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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1260582
審判番号 不服2011-8357  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-19 
確定日 2012-07-23 
事件の表示 特願2004-146607号「携帯用電子機器及びエンタテインメントシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月25日出願公開、特開2004-334895号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成11年2月16日(優先権主張1998年2月16日,日本国)を国際出願日とする特願平11-541344号の一部を平成16年5月17日に新たな特許出願としたものであって,平成23年1月14日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年4月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,同年11月29日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,平成24年1月25日付けで回答書が提出された。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年4月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成23年4月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を,次のように補正しようとする補正事項を含むものである。
「【請求項1】プログラムの実行機能を有する親機に接続するためのインターフェースを有する電子機器であって,
上記親機のデータを記録する補助記憶装置として機能するとともに,プログラムも格納するプログラム格納手段と,
上記プログラム格納手段に格納されているプログラムの実行を制御する制御手段と,
上記プログラム格納手段に格納されたプログラムのアドレスを変換するアドレス変換手段と,
イベントを表す信号を記憶する記憶手段と,
イベントを表す信号の発生手段とを有し,このイベントを表す信号の発生手段により発生したイベントを表す信号を上記記憶手段に記憶し,
上記記憶手段に記憶された,イベントを表す信号を上記親機からの要求に応じて該親機に転送し,
上記アドレス変換手段は,上記プログラム格納手段に格納されたプログラムの不連続なアドレスを見かけ上連続するアドレスに変換するファイル管理テーブル手段を有しており,
上記制御手段は,上記ファイル管理テーブル手段により変換された連続するアドレスを利用して上記プログラム格納手段に格納されたプログラムを直接実行することを特徴とする,電子機器。」

上記補正は,請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「記憶手段」について,電子機器が「イベントを表す信号の発生手段」を有することを明らかにした上で,「発生手段」により発生したイベントを表す信号を「記憶手段」に記憶していることを限定するものであると認められるから,本件補正は,少なくとも,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか,について以下に検討する。

2 独立特許要件違反(特許法第29条第2項違反)
2-1 引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開昭60-119976号公報(以下「刊行物1」という。)には,以下の記載がある(下線は当審にて付与。)
(1a)「2.特許請求の範囲
(1)小型の子供電子ゲーム装置と,この子供電子ゲーム装置と接続される比較的大型の親電子ゲーム装置とからなる親子電子ゲーム装置であって,上記子供電子ゲーム装置は,ゲームプログラムを記憶するメモリと,ゲームをプレイするためのキーと,上記キーの操作に従つて上記メモリに記憶されたゲームプログラムを実行する処理装置と,この処理装置によるゲーム実行過程を表示する表示装置と,上記親電子ゲーム装置と接続するためのコネクト装置とを具備し,他方上記親電子ゲーム装置は,上記子供電子ゲーム装置のコネクト装置と接続されるコネクト装置と,複数のゲームプログラムを記憶するメインメモリと,キーボードと,上記子供電子ゲーム装置と接続されているとき上記キーボードの操作に従つて上記メインメモリから少なくとも1つのゲームプログラムを上記各コネクト装置を介して上記子供電子ゲーム装置のメモリへ転送する手段を有する処理装置とを具備することを特徴とする親子電子ゲーム装置。
(2)上記親電子ゲーム装置の処理装置は,上記メインメモリに記憶されたゲームプログラムの実行手段を備えていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の親子電子ゲーム装置。」(特許請求の範囲)

(1b)「本実施例は大型の親電子ゲーム装置から小型の子供電子ゲーム装置へゲームプログラムを転送(以下「セーブ」という)するだけでなく,逆に子供電子ゲーム装置から親電子ゲーム装置へゲームプログラムを転送(以下「ロード」という)することも可能なものである。」(第2頁左上欄第17行?同頁右上欄第2行)

