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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1260724 |
審判番号 | 不服2011-11987 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-06 |
確定日 | 2012-07-26 |
事件の表示 | 特願2005- 91620「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-277015〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成17年3月28日の出願であって、平成22年2月4日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成23年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年6月6日に審判請求がなされるとともに、手続補正書が提出された。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年6月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、 「マトリックス状にキーが複数備えられ、前記キーが操作されることにより画面上のカーソルを移動させ、利用者が保持して前記キーを操作するための携帯電話機であって、 前記携帯電話機が第1のモードである場合に、第1番目に操作された前記キーである第1操作キーの位置と、第2番目に操作された前記キーであって前記第1操作キーとの間に1つ以上キーを介在し且つ前記第1操作キーの斜め方向に位置する第2操作キーの位置とに基づいて、該第1操作キーを基準とした該第2操作キーの方向を特定する方向特定部と、 前記携帯電話機が第1のモードである場合に、前記方向特定部により特定された斜め方向に前記カーソルを移動させるカーソル移動部と、 前記携帯電話機が第2のモードである場合に、操作された前記キーに対応する出力処理を行う出力処理部と を備えることを特徴とする携帯電話機。」(下線は、当審で付与、以下同様。)という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.補正の目的について 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「操作装置」を「利用者が保持して前記キーをを操作するための携帯電話機」と限定するとともに、さらに、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「第2操作キーの位置」及び「特定された方向」を「前記第1操作キーとの間に1つ以上キーを介在し且つ前記第1操作キーの斜め方向に位置する第2操作キーの位置」及び「特定された斜め方向」と限定して特許請求の範囲を減縮するものである。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 (2)引用発明 原査定の拒絶理由で引用した特開昭64-7217号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「カーソルの移動指示をするために2行2列に配列された4つの金属板と、前記移動指示のための前記各金属板に対する接触を検出する4つの接触検出手段と、順次接触されるいずれか2つの金属板に対応する接触検出手段がその接触を検出する時間差を求める遅延時間計算手段と、動作する前記接触検出手段の組合せから前記カーソルの移動指示方向を求めるとともに前記時間差から前記カーソルの移動指示速度を求める移動量計算手段とを備えてなることを特徴とするカーソル移動指示装置。」(第1ページ左欄、特許請求の範囲の請求項(1)の記載。) b.「本発明は、コンピュータシステムの表示装置の画面においてカーソルを移動指示するために用いられるカーソル移動指示装置に関する。」(第1頁左欄19行?右欄1行の記載。) c.「この図から分るように、金属板1a?1dは2行2列に配置されており、金属板1aの右隣りに金属板1bが配置され、金属板1aの左隣り(審決注:第2図を参照すると、「左隣り」は「下隣り」の誤記と認める。)に金属板1cが配置され、金属板1aの対角位置に金属板1dが配列されている。 本実施例ではオペレータが金属板1a?1dのいずれかに指を接触させると、対応するタッチスイッチリレー2a?2dがON状態になり、遅延時間計算部3にこのタッチスイッチリレーのON状態を示す信号が送られる。 遅延時間計算部3では、ある1つのタッチスイッチリレーがON状態になった時間から次のタッチスイッチリレーがON状態になる時間までの時間差(遅延時間)を検出し、これを示す信号を移動量計算部6へ送る。 また遅延時間計算部3はタッチスイッチリレー2a?2dのいずれかがON状態になった時点で、どのタッチスイッチリレーがON状態になったのかを示す信号を移動方向決定部5へ送る。 移動方向決定部5では遅延時間計算部3から伝えられた2つのタッチスイッチリレーの組合わせによってカーソルの移動方向を決定する。 第3図はカーソルの移動方向を記号で示した図、第4図はこれら移動の方向に対応して接触される金属板1a?1dの組合わせを示す図である。 これらの図から分るように、例えば▲2(まるつき)▼方向にカーソルが移動する場合には、はじめに指が金属板1cに接触し、次に金属板1bに接触するように、指を右上方向にスライドさせればよい。」(第2ページ左下欄、第12行?右下欄20行の記載。なお、当該公報では、上記▼▲で囲んだ部分は、まるつき数字で記載されているが、審決ではシステム上の制約から、まるつき数字は使用できないので、「▲2(まるつき)▼」と記載した。) 記載cの「はじめに指が金属板1cに接触」し、「次に金属板1bに接触」することは、第2図を参照すれば金属板1cは左下の金属板で、金属板1bはその金属板1cの右上の斜め方向に位置していることから、「はじめに左下の金属板に、次に右上の斜め方向に位置する金属板に接触する」ことを示している。 記載cの「▲2(まるつき)▼方向」は、第3図を参照すれば、左下から右上への斜め方向である。 してみると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 〈引用発明〉 「カーソルの移動指示をするために2行2列に配列された4つの金属板と、前記移動指示のための前記各金属板に対する接触を検出する4つの接触検出手段と、順次接触されるいずれか2つの金属板に対応する接触検出手段がその接触を検出する時間差を求める遅延時間計算手段と、動作する前記接触検出手段の組合せから前記カーソルの移動指示方向を求めるとともに前記時間差から前記カーソルの移動指示速度を求める移動量計算手段とを備えてなり、はじめに左下の金属板に、次に右上の斜め方向に位置する金属板に接触することにより、カーソルが左下から右上の斜め方向に移動するカーソル移動指示装置。」 (3)対比 補正後の発明と引用発明とを対比する。 (3-1)引用発明の「2行2列に配列された4つの金属板」は、補正後の発明の「マトリックス状にキーが複数備えられ」たものに相当する。 (3-2)引用発明の「動作する前記接触検出手段の組合せから前記カーソルの移動指示方向を求めるとともに前記時間差から前記カーソルの移動指示速度を求める移動量計算手段」は、時間差で接触した複数のキーの位置から方向を特定する点で、補正後の発明の「方向特定部」と共通している。 (3-3)引用発明の「左下の金属板」及び「右上の斜め方向に位置する金属板」は、補正後の発明の「第1操作キー」及び「第2操作キー」と、その相対位置が斜め方向に位置している点で共通している。 (3-4)引用発明は、移動が指示されたカーソルは指示に従って移動をするのであるから、補正後の発明の「方向特定部により特定された斜め方向に前記カーソルを移動させるカーソル移動部」を実質的に備えることは明らかである。 (3-5)引用発明と、補正後の発明は、カーソルの移動を指示する装置を有する点で共通している。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の一致点と相違点とを有する。 〈一致点〉 「マトリックス状にキーが複数備えられ、前記キーが操作されることにより画面上のカーソルを移動させるためのカーソル移動指示装置であって、 第1番目に操作された前記キーである第1操作キーの位置と、第2番目に操作された前記キーであって前記第1操作キーの斜め方向に位置する第2操作キーの位置とに基づいて、該第1操作キーを基準とした該第2操作キーの方向を特定する方向特定部と、 前記方向特定部により特定された斜め方向に前記カーソルを移動させるカーソル移動部と、 を備えるカーソル移動指示装置。」 〈相違点1〉 引用発明のカーソル移動指示装置は、コンピュータシステムに用いられるものであるのに対し、補正後の発明では「利用者が保持して前記キーを操作するための携帯電話機」に用いられるものである点。 〈相違点2〉 補正後の発明には「カーソルを移動させるための第1のモード」と、出力処理部により「操作されたキーに対応する出力処理を行う第2のモード」とがあるのに対し、引用発明では「カーソルを移動させるための第1のモード」を備えているものの、出力処理部により「操作されたキーに対応する出力処理を行う第2のモード」について記載されていない点。 〈相違点3〉 第2操作キーが、補正後の発明では「第1操作キーとの間に1つ以上キーを介在」した斜め方向に位置するものであるのに対し、引用発明では当該構成を備えない点。 (4)判断 相違点につき検討する。 〈相違点1、2について〉 番号を入力するマトリックス状の複数のキーを備える電話機において、番号を入力するモード(補正後の発明の第2のモードに相当)と、カーソルを移動させるモード(補正後の発明の第1のモード)を備える様にすることは、周知の技術(特開2003-163741号公報(図形入力機能を持つ携帯電話)の【0006】から【0007】、特開平2-193448号公報の第4頁右上欄11行?5頁左上欄6行の「テレライテイングモード」の記載を参照)である。そして、引用発明における複数のマトリックス状のキーを用いたカーソル移動指示装置を、周知のカーソルを移動させるモードを含む複数のモードを持つ電話機に適用し、相違点1及び2に係る構成とすることに、特別の創意を要するものではない。 〈相違点3〉 時間的に順番をつけて操作を行うことにより、その2つの操作キーの相対位置に基づいて方向を特定する点で、引用発明と、補正後の発明とでは共通しており、そして、方向を特定するためには、最初に操作する第1操作キーと、次に操作する第2操作キーとの相対位置が特定されれば良いものであって、第1操作キーと第2操作キーとの間に他のキーが介在していようが、いまいが、方向の特定には無関係であることは明らかである。 そして、操作キーの数が4個より多い数を有する装置に引用発明を適用する場合は、第1操作キーと第2操作キーとの間にキーが介在した場合でも、第1操作キーと第2操作キーとの相対位置でもって方向を決めるようにすることは、設計的事項にすぎない(設計的事項であることの一例として、例えば、特開平1-282624号公報(平成元年11月14日出願公開。)には、「簡単な操作によってキーボードを介してカーソル移動を制御できるようにする」(第2ページ、左上欄第13行乃至15行の記載。)ために、「一度にジャンプさせるには、キーB1とF1の組み合わせを用いればよい。・・これらの経路の内のある箇所が2ステップ以上のジャンプになっていても同じである。」(公報、第5ページ、右上欄第16行乃至左下欄第5行の記載。)との操作を行う旨の技術の記載がある。)ことから、操作キーの数が4個より多い数を有する装置に引用発明を適用するにあたり、相違点3のように構成することに特段の困難性を要するものではない。 そして、補正後の発明が奏する作用、効果についてみても、引用発明及び周知の技術から当業者が予想できる程度のものである。 したがって、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成23年6月6日付けの手続補正を上記のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「マトリックス状にキーが複数備えられ、前記キーが操作されることにより画面上のカーソルを移動させる操作装置であって、 前記操作装置が第1のモードである場合に、第1番目に操作された前記キーである第1操作キーの位置と、第2番目に操作された前記キーである第2操作キーの位置とに基づいて、該第1操作キーを基準とした該第2操作キーの方向を特定する方向特定部と、 前記操作装置が第1のモードである場合に、前記方向特定部により特定された方向に前記カーソルを移動させるカーソル移動部と、 前記操作装置が第2のモードである場合に、操作された前記キーに対応する出力処理を行う出力処理部と を備えることを特徴とする操作装置。」 2.引用発明等 引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」、「(4)判断」の項に示したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できた発明であるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できた発明である。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-22 |
結審通知日 | 2012-05-29 |
審決日 | 2012-06-11 |
出願番号 | 特願2005-91620(P2005-91620) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 円子 英紀 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 甲斐 哲雄 |
発明の名称 | 携帯電話機 |
代理人 | キュリーズ特許業務法人 |