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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1260822
審判番号 不服2009-2910  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-09 
確定日 2012-07-31 
事件の表示 特願2005-139026「皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月26日出願公開、特開2006-290855〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年4月8日(パリ条約による優先権主張 2004年4月8日、フランス(FR))の出願であって、平成19年2月27日付で拒絶理由が通知され、同年9月5日に手続補正がなされるとともに同日付で意見書が提出されたが、平成20年10月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年2月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同年3月11日に手続補正がなされ、同年4月22日付で審判請求理由の手続補正書(方式)が提出され、平成23年2月22日付で審尋が通知され、同年10月31日付で上申書が提出されたものである。

第2 平成21年3月11日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年3月11日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正は、補正前(平成19年9月5日付の手続補正によるもの)の特許請求の範囲の請求項1、
「【請求項1】
以下を含む皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための化粧組成物:
少なくとも一種の非干渉性複合顔料の粒子を含む、組成物を着色するのに充分な量の少なくとも一種の第一着色剤であって、前記粒子が少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された、平均サイズが1nmから100nmまでの範囲にある無機コアーを含む着色剤、及び
ヒト観察者に目視で知覚できる組成物中の特定の光学的効果を生じるのに充分な量の反射性粒子、真珠層及び/又はゴニオクロマチック着色剤を含む少なくとも一種の第二着色剤。」
を、
「【請求項1】
以下を含む皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための化粧組成物:
少なくとも一種の非干渉性複合顔料の粒子を含む、組成物を着色するのに充分な量の少なくとも一種の第一着色剤であって、
前記粒子が少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された、平均サイズが1nmから100nmまでの範囲にある無機コアーを含み、
前記少なくとも一種の有機着色物質がD&CレッドNo.2アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.3アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6カリウムレーキ、D&CレッドNo.7アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.7バリウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.7ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.8ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.9アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.9ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.10ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.19アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.19バリウムレーキ、D&CレッドNo.19ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.21アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.21ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.22アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウム/チタン/ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.27バリウムレーキ、D&CレッドNo.27カルシウムレーキ、D&CレッドNo.27ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.28アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.30レーキ、D&CレッドNo.31カルシウムレーキ、D&CレッドNo.33アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.34カルシウムレーキ、D&CレッドNo.36レーキ、D&CレッドNo.40アルミニウムレーキ、D&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、D&CグリーンNo.3アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.4アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5ジルコニウムレーキ、D&CオレンジNo.10アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.17バリウムレーキ、D&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.5ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.6アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.7ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.10アルミニウムレーキ、FD&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.40アルミニウムレーキ、FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、及びFD&CイエローNo.6アルミニウムレーキから選ばれた有機レーキを含むことを特徴とする第一着色剤、及び
ヒト観察者に目視で知覚できる組成物中の特定の光学的効果を生じるのに充分な量の反射性粒子、真珠層及び/又はゴニオクロマチック着色剤を含む少なくとも一種の第二着色剤。」(下線は、原文のとおり)
と補正することを含むものである。

