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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1260733
審判番号 不服2011-21803  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-07 
確定日 2012-07-26 
事件の表示 特願2005-287029「光学異方体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日出願公開、特開2007- 94324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年9月30日の出願であって、平成23年6月20日付けで手続補正がなされ、同年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月7日付けで拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成23年11月24日付けの審尋に対して平成24年1月26日付けで回答書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし24に係る発明は、平成23年10月7日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、平成23年10月7日付け手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。
「重合性液晶組成物の重合体よりなる光学異方体層及び基板が積層された光学異方体において、該基板と該光学異方体層が直接接着しており、該基板の熱伝導率が2W/(m・K)以上であり、該基板の材料が透明セラミック材料であることを特徴とする光学異方体。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-141073号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した、以下同じ。)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成分子の配向がパターニングされた光学異方性フィルムの製造方法であって、
重合性液晶材料を含む薄膜に磁界を印加し、前記重合性液晶材料を磁場方向に配向させる第1の配向工程、
前記薄膜に光を照射して、前記薄膜の少なくとも一部の領域において重合性液晶材料を重合させる第1の重合工程、
前記薄膜に、第1の配向工程とは異なる磁場方向に磁界を印加し、重合していない重合性液晶材料を前記磁場方向に配向させる第2の配向工程、および、
前記薄膜に光を照射して、重合していない重合性液晶材料を有する領域の全部または少なくとも一部において重合性液晶材料を重合させる第2の重合工程を含むことを特徴とする光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項2】
加熱条件下で、前記薄膜に磁界を印加する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
第1の重合工程において、前記薄膜上に、前記一部の領域のみが露出するようにフォトマスクを配置した後、光照射を行う請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
重合性液晶材料が、液晶モノマーである請求項1?3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
光照射が紫外線照射であって、前記重合性液晶材料が、紫外線硬化型液晶材料である請求項1?4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造した光学異方性フィルム。」

(2)「【0015】
前記基板としては、なんら制限されず、具体的には、その表面の配向の有無、異方性か否かに関わらず使用することができる。本発明の製造方法においては、前述のように磁界の印加によって前記重合性液晶材料を配向でき、前記基板表面の配向の有無には影響されないからである。前記基板の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプラスチックがあげられる。さらに、アルミ、銅、鉄等の金属製基板、セラミック製基板、ガラス製基板等であってもよい。」

(3)「【実施例1】
【0027】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例1におけるフィルムの配向方法は、図1(A)?(F)の概略図を用いて説明する。
【0028】
下記式で表される光硬化型液晶モノマー(商品名LC242;BASF社製)および光重合開始剤(商品名イルガキュア907;チバスペシャリティーケミカルズ社製)をトルエンに溶解して液晶溶液を調製した。なお、前記液晶モノマーは40重量%となるようにトルエンに溶解し、前記光重合開始剤は、前記モノマーに対して5重量%となるように添加した。そして、前記液晶溶液をガラス基板(長さ50mm×幅50mm)に塗布して前記基板上に薄膜10を形成した(図1(A))。
【0029】
前記基板上の薄膜10に、超伝導装置(商品名JTMD-10T100M;ジャパンマグネットテクノロジー社製)を用いて2.4テスラ(T)の磁界を印加し、図1(B)に示すように、前記薄膜10aの液晶モノマーを磁場方向に配向させた。つぎに、前記配向済みの薄膜10a上に、図1(C)に示すY字の切り抜きパターンを有するフォトマスク2を配置してから、紫外線を照射し、前記薄膜の前記フォトマスク2が配置されていないY時部分11aのみを光重合させた。続いて、図1(D)に示すように、前記フォトマスク2をはずした後に、前記薄膜を45°回転させてから、前述と同じ条件で磁界を印加して、前記薄膜の光重合していない部分10aの液晶モノマーを、再度磁場方向に配向させた(10b:図1(E))。そして、さらに前記薄膜に紫外線を照射して、未重合部分10bを光重合させた(11b:図1(F))。そして、前記薄膜11(11a、11b)を基板(「基材」は「基板」の明らかな誤記なでの訂正して摘記した。」)から剥離してサンプルフィルムとした。サンプルフィルムの写真を図4(A)に示す。」