(1c)「このメインメモリ10からメインCPU14に読み出されたゲームプログラムは親電子ゲーム装置1の入出力用のバツフア11及び子供電子ゲーム装置6の入出力用のバツフア12を介して子供電子ゲーム装置6にセーブされてRAMからなるサブメモリ13に書き込まれ,他方子供電子ゲーム装置6のサブメモリ13から上記両バツフア11,12を介して親電子ゲーム装置1のメインCPU14にロードされたゲームプログラムはメインメモリ10の空エリアに書き込まれる。このセーブ及びロードはバスラインA,D,aを通じて行われる。
上記キーボード2は上記セーブ,ロードの他,収納部4…の選択,ゲーム選択,ゲームスタート,ゲーム進行等のキーからなり,各キーの操作はメインCPU14からのキー走査(「操作」の誤記と認められる。)信号により操作信号として検出されてメインCPUに与えられる。」(第2頁左下欄第7行?同頁右下欄第5行)

(1d)「次に,第6図に示すようにすでにゲーム4のゲームプログラムが記憶されている子供電子ゲーム装置6から親電子ゲーム装置へゲームプログラムをロードするには,子供電子ゲーム装置6を収納部4に入れ,その収納部4に応じた収納部選択キー及びロードキーを操作する。すると,第5図に示すように,メインCPU14は,上記収納部選択キーの操作信号を検出すると選択信号CEをサブCPU16に与え,これによりロードすべき子供電子ゲーム装置6からのバスラインが開かれるとともに,上記ロードキーの操作信号を検出すると命令コード転送信号OPもサブCPU16に与え,これによりロードの命令コードがバスラインA,D,aを介して転送出力され,さらに若干遅れて書込信号WRもサブCPU16に与え,これによりロードの命令コードがサブCPU16に書き込まれる。・・・サブCPU16はサブメモリ13の先頭アドレスよりゲーム4のゲームプログラムを読み出し,このプログラムはバスラインa,D,Aを介して転送出力され,メインメモリ10の空エリアに書き込まれる。・・・この動作が繰り返されることにより,ゲーム4のゲームプログラムが順次ロードされていき,最終アドレスのプログラムのロードがなされると,ロードは終了する。ロードが終了すれば,キーボード2の中のゲーム4のゲーム選択キー,ゲームスタートキー及びゲーム進行キーを操作していくことにより,メインメモリ10内にロードされたゲーム4のゲームプログラムが読み出されてメインCPU14でゲーム実行処理がなされ,この実行過程がCRTコントローラ15を介してCRT表示装置3に表示されていく。
こうして,子供電子ゲーム装置6のゲームを大画面のCRT表示装置3とキーボード2の大きな操作キーで迫力のあるゲームを楽しむことができ,例えば子供電子ゲーム装置6で詰棋の問題を作成して,親電子ゲーム装置でこれを解くことができる。」(第4頁右上欄第12行?第5頁右上欄第16行)

(1e)「セーブ後,ゲームを始める前に子供電子ゲーム装置6,6のキー7を操作することにより地雷設定を行うと,サブCPU16はこのキー操作を検出して,第2図の制御ラインを介して第15図に示すようにインタラプト信号INTを親電子ゲーム装置1のメインCPU14に与えて割り込み処理を指令する。」(第7頁左上欄第8行?同欄第14行)

記載(1c),(1d)からみて,刊行物1には,「子供電子ゲーム装置6で作成した詰棋の問題を親電子ゲーム装置で解くことができるようにするために,子供電子ゲーム装置で詰棋の問題を作成して,そのゲームプログラムをRAMからなるサブメモリに記憶し,子供電子ゲーム装置を収納部に入れ,その収納部に応じた親電子ゲーム装置の収納部選択キー及びロードキーを操作すると,子供電子ゲーム装置のサブメモリに記憶された子供電子ゲーム装置で作成した詰棋の問題に関するゲームプログラムが転送出力され,親電子ゲーム装置のメインメモリの空エリアに書き込まれる」ことが記載されているものと認められる。

