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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1260612
審判番号 不服2010-10248  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-13 
確定日 2012-07-27 
事件の表示 特願2006-522861「エンコードされたメッセージを処理するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月17日国際公開、WO2005/015337、平成19年 2月 1日国内公表、特表2007-502062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年8月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年8月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年1月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされたが、当審において平成23年11月11日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成24年2月14日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年2月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。

「送信者によってサーバへ提供されたエンコードされたメッセージを処理する方法であって、該方法は、
該エンコードされたメッセージを該サーバで受信することであって、該エンコードされたメッセージは、安全なメッセージである、ことと、
該エンコードされたメッセージのサイズを該サーバにおいて決定することと、
該エンコードされたメッセージのサイズが所定の閾値を超えているか否かを該サーバにおいて決定することと、
該エンコードされたメッセージのサイズが該所定の閾値を超えていると決定された場合に、
該エンコードされたメッセージに関するメッセージステータス指示を該サーバにおいて生成することと、
該エンコードされたメッセージを処理して、メッセージデータを生成することであって、該メッセージデータは、該メッセージデータのサイズが該所定の閾値よりも小さくなるように生成される、ことと、
該メッセージステータス指示と該メッセージデータとを無線移動体通信機器へ送信することと
を包含し、
該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータは、該エンコードされたメッセージ全体より小さい該エンコードされたメッセージの一部分であるか、または、該エンコードされたメッセージ全体のいずれかであり、
該メッセージステータス指示は、該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータが、該エンコードされたメッセージ全体より小さい該エンコードされたメッセージの一部分のみである場合に、エンコード関連処理が該無線移動体通信機器によって実行されないことを決定するために、該無線移動体通信機器によって利用されるためのものであり、
該エンコード関連処理は、安全なメッセージ関連処理である、方法。」

3.引用発明
A.引用発明1
当審の拒絶理由に引用された国際公開第02/101605号(以下、「引用例1」という。)には、「SYSTEM AND METHOD FOR COMPRESSING SECURE E-MAIL FOR EXCHANGE WITH A MOBILE DATA COMMUNICATION DEVICE」(当審仮訳:モバイルデータ通信デバイスと交換するためのセキュアなEメールを圧縮するシステムおよび方法)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「A wireless connector system operating at a host system enables the user of a mobile device to send or mirror, via a wireless network, certain user-selected data items or parts of data items from the host system to the user's mobile device upon detecting that one or more triggering events has occurred. In the process of sending data items to the user's mobile device, there is special processing performed that enables the support of S/MIME or PGP encrypted messages. For one skilled in the art of S/MIME, it is well known that the size of an original e-mail message can be dramatically increased when S/MIME algorithms are applied to the message. By applying advanced filtering, re-organization and pre-processing on the message, the user can still receive such data items on a mobile device. In some situations, the user can have full control over S/MIME processing stages and can direct the host system as to which procedures it should perform on a message. 」(第5頁第12?22行)
(当審仮訳:ホストシステムで動作するワイヤレスコネクタシステムは、モバイルデバイスのユーザが、ワイヤレスネットワークを介して、特定のユーザ選択されたデータアイテム、またはデータアイテムの一部分をホストシステムからユーザのモバイルデバイスに送信またはミラーリングすることを可能にする。データアイテムをユーザのモバイルデバイスに送信するプロセスにおいて、S/MIMEまたはPGPで暗号メッセージのサポートを可能にする特殊処理が実行される。S/MIMEアルゴリズムがメッセージに適用されると、オリジナルeメールメッセージのサイズが劇的に増大され得ることがS/MIME分野の当業者に公知である。ユーザは、高性能フィルタリング、再組織化、および事前処理をメッセージに適用することによって、このようなデータアイテムを依然としてモバイルデバイス上で受信し得る。いくつかの状況において、ユーザは、S/MIME処理段をフルコントロールし得、かつ、ホストシステムがメッセージに対して実行すべき手順に関してホストシステムに指示する。)

