送出させ、着信端末Yに送る(ステップS216)。この保留音は、音声通話路を通じて送られる。 【0099】 一方、メディアスイッチ15Aからメディア接続変更結果を受け取った主装置12Aは、接続変更結果がOKであるかNGであるかを判別する(図10のステップS128)。接続変更結果がNGであったときには、主装置12Aは、保留要求をしてきた電話端末に保留できなかったことを通知し(ステップS129)、ステップS121に戻る。 【0100】 また、ステップS128で、接続変更結果がOKであったと判別したときには、主装置12Aは、保留要求をしてきた電話端末に保留OKを通知し(ステップS130)、保留状態になる(ステップS131)。 【0101】 この保留状態における主装置12A、メディアスイッチ15A、端末Xおよび端末Yの通信路を説明するための図を図17に示す。 【0102】 次に、主装置12Aは、保留を要求してきた端末が保留解除要求をしてきたか否かを判別し(図11のステップS141)、保留解除要求をしてきたと判別したときには、接続変更要求として保留解除要求をメディアスイッチ15Aに送出する(ステップS142)。そして、図10のステップS121に戻る。 【0103】 メディアスイッチ15Aでは、主装置12Aからの保留解除要求を受信したか否か判別し(図14のステップS217)、保留解除要求してきたと判別したときには、メディアスイッチ15Aは、被保留端末(この例では着信端末Y)の経路と、保留要求した端末(この例では発信端末X)との音声データ経路を再度生成する(ステップS218)。そして、ステップS209に戻る。」(14?16頁) (キ)「【0104】 次に、図7のシーケンス図に示すように、保留中に、例えば、発信端末Xが電話端末Wを転送先端末(以下、転送先端末Wという)として発信要求をしたときには、以下のようになる。すなわち、この発信要求メッセージは、発信端末Xから主装置12A宛てに送出される。そして、この発信要求メッセージには、発信端末Xのメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別が含まれる。 【0105】 主装置12Aは、この発信要求メッセージを受信したことを判別すると(図11のステップS143)、発信要求してきた端末に発信要求受付を返す(ステップS144)。そして、主装置12Aは、前述と同様にして、メディア情報設定取得要求をメディアスイッチ15Aに送る(ステップS145)。このメディア情報設定取得要求には、発信端末Xのメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別の情報が含まれる。 【0106】 メディアスイッチ15Aは、このメディア情報設定取得要求を受信したことを判別したときには(図14のステップS219)、前記発信端末Xのメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別の情報を取得し、記憶する(ステップS220)。 【0107】 次に、メディアスイッチ15Aは、メディア取得情報を主装置12Aに返す(ステップS221)。このメディア取得情報には、発信端末X用の当該メディアスイッチ15Aにおけるメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号と、相手端末(図7の例では転送先端末W)用の当該メディアスイッチ15Aにおけるメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号とを含む。 【0108】 主装置12Aは、このメディアスイッチ15Aからのメディア取得情報を受信する(ステップS146)。次に、主装置12Aは、相手端末としての転送先端末Wへ発信メッセージを送る(ステップS147)。このときの相手端末としての転送先端末W)への発信メッセージには、メディアスイッチ15Aから受信した転送先端末W用の当該メディアスイッチ15Aにおけるメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別の情報が含まれる。 【0109】 したがって、転送先端末Wは、この発信メッセージから、発信端末Xに対する音声データの宛先アドレスとして、当該メディアスイッチ15Aにおけるメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号を認識することができる。そして、転送先端末Wは、発信要求を受け付けることができる状態であれば、発信要求受付メッセージを主装置12Aに返す。 【0110】 主装置12Aは、転送先端末Wからの発信要求受付を受信したかどうか判別し(ステップS148)、発信要求受付を受信しなかった場合には、発信要求受付失敗のシーケンスに移行する。ここでは、発信要求受付失敗のシーケンスについては記述を省略する。 【0111】 ステップS148で、転送先端末Wからの発信要求受付を受信したと判別したときには、転送先端末Wからは、当該相手端末(図7の例では転送先端末W)のメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別の情報を含む応答メッセージが送られてくるので、主装置12Aは、それを受信する(ステップS149)。 