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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1260716
審判番号 不服2011-4040  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-23 
確定日 2012-07-26 
事件の表示 特願2004-104957「画像顕微鏡装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日出願公開、特開2005-292320〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年(2004年)3月31日に出願された特願2004-104957号であって、平成22年3月10日付けで拒絶理由が通知され、同年5月14日付けで手続補正がなされ、同年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成23年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされた。
その後、当審において平成24年2月1日付けで拒絶理由を通知し、これに対して同年4月6日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月6日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「被検部を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置によって撮像した画像を表示する画像表示装置と、
上記画像表示装置を移動自在に支持する第1の支持装置と、
上記撮像装置を移動自在に支持するとともに上記撮像装置を一体或いは着脱可能である第2の支持装置と、
上記撮像装置及び上記画像表示装置同士を着脱自在となるよう接続する着脱式接続手段と、
を具備し、
上記撮像装置は、上記第1の支持装置に支持した上記画像表示装置に対して着脱が可能であり、上記第1の支持装置に支持した上記画像表示装置に対して上記撮像装置を取り付けた使用状態と、上記画像表示装置から上記撮像装置を取り外した使用状態のいずれかを選択できるようにしたことを特徴とする画像顕微鏡装置。」

第3 引用例
1 引用例1
当審が通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-250812号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療用立体表示装置、詳しくは、患部等の術部を立体撮影し、その撮影画像を術者が観察するモニタに表示する医療用立体表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年においては、内視鏡の観察画像を立体表示できる内視鏡装置が普及している。この立体表示できる医療用立体表示装置は、従来、特開平7-16238号公報、及び、USP4651201号に開示されているものが知られている。
【0003】前記特開平7-16238号公報に記載のものは、内視鏡の立体表示装置を天井に取付けた保持装置によって三次元空間の所定の位置に保持するようにしたものであり、また、USP4651201号のものには、内視鏡の立体撮影像を術者の頭部に取付けたヘッドマウントディスプレイで観察するようにしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記特開平7-16238号公報に開示された技術は、術者が内視鏡画像の観察と内視鏡や処置具を患部等の術部に挿入する作業を交互に行う場合、その度に立体表示装置を移動する必要があり、頻繁に内視鏡の位置変更や処置具の交換を行うには、非常に煩わしいものであった。また、USP4651201号に示される技術では、術者が患部等の術部を直接観察したい場合に、ヘッドマウントディスプレイを退避位置に移動する必要があり、大変煩わしいだけではなく、その重さにより術者が疲労する問題があった。
【0005】本発明の目的は、上記の問題点を解決し、術者が内視鏡の立体画像の観察と、患部等の術部の直接観察との切替えを容易に行える医療用立体表示装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するために、本発明による医療用立体表示装置は、患部等の術部の立体撮影を行う撮像手段と、この撮像手段で撮像した立体画像を術者の左右の眼に各々分配して供給する立体表示手段と、この立体表示手段を三次元空間の所定の位置に保持する保持手段と、前記立体表示手段に対する術者の位置を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に応じて、前記立体表示手段の表示位置または表示状態を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図示の例によって説明する。図1から図4は、本発明の第1実施の形態を示したものであって、図1は、医療用立体表示装置の全体の構成を示したものである。
【0008】図1に示す医療用立体表示装置は、保持手段である支持アーム1と、立体表示手段であるモニタ2と、モニタ2の撮像手段である立体撮影用カメラヘッド3と、検出手段である位置検出用センサ21と、制御手段である表示制御部4とで、その主要部が構成されている。
【0009】前記支持アーム1は、図示しない天井に固定されており、周知の機構で構成された、上下動機構5、回転機構6、及び、ボールジョイント機構7を有しており、その先端部にモニタ2を保持している。この支持アーム1によれば、上下動機構5により鉛直方向の移動が自在となり、回転機構6によって水平方向の移動が自在となるから、これらによりモニタ2を、三次元空間の任意の位置に配置させることができる。また、ボールジョイント機構7により、モニタ2の画面を任意の方向に向けることができる。
【0010】また、この支持アーム1の下方には、ベッド8が手術室の床に設置されており、その側面には、レール9が配置されている。このレール9には、硬性内視鏡10を保持するためのスコープホルダ11が取付けられ、スコープホルダ11のアーム先端には、硬性内視鏡10が保持されている。この硬性内視鏡10は、患者Pの腹部に、図示しないシースを介して挿入されている。
【0011】前記立体撮影用カメラヘッド3は、前記硬性内視鏡10の基端面に取付けられ、立体撮影用カメラヘッド3は、カメラコントロールユニット(以下、「CCU」と略記)12に接続されている。CCU12は、表示制御部4及びワークステーション13に接続されている。
【0012】このうち、ワークステーション13は、更に、前記表示制御部4及びモニタ14に接続されている。また、ワークステーション13は、ポインティングデバイス15を備えており、モニタ14をマーキングできるようになっている。前記表示制御部4は、更に、モニタ2に接続されている。」

