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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1260715
審判番号 不服2011-3177  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-14 
確定日 2012-07-26 
事件の表示 特願2004-331393「電子レンジ加熱用包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-143223〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年11月16日の出願であって、平成22年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年2月14日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、当審において、平成24年2月22日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成24年4月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年4月26日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「水分と油分を含む液状物と固形状物からなる食品を収納し、電子レンジで加熱調理する電子レンジ加熱用包装袋であって、前記電子レンジ加熱用包装袋が、ポリブチレンテレフタレート系フィルムと未延伸ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれかの樹脂からなる熱接着性樹脂層がウレタン系接着剤からなる接着層により積層された積層体を使用して、周縁に熱接着部が形成されるとともに前記熱接着部に隣接して電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている構成からなることを特徴とする電子レンジ加熱用包装袋。」

3.引用例
これに対して、当審で通知した拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2003-54651号公報(以下、「引用例1」という。)、
特開平3-124443号公報(以下、「引用例2」という。)及び
特開2004-189300号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ以下の各事項が記載されている。

[引用例1について]
(1a)「【請求項1】非ヒートシール性樹脂層とヒートシール性樹脂層とを備えた積層フィルムのヒートシール性樹脂層が内側となるようにヒートシールしてなる電子レンジ用包装袋であって、袋底部となる第1のヒートシール部と、前記第1のヒートシール部と交差する少なくとも1つの第2のヒートシール部とを有し、
少なくとも前記第1および第2のヒートシール部の交差部を含む袋内面に、前記第2のヒートシール部に沿って、非ヒートシール性樹脂層を有するテープ状フィルムが、接着されていることを特徴とする電子レンジ用包装袋。」

(1b)「【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、電子レンジによって加熱調理される食品を収納するための包装袋に関し、特に加熱時の袋内圧上昇による袋の破裂を防止した電子レンジ用包装袋に関する。」

(1c)「【0008】このような構成の電子レンジ用包装袋は、その底部となる第1のヒートシール部において、ヒートシール性樹脂層どうしが熱融着することにより強固に接着されているが、テープ状フィルムが接着された部分は、ヒートシール性樹脂どうしの接着ではなく、テープ状フィルムの非ヒートシール性樹脂層と袋のヒートシール性樹脂層とが接着することになる。この接着は、熱融着された他の部分の接着に比べ弱く、袋の内圧等によって簡単に剥離され、その部分がガス抜き孔として機能する。」

(1d)「【0015】耐熱性プラスチックフィルムは、電子レンジ加熱調理による内容物の加熱温度に対する耐熱性があり、またヒートシール時の熱によって溶融されないもので、例えば6-ナイロン、6,6-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル等であって延伸したものが挙げられる。」

(1e)「【0016】ヒートシール性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等の熱可塑性樹脂が挙げられ、特に直鎖状低密度ポリエチレンが好適である。」

(1f)「【0017】これら耐熱性プラスチックフィルムとヒートシール性樹脂層は、溶融押出しラミネート法、ドライラミネート法、または共押出しラミネート法により積層したフィルムであってもよい。また非ヒートシール性樹脂層とヒートシール性樹脂層との間或いは非ヒートシール性樹脂層の外側に、ガスバリアー性、フィルム強度、または層間接着性を高めるために1ないし複数の層を設けたものであってもよい。」

以上の記載によると、引用例1には、
「6-ナイロン、6,6-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル等から選択される耐熱性プラスチックフィルムと、直鎖状低密度ポリエチレンであるヒートシール性樹脂層とを備えた積層フィルムのヒートシール性樹脂層が内側となるようにヒートシールしてなる電子レンジによって加熱調理される食品を収納するための電子レンジ用包装袋であって、それらの層の間に層間接着性を高める層を設け、また、袋底部となる第1のヒートシール部と、前記第1のヒートシール部と交差する少なくとも1つの第2のヒートシール部とを有し、少なくとも前記第1および第2のヒートシール部の交差部を含む袋内面に、前記第2のヒートシール部に沿って、非ヒートシール性樹脂層を有するテープ状フィルムが、接着されている電子レンジ用包装袋。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「ポリブチレンテレフタレート層とヒートシール層とが積層されたフィルムであって、上記ヒートシール層が、140?215℃の融点を有するポリブチレンテレフタレート系共重合体で形成されていることを特徴とする積層フィルム。」(特許請求の範囲参照)

(2b)「本発明は、電子レンジによる加熱処理やレトルト処理される包装材料等として好適な積層フィルムに関する。」(第1頁左下欄12?14行参照)