【0112】 そして、主装置12Aは、受信した転送先端末Wのメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別を含むメディア情報設定を、メディアスイッチ15Aに送る(図12のステップS151)。 【0113】 メディアスイッチ15Aでは、主装置12Aからのメディア情報設定を受信したかどうかを監視し(図15のステップS231)、メディア情報設定を予め定めた所定時間受信しないと判別したときには(ステップS232)、発信要求が失敗に終わったと認識して、それまでの呼設定に関する情報をリセットし(ステップS233)、ステップS217に戻る。 【0114】 また、メディアスイッチ15Aは、ステップS231で、メディア情報設定を受信したと判別したときには、転送先端末Wのメディア待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別の情報を取得し、記憶する(ステップS234)。 【0115】 メディア種別の情報は、この例では、音声データであることを示す情報であるので、メディアスイッチ15Aは、このメディア情報設定を受信することにより、転送先端末Wの音声データの待ち受け用IPアドレスとポート番号を知る。 【0116】 前記メディア情報設定をメディアスイッチ15Aに送信した主装置12Aは、また、発信端末X用のメディアスイッチ15Aの待ち受け用IPアドレスとポート番号およびメディア種別を含む応答メッセージを、この例の場合の保留要求端末である発信端末Xに転送する(ステップS152)。 【0117】 以上のようにして、主装置12Aからは、メディアスイッチ15Aには、発信端末Xおよび転送先端末Wのメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号が通知されると共に、発信端末Xおよび転送先端末Wには、それぞれの端末用のメディアスイッチにおけるメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号が通知される。 【0118】 そして、発信端末Xおよび転送先端末Wは、通話用の音声データパケットは、それぞれの端末用のメディアスイッチ15Aにおけるメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号を宛先として送信することで両端末間で音声通話がなされる(ステップS153)。 【0119】 このとき、メディアスイッチ15Aは、発信端末Xから受け取った音声データパケットの送信先アドレスは、音声データパケットアドレス変換部316において、転送先端末Wのメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号に変換して、LAN11Aに送出し、転送先端末Wに向けて送信する(ステップS235)。 【0120】 メディアスイッチ15Aは、また、転送先端末Wから受け取った音声データパケットの送信先アドレスは、音声データパケットアドレス変換部316において、発信端末Xのメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号に変換してLAN11Aに送出し、発信端末Xに向けて送信する(ステップS235)。 【0121】 なお、図7および図8に示すように、発信端末Xが転送先端末Wに対して発信を行なって両端末間の通話路が形成されて通話がなされる間も、メディアスイッチ15Aから被保留端末Yへは、保留音が供給されている。このときの、通話路および呼制御メッセージの経路の状態を、図18に示す。この図18においても、二重線の矢印は、音声通路を示し、実線矢印は、制御系メッセージの伝送路を示している。 【0122】 この状態において、図8に示すように、発信端末Xから転送要求が主装置12Aに対して送られ、主装置12Aが、この転送要求を受信したことを判別すると(図12のステップS154)、主装置12Aは、メディアスイッチ15Aに対して、転送のメディア接続変更要求を送る(ステップS155)。 【0123】 メディアスイッチ15Aは、この転送のメディア接続変更要求を受け取ると(図15のステップS236)、転送先端末Wと、被保留端末Yとの間の音声データの経路を生成するようにする(ステップS237)。この例の場合には、発信端末Xの転送要求に基づいて、メディアスイッチ15Aは、被保留端末であった着信端末Yと転送先端末Wとの間に音声データ送信の経路を形成するようにする。 【0124】 そして、メディアスイッチ15Aは、接続変更ができたか否か判別し(ステップS238)、接続変更できなかったときには、主装置12Aに接続変更結果NGを通知し(ステップS239)、ステップS217に戻る。ステップS238で接続変更できたと判別したときには、メディアスイッチ15Aは、接続変更結果OKを主装置12Aに送出し(ステップS240)、保留音発生部317からの保留音の送出を停止させる(ステップS241)。 