「【0020】硬性内視鏡10に取付けられた立体撮影用カメラヘッド3で撮影された内視鏡画像は、CCU12に送られる。CCU12では、内視鏡画像の左右画像を別々に規格化された映像信号に変換し、表示制御部4及びワークステーション13へ出力する。ワークステーション13及び表示制御部4には、左右各々の映像信号が出力される。
【0021】ワークステーション13に出力された映像信号は、モニタ14に表示される。また、表示制御部4に入力された映像信号は、左右各々の映像信号を倍速変換により時系列的に交互に表示される映像信号に変換される。この際、左右の映像信号の出力タイミングを制御する制御信号が、液晶シャッタ20に入力される。
【0022】そして、この映像信号は、図2で示すように、表示制御部4からモニタ2に内蔵されたLCD1 6に入力されて表示される。LCD1 6に表示された内視鏡画像は、ミラー17及びハーフミラー18で反射、拡大され、術者Tの観察眼へと出力される。」

「【0042】図10は、硬性内視鏡31にモニタ36を直接に接続した場合の内視鏡立体表示装置を示しており、図11は、上記図10において使用する硬性内視鏡31及びモニタ36の内部構造を示している。
【0043】図11で示すように、硬性内視鏡31は、先端部に対物レンズ32が設けられており、硬性内視鏡31の内部には、リレーレンズ33が配置されている。従って、対物レンズ32から入射した光束は、硬性内視鏡31の基端部に配置された結像レンズ34に伝達される。この結像レンズ34の結像位置にCCD35を配置する。
【0044】また、図10で示すように、硬性内視鏡31の基端面の接眼部には、モニタ36を配置する。そして、図11で示すように、前記CCD35を、画像処理部37を介してモニタ36に接続する。また、モニタ36は、表示角度が可変となるようにボールジョイント機構38を介して硬性内視鏡31に接続されており、また、画像処理部37は、映像出力コネクタ39を有している。
【0045】このように構成すると、CCD34に結像された硬性内視鏡31による画像は、画像処理部37に送られ、規格化された映像信号に変換される。この映像信号はモニタ36に伝達され、表示される。術者Tは、スコープホルダ11に取付けられた硬性内視鏡31を所定の位置に固定し、ボールジョイント機構38を操作して見やすい方向にモニタ36を向ける。
【0046】これにより、術者Tは、硬性内視鏡31で撮影された画像を所定の方向から常に観察することが可能となる。また、硬性内視鏡31に内蔵された画像処理部37から規格化された映像信号が映像出力コネクタ39から出力されるため、この映像出力コネクタ39に外部のモニタ36を接続すれば、この外部のモニタ36で、術者T以外の人は、術者Tが観察している画像と同様の画像を観察可能となる。
【0047】このように、硬性内視鏡31とモニタ36とを一体的に構成すれば、硬性内視鏡31の立体撮影方向とモニタ36の表示方向とで、ずれが発生しないので、立体観察に違和感を覚えることがない。」