(4)上記(1)ないし(3)からみて、引用例には、
「基板上に重合性液晶材料を含む薄膜を形成する工程、
前記薄膜に磁界を印加し、前記重合性液晶材料を磁場方向に配向させる第1の配向工程、
前記薄膜に光を照射して、前記薄膜の少なくとも一部の領域において重合性液晶材料を重合させる第1の重合工程、
前記薄膜に、第1の配向工程とは異なる磁場方向に磁界を印加し、重合していない重合性液晶材料を前記磁場方向に配向させる第2の配向工程、
前記薄膜に光を照射して、重合していない重合性液晶材料を有する領域の全部において重合性液晶材料を重合させる第2の重合工程、および、
前記薄膜を前記基板から剥離して光学異方性フィルムとする剥離工程
を含む製造方法によって製造した光学異方性フィルムであって、
前記基板をセラミック製基板としてもよい光学異方性フィルム。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「重合性液晶材料」、「『第1の重合工程』及び『第2の重合工程』を経た『重合性液晶材料を含む薄膜』」及び「光学異方性フィルム」は、それぞれ、本願発明の「重合性液晶組成物」、「重合性液晶組成物の重合体よりなる光学異方体層」及び「光学異方体」に相当する。

(2)上記(1)に照らせば、本願発明と引用発明とは、
「重合性液晶組成物の重合体よりなる光学異方体層を含む光学異方体」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
光学異方体層を含む前記光学異方体が、本願発明では、該光学異方体層及び基板が積層されたものであって、該基板と該光学異方体層が直接接着しており、該基板の熱伝導率が2W/(m・K)以上であり、該基板の材料が透明セラミック材料であるのに対して、引用発明では、セラミック製基板としてもよい基板から「重合性液晶組成物の重合体よりなる光学異方体層(第1の重合工程及び第2の重合工程を経た重合性液晶材料を含む薄膜)」を剥離して「光学異方体(光学異方性フィルム)」としたものである点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)サファイアの透明基板と重合性液晶化合物層などからなる光学補償フィルムとを積層した光学補償板は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2005-173621号公報(【0014】、図3、図4、図8、図18?図24参照。)、特開2004-220001号公報(【0029】、【0033】、【0034】、【0041】、図1、図2参照。)、特開2004-220000号公報(【0025】、【0029】、【0030】、【0037】、図1、図2参照。)、特開2003-84285号公報(【0018】?【0020】、【0032】、【0044】、【0047】、【0050】、図1、図2参照。))。

(2)引用発明は、基板から第1の重合工程及び第2の重合工程を経た重合性液晶材料を含む薄膜を剥離して光学異方性フィルムとしたものであるから、引用発明の光学異方性フィルムを、サファイアの透明基板と重合性液晶化合物層などからなる光学補償フィルムとを積層した周知技術の光学補償板とするためには、引用発明の光学異方性フィルムをサファイアの透明基板に貼り合わせるなどして積層しなければならない。
しかるところ、引用発明において、前記基板をサファイア基板とし、前記薄膜の剥離をしないことによっても、サファイアの透明基板と重合性液晶化合物層などからなる光学補償フィルムとを積層した周知技術の光学補償板にできることは、当業者に自明の事項である。

(3)上記(1)及び(2)からして、引用発明において、前記基板をサファイア基板とし、前記薄膜の剥離をせずに、サファイアの透明基板と重合性液晶化合物層などからなる光学補償フィルムとを積層した周知技術の光学補償板となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到することができた程度のことである。
そして、引用発明において、前記薄膜の剥離をせずに、基板と光学補償フィルムとを積層した光学補償板とすることに格別困難な点はない(上記特開2005-173621号公報(基板5からLCP層2を剥離せずにリターダとしているもの(図3、図4、図8、図18、図19、図21?図24)が記載されている。)参照。)。

(4)サファイアは透明セラミック材料であるといえ、その熱伝導率は明らかに2W/(m・K)以上であるから、上記(3)の、引用発明において、前記基板をサファイア基板とし、前記薄膜の剥離をせずに、サファイアの透明基板と重合性液晶化合物層などからなる光学補償フィルムとを積層した周知技術の光学補償板となすことは、引用発明において、前記基板の材料を透明セラミック材料として、該基板の熱伝導率が2W/(m・K)以上になるようにするとともに、該基板と該光学異方体層が直接接着して、前記光学異方体層及び基板が積層された光学異方体とすること、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことに相当する。

(5)したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

(6)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。
なお、紫外線照射により光重合性液晶化合物を固化するときに、冷却等して液晶層の表面温度を調整すべきことは本願の出願前に当業者に知られていた事項にすぎない(特開2004-226838号公報の【0046】参照。)

(7)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-23 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-11 
出願番号 特願2005-287029(P2005-287029)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 理弘  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 住田 秀弘
金高 敏康
発明の名称 光学異方体及びその製造方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 西 和哉  
代理人 鈴木 三義  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  

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