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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1260707 |
審判番号 | 不服2010-27688 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-07 |
確定日 | 2012-07-26 |
事件の表示 | 特願2005-135283「基板のスルーホール構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月16日出願公開、特開2006-313790〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成17年5月6日の出願であって、平成22年3月24日付けで拒絶理由が通知され、平成22年5月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年8月31日付けで拒絶査定がなされ、平成22年12月7日に拒絶査定に対する審判請求がされ、その後、当審において平成24年2月10日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成24年4月16日付けの手続補正書によって補正された細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 両面間を連通するスルーホールが形成される基板のスルーホール構造であって、 前記基板の両面と導通する導電性の電気接続部の熱応力を吸収する応力緩和層を前記スルーホールの内周壁に設け、 前記電気接続部を前記応力緩和層に設けるとともに前記スルーホールの一方の開口を閉塞するように設け、 前記スルーホールの両端において、前記基板と前記電気接続部とが前記応力緩和層によって分離している ことを特徴とする基板のスルーホール構造。」 2.引用文献に記載された発明 (1)引用文献 当審における拒絶理由に引用された文献である特開平3-50781号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。 ア.「産業上の利用分野 本発明は、導体層を厚膜ペーストを用いて印刷形成する厚膜混成集積回路に関するもので、特にスルーホールの構成に特徴を有するものである。」(公報第1ページ左下欄第13ないし15行) イ.「発明が解決しようとする課題 しかしながら上記のような構成では、セラミック基板の熱膨張係数と導体層の熱膨張係数との間に大きな差がある場合、導体層にクラックが発生し、セラミック基板の表裏に形成された電気回路の導通が得られないことがあった。 特に、このクラックは、スルーホール2の端部Aあるいは前記の重なり部分4のように導体層の膜厚が不均一な部分およびその周辺に生じやすいものがあった。 本発明は、かかる点に鑑み、スル-ホール壁面あるいはスルーホール周辺の導体層にクラックが発生しない厚膜混成集積回路を提供するものである。 課題を解決するための手段 本発明の厚膜混成集積回路は、セラミック基板のスルーホール壁面と前記スルーホール周辺の少なくとも一部に、セラミック基板と導体層の各熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する中間層を形成し、この中間層の上層に前記導体層を形成したことを特徴とするものである。 作 用 かかる構成によれば、中間層が緩衝帯となり、導体層の重なり部分やスルーホール端部におけるクラックの発生を防止する。」(公報第1ページ右下欄第17行ないし第2ページ右上欄第1行) ウ.「実 施 例 以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。 第1図は、本発明の一実施例における厚膜混成集積回路の断面図であり、第3図の従来例と同一構成部品には同一符号を付している。本実施例と第3図の従来例の差異は、スル-ホール壁面に、セラミック基板1の熱膨張係数と導体層3a,3bの熱膨張係数の間の熱膨張係数を有する、例えば、抵抗体よりなる中間層5aを予め形成しておき、その上に導体層3a,3bが形成されている。 このように構成された厚膜混成集積回路では、導体層3a、3bの形成時、中間層5a、5bが、セラミック基板1と導体層3a、3bの熱膨張係数の差異を吸収する緩衝帯として働き、クラックが発生しない。」(公報第2ページ右上欄第2行ないし17行) エ.「発明の効果 以上のように本発明によれば、セラミック基板のスルーホール壁面と前記スルーホール周辺の少なくとも一部に、前記セラミック基板の熱膨張係数と導体層の熱膨張係数の間の熱膨張係数を有する中間層を設け、その中間層の上層に前記導体層を形成することにより、スルーホール壁面および周辺の導体層のクラックを防止することができる。 4、図面の簡単な説明 第1図は本発明の厚膜混成集積回路の一実施例を示す要部断面図、第2図は本発明の他の実施例を示す要部断面図、第3図は従来の厚膜混成集積回路の要部断面図である。 1・・・・・・セラミック基板、2・・・・・・スルーホール、3a,3b・・・・・・導体層、4・・・・・・導体層の重なり部分、5a,5b・・・・・・中間層。」(公報第2ページ左下欄第8行ないし右下欄第3行) (2)引用文献に記載された発明 上記(1)ア.ないしエ.及び図面の記載を参酌すると、以下のことが分かる。 オ.両面間を連通するスルーホール2が形成されるセラミック基板1のスルーホール構成であって、前記セラミック基板1の両面と導通する導電性の導体層3a,3bがあることが分かる。 カ.熱応力を吸収する中間層5a,5bをスルーホール壁面に設け、導体層3a、3bを中間層5a、5bに設けているセラミック基板1のスルーホールの構成であることが分かる。 以上(1)及び(2)におけるア.ないしカ.並びに図面を参酌すると、引用文献には、以下の発明が記載されているといえる。 「両面間を連通するスルーホール2が形成されるセラミック基板1のスルーホールの構成であって、 前記セラミック基板1の両面と導通する導電性の導体層3a,3bの熱応力を吸収する中間層5a,5bを前記スルーホール壁面に設け、 前記導体層3a、3bを前記中間層5a、5bに設けるセラミック基板1のスルーホールの構成。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。) 3.