イ.「It will be apparent that decryption and re-encryption of encrypted messages by the wireless connector system 909 would normally represent a security concern. However, in the system shown in Fig. 9, the decryption and re-encryption are performed behind the security firewall 903 and decrypted information therefore remains as secure as any other information in the corporate LAN 906. When a strong encryption scheme such as 3DES is used between the wireless connector system 909 and mobile devices 912, 914, any previously decrypted information, including decrypted messages or session keys, remains secure while being transferred between the wireless connector system 909 and mobile devices 912, 914.
Fig. 10 is a block diagram of a signed message pre-processing system. The system in Fig. 10 is similar to the system in Fig. 9, with similarly labelled components in Figs. 9 and 10 being substantially similar, although the system of Fig. 10 pre-processes signed messages. In Fig. 10, digital signature verification is performed on behalf of a mobile device user at the user's host system location (LAN 1006), thus saving the transmission of the digital signature and typically bulky signature-related data.
A message 1016 signed by an e-mail message sender 1002 would include a digital signature component 1018 and a message body component 1020, as described above. When the signed message 1016 is received and forwarded to appropriate mailboxes by the message server 1005, the wireless connector system 1009 detects the new message and determines whether or not it should be sent to one or more mobile devices. In the example in Fig. 10, the message should be sent to both mobile devices 1012 and 1014.
The wireless connector system 1009 then detects that the message has been signed and attempts to find the public key of the sender. This public key could be retrieved from a local storage area or possibly from a PKS 1028 somewhere on the WAN 1004. Once the public key of the sender is retrieved, the digital signature can be verified by the wireless connector system 1009 on behalf of each mobile device user. A message is then prepared and forwarded to each mobile device 1012, 1014, preferably including an indication as to whether or not the digital signature was verified. As shown at 1024, 1025 and 1026, 1027, the original message body 1020 and signature indication are re-enveloped and possibly encrypted for security before being sent to the mobile devices 1012, 1014. Although the signature indication is not necessarily confidential, encryption thereof prevents an unauthorized party from inserting an incorrect signature indication or changing a signature indication. At each device, the outer envelope is removed and the message and signature indication are decrypted if necessary before being presented to the user. 」(第34頁第20行?第36頁第2行)
(当審仮訳:ワイヤレスコネクタシステム909による暗号メッセージの復号化および再暗号化は、通常、セキュリティと関係があることが明らかである。しかしながら、図9に示されるシステムにおいて、復号化および再暗号化は、セキュリティファイアウォール903の背後で実行され、従って、復号化された情報は、企業LAN906における任意の他の情報と同じほどセキュアな状態に留まる。3DES等の強力な暗号化スキーマがワイヤレスコネクタシステム909とモバイルデバイス912、914との間で用いられる場合、復号化されたメッセージまたはセッション鍵を含む任意の前に復号化された情報は、ワイヤレスコネクタシステム909とモバイルデバイス912、914との間に転送される間、セキュアな状態である。
図10は、署名入りメッセージ事前処理システムのブロック図である。図10におけるシステムは、図9におけるシステムと類似であり、図9および図10において類似の態様で符号付けされるコンポーネントは、実質的に類似であるが、図10のシステムは、署名入りメッセージを事前処理する。図10において、デジタル署名検証が、ユーザのホストシステムロケーション(LAN1006)にてモバイルデバイスユーザの代わりに実行され、従って、デジタル署名、および、典型的には、バルキーな署名関連データの送信を節約する。
eメールメッセージ発信者1002によって署名入りメッセージ1016は、上述のように、デジタル署名コンポーネント1018およびメッセージボディコンポーネント1020を含む。署名入りメッセージ1016が受信されて、メッセージサーバ1005によって適切なメールボックスに転送された場合、ワイヤレスコネクタシステム1009は、新しいメッセージを検出し、かつ、1つ以上のモバイルデバイスに送信されるべきかどうかを決定する。図10における例において、メッセージは、モバイルデバイス1012および1014の両方に送信される。
ワイヤレスコネクタシステム1009は、その後、メッセージが署名されたことを検出し、発信者の公開鍵を見出すことを試みる。この公開鍵は、WAN1004上のどこかの局所的格納領域、または、場合によっては、PKS1028から取り出され得る。一旦発信者の公開鍵が取り出されると、各モバイルデバイスユーザの代わりに、デジタル署名がワイヤレスコネクタシステム1009によって検証され得る。好適には、デジタル署名が検証されたかどうかに関する表示を含むメッセージが、その後、加工され、各モバイルデバイス1012、1014に転送される。1024、1025および1026、1027に示されるように、オリジナルメッセージボディ1020および署名表示は、モバイルデバイス1012、1014に送信される前にセキュリティのために再エンベロープされ、場合によっては、暗号化される。署名表示は、必ずしも機密でないが、その暗号化は、認可されないパーティが不正確な署名を挿入するか、または、署名表示を変更することを防止する。各デバイスにおいて、ユーザに提供される前に、必要に応じて、外部エンベロープが除去され、メッセージおよび署名表示が復号化される。)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例1に記載されたセキュアなEメールを圧縮するシステムにおいて、署名入りメッセージ事前処理システムにおけるメッセージの処理方法が記載されており、
・eメールメッセージ発信者1002によって送信された、デジタル署名コンポーネント1018およびメッセージボディコンポーネント1020を含む署名入りメッセージ1016は、メッセージサーバ1005で受信され(摘記事項イ)、
・上記デジタル署名が、ワイヤレスコネクタシステム1009によって検証され、デジタル署名が検証されたかどうかに関する表示を含むメッセージが、各モバイルデバイス1012、1014に転送され(摘記事項イ)、
・上記ワイヤレスコネクタシステム1009に関連して、「ホストシステムで動作するワイヤレスコネクタシステムは、モバイルデバイスのユーザが、ワイヤレスネットワークを介して、特定のユーザ選択されたデータアイテム、またはデータアイテムの一部分をホストシステムからユーザのモバイルデバイスに送信またはミラーリングすることを可能にする。データアイテムをユーザのモバイルデバイスに送信するプロセスにおいて、S/MIMEまたはPGPで暗号メッセージのサポートを可能にする特殊処理が実行される。」(摘記事項ア)と記載されていることからも明らかなように、上記ワイヤレスコネクタシステム1009とメッセージサーバ1005とでeメールメッセージの処理や送受信を行うから、これらはともに、サーバと言いうるものであり、
・転送されるメッセージは署名の表示1026、1027およびメッセージボディ1024、1025であって、デジタル署名コンポーネント1018が含まれないことは明らかであり、
・「各デバイスにおいて、ユーザに提供される前に、必要に応じて、外部エンベロープが除去され、メッセージおよび署名表示が復号化される。」(摘記事項イ)の記載によれば、署名の表示1026、1027は、各モバイルデバイスにおいて、ユーザに提供されるために表示されることは明らかであるから、各モバイルデバイスによって利用されると言うことができ、