上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「少なくとも一種の有機着色物質」について、「少なくとも一種の有機着色物質がD&CレッドNo.2アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.3アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6カリウムレーキ、D&CレッドNo.7アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.7バリウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.7ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.8ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.9アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.9ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.10ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.19アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.19バリウムレーキ、D&CレッドNo.19ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.21アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.21ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.22アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウム/チタン/ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.27バリウムレーキ、D&CレッドNo.27カルシウムレーキ、D&CレッドNo.27ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.28アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.30レーキ、D&CレッドNo.31カルシウムレーキ、D&CレッドNo.33アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.34カルシウムレーキ、D&CレッドNo.36レーキ、D&CレッドNo.40アルミニウムレーキ、D&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、D&CグリーンNo.3アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.4アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5ジルコニウムレーキ、D&CオレンジNo.10アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.17バリウムレーキ、D&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.5ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.6アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.7ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.10アルミニウムレーキ、FD&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.40アルミニウムレーキ、FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、及びFD&CイエローNo.6アルミニウムレーキから選ばれた有機レーキを含む」との限定を付加するものである。
そして、その補正前の当該請求項に記載された発明と、その補正後の当該請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
よって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例の記載事項及び引用例記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され本願の優先日前である平成11年1月19日に頒布された「特開平11-12493号公報」(原査定の引用文献1。以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(a)「【請求項1】 屈折率2未満の無機粉体と有機色素とを無機塩を用いて付着及び/又は固着させた複合粉体であって、前記無機粉体:前記有機色素の重量比が20:80?90:10であることを特徴とする複合粉体。
【請求項2】 ・・・中略・・・
【請求項3】 ・・・中略・・・
【請求項4】 前記屈折率2未満の無機粉体の平均粒径が0.01?20μmの無機粉体であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の複合粉体。
【請求項5】 前記屈折率2未満の無機粉体が無水ケイ酸であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の複合粉体。
【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載の複合粉体を含有することを特徴とする組成物。
【請求項7】 請求項6記載の組成物が化粧料であることを特徴とする組成物。」(特許請求の範囲)

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屈折率2未満の無機粉体と有機色素とを付着及び/又は固着させた複合粉体及びこれを含有する組成物に関し、更に詳しくは、色味の発色が良く、水や有機溶媒に対し色素が溶出するといったブリーディングが抑制された複合粉体及びこれを含有した発色に優れ、使用部位に染着しにくい組成物に関する。」

(c)「【0002】
【従来の技術】従来、有機色素は発色が良く、彩度が高く、着色が良いので各種組成物に配合されてきた。特に、化粧料においては赤色226号、赤色201号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウレーキ等が汎用されている。しかし、これらの有機色素は、水や有機溶媒に対し、ブリーディングを起こすため、組成物に配合した時、その使用部位に染着してしまうという問題点があった。これらの問題点を解決するための方法として、シリカ、ナイロン、ポリエチレンに赤色202号を回転式ボールミルで、複合化させる方法(特開平4-292664号公報)や表面電荷が同じ真珠光沢顔料と着色顔料を、表面電荷調整剤を用いて付着させる方法(特開平4-332766号公報)などがあるが、顔料や染料の微粒子化や分散が未だ十分ではないため、満足できる発色が得られない。また、屈折率2以上且つ平均粒子径0.1?60μmである無機白色顔料を赤色202号で被覆させる方法(特開平7-304633号公報)等があるが、色素の担体として屈折率2以上の隠蔽力の高い、酸化チタン、酸化ジルコニウム等や、その混合物、複合物を使用しているため、色素を付着させても、粉体自体の明度が高くなり、色素本来の発色は未だ十分には得られてない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、色素本来の発色(彩度)が得られ、水や有機溶媒に対し、安定で、ブリーディングが抑制され、組成物に配合した時、色がくすんだり、使用部位に染着したりしない粉体が望まれていた。」

(d)「【0007】本発明の複合粉体を構成する無機粉体は、屈折率2未満のものであれば特に限定されず、その形状は、結晶構造を有するものも好適に使用することができ、必要に応じ一種又は二種以上用いることができる。屈折率が2以上の無機粉体を使用すると、隠蔽力が高くなり、有機色素本来の色味よりも明度が高くなってしまうため、色素本来の高彩度を演出することは期待できず好ましくない。これらの無機粉体は、例えば化粧料の場合は、タルク、カオリン、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0008】本発明の複合粉体を構成する有機色素は、特に制限されるものではなく、化粧料においては、例えば、赤色201号、赤色202号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、青色1号、黒色401等が挙げられる。
【0009】無機粉体に有機色素を付着及び/又は固着させる際に用いる無機塩としては、用いる有機色素の化学構造に依存するが、例えば、赤色202号を用いる場合は塩化カルシウムで、黄色4号を用いる場合は、塩化アルミニウムが挙げられる。」

(e)「【0012】これら無機粉体の粒子径については、無機粉体による有機色素のブリーディングや使用部位への染着抑制効果、十分な着色力や使用感において、0.01?20μmの範囲にあることが望ましい。
【0013】本発明の複合粉体を構成する無機粉体は特に限定されないが、屈折率2未満の無機粉体のうち、とりわけ透明性の高いという点で無水ケイ酸が望ましい。」

(f)「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の複合粉体は、化粧料、塗料、インキ、プラスチック、繊維、ゴムトナー等の各種組成物に一種又は二種以上を配合することができる。本発明の複合粉体を含有する化粧料としては、メークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料等があげられ、剤型は、油性固形状、油性液状、固形状、クリーム状、ペースト状、乳液状、ローション状、粉末状、粉末固形状等が挙げられる。効果がより発現する点ではメークアップ化粧料が最も好ましく、メークアップ化粧料としては、口紅、アイ製品、ファンデーション、ほほ紅、美爪料、白粉、コンシーラー、日焼け止め化粧料等が挙げられる。化粧料中の本発明の複合粉体の配合量は、その化粧料の特質に応じて任意に選択されるが、官能上の特性及び効果の発現において、0.001?80重量%(以下、単に「%」と示す。)が好ましい。
【0018】本発明の組成物の一つである化粧料には通常化粧料に用いられる成分を必要に応じて適宜配合することが出来る。油分としては、例えば、オリーブ油、ひまし油、ホホバ油、ミンク油等の油脂類、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル等のエステル類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油類等をあげることができる。粉体としては、例えば、タルク、カオリン、セリサイト、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、無水ケイ酸等の無機体質顔料、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料、ベンカラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、グンジョウ、コンジョウ、カーボンブラック等の無機着色顔料、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等のパール剤、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ポリエチレンパウダー、結晶セルロース、N-アシルリジン等の有機粉体が挙げられる。なおこれらの粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系油剤、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等の一種又は二種以上を用いて表面処理を施したものであってもよい。その他、有機溶剤、樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、防腐剤、界面活性剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。必要に応じて染着しない程度に本発明の複合粉体以外の有機色素を含有することもできる。」

(g)「【0023】〔製造実施例4〕複合粉体(黄色4号-無水ケイ酸)
精製水100gに、塩化アルミニウム6水塩13gを溶解した。次に30%アンモニア水17.6g、無水ケイ酸5.85gを加え、30分間均一分散後、黄色4号を5.85g添加した。あらかじめ別のビーカーに精製水133gと塩化アルミニウム6水塩33.4gを溶解した塩化アルミニウム溶液を調製し、前記の無水ケイ酸を分散した黄色4号溶液にゆっくりと滴下した。更に精製水50gに炭酸ナトリウム12.6gを溶解した溶液を加え、室温にて4時間熟成した。そして精製水を滴下し、1昼夜放置した。デカンテーションにより上澄みを除き、精製水を加え、洗浄工程を3回繰り返した。得られた複合粉体を50℃で乾燥し、粉砕することにより本発明の複合粉体(黄色4号-無水ケイ酸)(黄色4号:前記無機粉体の重量比は50:50)を得た。」