「【図1】



「【図10】



「【図11】



2 引用例1に記載された発明
【図1】から、上記「立体撮像用カメラヘッド3」は「硬性内視鏡10」に固定され、当該「硬性内視鏡10」を保持する「スコープホルダ11」は複数の関節部を有する。
上記記載(図面の記載も含む)から、引用例1には、
「患部等の術部の立体撮影を行う撮像手段と、この撮像手段で撮像した立体画像を術者の左右の眼に各々分配して供給する立体表示手段と、この立体表示手段を三次元空間の所定の位置に保持する保持手段とを備えた医療用立体表示装置であって、
上記撮像手段の立体撮像用カメラヘッド3は、レールに取付けられた複数の関節部を有するスコープホルダのアーム先端に保持される硬性内視鏡に固定されている医療用立体表示装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 引用例2
当審が通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-102899号公報(以下「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

「【0026】図6?図8に示すのは、第5の実施形態による顕微鏡用ビデオ装置である。この例では、ヒンジ構造の接続部20により互いに矢印Xの如く回動可能に接続された第1のサブケーシング21と第2のサブケーシング22によりケーシング23を形成する。
【0027】第1のサブケーシング21には、液晶表示ユニット24を内蔵させ、この液晶表示ユニット24の表示画面25をその前面に露出させるようにする。また第1のサブケーシング21には、電源回路26を内蔵させ、これに接続する外部用端子のための接続開口27を下面に設ける。
【0028】第2のサブケーシング22には、処理ユニット28を内蔵させ、またその下側面に円筒状の接続部29を突設し、この接続部29の内部に、第1の実施形態の顕微鏡用ビデオカメラと同様の条件にして撮像素子30と結像レンズ31を設ける。
【0029】この顕微鏡用ビデオ装置を光学顕微鏡に接続して光学顕微鏡による拡大像を表示画面25で見るには、上記の回動性を利用して第1のサブケーシング21の第2のサブケーシング22に対する角度を光学顕微鏡の鏡筒の傾き具合に応じて調節し、表示画面25の向きが最も見やすい状態にする。
【0030】以上のような第5の実施形態による顕微鏡用ビデオ装置については、そのヒンジ構造の接続部20に替えて、ヒンジ形コネクタを用いるようにすることも可能である。ヒンジ形コネクタは、既に基板同士の接続などに多用されているが、電気的な接続機能と共に、接続要素同士を互いに回動可能とする機能も備えいるので、これを用いることにより、第1のサブケーシング21を第2のサブケーシング22に対し回動可能に且つ着脱可能に接続することができる。したがって第4の実施形態について説明したのと同様に、映像出力を一般のディスプレイに出力するような使い方、つまり顕微鏡用ビデオ装置の映像信号処理部分である第2のサブケーシング22を第1の実施形態などにおける顕微鏡用ビデオカメラとして用いる場合に、不要である第1のサブケーシング21を外した状態で使用することが可能となる。」

「【図6】



4 引用例3
当審が通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2003-517883号公報(以下「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