以上を総合すれば、上記引用例1には、eメールメッセージ発信者によってメッセージサーバへ送信されたセキュアなeメールメッセージを圧縮する方法に関する以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「eメールメッセージ発信者1002によってサーバへ送信されたeメールメッセージを事前処理する方法であって、該方法は、
該eメールメッセージを該サーバで受信することであって、該eメールメッセージは、デジタル署名入りメッセージ1016である、ことと、
該eメールメッセージに関するデジタル署名が検証されたかどうかに関する表示である署名の表示1026、1027を該サーバにおいて生成することと、
該eメールメッセージを処理して、メッセージボディ1024、1025を生成する、ことと、
該署名の表示1026、1027およびメッセージボディ1024、1025とを各モバイルデバイスへ送信することと
を包含し、
該各モバイルデバイスへ送信された該メッセージボディ1024、1025は、該eメールメッセージに関するデジタル署名を含まず、
該eメールメッセージに関するデジタル署名が検証されたかどうかに関する表示は、該各モバイルデバイスによって利用されるためのものである、
方法。」

B.引用発明2
同じく当審の拒絶理由に引用された特開平10-21164号公報(以下、「引用例2」という。)には、「電子メールシステム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ウ.「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術のこの様な問題点を改善するものであり、帯域の狭い伝送路を通して電子メールサーバから電子メール端末へ大量の電子メールを転送する際、それらの一部の情報を省略して転送し、しかも、使用者が煩雑な操作を必要しないようにすることを目的とする。」(第3頁、【0006】)