【0125】 主装置12Aは、メディアスイッチ15Aからの接続変更結果を監視し(図12のステップS156)、接続変更結果がNGであると判別したときには、転送要求端末、この例では、発信端末Xに対して転送NGを通知し(ステップS157)、ステップS154に戻る。 【0126】 また、接続変更結果がOKであると判別したときには、メディアスイッチ15Aを介して、被保留端末Yと転送先端末Wとの間で通話が行なわれる状態となる(ステップS158)。 【0127】 すなわち、前述したように、被保留端末Yへの保留音が停止することで、被保留端末Yの使用者は、呼の転送が完了したことを知り、転送先端末Wとの通話を開始する。このときの通話用の音声データパケットは、それぞれの端末Y,W用のメディアスイッチ15Aにおけるメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号を宛先アドレスとして送信されることで両端末間で音声通話がなされることになる。 【0128】 すなわち、メディアスイッチ15Aは、端末Wから受け取った音声データパケットの送信先アドレスは、音声データパケットアドレス変換部316において、端末Yのメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号に変換して、LAN11Aに送出し、端末Yに向けて送信する。また、メディアスイッチ15Aは、端末Yから受け取った音声データパケットの送信先アドレスは、音声データパケットアドレス変換部316において、端末Wのメディア待ち受け用IPアドレスおよびポート番号に変換して、LAN11Aに送出し、端末Wに向けて送信する(ステップS242)。 【0129】 そして、メディア接続変更結果OKを受信した主装置12Aは、発信端末Xに対して転送受付のメッセージを送り(図12のステップS159)、発信端末Xからの切断メッセージを受信したことを判別すると(ステップS160)、発信端末Xに対して応答OKを送り、発信端末Xについて切断処理を行なう(ステップS161)。そして、図10のステップS121に戻る。 【0130】 以上により、保留中であった着信端末Yと転送先端末Wとの通話が可能となる。つまり、呼が転送されるものである。このときの通話路および呼制御メッセージの経路の状態を、図19に示す。この図19においても、二重線の矢印は、音声通路を示し、実線矢印は、制御系メッセージの伝送路を示している。」(16?19頁) (ク)「【0179】 [他の実施形態] 上述の実施形態においては、主装置とメディアスイッチとは、別個に設けるようにしたが、主装置内にメディアスイッチの機能部を設けるようにしても良い。その場合には、保留音は、主装置から送出されることになる。 【0180】 なお、上述の実施形態の説明においては、相手端末が保留機能を有するか否かを問い合わせ、保留機能がないという応答が戻ってきたときにのみ、メディアスイッチを用いた保留、転送の機能を起動するようにしたが、相手端末が保留機能を有するか否かを問い合わせることなく、メディアスイッチを用いた保留、転送機能を起動するようにしても、勿論よい。」(23?24頁) まず、上記引用例1記載の「VoIP電話システム」は、上記(ア)及び(イ)の記載から、「IP(Internet Protocol)ネットワーク」に接続され、予め端末番号(例えば内線番号)が付与されている複数の電話端末間の通話路を、主装置を介して呼制御のためのメッセージが上記電話端末間においてやり取りされることにより形成するシステムであるといえる。 また、上記(ウ)段落【0014】の記載から、上記引用例1記載の「VoIP電話システム」は、話中の呼を一旦保留し、その後、当該呼を他の電話端末に転送するようにできる機能や、一斉音声呼び出しを実現する機能などの付加機能を、VoIP電話端末に保留、転送の機能や一斉音声呼び出しの機能を設けなくとも備えるようにするためのシステムであるといえる。 また、上記(エ)の記載から、上記引用例1記載の「VoIP電話端末」は、 テンキー、カーソルキーやその他の操作キーを含む操作入力部117が接続されている操作入力インターフェイス116と、 発信時や着信時の処理シーケンスを実行するプログラム、保留、転送の要求入力を受け付け、保留、転送時の処理を実行するためのプログラムなどが記憶されているROM112と、 操作入力インターフェイス116を介して操作入力部117を通じて使用者がいずれの入力キーを操作したかを認識し、その認識結果に基づいて、キー入力操作に応じた処理をROM112のプログラムに従って実行するCPU110と、 IPネットワークを構成するLAN11Aにパケット化データを送出するための機能を備えるLANインターフェイス118と を備えるとともに、上記(カ)及び図6の記載から、引用例1記載の「VoIP電話端末」は、通話状態において、保留要求を主装置12Aに対して送出するものであるから、 上記(ウ)、(エ)、(カ)の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例1記載の「電話端末」は、 相手側の電話端末との間で通話状態で保留操作がなされた場合に、主装置に対し保留要求を送出するLANインターフェイスを備えているといえる。 