「【0011】
本発明の一態様によれば、天井の支持部に取り付けられる手術シアター装置が設けられる。当該手術シアター装置は、回転軸回りに天井に対して回転するように取り付けられたハブを有している。このハブは、当該回転軸から離間して、当該回転軸に平行なピボット軸を有する。手術用照明ヘッド、モニタ、及びカメラからなる群から選択される装置は、当該回転軸及び当該ピボット軸の回りに運動するように当該ハブに連結された装置アームに連結されている。当該手術シアター装置はまた、手術用照明ヘッド、モニタ、及びカメラからなる群から選択された第2装置と、当該第2装置に連結されて当該回転軸の回りに運動するように当該ハブに連結された第2装置アームとを含んでもよい。当該ハブは、当該第1ピボット軸及び当該回転軸から離間した離間した第2ピボット軸を含んでもよく、当該第2装置は、当該ハブの第2ピボット軸の回りに運動するように取り付け取り付けられてもよい。当該第1装置はモニタであってもよく、当該第2装置はカメラであってもよい。
【0012】
本発明の一態様の一変形例によれば、前記ハブは、照明ハブ部位、カメラハブ部位、及びモニタハブ部位に分割されてもよく、各部位は互いに他の部位と独立に回転可能であり、当該モニタハブ部位は第1ピボット接合部及び第2ピボット接合部とを含む。モニタは、当該モニタハブの両ピボット接合部に連結されてもよい。手術用照明ヘッドは、当該照明ハブ部位から側部方向に延出した照明アームによって、当該照明ハブ部位に連結されており、カメラは、当該カメラハブ部位から側部方向に延出したカメラアームによって、当該カメラハブ部位に連結されている。
【0013】
本装置は、前記ハブが照明ハブ部位及びモニタハブ部位とを含み、各部位は互いに他の部位と独立に回転可能なように形成されていてもよい。上記の場合、当該照明ハブ部位に取り付けられ、当該照明ハブ部位から側部方向に延出した照明アームによって、前記手術用照明ヘッドは当該照明ハブ部位に取り付けられている。前記モニタは、モニタアームによって、前記モニタハブに連結されている。当該モニタアームは、当該モニタハブ部位に対して連結され、側部方向及びモニタハブ部位から末端部にかけて延出している屈曲アームを含む。延長アームは、第1端部にて、当該屈曲アームの末端部に回転可能に取り付けられて、第2回転軸の回りに回転するようになっている。側方延出アームは、第1端部にて、当該延長アームの第2端部に対して取り付けられている。下部延出アームの上部セクションは、第1端部にて、側部方向延出アームに取り付けられており、第2端部にて、下部延出アームの下部セクションの上端部に取り付けられている。当該下部セクションは、当該上端部にて、当該上部セクションの第2端部に回転可能に取り付けられており、第3回転軸の回りに回転するようになっている。当該モニタは、当該下端部にて、当該下部セクションに取り付けられている。
【0014】
本発明の一態様のさらに他の変形例によれば、前記第1装置は、カメラ及びモニタからなる群から選択され、前記ハブの回りに枢動運動するように、装置アームによって連結されてもよい。当該装置アームは、その末端部にて、機械的連結部及び電気的連結部を有する。当該電気的連結部は、装置の電気的連結部に連結するような構成をしている。当該群の各装置は、機械的連結部に取り付けられており、当該機械的連結部は前記アームの当該機械的連結部に着脱されるような構成であり、当該群の各装置は電気的連結部に取り付けられており、当該電気的連結部は前記アームの当該電気的連結部に対して着脱されるような構成をである。
【0015】
本発明の他の態様によれば、手術室にて使用される手術シアター装置は、ハブアッセンブリを含む天井を有し、複数のハブ部位を有し、当該ハブ部位の1個以上は主軸の回りに枢動可能であり、当該手術シアター装置は当該天井に連結されるのに適している。アームアッセンブリは、ビデオ装置を第1ハブ部位に連結し、当該主軸から離間して、当該主軸と平行なピボット軸の回りに枢動運動するようになっている。当該ビデオ装置はカメラ又はモニタであってよい。第2アームアッセンブリは、手術用照明を第2ハブ部位に連結してよい。当該アームアッセンブリは、上部アームと、当該第1ハブ部位に連結されて当該ピボット軸の回りを枢動運動する、当該上部アームに連結される釣合いアームアッセンブリと、当該釣合いアームアッセンブリに連結される下部アームアッセンブリとを含んでもよい。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、手術室にて使用される手術シアター装置は、複数のハブ部位を有するハブアッセンブリを含み、当該ハブ部位の1個以上は主軸の回りを枢動可能である。第1ビデオ装置及び第2ビデオ装置は、第1アームアッセンブリ及び第2アームアッセンブリによって、複数のハブ部位の第1ハブ部位に連結されて、当該主軸から離間して、当該主軸に対して平行な、各ピボット軸の回りに枢動運動するようになっている。
【0017】
本発明の他の態様によれば、手術モニタ装置は、第1アームと、当該第1アームに連結された第1機械的連結部と、当該第1機械的連結部に隣接する第1電気的連結部とを含むアームアッセンブリを有する。当該第1機械的連結部に機械的に連結され、当該第1電気的連結部に電気的に連結されるようになっているモニタアッセンブリと、当該第1機械的連結部に機械的に連結され、当該第1電気的連結部に電気的に連結されるようになっているカメラアッセンブリとが設けられる。当該モニタアッセンブリ及び当該カメラアッセンブリは、当該アームアッセンブリから、選択的及び個別的に、着脱可能である。」

「【図1】



第4 本願発明と引用発明との対比
1 対比
引用発明の「患部等の術部の立体撮影を行う撮像手段」が、本願発明の「被検部を撮像する撮像装置」に相当する。
引用発明の「この撮像手段で撮像した立体画像を術者の左右の眼に各々分配して供給する立体表示手段」が、本願発明の「上記撮像装置によって撮像した画像を表示する画像表示装置」に相当する。
引用発明の「この立体表示手段を三次元空間の所定の位置に保持する保持手段」が、本願発明の「上記画像表示装置を移動自在に支持する第1の支持装置」に相当する。
引用発明の「撮像手段の立体撮像用カメラヘッド3」が固定されている「硬性内視鏡」を「保持」する「スコープホルダ」は、「レールに取付けられ」、「複数の関節部を有する」ものであることから、「撮像手段の立体撮像用カメラヘッド3」を移動自在に支持するものであるといえる。よって、引用発明の「スコープホルダ」と、本願発明の「上記撮像装置を移動自在に支持するとともに上記撮像装置を一体或いは着脱可能である第2の支持装置」とは、「上記撮像装置を移動自在に支持する第2の支持装置」である点で一致する。
引用発明の「医療用立体表示装置」においては、「立体表示手段」は「撮像手段で撮像した立体画像を術者の左右の眼に各々分配して供給する」ものであることから、引用発明の「医療用立体表示装置」と、本願発明の「画像顕微鏡装置」とは、「画像表示装置」である点で一致する。

2 一致点
すると、本願発明と引用発明は、
「被検部を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置によって撮像した画像を表示する画像表示装置と、
上記画像表示装置を移動自在に支持する第1の支持装置と、
上記撮像装置を移動自在に支持する第2の支持装置と、
を具備する画像表示装置。」の発明である点で一致し、以下の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1
本願発明は、「撮像装置」及び「画像表示装置」同士を「着脱自在」となるよう接続する「着脱式接続手段」を具備し、「上記撮像装置は、上記第1の支持装置に支持した上記画像表示装置に対して着脱が可能であり、上記第1の支持装置に支持した上記画像表示装置に対して上記撮像装置を取り付けた使用状態と、上記画像表示装置から上記撮像装置を取り外した使用状態のいずれかを選択できるようにした」のに対し、引用発明はその点の特定がない点。

