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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1260410
審判番号 不服2011-1703  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-25 
確定日 2012-07-17 
事件の表示 特願2001-517244号「メニューによりサポートされた操作を行うための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月22日国際公開、WO01/13211、平成15年 2月25日国内公表、特表2003-507241号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2000年8月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年8月18日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成22年9月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成23年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 多機能ディスプレイ装置(1)およびこの多機能ディスプレイ装置(1)の画像形成を制御する処理装置(12)を備え、この処理装置が操作されるべきまたは制御されるべき電子的な装置(13?17)にアクセス可能である、多機能操作装置によるメニューによりサポートされた操作を行うための方法において、
少なくとも1つの選択メニュー内に、1つまたは多数の電子的な装置(13?17)の機能が、対象に関連付けられて統合され、且つオブジェクトアイコン(5?10)として、多機能ディスプレイ装置(1)に表示されること、
機能が、オブジェクトアイコン(5?10)に、対象に関連付けられて帰属すること、
オブジェクトアイコン(5?10)が、多機能ディスプレイ装置(1)に、利用者の所望に応じて及び操作履歴に依存して表示されること、
機能が、オブジェクトアイコン(5?10)に、利用者の所望に応じて、または操作履歴に依存して、またはこの対象の様式に依存して、帰属すること、
を特徴とする方法。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「機能」について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(ア)原査定の平成22年5月27日付け拒絶理由において引用文献2(引用例2)として引用された刊行物である、特開平11-142165号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音声入力により各種機能を操作することができる音声操作機能付き電子機器、電子機器における音声操作方法、及び音声操作機能付き電子機器を備える自動車に関するものである。」
・「【0016】図1は、本発明の音声操作機能付き電子機器の一例として、自動車に搭載されるナビゲーション機能と携帯電話機能を有する電子機器の実施の形態を示している。図1に示す電子機器100は、概略的には携帯電話機101、ナビゲーション装置20、音声認識装置10などを備えている。」
・「【0031】この処理手段23は、ナビゲーション装置20による動作を制御するシステムコントローラとして機能する回路であり、道路地図データが記憶されたCD-ROM(光ディスク)がセットされてこのCD-ROMの記憶データを読出すCD-ROMドライバ24と、データ処理に必要な各種データを記憶するRAM25と、このナビゲーション装置が搭載された車両の動きを検出する車速センサ26と、操作キー27とが接続させてある。」
・「【0045】次に、上述したナビゲーション機能及び電話機能を有する電子機器100の操作方法について説明する。ここで、上述した“対象”と、“対象”に対応する“特定の行為”について簡単に説明する。図4において、“対象”としては、例えば呼び出したい場所などを定義しており、地名、駅名、ランドマーク、電話番号、マーク名称、電話登録名などの項目を挙げることができる。この中でランドマークとは、地図上の目立つような建築物または建造物などを指しており、例えば一例としては“東京タワー”などが挙げられる。電話番号は、市外局番-市内局番-番号の順に配列されており、例えば“03-1234-5678”のようなものである。マーク名称とは、例えばナビゲーション装置の図1のディスプレイ装置40におけるある位置にマークを設定した場合のそのマークの名称を指しており、あるマークの名称が、例えば“やまだたろう”の住所を示すような場合である。電話登録名とは、例えば“たなかはなこ”といった人名を登録しておく。
【0046】これに対して“特定の行為”とは、各種コマンドを示しており、例えば“ルート探索”、“目的地設定”、“経由地設定”、“電話(かける)”、“マーク設定”、“最寄り探索”コマンドなどがある。
【0047】本発明の実施の形態においては、図3の使用者Mが音声によりまず呼び出したい“対象”を先に音声入力し、その次に特定の“行為”を指定することができる。このような音声入力による指定順序は矢印RBで示している。また本発明の実施の形態においては、この矢印RBの音声入力順に限らず、矢印RAで示すように使用者Mが“特定の行為”を先に音声入力して指定した後に、“対象”を指定することも勿論できる。」

引用例1の記載において次のことが明らかである。
・「自動車に搭載されるナビゲーション機能と携帯電話機能を有する電子機器100」は、「処理手段23」によって制御されるべきものであって、アクセス可能である。
・「処理手段23」は、「ディスプレイ装置40」に表示するための表示データなどを作成する。