以上を総合すると,上記記載(1a)?(1e)からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「刊行物1記載の発明」という。)。
「ゲームプログラムの実行手段を備えている親電子ゲーム装置と接続するためのコネクト装置を具備する子供電子ゲーム装置であって,大型の親電子ゲーム装置から小型の子供電子ゲーム装置へゲームプログラムを転送(セーブ)することができ,ゲームプログラムを記憶するサブメモリと,ゲームをプレイするためのキーと,上記キーの操作に従って上記サブメモリに記憶されたゲームプログラムを実行する処理装置を備えており,子供電子ゲーム装置で詰棋の問題を作成して,親電子ゲーム装置でこれを解くことができるようにするために,子供電子ゲーム装置で詰棋の問題を作成して,そのゲームプログラムをRAMからなるサブメモリに記憶し,子供電子ゲーム装置を収納部に入れ,その収納部に応じた親電子ゲーム装置の収納部選択キー及びロードキーを操作すると,子供電子ゲーム装置のサブメモリに記憶された子供電子ゲーム装置で作成した詰棋の問題に関するゲームプログラムが転送出力する子供電子ゲーム装置。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開平6-175917号(以下「刊行物2」という。)には,以下の記載がある(下線は当審にて付与。)。
(2a)「【請求項1】複数個のブロックに分割されメモリブロックを持ち,個々のブロックをイレーズ可能なフラッシュメモリでおいて,ブロックごとにメモリアドレス変換テーブルを持つことを特徴とするフラッシュメモリ。」

(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,小型携帯情報処理装置等に利用される,低価格な不揮発性メモリの,アドレスマッピング技術に関する。」

(2c)「【0007】しかし,前記ブロック制御方式は,ブロックのイレーズやアドレス管理情報を,システムメモリ上,あるいは,フラッシュメモリの特定ブロック上にもち,論理的な情報のつながりを,ソフトウェアにより確保している。このため,フラッシュEPROMを利用したファイル装置等のエミュレーションは,問題なくおこなえるが,フラッシュEPROMに格納されているコードを直接実行する場合には,問題がある。この原因は,フラッシュEPROMのブロック内の格納データは,連続であるが,ブロック間の連続性は,ブロック管理情報により,確保されていることによる。」

(2d)「【0012】しかし,フラッシュEPROMのブロックのイレーズ回数を均一にし,チップの書き替え寿命を延ばす,イレーズ・ライトのブロック制御を行なうため,必ずしも,ブロックを連続的に使用することはない。このため,入力される上位5ビットのアドレス情報を,フラッシュEPROMに内蔵する,ブロックアドレス変換テーブルにより,ハードウェアでリマップする。これにより,アドレスの連続性が確保される。」

(2e)「【0034】
【発明の効果】本発明によれば,複数のフラッシュEPROMに格納された,プログラムコードを直接実行可能となる。さらに従来から提案されている,イレーズ・ライトのブロック制御が高速に処理可能となるとともに,ブロック管理情報をシステムメモリや特定のメモリブロックに配置する必要がなく,メモリの使用効率を向上することができる。」

2-2 補正発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明と補正発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「ゲームプログラム」は,補正発明の「プログラム」に相当し,以下同様に,
「親電子ゲーム装置」は,「親機」に,
「ゲームプログラムの実行手段を備えている」は,「プログラムの実行機能を有する」に,
「コネクト装置」は,「インターフェース」に,
「子供電子ゲーム装置」は,「電子機器」に,
「サブメモリ」は,「プログラム格納手段」及び「記憶手段」に,
「処理装置」は,「制御手段」に,
それぞれ相当する。

また,記載(1b),(1c)からみて,刊行物1記載の発明は親電子ゲーム装置のゲームプログラムを子供電子ゲーム装置にセーブし,その後,子供電子ゲーム装置から親電子ゲーム装置にゲームプログラムをロードすることが可能であると認められることから,親電子ゲーム装置の「データ」に相当する「ゲームプログラム」を記録する「サブメモリ」は,「補助記憶装置」としても機能しているものと認められる。