エ.「【0012】電子メールサーバ10は、ネットワーク20に対する制御を行うネットワーク制御部11と、電子メール配送部12を介して配送される電子メールを蓄積する電子メール蓄積部13と、この電子メール蓄積部13に蓄積された各々の電子メールのバイト数を検出しサイズを測定するサイズ測定部14と、このサイズ測定部14によって計測されたバイト数および追って詳説するように端末から指定されたモード設定に従って電子メールの転送を行う転送制御部15、およびネットワーク制御部11に接続されたモデム16とから構成される。電子メールサーバ10は、モデム16を介して公衆回線(PSTN/ISDN)60にも接続される。
【0013】携帯型電子メール端末50は、公衆回線60に接続された図示しない公衆基地局を介して無線通信を行う通信部51、各種の情報や受信した電子メールを表示する表示部52、電子メールの転送を指示する転送指示部、および、追って詳説する所定の電子メール受信モードを選択するモード選択部53を有し、このモード選択部53は、サイズ制限モード54、サイズ分類モード55および全転送量送信モード56のいずれかのモードを洗濯設定する。
【0014】次に、本発明による電子メールシステムの動作について説明する。本発明においては、携帯型電子メール端末50によって設定されたモードに従って転送が行われる。すなわち、サイズ制限モード54が設定されているときは、個々の電子メールの大きさに従って制御される。例えば、単に、電子メールの大きさが所定の大きさを超えた場合、そのメールに関しては、一部の情報(例えば、表題や発信者、あるいは表題と発信者と本文の先頭数行など)のみを伝送し、他のメールに関しては、全部の情報を転送する。これにより、長文であったり画像情報が含まれているなどのために大きなサイズとなっている電子メールは転送されず、短いメッセージは改めて転送指示する必要もなく転送する。もちろん、転送されなかった大きなメールは、どうしても必要ならば、改めて転送指示することも可能である。」(第3頁、【0012】?【0014】)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記電子メールシステムの電子メールサーバ10は、サイズ制限モードが設定されているときは、電子メールのサイズを測定し、この大きさ(サイズ)が所定の大きさを超えた場合、一部の情報のみを携帯型電子メール端末50に送信し、他のメールに関しては、全部の情報を転送するが(摘記事項エ)、このような電子メールサーバにおける電子メールの処理方法において、
・上記「所定の大きさ」は、電子メールをどのように送信するかを決定するための判断基準となる値であるから、「所定の閾値」と言え、
・上記「一部の情報のみ」が送信される電子メールは、電子メールサーバにおける処理が行われた電子メールであって「処理後の電子メール」と言え、また、該「処理後の電子メール」が上記所定の閾値よりも小さくなるように生成されていることは自明であるから、

結局、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「電子メールサーバにおいて、
電子メールのサイズを該電子メールサーバにおいて決定し、
該電子メールのサイズが所定の閾値を超えているか否かを該電子メールサーバにおいて決定し、
該電子メールのサイズが該所定の閾値を超えていると決定された場合、
処理後の電子メールのサイズが該所定の閾値よりも小さくなるように生成し、
携帯型電子メール端末へ送信された該処理後の電子メールは、該電子メール全体より小さい該電子メールの一部分である、
電子メール処理方法。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明1を対比すると、
・引用発明1の「eメールメッセージ」と本願発明の「エンコードされたメッセージ」は、「メッセージ」である点で共通し、
・引用発明1の「デジタル署名入りメッセージ1016」は安全なメッセージであると言えるから、本願発明の「安全なメッセージ」に含まれ、
・引用発明1の「メッセージボディ1024、1025」は、eメールメッセージを事前処理した後のメッセージであって、各モバイルデバイスに送信されるものであるから、本願発明の「メッセージデータ」に相当し、
・引用発明1の「eメールメッセージ発信者1002」、「各モバイルデバイス」、「サーバ」は、それぞれ、本願発明の「送信者」、「無線移動体通信機器」、「サーバ」に相当し、
・引用発明1の「事前処理する方法」は本願発明の「処理する方法」に明らかに含まれ、
・引用発明1の「デジタル署名が検証されたかどうかに関する表示である署名の表示1026、1027」は、メッセージが安全なものかどうかという状態(メッセージステータス)を示す表示であって、各モバイルデバイスによって利用されるものであるから、本願発明の「メッセージステータス指示」に相当し、
・引用発明1の「メッセージボディ1024、1025」は、デジタル署名を含まない点でeメールメッセージの一部分であると言え、また、本願発明の「該エンコードされたメッセージ全体より小さい該エンコードされたメッセージの一部分であるか、または、該エンコードされたメッセージ全体のいずれかであり」は、明らかに、「該エンコードされたメッセージ全体より小さい該エンコードされたメッセージの一部分である」場合のみを含むことも勘案すれば、
引用発明1の「該各モバイルデバイスへ送信された該メッセージボディ1024、1025は、該eメールメッセージに関するデジタル署名を含まず」と、本願発明の「該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータは、該エンコードされたメッセージ全体より小さい該エンコードされたメッセージの一部分であるか、または、該エンコードされたメッセージ全体のいずれかであり」とは、「該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータは、該メッセージの一部分であるか、または、該メッセージ全体のいずれかであり」、で共通し、
・引用発明1の「該eメールメッセージに関するデジタル署名が検証されたかどうかに関する表示は、該各モバイルデバイスによって利用されるためのもの」と、本願発明の「該メッセージステータス指示は、エンコード関連処理が該無線移動体通信機器によって実行されないことを決定するために、該無線移動体通信機器によって利用されるためのもの」とは、「該メッセージステータス指示は、該無線移動体通信機器によって利用されるためのもの」、で共通し、さらには、この「利用される」のが、両発明において、「該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータが、該メッセージの一部分のみである場合に」である点でも共通しており、