また、上記(オ)の記載から、上記引用例1記載の「主装置」は、 LAN11Aを通じて送られてくるパケット化データを取り込むための機能を備えるLANインターフェイス214と、 LANインターフェイス214により取り込んだパケット中の制御のためのメッセージデータを解読するために、受信したパケットを分解する機能を有するパケット処理部215と を備えるとともに、上記(カ)、(キ)及び図面の記載から、引用例1記載の「主装置」は、 発信端末Xから送出される保留要求の受信を検知し、着信端末Yに対して、当該保留要求を転送し、保留エラーのメッセージが返ってきたときには、メディアスイッチ15Aを用いた保留機能を起動させるようにし、メディアスイッチ15Aに、保留のメディア接続変更要求を送ることにより、メディアスイッチ15Aが、この保留のメディア接続変更要求を受け取ると、着信端末Yと、メディアスイッチ15Aとの音声データの経路を保持し、保留音発生部317から保留音を送出させ、着信端末Yに送り、保留状態となるとともに、 保留中に、発信要求メッセージを受信したことを判別すると、発信要求してきた端末に発信要求受付を返し、メディア情報設定取得要求をメディアスイッチ15Aに送り処理することにより発信端末Xと転送先端末W間の通話路が形成され、 発信端末Xから転送要求が送られると、呼が転送され、保留中であった着信端末Yと転送先端末Wとの通話が可能となるようにしたものであるから、 上記(オ)、(カ)、(キ)の記載、上記(ウ)段落【0023】の「ところで、この種のVoIP電話システムでは、話中の呼を一旦保留し、その後、当該呼を他の電話端末に転送するようにできる機能や、ビジネスボタン電話機能として良く用いられる一斉音声呼び出しを実現する機能などの付加機能を備えることが、使い勝手の点で重要である。」の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例1記載の「主装置」は、 発信端末Xから送出されるパケットを受信するLANインターフェイス214と、 前記LANインターフェイス214で受信したパケットのメッセージデータを解読し、この解読したメッセージデータが保留要求である場合に、着信端末Yと、メディアスイッチ15Aとの音声データの経路を保持し、保留状態とするとともに、保留中に、発信要求メッセージを受信したことを判別すると、発信端末Xと転送先端末W間の通話路を形成することが可能なメディアスイッチ15Aを用いた保留機能を起動させる手段と、 前記保留機能を起動されている状態で、前記発信端末Xから前記保留機能とは異なる付加機能の要求(転送要求)を受信したとき、当該付加機能(転送処理)を起動し実行する手段とを具備している といえる。 したがって、上記(ア)?(ク)の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 「IP(Internet Protocol)ネットワークに接続され端末番号が付与されている複数の電話端末間の通話路の形成を、主装置にて呼制御のためのメッセージをやり取りすることにより行う電話システムにおいて、 前記複数の電話端末は、 相手側の電話端末との間で通話状態で保留操作がなされた場合に、前記主装置に対し保留要求を送出するLANインターフェイスを備え、 前記主装置は、 発信電話端末から送出されるパケットを受信するLANインターフェイス214と、 前記LANインターフェイス214で受信したパケットのメッセージデータを解読し、この解読したメッセージデータが保留要求である場合に、着信電話端末と、メディアスイッチ15Aとの音声データの経路を保持し、保留中に、発信要求メッセージを受信したことを判別すると、発信電話端末と転送先電話端末間の通話路を形成することが可能なメディアスイッチ15Aを用いた保留機能を起動させる手段と、 前記保留機能を起動されている状態で、前記発信電話端末から前記保留機能とは異なる付加機能の要求(転送要求)を受信したとき、当該付加機能(転送処理)を起動し実行する手段とを具備した電話システム。」 [対比・判断] 補正後の発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「IP(Internet Protocol)ネットワーク」は、補正後の発明の「IP(Internet Protocol)網」に相当する。 引用発明の「端末番号」は、補正後の発明の「端末ID」に相当する。 引用発明の「端末番号が付与されている」「端末」は、補正後の発明の「端末IDが割り当てられる」「端末」に相当する。 引用発明の「電話」は通信の一形態であるから、補正後の発明の「通信」に相当する。 引用発明の「通話路の形成」は、通信回線を接続することの一種であるから、補正後の発明の「通信接続」に相当する。 