刊行物1記載の発明は「子供電子ゲーム装置を収納部に入れ,その収納部に応じた親電子ゲーム装置の収納部選択キー及びロードキーを操作すると,子供電子ゲーム装置のサブメモリに記憶された子供電子ゲーム装置で作成した詰棋の問題に関するゲームプログラムが転送出力」されており,「親電子ゲーム装置の収納部選択キー及びロードキー」の操作により「親電子ゲーム装置」から「子供電子ゲーム装置」に要求がなされ,それに応じて「子供電子ゲーム装置」から「親電子ゲーム装置」にゲームプログラムが転送出力されているものと認められることから,刊行物1記載の発明はプログラムに関する信号を親電子ゲーム装置からの要求に応じて該親電子ゲーム装置に転送しているものと認められる。そして,この点は補正発明の「記憶手段に記憶された,信号を親機からの要求に応じて該親機に転送する」に相当する。

したがって,両者は以下の点で一致している。
「プログラムの実行機能を有する親機に接続するためのインターフェースを有する電子機器であって,
上記親機のデータを記録する補助記憶装置として機能するとともに,プログラムも格納するプログラム格納手段と,
上記プログラム格納手段に格納されているプログラムの実行を制御する制御手段と,
信号を記憶する記憶手段と,
上記記憶手段に記憶された,信号を上記親機からの要求に応じて該親機に転送する,
電子機器。」

そして,以下に示す点で相違している。
<相違点>
(相違点1)
補正発明では,「プログラム格納手段に格納されたプログラムのアドレスを変換するアドレス変換手段」を備えており,
さらに,「上記アドレス変換手段は,上記プログラム格納手段に格納されたプログラムの不連続なアドレスを見かけ上連続するアドレスに変換するファイル管理テーブル手段を有しており,
上記制御手段は,上記ファイル管理テーブル手段により変換された連続するアドレスを利用して上記プログラム格納手段に格納されたプログラムを直接実行」可能としているのに対し,
刊行物1記載の発明では,「アドレス変換手段」を有しているか不明であり,「ファイル管理テーブル手段」を用いて「プログラムを直接実行」可能としているかも不明である点。

(相違点2)
記憶手段に記憶され,親機からの要求に応じて親機に転送される信号が,
補正発明では,イベントを表す信号の発生手段により発生した,イベントを表す信号であるのに対して,
刊行物1記載の発明では,どのような信号であるのかについて一応不明である点。

2-3 判断
(相違点1について)
刊行物2の「小型携帯情報処理装置」,「フラッシュEPROM」,「プログラムコード」,「アドレス変換テーブル」は,それぞれ補正発明の「電子機器」,「プログラム格納手段」,「プログラム」,「ファイル管理テーブル手段」に相当する。
また,記載(2d)にあるように「アドレス情報を,フラッシュEPROMに内蔵する,ブロックアドレス変換テーブルにより,ハードウェアでリマップ」していることからみて,刊行物2にも「アドレス変換手段」が記載されているものと認められる。
そして,記載(2c)からみて「フラッシュEPROM」に格納された格納データはブロック間において連続性が確保されているとは限らないため,「フラッシュEPROM」に格納されたデータを直接実行する場合等において問題があるが,記載(2a),(2d),(2e)にあるように「アドレス変換テーブル」によりアドレス情報をリマップすることでアドレスの連続性を確保することにより,プログラムコードを直接実行すること等を可能にする点が記載されているものと認められる。