結局、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「送信者によってサーバへ提供されたメッセージを処理する方法であって、該方法は、
該メッセージを該サーバで受信することであって、該メッセージは、安全なメッセージである、ことと、
該メッセージに関するメッセージステータス指示を該サーバにおいて生成することと、
該メッセージを処理して、メッセージデータを生成することと、
該メッセージステータス指示と該メッセージデータとを無線移動体通信機器へ送信することと
を包含し、
該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータは、該メッセージの一部分であり、
該メッセージステータス指示は、該無線移動体通信機器へ送信された該メッセージデータが、該メッセージの一部分のみである場合に、該無線移動体通信機器によって利用されるためのものである、方法。」

(相違点1)
「メッセージ」が、
本願発明では「エンコードされたメッセージ」であるのに対し、
引用発明1では「eメールメッセージ」である点。
(相違点2)
「サーバ」における、メッセージステータス指示の生成やメッセージデータの生成などの処理が、
本願発明では、
「該エンコードされたメッセージのサイズを該サーバにおいて決定することと、
該エンコードされたメッセージのサイズが所定の閾値を超えているか否かを該サーバにおいて決定することと」
を包含しており、
「該エンコードされたメッセージのサイズが該所定の閾値を超えていると決定された場合に」行われるのに対し、
引用発明1では、当該具体的な処理は明らかにされていない点。
(相違点3)
本願発明では、
「該メッセージデータは、該メッセージデータのサイズが該所定の閾値よりも小さくなるように生成される、こと」
を包含し、
「該エンコードされたメッセージ全体より小さい」のに対し、
引用発明1では、「メッセージボディ1024、1025」のサイズについては明らかにされていない点。
(相違点4)
「メッセージステータス指示」に関し、
本願発明では、「エンコード関連処理が該無線移動体通信機器によって実行されないことを決定するために、該無線移動体通信機器によって利用されるためのものであり、該エンコード関連処理は、安全なメッセージ関連処理である」のに対し、
引用発明1では、単に「該各モバイルデバイスによって利用されるためのものである」点。

以下に、上記各相違点につき検討する。

(相違点1)について
本願発明の「エンコードされたメッセージ」とは、段落【0032】、【図3a】等の記載からして、「暗号化されたメッセージ」や「署名されたメッセージ」を指すと認められるが、引用発明1の「eメールメッセージ」も「デジタル署名入りメッセージ1016」であるから、「エンコードされたメッセージ」と言いうるものである。
さらに、引用例1の【図9】等には、送信者によってサーバへ提供されるメッセージとして、メッセージボディが暗号化されたメッセージが記載されており、このようなメッセージも「エンコードされたメッセージ」であるから、本願発明の「エンコードされたメッセージ」と引用発明1の「eメールメッセージ」との間に実質的な差異があるとは言えない。

(相違点2)および(相違点3)について
まず、上記「(相違点1)について」で検討したように、引用発明1の「メッセージ」を「エンコードされたメッセージ」とすることは当業者が適宜なし得るものである。
つぎに、上記「3.引用発明」の項中の「B.引用発明2」の項に記したように、上記引用例2には、
「電子メールサーバにおいて、
電子メールのサイズを該電子メールサーバにおいて決定し、
該電子メールのサイズが所定の閾値を超えているか否かを該電子メールサーバにおいて決定し、
該電子メールのサイズが該所定の閾値を超えていると決定された場合、
処理後の電子メールのサイズが該所定の閾値よりも小さくなるように生成し、
携帯型電子メール端末へ送信された該処理後の電子メールは、該電子メール全体より小さい該電子メールの一部分である、
電子メール処理方法。」
なる引用発明2が記載されている。
引用発明1,2は、いずれも、電子メールサーバにおける携帯型電子メール端末宛の電子メール処理方法に関する発明であって、共通の技術分野に属する発明であり、引用発明1の「eメールメッセージ」、「メッセージボディ1024、1025」、「サーバ」は、それぞれ、引用発明2の「電子メール」、「処理後の電子メール」、「電子メールサーバ」に相当する。
そして、引用例1の「図10において、デジタル署名検証が、ユーザのホストシステムロケーション(LAN1006)にてモバイルデバイスユーザの代わりに実行され、従って、デジタル署名、および、典型的には、バルキーな署名関連データの送信を節約する。」(摘記事項イ)の記載や、引用例2の「本発明は、従来技術のこの様な問題点を改善するものであり、帯域の狭い伝送路を通して電子メールサーバから電子メール端末へ大量の電子メールを転送する際、それらの一部の情報を省略して転送し、しかも、使用者が煩雑な操作を必要しないようにすることを目的とする。」(摘記事項ウ)の記載から、引用発明1,2のサーバにおける電子メールの処理は、電子メールのサイズの縮小を目的としていることは明らかであるから、引用発明2の「サーバ」における処理を引用発明1に適用することにより、引用発明1の「サーバ」における、メッセージステータス指示の生成やメッセージデータの生成などの処理が、
「『該エンコードされたメッセージのサイズを該サーバにおいて決定することと、
該エンコードされたメッセージのサイズが所定の閾値を超えているか否かを該サーバにおいて決定することと』
を包含しており、
『該エンコードされたメッセージのサイズが該所定の閾値を超えていると決定された場合に』行われる」
ようにすること(相違点2)
及び、
「『該メッセージデータは、該メッセージデータのサイズが該所定の閾値よりも小さくなるように生成される、こと』
を包含し、
『該エンコードされたメッセージ全体より小さい』」
ようにすること(相違点3)
は、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点4)について
本願明細書の段落【0025】,【0074】?【0076】等の記載からして、本願発明の「エンコード関連処理」は「暗号化および/または署名」関連処理であり、本願発明の「安全なメッセージ」関連処理は「暗号化されたメッセージおよび/または署名されたメッセージなどの安全なメッセージ」関連処理であると認められる。
引用発明1においては、各モバイルデバイスへはデジタル署名が送信されないから、各モバイルシステムにおいて「デジタル署名」の検証が行われないことは明らかであるが、引用発明1において、「メッセージステータス指示」である「デジタル署名が検証されたかどうかに関する表示である署名の表示1026、1027」が各モバイルデバイスに送信されるのであるから、該「デジタル署名が検証されたかどうかに関する表示である署名の表示1026、1027」を利用して、デジタル署名の検証、すなわち、「エンコード関連処理」が実行されないことを決定することは当業者が容易に想到し得たものである。
また、上記デジタル署名が付加されたメッセージが安全なメッセージであることは明らかであるから、上記「エンコード関連処理」が「安全なメッセージ関連処理」であることも自明なことに過ぎない。

そして、本願発明の作用・効果も引用発明1,2から当業者が予測し得る範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1,2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-05 
結審通知日 2012-03-06 
審決日 2012-03-19 
出願番号 特願2006-522861(P2006-522861)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 隆之  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 新川 圭二
宮田 繁仁
発明の名称 エンコードされたメッセージを処理するシステムおよび方法  
代理人 大塩 竹志  

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