引用発明の「主装置」は、上記(オ)に記載されているように、パーソナルコンピュータにより構成され、保留、転送、一斉音声呼び出しなどのサービスを処理を行うものであって、サービスを提供するための装置であるといえるから、補正後の発明の「サーバ装置」に相当する。 引用発明の「複数の電話端末間の通話路の形成を、主装置にて呼制御のためのメッセージをやり取りされることにより行う」ことと、補正後の発明の「複数の通信端末間の通信接続をサーバ装置にて実行する」ことは、この分野の技術常識を考量すると、「複数の通信端末間の通信接続をサーバ装置が関与して実行する」点で一致するといえる。 引用発明の「通話状態」は、「通話」が「通信」の一形態であるといえるから、補正後の発明の「通信が行なわれている状態」に相当する。 引用発明の「保留要求」は、補正後の発明の「保留を要求するための情報」に相当する。 引用発明の「送出」は、補正後の発明の「送信」に相当する。 引用発明の「LANインターフェイス」は保留要求を送出する手段であるから、補正後の発明の「送信手段」に相当する。 引用発明の「発信電話端末」は保留を操作する側の端末であるから、補正後の発明の「保留操作元となる通信端末」に相当する。 引用発明の「パケット」は情報の一種であるから、補正後の発明の「情報」に相当する。 引用発明の「LANインターフェイス214」はパケットを受信する手段であるから、補正後の発明の「受信手段」に相当する。 引用発明の「受信したパケットのメッセージデータを解読」することは受信したパケット、すなわち、情報を解析することの一種であるといえるから、補正後の発明の「受信した情報を解析」することに相当するといえる。 引用発明の「解読したメッセージデータ」は、補正後の発明の「解析した情報」に相当する。 引用発明の「音声データの経路」は、補正後の発明の「通信リンク」に相当する。 引用発明の「着信電話端末」「との音声データの経路を保持し、保留中に、発信電話端末と転送先電話端末間の通話路を形成することが可能な」「保留機能」は、この分野の技術常識を考慮すると、保留中に他者と通話(協議)することが可能な保留機能であるといえるから、補正後の発明の「通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Hold」に相当するといえる。 引用発明の「着信電話端末と、メディアスイッチ15Aとの音声データの経路を保持し、保留状態とするとともに、保留中に、発信要求メッセージを受信したことを判別すると、発信電話端末と転送先電話端末間の通話路を形成することが可能なメディアスイッチ15Aを用いた保留機能を起動させる手段」と、補正後の発明の「前記サーバ装置が有し、通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Holdを起動するConsultation Hold実行手段」は、この分野の技術常識を考量すると、「通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Holdを起動する手段」である点で一致するといえる。 「起動」とは「実行」を開始することであるから、引用発明の「保留機能を起動されている状態」は、補正後の発明の「Consultation Holdが実行されている状態」に相当するといえる。 引用発明の「付加機能」は、補正後の発明の「付加サービス」に相当する。 引用発明の「前記保留機能とは異なる付加機能の要求(転送要求)を受信したとき」と、補正後の発明の「前記Consultation Holdとは異なり前記サーバ装置が有する付加サービスを要求するための情報を受信した時」は、「前記Consultation Holdとは異なる付加サービスを要求するための情報を受信した時」の点で一致するといえる。 引用発明の「当該付加機能(転送処理)を起動し実行する手段」と補正後の発明の「当該サーバ装置が有する付加サービスを起動する付加サービス実行制御手段」は、「付加サービスを起動する付加サービス実行制御手段」である点で一致するといえる。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「IP(Internet Protocol)網に接続され端末IDが割り当てられる複数の通信端末間の通信接続をサーバ装置が関与して実行する通信システムにおいて、 前記複数の通信端末は、 相手側の通信端末との間で通信が行なわれている状態で保留操作がなされた場合に、前記サーバ装置に対し保留を要求するための情報を送信する送信手段を備え、 前記サーバ装置は、 保留操作元となる通信端末から送信される情報を受信する受信手段と、 前記受信手段で受信した情報を解析し、この解析した情報が前記保留を要求するための情報である場合に、通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Holdを起動する手段と、 前記Consultation Holdが実行されている状態で、前記Consultation Holdとは異なる付加サービスを要求するための情報を受信した時、付加サービスを起動する付加サービス実行制御手段とを具備する通信システム。」 (相違点) (1)「複数の通信端末間の通信接続をサーバ装置が関与して実行する通信システム」の「サーバ装置」に関し、補正後の発明は、サーバ装置にて「通信接続」を「実行する」のに対し、引用発明は主装置にて「通話路の形成」を「呼制御のためのメッセージをやり取りすることにより行う」ものである点。 (2)「通信端末との間の通信リンクを保持としたまま保留とするConsultation Holdを起動する手段」及び「前記Consultation Holdとは異なる付加サービスを要求するための情報を受信した時、付加サービスを起動する付加サービス実行制御手段」に関し、補正後の発明の「サーバ装置」は「Consultation Hold」及び「付加サービス」を有し、それらを実行するものであるのに対し、引用発明の主装置は、メディアスイッチ15Aを用いた保留機能を起動させるものである点。 そこで、上記相違点(1)及び(2)について、まとめて以下検討する。 上記引用例1には、上記(ク)の記載から、この分野における技術常識を考慮すると、 「主装置とメディアスイッチとを別個に設けるのではなく、主装置をメディアスイッチの機能部を内部に設け、保留音を送出することができるようにしても、相手端末が保留機能を有するか否かを問い合わせることなく、保留、転送機能を起動するようにしてもよい。」 という示唆(以下、「引用示唆」という。)が記載されているといえ、引用発明において、上記引用示唆に基づき、主装置にて複数の電話端末間の通話路の形成を実行すること、及び、主装置が保留機能、及び、保留機能とは異なる付加機能を有し、それらを実行する手段を具備するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、補正後の発明に関する作用・効果も、上記引用発明及び引用示唆から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、上記補正後の発明は上記引用発明及び引用示唆に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成23年1月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]及び[対比・判断]の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は、上記補正後の発明の、 「保留を要求するための情報」を「Consultation Hold(協議保留)を起動するための情報」とするとともに、 「Consultation Hold実行手段」及び「付加サービス」について、「サーバ装置が有し」ないし「サーバ装置が有する」という特定事項を削除するもの である。 上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用発明の「保留要求」によって「保留機能」、すなわち、「Consultation Hold」が起動されるから、上記引用発明の「保留要求」は、本願発明の「Consultation Hold(協議保留)を起動するための情報」に相当する。 そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る構成を付加した補正後の発明が、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、当業者が上記引用発明及び引用示唆に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、当業者が引用発明及び引用示唆に基いて容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明に関する作用・効果も、引用発明及び引用示唆から当業者が予測できる範囲内のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び引用示唆に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-16 |
結審通知日 | 2012-05-22 |
審決日 | 2012-06-04 |
出願番号 | 特願2006-296601(P2006-296601) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
P 1 8・ 571- Z (H04M) P 1 8・ 572- Z (H04M) P 1 8・ 575- Z (H04M) P 1 8・ 573- Z (H04M) P 1 8・ 574- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永田 義仁 |
特許庁審判長 |
田中 庸介 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 神谷 健一 |
発明の名称 | 通信システム |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |