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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1260371
審判番号 不服2011-16319  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-28 
確定日 2012-07-19 
事件の表示 特願2001-273733「チューナ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 7日出願公開、特開2002-164805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年9月10日(パリ条約による優先権主張 2000年10月6日 グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国)の出願であって、平成22年8月23日付けの拒絶理由通知に対し平成23年2月23日付けで手続補正がなされたところ、平成23年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年7月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成23年7月28日付けの手続補正について

[補正却下の決定の結論]
平成23年7月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本願発明と補正後の発明
本件補正は、平成23年2月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「チューナ入力端(4)と、イメージ除去を行うように構成されたイメージ除去混合器(18)と、上記イメージ除去混合器(18)と上記チューナ入力端(4)との間に介在する単一の追従フィルタ(16)とを備えている単変換型アナログ式チューナであって、
上記単一の追従フィルタ(16)は単一同調型のものであり、
上記イメージ除去混合器(18)は、上記単一の追従フィルタ(16)を経由して上記イメージ除去混合器(18)に供給される比較的高振幅性の干渉信号の影響を抑制するように構成されていることを特徴とするチューナ。」(以下、「本願発明」という。)を、

平成23年7月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「チューナ入力端(4)と、イメージ除去を行うように構成されたイメージ除去混合器(18)と、上記イメージ除去混合器(18)と上記チューナ入力端(4)との間に介在する単一の追従フィルタ(16)とを備えている単変換型アナログ式チューナであって、
上記単一の追従フィルタ(16)は、その周波数が該単一の追従フィルタ(16)に供給される同調電圧に応答して可変容量ダイオード(17)により制御される単一同調型のものであり、
上記イメージ除去混合器(18)は、上記単一の追従フィルタ(16)を経由して上記イメージ除去混合器(18)に供給される比較的高振幅性の干渉信号の影響を抑制するように構成されていることを特徴とするチューナ。」(以下、「補正後の発明」という。)

に変更することを含むものである。

下線部は、本願発明に対する補正箇所である。

2 補正の適否

(1)新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、
単一の追従フィルタ(16)が、「その周波数が該単一の追従フィルタ(16)に供給される同調電圧に応答して可変容量ダイオード(17)により制御される」単一同調型のものであると具体的に限定するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)、および平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

ア 補正後の発明
上記「1 本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

イ 引用発明
原審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平6-338836号公報(以下、「引用例」という。)には、「FM受信機」に関して、図面と共に下記の事項が記載されている。

「【0014】次に本発明によるFM受信機の第3の実施例の構成を図5に示す。この実施例のFM受信機は、バンドパスフィルタ1と、イメージキャンセルミキサ2と、バンドパスフィルタ4,6と、リミッタアンプ5,7と、FM検波器8と、レベル検出器10とを備えている。バンドパスフィルタ1とイメージキャンセルミキサ2以外は図1に示す第1の発明の第1の実施例で説明済のため説明を省略する。バンドパスフィルタ1はRF入力(アンテナを介して受信された受信FM信号を低雑音増幅器(図示せず)によって増幅した信号)の受信チャネル近傍の周波数の信号だけを通過させる。イメージキャンセルミキサ2はバンドパスフィルタ1の出力と、ローカル入力信号とに基づいて、RF入力信号からイメージ信号などの妨害信号を除去するものであって、例えば図6に示すようにミキサ(乗算器)2a,2cと、移相器2b,2dと、加算器2eとを備えている。図6において、RF入力信号はミキサ2aによってローカル入力信号と乗算されて、移相器2dに送出され、位相がπ/2ラジアンだけシフトされる。一方、ローカル入力信号は移相器2bによってπ/2ラジアンだけ位相がシフトされるが、この移相器2bの出力とRF入力信号がミキサ2cによって乗算される。そして、ミキサ2cの出力と移相器2dの出力が加算器2eにおいて加算され、その和であるIF信号が図5に示すバンドパスフィルタ4に送出される。
【0015】一般に、RF入力信号の周波数をf_(R) 、上記ローカル入力信号の周波数をf_(LO)、IF信号の周波数をf_(IF)とすると、
|f_(R )-f_(LO)|=f_(IF)
という関係がある。ここでf_(R )>f_(LO)の条件を満たす信号を希望信号とすると、希望信号は、
f_(R )=f_(LO)+f_(IF)
であり、この時のイメージ(影像)信号は、
f_(R ′)=f_(LO)-f_(IF)
となる。したがって希望信号とイメージ信号の周波数は2f_(IF)だけ離れていることになる。このため、IF信号の周波数f_(IF)を低くすると希望信号とイメージ信号の周波数が近くなり、バンドパスフィルタ1だけでイメージ信号を十分に除去することができない。しかし図6に示すようなイメージキャンセルミキサ2を用いることによってイメージ信号は十分に除去される。それは、ミキサ2cには移相器2bにより位相がπ/2ラジアンシフトしたローカル信号が入力されるため、希望信号に対してはミキサ2cの出力は位相がπ/2シフトし、ミキサ2aに入力されるローカル入力信号は位相がシフトしていないので、ミキサ2aの出力も位相がシフトしないが、移相器2dによって位相がπ/2シフトされる。このため、希望信号に対しては、加算器2eに入力される2つの入力信号は同相となり、加算器2eの出力であるIF信号には加算された信号が出力される。
【0016】一方、RF入力がイメージ信号の場合は、ミキサ2cの出力は位相が-π/2シフトされることになるため、加算器2eの2つの入力信号は互いに逆位相となる。このためイメージ信号の場合は相殺されて、加算器2eの出力であるIF信号には現われてない。」(3頁4欄24行?4頁5欄28行)

上記摘記事項の14段落の3頁4欄31?33行のRF入力についての記載からみて、ここには、アンテナを介して受信された受信FM信号の入力端が、自明的に存在している。
また、同14段落の3頁4欄31?39行の記載を参酌すると、バンドパスフィルタ1は、イメージキャンセルミキサ2と受信FM信号の入力との間に介在するバンドパスフィルタであることが記載されている。

上記摘記事項並びに図5からみて、本FM受信機は、単変換型のアナログ式のFM受信機であることは明らかである。

上記摘記事項の15段落の4頁5欄9?12行の記載を参酌すると、IF信号の周波数f_(IF)を低くすると、希望信号とイメージ信号の周波数が近くなり、「バンドパスフィルタ1だけでイメージ信号を十分に除去することができない」ことになるものであるから、ここでは、干渉信号であるイメージ信号がイメージキャンセルミキサ2に供給されるものということができる。
さらに、同15?16段落の4頁5欄12?14行、同24?28行の記載を参酌すると、イメージキャンセルミキサ2を用いることによって、イメージ信号が十分に除去されることが示されているから、ここでは、イメージキャンセルミキサ2が、干渉信号であるイメージ信号の影響を抑制するように構成されている。

したがって、上記引用例の摘記事項および図面(図5?6)に記載されたFM受信機の構成および動作によれば、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「アンテナを介して受信された信号の入力端と、イメージ除去を行うように構成されたイメージキャンセルミキサ2と、上記イメージキャンセルミキサ2と上記受信FM信号の入力端との間に介在するバンドパスフィルタ1とを備えている単変換型のアナログ式のFM受信機であって、
上記イメージキャンセルミキサ2は、上記バンドパスフィルタ1を経由して上記イメージキャンセルミキサ2に供給される干渉信号の影響を抑制するように構成されるFM受信機。」

ウ 対比
(ア)補正後の発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「アンテナを介して受信された受信FM信号の入力端」は、アンテナからの受信信号を入力する入力端のことであるから、補正後の発明の「チューナ入力端」とは、アンテナからの受信信号の入力端である点で、実質的に同じ機能を有している。

b 引用発明の「イメージキャンセルミキサ2」は、イメージ信号を除去する混合器のことであるから、補正後の発明の「イメージ除去混合器」と実質的に同じものである。

c 引用発明の「バンドパスフィルタ1」は、補正後の発明の「追従フィルタ(16)」と、フィルタである点で一致している。

d 引用発明の「FM受信機」と、補正後の発明の「チューナー」は、ともに、受信機である点で一致している。

(イ)よって、上記a?dから、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「アンテナからの受信信号の入力端と、イメージ除去を行うように構成されたイメージ除去混合器と、上記イメージ除去混合器と上記アンテナからの受信信号の入力端との間に介在するフィルタとを備えている単変換型のアナログ式の受信機であって、
上記イメージ除去混合器は、上記フィルタを経由して上記イメージ除去混合器に供給される干渉信号の影響を抑制するように構成される受信機。」

(相違点1)
フィルタの機能に関し、補正後の発明は、「追従フィルタ」であって、その周波数が当該追従フィルタに供給される同調電圧に応答して可変容量ダイオードにより制御される単一同調型のものであるのに対し、引用発明は、追従フィルタではない「バンドパスフィルタ」である点。

(相違点2)
フィルタの構成に関し、補正後の発明の「追従フィルタ」は、イメージ除去混合器とチューナ入力端との間に介在する単一のフィルタであるのに対し、引用発明の「バンドパスフィルタ」は、必ずしも単一のフィルタではない点。

(相違点3)
干渉信号に関し、補正後の発明の干渉信号は、「比較的高振幅性」の干渉信号であるのに対し、引用発明の干渉信号は、必ずしも比較的高振幅性の干渉信号ではない点。

(相違点4)
発明の対象に関し、補正後の発明では、「チューナ」であるのに対し、引用発明では、「FM受信機」である点。

エ 当審の判断

(ア)相違点1について検討する。

受信チャネル近傍の周波数の信号だけを通過させるためのフィルタについて、その周波数がトラッキングフィルタに供給される同調電圧に応答して可変容量ダイオードにより制御される単一同調型のものとして構成することは、例えば、特開昭62-1313号公報(第2頁右下欄13?20行、図5の4参照)、特開平4-249413号公報(第2頁1欄40行?2欄20行、図5参照)、特開平3-268510号公報(第2頁左上欄第2行?右上欄第5行)等に示されるように、当該スーパーヘテロダイン受信機の技術分野においては周知技術であったものである。

すると、引用発明の「バンドパスフィルタ」に、上記周知技術を付加することで、その周波数が当該フィルタに供給される同調電圧に応答して可変容量ダイオードにより制御される単一同調追従フィルタとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について検討する。

イメージ除去混合器を設けることによって、イメージ信号の影響を直接抑制することができるようになるのであるから、イメージ除去のためのフィルタが省略できるようになることは、明らかといえることであって、例えば、特開昭52-132710号公報(第3頁左上欄8?14行、右上欄6?11行、第3図参照)、特開平4-56524号公報(第8頁左下欄16?18行、第9頁左上欄15?18行参照)、特開2000-68752号公報(第6頁9欄1?9行)等に示されるように、イメージ除去混合器を設けることにより、イメージ除去のためのフィルタが省略できるものであることは、当該スーパーヘテロダイン受信機の技術分野においては周知技術であったものである。

すると、イメージ除去混合器とチューナ入力端との間に介在するフィルタから、イメージ除去のためのフィルタを省略することで、単一のフィルタとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3について検討する。

上記引用例の摘記事項の16段落4頁5欄24?28行及び図6を参酌すると、イメージキャンセルミキサにおいては、入力されるイメージ信号に対して、当該イメージ信号と逆位相の信号が加算器によって加算されることによって、イメージ信号が相殺されるしくみを有しており、干渉信号であるイメージ信号の振幅が比較的高振幅性の場合であっても、そのイメージ信号は相殺されて除去されることになるから、当該イメージ信号の影響を抑制することができるものであることは明らかである。

すると、引用発明のイメージキャンセルミキサを、比較的高振幅性の干渉信号の影響を抑制するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)相違点4について検討する。

補正後の発明の「チューナ」も、引用発明の「FM受信機」もともに、スーパーヘテロダイン方式の受信方式に係る技術に属するものであり、また、アンテナからの受信信号から受信希望信号を選択して、中間周波数の信号に変換する機能部分において、イメージ信号の影響を抑制するという共通の課題を有するものであるから、引用発明における「FM受信機」に係る技術を、「チューナ」に係る技術へ適用することは、当業者が容易になし得たことである。

(オ)したがって、上記(ア)?(エ)から、補正後の発明は引用発明および上記の各周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

また、補正後の発明が奏する効果についても、いずれも引用発明および上記の各周知技術から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

3 むすび
以上のとおり、補正後の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成23年7月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年2月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書および図面の記載からみて、上記「第2 平成23年7月28日付けの手続補正について」の「1 本願発明と補正後の発明」の項中で、「本願発明」として記載したとおりである。

2 引用発明
これに対して、原審の拒絶理由に引用された引用例および引用発明は、上記「第2 平成23年7月28日付けの手続補正について」の「2 補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項中で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成23年7月28日付けの手続補正について」の「2 補正の適否」の「(1)新規事項の有無、補正の目的要件」項中で検討したように、補正後の発明から、本件補正に係る構成の限定を省いたものであるから、本願発明の発明特定事項をすべて含み、審判請求時の手続補正によってさらに構成を限定した補正後の発明が、上記「第2 平成23年7月28日付けの手続補正について」の「2 補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項中で検討したように、引用発明および上記の各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項を省いた本願発明も実質的に同様の理由により、引用発明および上記の各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および上記の各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-16 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2001-273733(P2001-273733)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 則之  
特許庁審判長 岩崎 伸二
特許庁審判官 猪瀬 隆広
飯田 清司
発明の名称 チューナ  
代理人 田中 光雄  
代理人 山田 卓二  

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