(2c)「一方、耐熱性及び機械的強度に優れるフィルムとしてポリブチレンテレフタレートフィルムが知られている。このポリブチレンテレフタレートフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムと同じくガスバリア性、耐油性等の化学的安定性、衛生性等に優れる外、ポリエチレンテレフタレートフィルムよりも伸度、引裂強度や衝撃強度が大きい等、多くの利点を有している。特にポリブチレンテレフタレートフィルムは、無延伸で耐熱性に優れるので、高温下でのフィルムの収縮率が著しく小さいという特徴を有している。従って、このような優れた特性を有するポリブチレンテレフタレートは、内容物の保護性に優れ、耐熱性が必要とされる包装材料、例えば電子レンジ加熱やレトルト処理される食品用包装材料等として有用である。」(第1頁左下欄第20頁?同頁右下欄第15行参照)

(2d)「本発明の積層フィルムは、・・・接着剤層を介してポリブチレンテレフタレート層とヒートシール層とをラミネートすることにより製造できる。」(第4頁右上欄第14?20行参照)。

以上の記載によると、引用例2には、
「ポリブチレンテレフタレートフィルムは、耐熱性及び機械的強度に優れるフィルムであって、内容物の保護性に優れ、耐熱性が必要とされる包装材料、例えば電子レンジ加熱やレトルト処理される食品用包装材料等として有用である」ことが記載されているものと認められる。

[引用例3について]
(3a)「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態における自立性を有する電子レンジ用包装袋について図面を参酌して説明する。
図1には、本実施形態に係る電子レンジ用包装袋が内部に被調理品を収容した状態にて示されている。」

(3b)「【0012】
・・・尚、前壁面1、後壁面2、及び底ガセット3が各々別々の包装フィルムから構成され、これらの合計三枚の包装フィルムが互いにヒートシールにより接着されることにより密封袋状に形成されているが、・・・尚、図1において、ヒートシールにより形成された部分はクロスハッチングにて示されている。また、前壁面1、後壁面2及び底ガセット3から、被調理品が収容される収容空間部4が形成される。
尚、包装フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ナイロンフィルムを基材とし、最内層にポリエチレンやポリプロピレン系樹脂からなるシーラント層を設けた二層以上の積層フィルムが使用される。
【0013】
また、前後両壁面1,2のうちの一方に背貼り部5が設けられている。・・・」

(3c)「【0014】
背貼り部5は、包装フィルムの内面同士が接着された接着部6と、接着されていない非接着部7とを有している。接着部6は、非接着部7を三方から囲むように、背貼り部5の左右両端部と先端部とに設けられて全体として略コの字状に形成されている。従って、非接着部7は、前記収容空間部4と連通している。
【0015】
また、接着部6は、背貼り部5の幅方向略中央において、先端部から基端部に向けて延設された延設凸部8を有している。該延設凸部8には、背貼り部5の二重の包装フィルムを上下に貫通する孔9が圧力排出部として形成されている。加熱前の通常時においては、図3(イ)に示すように背貼り部5は偏平状態にあるが、電子レンジによる加熱時には、被調理品から発生する蒸気によって収容空間部4の圧力が上昇し、それによって先ず図3(ロ)のように背貼り部5における非接着部7において包装フィルムの内面が互いに離間する。背貼り部5の非接着部7において包装フィルムが上下に引っ張られるように膨出することにより接着部6には剥離作用が生じ、その剥離の力は延設凸部8に集中する。なおも加熱されて次第に圧力が上昇していくと、ついには延設凸部8が剥離し、収容空間部4は背貼り部5の非接着部7と孔9とを介して外部と連通し、これにより蒸気が孔9から外部に抜け出て過度の圧力上昇が防止され、破裂なく加熱処理が終了する。尚、延設凸部8が剥離しやすいように延設凸部8の接着力を他の部分よりも弱くしたものが好ましい。」

(3d)図1には、孔(圧力排出部)9が、接着部6に隣接して形成されていることが示されている。

以上の記載によると、引用例3には、
「基材にシーラント層を設けた積層フィルムがヒートシールにより接着されることにより密封袋状に形成される電子レンジ用包装袋において、電子レンジによる加熱時に被調理品から発生する蒸気によって上昇する収容空間部の圧力を逃がすための圧力排出部を接着部に隣接して形成する」ことが記載されているものと認められる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「ヒートシール性樹脂層」、「層間接着性を高める層」及び「電子レンジ用包装袋」は、それぞれ本願発明の「熱接着性樹脂層」、「接着層」及び「電子レンジ加熱用包装袋」に相当し、
また、引用発明の「耐熱性プラスチックフィルム」と本願発明の「ポリブチレンテレフタレート系フィルム」とは、「プラスチックフィルム」である限りにおいては一致し、
引用発明のヒートシール性樹脂の「直鎖状低密度ポリエチレン」は、本願発明の熱接着性樹脂の選択肢である「線状低密度ポリエチレン」に相当し、
そして、引用発明の第1および第2のヒートシール部の交差部は、袋の内圧等によって簡単に剥離され、その部分がガス抜き孔として機能するものであることから、引用発明と本願発明とは、「電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている」限りにおいては一致していることから、両者は、
「食品を収納し、電子レンジで加熱調理する電子レンジ加熱用包装袋であって、前記電子レンジ加熱用包装袋が、プラスチックフィルムと未延伸ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれかの樹脂からなる熱接着性樹脂層が接着層により積層された積層体を使用して、周縁に熱接着部が形成されるとともに電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている構成からなる電子レンジ加熱用包装袋。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願発明では、電子レンジ加熱用包装袋に収納される食品が水分と油分を含む液状物と固形状物からなる食品であるのに対し、引用発明では、電子レンジ用包装袋に収納される食品にはそのような特定がない点。