対比 本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「スルーホール2」は、その目的及び機能からみて、本願発明における「スルーホール」に相当し、以下同様に「セラミック基板1」は「基板」に、「導体層3a、3b」は「電気接続部」に、「中間層5a、5b」は「応力緩和層」に、「スルーホール壁面」は「スルーホールの内周壁」に、「スルーホールの構成」は「スルーホール構造」に、各々相当することから、本願発明と引用文献に記載された発明とは 「両面間を連通するスルーホールが形成される基板のスルーホール構造であって、 前記基板の両面と導通する導電性の電気接続部の熱応力を吸収する応力緩和層を前記スルーホールの内周壁に設け、 前記電気接続部を前記応力緩和層に設ける基板のスルーホール構造。」の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する場合を包含している。 〈相違点〉 (1)本願発明においては、「電気接続部を前記スルーホールの一方の開口を閉塞するように設け」るのに対して、引用文献に記載された発明においては、スルーホールの一方の開口を、そのように特定していない点(以下、「相違点1」という。)。 (2)本願発明においては、「スルーホールの両端において、基板と電気接続部とが応力緩和層によって分離している」のに対して、引用文献記載の発明においては、そのように特定されているか不明である点(以下、「相違点2」という。)。 4.判断 上記相違点1及び2について検討する。 (1)相違点1について 一般に、基板の技術分野において、電気接続部をスルーホールの一方の開口を閉塞するように設けることは、本願出願前に周知(例えば、平成24年2月10日付け拒絶理由で例示した、特開2001-308484号公報、特開2000-77809号公報参照、以下、「周知技術」という。)であり、引用文献に記載された発明に上記周知技術を適用して相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。 (2)相違点2について (2)-1 手続補正書における「スルーホールの両端」という用語の意味 平成24年2月10日付けの拒絶理由に対する平成24年4月16日付けで提出された手続補正書によって補正された本願発明の発明特定事項である「スルーホールの両端において・・・分離している」は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に直接的な記載はなく、同日付けで提出された意見書において図1及び図2に基づいて補正した旨の主張があるので、「スルーホールの両端」という用語の意味について、まず検討する。 本願発明における「スルーホール」とは、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、基板に設けた貫通孔であることが分かる。 すなわち、実施形態(図1の実施形態1,2は円筒体、図2の実施形態3は円錐台)では、スルーホールの内周壁と電気接続部との間に、応力緩和層を設ける旨記載され、スルーホールの開口の一方を閉塞したスルーホール構造である旨記載されていることからも明らかである。 そして、「スルーホールの両端」とは、上記貫通孔を構成する円筒体あるいは円錐台の上面及び下面になる部分であり、基板と面一となる部分であることが分かる。 (2)-2 引用文献の検討1 引用文献において、スルーホール壁面に中間層5a,5bを設け、その上に導体層3a,3b導体層を設ける旨の記載があり、当該記載と図面を参酌すると、スルーホール2とはセラミック基板1に設けた貫通孔であることが分かる。そして、スルーホール2の両端とは、貫通孔を構成する円筒体の上面及び下面になる部分であることは明らかであるから、引用文献に記載された発明においても、「スルーホールの両端」では、中間層5a,5b及び導体層3a,3b導体層は分離しているといえる。 よって、相違点2について検討すると、引用文献には、本願発明における「スルーホールの両端において、基板と電気接続部とが応力緩和層によって分離している」旨の記載が開示されていることになり、相違点2は実質的な相違点ではないことになる。 (2)-3 引用文献の検討2 引用文献において、「スルーホールの両端」とは、貫通孔を構成する円筒体上面及び下面になる部分ではあるが、仮に、貫通孔に設けた中間層5a,5b及び導体層3a,3b導体層を含む円筒体の上面及び下面として、相違点2をさらに検討する。 「スルーホールの両端」に関して、本願発明においては「基板と電気接続部とが応力緩和層によって分離している」のに対して、引用文献に記載された発明においては、「基板と電気接続部とが応力緩和層によって部分的に分離してる」点に、相違点2は帰着することになる。 そこで、検討すると、本願発明における課題は、そもそも、例えば、段落【0004】に記載されるように「基板と電気接続部との間の熱膨張率の(線膨張係数〉の違いにより熱応力が発生し・・・熱応力を十分に低減する」及び段落【0011】に「電気接続部の熱応力が基板に加わることを緩和する」ことであり、そのために段落【0006】に「電気接続部の熱応力を吸収する導電性の電気接続部を、前記応力緩和層に設け」たものである。 一方、引用文献においても、電気接続部の熱応力が基板に加わることを緩和することを目的とする旨の記載があり、応力緩和のために電気接続部の電気接続部の熱応力を吸収する導電性の電気接続部を、前記応力緩和層に設けているといえることから、本願発明と引用文献に記載された発明とは、解決しようとする課題及び具体的手段において両者は軌を一にするものであり、熱応力の緩和の程度あるいは基板上の配線パターンの自由度を考慮して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が適宜なし得る設計上の問題にすぎないものである。 (2)-4 相違点2についてのむすび 結局、相違点2は、実質的な相違点とはいえないか又は、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものであるといえる。 また、本願発明を全体として検討しても、引用文献に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-22 |
結審通知日 | 2012-05-29 |
審決日 | 2012-06-11 |
出願番号 | 特願2005-135283(P2005-135283) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森藤 淳志 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 基板のスルーホール構造 |
代理人 | 水尻 勝久 |
代理人 | 北出 英敏 |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 坂口 武 |