上記記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。
「ディスプレイ装置40およびこのディスプレイ装置40に表示するための表示データなどを作成する処理手段23を備え、この処理手段23が制御されるべき、自動車に搭載されるナビゲーション機能と携帯電話機能を有する、電子機器100にアクセス可能である、音声入力により電子機器100の操作を行うための方法において、
電子機器100の特定の行為が、ルート検索、目的地設定、経由地設定、電話をかけるなどの行為であって、この特定の行為が、地名、ランドマーク、マーク名称などの対象に対応しており、対象を音声入力し、それに対応する特定の行為を音声入力すれば、対象に対応する特定の行為が行える方法。」

(イ)同様に、拒絶理由において引用文献1(引用例1)として引用された刊行物である、特開平10-214543号公報(以下「引用例2」という。)の【0006】?【0012】、【0026】?【0034】及び特に図2、3、10、11には、概略次の技術事項が開示されている。
「多機能を表示するディスプレイ131およびこのディスプレイ131の画像形成を制御する制御装置11を備え、この制御装置11が操作されるべきまたは制御されるべきエアコン,オーディオ,ナビ,交通情報等の各被制御機器にアクセス可能である、自動車用の、操作スイッチ121によるメニューによりサポートされた操作を行うための方法において、1つの選択メニュー内に、エアコン,オーディオ,ナビ,交通情報等の各被制御機器の機能が、エアコン,オーディオ,ナビ,交通情報等に関連付けられて統合され、且つオブジェクトアイコンとして、ディスプレイ131に表示される方法。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると次のことが明らかである。
・本願補正発明の「多機能ディスプレイ装置(1)」と引用発明の「ディスプレイ装置40」とは、ともに「ディスプレイ装置」との概念で共通する。
・引用発明の「ディスプレイ装置40に表示するための表示データなどを作成する処理手段23」は、その表示データを作成する限りにおいて、本願補正発明の「画像形成を制御する処理装置」に相当するといえる。
・引用発明の「自動車に搭載されるナビゲーション機能と携帯電話機能を有する電子機器100」は、本願補正発明の「電子的な装置(13?17)」に相当する。

すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「ディスプレイ装置およびこのディスプレイ装置の画像形成を制御する処理装置を備え、この処理装置が操作されるべきまたは制御されるべき電子的な装置にアクセス可能である、操作を行うための方法」

一方で、両者は、次の点で相違する。
(相違点)
本願補正発明が「多機能操作装置によるメニューによりサポートされた操作を行うための方法」であって「少なくとも1つの選択メニュー内に、1つまたは多数の電子的な装置(13?17)の機能が、対象に関連付けられて統合され、且つオブジェクトアイコン(5?10)として、多機能ディスプレイ装置(1)に表示されること、機能が、オブジェクトアイコン(5?10)に、対象に関連付けられて帰属すること、オブジェクトアイコン(5?10)が、多機能ディスプレイ装置(1)に、利用者の所望に応じて及び操作履歴に依存して表示されること、機能が、オブジェクトアイコン(5?10)に、利用者の所望に応じて、または操作履歴に依存して、またはこの対象の様式に依存して、帰属すること」としているのに対して、引用発明は「音声入力により電子機器100の操作を行うための方法」であって「電子機器100の特定の行為が、ルート検索、目的地設定、経由地設定、電話をかけるなどの行為であって、この特定の行為が、地名、ランドマーク、マーク名称などの対象に対応しており、対象を音声入力し、それに対応する特定の行為を音声入力すれば、対象に対応する特定の行為が行える」としている点。