相違点2;本願発明では、熱接着性樹脂層と積層されるプラスチックフィルムをポリブチレンテレフタレート系としているのに対し、引用発明では、ポリブチレンテレフタレートは選択肢の一つである点。

相違点3;本願発明では、接着層がウレタン系接着剤からなるとしているのに対し、引用発明では、層間接着性を高める層が何からなるかは特定されていない点。

相違点4;本願発明では、蒸気排出部が熱接着部に隣接して形成されているのに対し、引用発明では、蒸気の排出に係る構成がそのようになっていない点。

5.判断
上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
電子レンジによって加熱処理される食品として、水分と油分を含む液状物と固形状物からなるものは、ごく一般的な食品であり、また、引用発明の電子レンジ用包装袋に収納される食品も、本願発明と同様に電子レンジの加熱処理時に蒸気の発生を前提としたものであることも考慮すれば、
引用発明の電子レンジ用包装袋に収納される食品を、水分と油分を含む液状物と固形状物からなる食品とすることは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
引用例2には、ポリブチレンテレフタレートフィルムは、耐熱性及び機械的強度に優れるフィルムであって、内容物の保護性に優れ、耐熱性が必要とされる包装材料、例えば電子レンジ加熱やレトルト処理される食品用包装材料等として有用であることが記載されていることから、
引用発明の耐熱性プラスチックフィルムにおいて、その選択肢の一つとされいるポリブチレンテレフタレートを選択することは、当業者が容易になし得たものである。
また、ポリブチレンテレフタレートの上記選択によって生じる作用効果も、吸水性が小さいことや耐熱性が高いというポリブチレンテレフタレート樹脂の本願出願前周知の物性から、当業者が容易に予測し得る事項である。

・相違点3について
ウレタン系接着剤は、接着性、耐熱性、耐熱水性に優れた接着剤として、食品包装用の積層フィルムの製造に広く使用されている(例えば、特開平7-11225号公報参照)ものであることから、
引用発明において、層間接着性を高める層としてウレタン系接着剤を採用することは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点4について
引用例3には、電子レンジ用包装袋において、電子レンジによる加熱時に被調理品から発生する蒸気によって上昇する収容空間部の圧力を逃がすための圧力排出部を接着部に隣接して形成することが記載されていることから、
引用発明において、蒸気の排出に係る構成として蒸気排出部が熱接着部に隣接して形成されている構成を採用することは、当業者が容易になし得たものである。

なお、請求人は平成24年4月26日付け意見書において、本願発明の解決すべき課題は、従来の電子レンジ加熱用包装袋が有する「内部に水分と油分や糖分を多く含む液状物と固形状物からなる食品等を収納して、業務用の高出力の電子レンジにて加熱調理する際に、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱され・・・包装袋を構成する積層体が溶融して穴があく」であり、かかる課題は、引用例1乃至3には記載のない新たな課題であることから、引用例1乃至3より本願には容易に想到できない旨の主張をしているが、上記各相違点の検討で述べたように、本願発明の構成は当業者が容易に想到し得るものであり、かつ、電子レンジによる食品の加熱において、食品が局部的に強く加熱される場合があることは、日常生活においても経験する程度のことであって、耐熱性の劣るフィルムを電子レンジ加熱用包装袋に用いた場合に、包装袋を構成する積層体が溶融して穴があくことは、当業者なら容易に想到しうる程度の課題でもある。また、本願明細書の各実施例において効果が確かめられているのは、500W電子レンジで加熱した場合であって(段落【0022】及び【0023】)、家庭用の電子レンジ程度の出力であり、本願明細書に、請求人の主張するような高出力の電子レンジについて上記課題が解決されていることが示されているものでもない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2及び3に記載された発明並びに周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-24 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-11 
出願番号 特願2004-331393(P2004-331393)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 一ノ瀬 薫
紀本 孝
発明の名称 電子レンジ加熱用包装袋  
代理人 金山 聡  

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