(h)「【0037】実施例3.アイカラー
(成分) (%)
1.タルク 残量
2.マイカ 15.0
3.セリサイト 5.49
4.製造実施例3の複合粉体
(赤色202号-無水ケイ酸) 0.01
5.製造実施例4の複合粉体
(黄色4号-無水ケイ酸) 1.0
6.パール顔料 23.5
7.防腐剤 適量
8.流動パラフィン 6.0
9.メチルポリシロキサン 2.0
10.セスキオレイン酸ソルビタン 2.0
11.パーフルオロポリエーテル 1.0
(製法)
A.成分1?7を混合する。
B.成分8?11を均一溶解後、Aに加え、混合する。
C.Bを粉砕機で処理し、圧縮成型する。
【0038】以上のようにして得られたアイカラーは、彩度が高く、使用部位に染着しにくいものであった。
【0039】実施例4.パウダーファンデーション
(成分) (%)
1.タルク 残量
2.マイカ 35.0
3.カオリン 5.0
4.二酸化チタン 10.0
5.雲母チタン 3.0
6.ステアリン酸亜鉛 1.0
5.製造実施例2の複合粉体
(赤色202号-無水ケイ酸) 0.5
7.製造実施例4の複合粉体
(黄色4号-無水ケイ酸) 1.0
8.黒酸化鉄 0.2
9.ナイロンパウダー 10.0
10.スクワラン 6.0
11.酢酸ラノリン 1.0
12.ミリスチン酸オクチルドデシル 2.0
13.ジイソオクタン酸
ネオペンチルグリコール 2.0
14.モノオレイン酸ソルビタン 0.5
15.防腐剤 適量
(製法)
A.成分1?9を混合する。
B.成分10?15を均一溶解後、Aに加え、混合する。
C.Bを粉砕機で処理し、圧縮成型する。
【0040】以上のようにして得られたパウダーファンデーションは、彩度が高く、使用部位に染着しにくいものであった。
【0041】実施例5.リキッドファンデーション
(成分) (%)
1.ステアリン酸 1.5
2.セタノール 1.0
3.トリオクタン酸グリセリル 5.0
4.スクワラン 3.8
5.製造実施例1の複合粉体
(赤色202号-無水ケイ酸) 1.0
6.製造実施例4の複合粉体
(黄色4号-無水ケイ酸) 0.5
6.パール顔料 5.0
7.セスキオレイン酸ソルビタン 0.2
8.1,3-ブチレングリコール 10.0
9.防腐剤 適量
10.カルボキシポリマー 0.1
11.精製水 残量
12.トリエタノールアミン 1.0
(製法)
A.成分1?7を加温溶解し、分散する。
B.成分8?12を加温溶解する。
C.AにBを添加して乳化し、冷却する。
【0042】以上のようにして得られたリキッドファンデーションは、彩度が高く、使用部位に染着しにくいものであった。
【0043】実施例6.頬紅
(成分) (%)
1.タルク 6.0
2.カオリン 9.0
3.ミリスチン酸亜鉛 5.0
4.製造実施例2の複合粉体
(赤色202号-無水ケイ酸) 75.0
5.製造実施例4の複合粉体
(黄色4号-無水ケイ酸) 0.5
6.パール顔料 1.5
7.流動パラフィンー 3.0
(製法)
A.成分1?6を混合する。
B.Aに7を噴霧し粉砕機で処理した後、圧縮成型する。
【0044】以上のようにして得られた頬紅は、彩度が高く、使用部位に染着しにくいものであった。」

(2)上記(1)(a)によると、引用例には、屈折率2未満の無機粉体と有機色素とを無機塩を用いて付着及び/又は固着させた複合粉体であって、前記屈折率2未満の無機粉体の平均粒径が0.01?20μmの無機粉体であり、前記屈折率2未満の無機粉体が無水ケイ酸である複合粉体を含有する、化粧料である組成物が記載されている。
ここで、上記(1)(d)に、「無機粉体に有機色素を付着及び/又は固着させる際に用いる無機塩としては」とあり、有機色素は無機粉体に付着及び/又は固着されているものといえる。
また、上記(1)(d)には、無機粉体は、例えば化粧料の場合は、・・・無水ケイ酸、・・・等が挙げられること、複合粉体を構成する有機色素は、特に制限されるものではなく、化粧料においては、・・・黄色4号、・・・等が挙げられることが記載されている。
そして、上記(1)(f)には、前記化粧料には通常化粧料に用いられる成分を必要に応じて適宜配合することができ、粉体として、雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等のパール剤などが挙げられており、上記(1)(h)の実施例3?6の化粧料には、製造例実施例4の複合粉体(黄色4号-無水ケイ酸)、とパール顔料又は雲母チタンを配合したことが示されている。

そうすると、引用例の上記記載からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「屈折率2未満の無機粉体に有機色素を無機塩を用いて付着及び/又は固着させた複合粉体であって、前記無機粉体が無水ケイ酸であり、前記無機粉体の平均粒径が0.01?20μmであり、前記有機色素が黄色4号である複合粉体と、パール剤とを含有する化粧料組成物。」