刊行物1記載の発明,刊行物2記載の「小型携帯情報処理装置」は,メモリに格納したプログラムを実行する情報処理装置に関するものである点で共通しており,刊行物1記載の発明も当然有する課題である制御における処理の高速化,メモリの使用効率の向上等を図るために,刊行物1記載の発明のサブメモリから読み出される「ゲームプログラム」のアドレスに,刊行物2に記載された「プログラムコード」を直接実行可能とすることを可能とする「アドレス変換テーブル」によりアドレス情報をリマップすることでアドレスの連続性を確保する技術を採用して,相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
刊行物1記載の発明は,「子供電子ゲーム装置6で詰棋の問題を作成」しているものの,どのようにして問題を作成するかについては明らかでないが,記載(1e)には「子供電子ゲーム装置6,6のキー7を操作することにより地雷設定を行う」ことが記載されており,キー操作によりゲームの問題作成を行うことは周知の技術(必要であれば,特開平09-75550号公報の段落0027,0028,0046参照)であることを考慮すれば,刊行物1記載の発明において詰棋の問題の作成を子供電子ゲーム装置が備えるキーの操作により行うことは当業者であれば適宜行うことである。

また,補正発明における「イベント」とは,段落0063の「本発明に係る携帯用電子機器100は,・・・イベント入力や各種選択等を行なうための1個又は複数の操作子121,122を有してなる操作部120・・・が設けられている。」との記載,段落0074の「携帯用電子機器100は,・・・格納されたプログラムを操作するための操作ボタン等の操作(イベント)入力手段43,・・・上記の各部に電源を供給する電池49を備えている点が異なっている。」との記載からみて,「操作入力手段による操作」を少なくとも含むものであると認められる。

ここで,刊行物1記載の発明において,詰棋の問題の作成を子供電子ゲーム装置が備えるキーの操作により行った場合には,「操作入力手段」に相当する「キー」を操作した結果である詰棋の問題を表す信号を「記憶手段」に相当する「サブメモリ」に記憶することとなるものと認められ,補正発明の「イベント」は「操作入力手段による操作」を含むものであることから,「操作入力手段」による操作である「イベント」を表す信号を「記憶手段」に記憶することになるものと認められる。

してみると,刊行物1記載の発明において詰棋の問題の作成を子供電子ゲーム装置が備えるキーの操作により行うことにより,相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして,補正発明の作用効果は,刊行物1記載の発明,刊行物2に記載の事項,及び,周知の技術から予測できる程度のものである。

したがって,補正発明は,刊行物1記載の発明,刊行物2に記載の事項,及び,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
以上より,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
平成23年4月19日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1?6に係る発明は,平成21年7月24日付けで手続補正された請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】プログラムの実行機能を有する親機に接続するためのインターフェースを有する電子機器であって,
上記親機のデータを記録する補助記憶装置として機能するとともに,プログラムも格納するプログラム格納手段と,
上記プログラム格納手段に格納されているプログラムの実行を制御する制御手段と,
上記プログラム格納手段に格納されたプログラムのアドレスを変換するアドレス変換手段と,
イベントを表す信号を記憶する記憶手段とを備え,
上記記憶手段に記憶された,イベントを表す信号を上記親機からの要求に応じて該親機に転送し,
上記アドレス変換手段は,上記プログラム格納手段に格納されたプログラムの不連続なアドレスを見かけ上連続するアドレスに変換するファイル管理テーブル手段を有しており,
上記制御手段は,上記ファイル管理テーブル手段により変換された連続するアドレスを利用して上記プログラム格納手段に格納されたプログラムを直接実行することを特徴とする,電子機器。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された,刊行物1,2とその記載事項は,前記「第2 2 2-1」の「(1)」,「(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2 2」で検討した本願補正発明からイベントの「発生手段」に関する構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2」の「2-2」,「2-3」に記載したとおり,刊行物1記載の発明,刊行物2に記載の事項,及び,周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1記載の発明,刊行物2に記載の事項,及び,周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして,本願発明の作用効果は,刊行物1記載の発明,刊行物2に記載の事項,及び,周知の技術から予測できる程度のものである。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明,刊行物2に記載の事項,及び,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないものであることから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-29 
結審通知日 2012-05-30 
審決日 2012-06-12 
出願番号 特願2004-146607(P2004-146607)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦秋山 斉昭  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 鈴野 幹夫
横井 巨人
発明の名称 携帯用電子機器及びエンタテインメントシステム  
代理人 大平 拓治  
代理人 高橋 要泰  

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