(2)相違点2
撮像装置が、第2の支持装置に対して、本願発明においては「一体或いは着脱可能である」としたのに対して、引用発明はその点の特定がない点。

(3)相違点3
本願発明が「顕微鏡装置」に関する発明であるのに対して、引用発明においては「(硬性)内視鏡」に関する発明である点。

第5 当審の判断
1 相違点の検討
(1)相違点1について
引用例1においても【0047】に「このように、硬性内視鏡31とモニタ36とを一体的に構成すれば、硬性内視鏡31の立体撮影方向とモニタ36の表示方向とで、ずれが発生しないので、立体観察に違和感を覚えることがない。」と記載されているように、引用発明は、硬性内視鏡及びモニタをずれないようにして、観察し易くするという要請(課題)を有するものであり、引用例1には【図1】の硬性内視鏡及びモニタを分離した形態(分離形態)と、【図10】の両者を一体にした形態(一体形態)の両者の要請が開示されている。
また、引用例2には、「液晶表示ユニット24」を内蔵した「サブケーシング21」と「撮像素子30と結像レンズ31」を設けた「サブケーシング22」を接続する「接続部20」に関して、【0030】に「そのヒンジ構造の接続部20に替えて、ヒンジ形コネクタを用いるようにすることも可能である。ヒンジ形コネクタは、既に基板同士の接続などに多用されているが、電気的な接続機能と共に、接続要素同士を互いに回動可能とする機能も備えいるので、これを用いることにより、第1のサブケーシング21を第2のサブケーシング22に対し回動可能に且つ着脱可能に接続することができる。」と記載されている。画像表示手段を備えた撮像装置において、撮像装置と画像表示装置を着脱自在に接続することは、引用例2にも記載されている周知の技術である。
引用発明において、分離形態に加えて一体形態も使用可能とするために、一般的技術思想として、引用例2に記載された上記の周知技術を参酌し、硬性内視鏡及びモニタをずれないように着脱自在に接続することができるように両者の「着脱式接続手段」を設け、モニタに対して硬性内視鏡を、「取り付けた使用状態」と「取り外した使用状態」のいずれかを選択できるようにして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
支持装置と画像装置や撮像装置を備える装置において、故障の発生しやすい電子機器である画像装置や撮像装置を交換可能にする目的や、装置の組立てや取扱いを簡便にする目的等で、画像装置や撮像装置を支持装置に着脱可能にすることは周知慣用の技術に過ぎない。
例えば、引用例3に、アーム(支持装置)と、モニタ(画像表示装置)及びカメラ(撮像装置)それぞれとの接続に関して、「前記第1装置は、カメラ及びモニタからなる群から選択され、前記ハブの回りに枢動運動するように、装置アームによって連結されてもよい。」「当該群の各装置は、機械的連結部に取り付けられており、当該機械的連結部は前記アームの当該機械的連結部に着脱されるような構成であり」と記載されている。すなわち、画像表示手段を備えた撮像装置において、撮像装置を支持装置に着脱可能に接続することは、引用例3にも記載されている周知の技術である。
引用発明において、引用例3に記載された上記の周知技術を適用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。
なお、本願発明における「一体或いは着脱可能である」の特定は、当然のことながら、「一体」であるものも含み、そして、引用発明のものは「一体」のものであるということができ、その意味においては、両者は一致しており、相違点2は単なる形式(表現)上の相違点に過ぎず、実質的な相違点とはならないともいえる。

(3)相違点3について
「顕微鏡装置」も「内視鏡」も、共に医療等の用途においても用いられ、光学装置等を用いて対象物(患部)を観察する装置であり、隣接した技術分野に属するものであって、相互に技術を適用し合える関係にあるといえるから、内視鏡における引用発明の技術を顕微鏡に適用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。
なお、引用例1の【0022】に記載されているように、引用発明において「内視鏡」の画像は視覚的に拡大されるのであるから、当該「内視鏡」は広義の「顕微鏡」に属し、相違点3は実質的な相違点でないともいえる。

2 作用効果について
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、並びに、引用例2及び3に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、並びに、引用例2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。


第6 むすび
以上より、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、並びに、引用例2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-23 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-13 
出願番号 特願2004-104957(P2004-104957)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒巻 慎哉井上 信  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 吉川 陽吾
北川 清伸
発明の名称 画像顕微鏡装置  
代理人 高倉 成男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 竹内 将訓  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 哲  
代理人 福原 淑弘  
代理人 村松 貞男  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  
代理人 砂川 克  
代理人 堀内 美保子  

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