3 対比
そこで、以下に本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用例の上記2(1)(f)に、「本発明の複合粉体を含有する化粧料としては、メークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料等があげられ」、「効果がより発現する点ではメークアップ化粧料が最も好ましく、メークアップ化粧料としては、口紅、アイ製品、ファンデーション、ほほ紅、美爪料、白粉、コンシーラー、日焼け止め化粧料等が挙げられる」のように記載され、上記2(1)(h)に記載された実施例3?6では、それぞれ「アイカラー」、「パウダーファンデーション」、「リキッドファンデーション」、「頬紅」としたことが記載されている。
よって、引用発明の「化粧料組成物」は、「皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪」に適用するものといえ、本願補正発明の「皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための化粧組成物」に相当する。

(2)引用発明の「無機粉体」は「有機色素を無機塩を用いて付着及び/又は固着」させるものであるから、本願補正発明の「無機コアー」に相当する。
そして、引用発明の「黄色4号」である「有機色素」は、本願補正発明の「有機着色物質」に相当する。
また、引用発明の「複合粉体」は、上記のとおり「無機粉体に有機色素を無機塩を用いて付着及び/又は固着させた」ものであるから複合顔料ということができ、粉体であるから粒子といえ、色素を有するから着色剤である。
以上のことを総合すると、引用発明の「屈折率2未満の無機粉体と有機色素とを無機塩を用いて付着及び/又は固着させた複合粉体であって、前記無機粉体が無水ケイ酸であり、前記無機粉体の平均粒径が0.01?20μmであり、前記有機色素が黄色4号である複合粉体」と、本願補正発明の「少なくとも一種の非干渉性複合顔料の粒子を含む、組成物を着色するのに充分な量の少なくとも一種の第一着色剤であって、前記粒子が少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された、平均サイズが1nmから100nmまでの範囲にある無機コアーを含み、前記少なくとも一種の有機着色物質が・・・中略・・・から選ばれた有機レーキを含むことを特徴とする第一着色剤」とは、「少なくとも一種の複合顔料の粒子を含む、少なくとも一種の着色剤であって、前記粒子が少なくとも一種の有機着色物質を備えた、所定の無機コアーを含む着色剤」である点で共通する。

(3)引用発明の「パール剤」は、本願補正発明の「少なくとも一種の第二着色剤」に含まれる「真珠層」に相当し、着色剤である。
すなわち、本願補正発明の「少なくとも一種の第二着色剤」に含まれる「真珠層」は、本願明細書に、「少なくとも一種の第二着色剤は、例えば、反射性粒子、真珠箔剤(又は“真珠層”)、及び/又はゴニオクロマチック着色剤を含み得る。」(段落【0028】)、「真珠層は真珠層顔料、例えば、鉄酸化物で被覆されたマイカチタン、オキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、クロム酸化物で被覆されたマイカチタン、上記型の有機着色剤で被覆されたマイカチタン、及びオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠層顔料から選ばれてもよい。」(段落【0034】)のように説明されているとおり、鉄酸化物で被覆されたマイカチタンやオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠層顔料から選ばれる真珠箔剤である。
一方、引用発明の「パール剤」は、上記2(1)(f)に、「雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等のパール剤」と説明されており、雲母はマイカと同義であるから、これらの記載からみても両者は同じものであるといえる。
そうすると、引用発明の「パール剤」と、本願補正発明の「ヒト観察者に目視で知覚できる組成物中の特定の光学的効果を生じるのに充分な量の反射性粒子、真珠層及び/又はゴニオクロマチック着色剤を含む少なくとも一種の第二着色剤」とは、「真珠層を含む少なくとも一種の着色剤」である点で共通する。

(4)そして、引用発明では、上記のとおり2種類の着色剤を含むといえるから、そのいずれかを第一着色剤といい、他方を第二着色剤ということができる。

(5)以上のことから、両者は、次の(一致点)及び(相違点1)?(相違点4)を有する。

(一致点)
「以下を含む皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための化粧組成物:
少なくとも一種の複合顔料の粒子を含む、少なくとも一種の第一着色剤であって、
前記粒子が少なくとも一種の有機着色物質を備えた、所定の無機コアーを含む第一着色剤、及び
真珠層を含む少なくとも一種の第二着色剤。」