(4)相違点についての判断
引用例2には、操作を要する被制御機器に対して、多機能なディスプレイを付属させてそのディスプレイに操作に必要なメニュー画面を表示させて操作を行うものが記載されている。また、情報端末装置に関するが、特開平10-126486号公報には、【図9】とその説明において、画面に相手先名をリスト表示させ、クリック操作で相手先を決定するとそれに応じてその電話番号が表示されるものが記載されている。
また、特に車載装置のようなものの場合には安全性を考慮して、装置の操作を音声入力により行うものも存在する。実際、車載装置の操作に関し、車両の走行中は音声入力により、停止中はタッチパネルの表示画面によりナビゲーション装置を操作する技術(特開平9-16891号公報の段落【0020】参照)も存在する。即ち、この種の装置において、操作をディスプレイ表示によって行うようにすることも、音声入力によって行うようにすることも、いずれの技術も周知といえる。
そこで引用発明において、音声入力をディスプレイ表示に代えるべく或いはそれに付加するべく、引用例2に開示された技術、上記周知の技術を参照して、地名、ランドマーク、マーク名称などの対象の項目をオブジェクトアイコンとしてディスプレイにメニュー表示するとともに、それに対応する特定の行為である、ルート検索、目的地設定、経由地設定、電話をかけるなどの行為をこれもディスプレイ表示するようにして、このディスプレイ表示に従って操作を行える構成とすることは格別困難ではない。
引用発明に、このような構成を採用し、その全体の構成を多機能操作装置と称したとき、この装置は、ディスプレイに表示されたメニューにより操作がサポートされることとなり、そのメニュー内に、電子機器の特定の行為がその機能として、対象に関連付けられて統合され、且つオブジェクトアイコンとして、多機能ディスプレイ装置に表示されることとなる。また、電子機器の特定の行為としての機能が、オブジェクトアイコンに、対象に関連付けられて帰属することとなる。
次に表示すべき項目に関するが、例えば複数項目の表示を行う場合、画面上に表示できる項目数には限度があることから、その必要性を考慮してどの項目を表示するかを決定することが通常である。ここで、その決定には、先ずその利用者の取捨選択によることが考えられる(例えば前掲、特開平10-126486号公報には、段落【0041】に、表示される電話番号は登録時に優先指定されたものの順で表示される旨の記載があり、これによれば、利用者の優先順位の決定により下位の項目は表示されないこともあり得るのであって、利用者の所望に応じることになる。)が、さらに、自動的に決定を行おうとすれば、操作の履歴に応じて項目の表示順位を変えることが考えられる(原審査定時に挙げられた特開平11-201771号公報の段落【0046】には、操作履歴に従って表示の優先順位が決められる旨の記載がある。)。また、対象と特定の行為の関係から、対象に応じて必要な特定の行為が適宜選択されることは当然のことである。いずれにしても、このような表示項目の決定の仕方は周知の技術といえる。
そうであれば、引用発明において表示する場合においても、オブジェクトアイコンについて、利用者の所望に応じて、さらに操作履歴に依存して表示するようにすること、特定の行為ないし機能についても、オブジェクトアイコンに、利用者の所望に応じて、または操作履歴に依存して、またはこの対象の様式に依存して、帰属するようにすることは、ディスプレイ表示における周知の技術から困難なく導き出せる構成といえる。
そうすると、引用発明において、上記ディスプレイ表示に従って操作を行う構成及びディスプレイの表示項目に関する構成を採用して、本願補正発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって想到容易ということができる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術から当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別とはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成23年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成22年9月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであるところ、請求項1には次のとおり記載されている。
「【請求項1】 多機能ディスプレイ装置(1)およびこの多機能ディスプレイ装置(1)の画像形成を制御する処理装置(12)を備え、この処理装置が操作されるべきまたは制御されるべき電子的な装置(13?17)にアクセス可能である、多機能操作装置によるメニューによりサポートされた操作を行うための方法において、
少なくとも1つの選択メニュー内に、1つまたは多数の電子的な装置(13?17)の機能が、対象に関連付けられて統合され、且つオブジェクトアイコン(5?10)として、多機能ディスプレイ装置(1)に表示されること、
機能が、オブジェクトアイコン(5?10)に、対象に関連付けられて帰属すること、
オブジェクトアイコン(5?10)が、多機能ディスプレイ装置(1)に、利用者の所望に応じて及び操作履歴に依存して表示されること、
を特徴とする方法。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-21 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-13 
出願番号 特願2001-517244(P2001-517244)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 575- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 メニューによりサポートされた操作を行うための方法および装置  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 今村 良太  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  

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