(相違点1)
「少なくとも一種の有機着色物質を備えた、所定の無機コアー」が、本願補正発明では「少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された、平均サイズが1nmから100nmまでの範囲にある無機コアーを含み、前記少なくとも一種の有機着色物質がD&CレッドNo.2アルミニウムレーキ、・・・中略・・・FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、及びFD&CイエローNo.6アルミニウムレーキから選ばれた有機レーキを含む」ものであるのに対し、引用発明では「有機色素を無機塩を用いて付着及び/又は固着させた」、「屈折率2未満」であり、「無水ケイ酸」であり、「平均粒径が0.01?20μm」である「無機粉体」であって、「有機着色物質」が、「黄色4号」である点。
(相違点2)
「少なくとも一種の複合顔料の粒子」が、本願補正発明では「少なくとも一種の非干渉性複合顔料の粒子」であるのに対し、引用発明では「複合粉体」が「非干渉性」であるかが不明な点。
(相違点3)
「少なくとも一種の第一着色剤」が、本願補正発明では「組成物を着色するのに充分な量」と特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
(相違点4)
「少なくとも一種の第二着色剤」が、本願補正発明では「ヒト観察者に目視で知覚できる組成物中の特定の光学的効果を生じるのに充分な量」と特定されているのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。

4 判断
そこで、以下に上記(相違点1)?(相違点4)について検討する。

(1)(相違点1)について
ア 無機コアーについて
本願補正発明の「無機コアー」について、本願明細書には、「無機コアーは2以上の屈折率を有してもよい。」(段落【0009】)のように記載されていることから、その前提として2未満の屈折率を有するものも含むことを当然意図しているといえる。
そして、「無機コアーを形成するのに使用し得る材料の中に、・・・シリカ・・・が非限定的に挙げられる。一実施態様において、無機コアーは・・・シリカ・・・から選ばれる。」(段落【0009】)のように説明され、例1では、「シリカ/D&CレッドNo.7複合顔料」を用いている(段落【0048】)。
そうしてみると、本願補正発明の「無機コアー」は、屈折率2未満のものを含んでよく、また「シリカ」を含むものといえる。
一方、無水ケイ酸がシリカと同義であることは技術常識であるから、引用発明の「無機粉体」が「屈折率2未満」で「無水ケイ酸」である点は、本願補正発明の「無機コアー」に包含されているといえ、この点は実質的な相違点ではない。

イ 少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された無機コアーを含み、前記少なくとも一種の有機着色物質が特定の群から選ばれた有機レーキを含むことについて
本願補正発明の「少なくとも部分的に被覆された」ことについて、本願明細書には、複合顔料の製造方法として、「複合顔料は適当な方法、例えば、機械化学的方法又は有機着色物質の溶解及びコアーの表面におけるその沈殿による、溶液中の沈殿の方法により製造し得る。」(段落【0026】)のように説明されていることからみて、無機コアーの表面に有機レーキを沈殿法などにより被覆したものを包含するといえる。
ところで、有機レーキとは、下記文献A(i)、(ii)及び文献Bにあるとおり、水に溶ける染料を金属塩などとして不溶性とし、体質顔料等の基剤に吸着、沈殿したものなどを意味することが知られている。
一方、引用発明は、「無機粉体に有機色素を無機塩を用いて付着及び/又は固着させた」ものであるところ、その具体的な方法として、上記2(1)(d)には、「本発明の複合粉体を構成する有機色素は、特に制限されるものではなく、化粧料においては、・・・黄色4号・・・等が挙げられる。無機粉体に有機色素を付着及び/又は固着させる際に用いる無機塩としては、・・・黄色4号を用いる場合は、塩化アルミニウムが挙げられる。」とある。
そして、上記2(1)(g)の〔製造実施例4〕には、黄色4号と無水ケイ酸とを塩化アルミニウムを用いて複合粉体としたことが記載されている。
黄色4号は、下記文献A(iii)にあるとおり、「FD&CイエローNo.5」と同じものであって、水溶性の酸性染料に分類されるものであり、これをアルミニウム、バリウム、ジルコニウムでレーキとできることは、本出願前周知の事項である。
そうしてみると、引用例の前記〔製造実施例4〕の工程は、黄色4号がアルミニウムでレーキ化されて無水ケイ酸に少なくとも部分的に被覆されるものであることは、当業者に自明な事項といえる。
そして、無機粉体に被覆された有機色素は黄色4号のレーキ、すなわち、「FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ」であり、本願補正発明の特定の群から選ばれた有機レーキのうち「FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ」に相当する。
よって、引用発明の「無機粉体に有機色素を無機塩を用いて付着及び/又は固着させた」ものであって、「前記有機色素が黄色4号である」ことは、本願補正発明の「少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された」、「無機コアー」を含み、「前記少なくとも一種の有機着色物質」が、「FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ」である「有機レーキ」を含むことと同じであり、この点は実質的な相違点ではない。

文献A:日本化粧品技術者会編、最新化粧品科学-改訂増補II-、平成4年7月10日、改訂増補II発行、株式会社薬事日報社
(i)「染料(Dye):水または溶剤に溶け,染着の機能をもっているものを染料という。」(331頁7行)
(ii)「レーキ(Lake):染料と金属とのラジカルな結合のみでなく,基剤に吸着,沈殿,混合等により不溶性としたものをいう。」(331頁13?14行)
(iii)332?333頁の表-2には、色素番号:黄色4号、F.D.&C.,D.&C.,Ext.D.&C.名(CIナンバー):F.D.&C. Yellow No.5 (19140)、レーキ:Al,Ba,Zr、種別:酸性染料、溶解性 水:S(可溶)とある。

文献B:化学大辞典編集委員会偏、化学大辞典9、昭和53年9月10日、縮刷版第22刷発行、共立出版株式会社、881頁
「レーキ[^(英)lake] 有機顔料の一つの分類の総称.わが国などでは有機顔料全般をさすこともある.製法 水に可溶性または難溶性のいろいろの色素を,金属塩またはその他の沈殿剤で水に不溶性にすることによってつくられる.更に細分すると染料の水溶液に多量の吸着性の体質顔料を使用し,その上に染料を沈着させたものは染付ケ顔料または染色レーキともいわれる.」

ウ 平均サイズが1nmから100nmまでの範囲にある無機コアーについて
引用発明の無機粉体は、「平均粒径が0.01?20μm」、すなわち、“平均粒径が10nmから20000nmまでの範囲”にある。
そうしてみると、両者は、10nmから100nmの範囲で一応重複している。
ところで、引用例の上記2(1)(g)に記載された〔製造実施例4〕は、無水ケイ酸を使用しているものの、その具体的な粒径については記載されていない。
一方、無機粉体の粒径に関する記載としては、上記2(1)(e)に「これら無機粉体の粒子径については、無機粉体による有機色素のブリーディングや使用部位への染着抑制効果、十分な着色力や使用感において、0.01?20μmの範囲にあることが望ましい。本発明の複合粉体を構成する無機粉体は特に限定されないが、屈折率2未満の無機粉体のうち、とりわけ透明性の高いという点で無水ケイ酸が望ましい。」のように説明されている。
また、引用例に記載の複合粉体は、上記2(1)(b)に「色味の発色が良く、水や有機溶媒に対し色素が溶出するといったブリーディングが抑制された複合粉体」、また上記2(1)(c)に「色素本来の発色(彩度)が得られ、水や有機溶媒に対し、安定で、ブリーディングが抑制され、組成物に配合した時、色がくすんだり、使用部位に染着したりしない粉体」であることが記載されているとおり、引用発明は有機色素本来の発色がよく、色がくすんだりしないものを得ることを課題の一つとしているものである。
そして、そのような課題も考慮して、上記のとおり透明性の高い無水ケイ酸が望ましいとされていると解される。
化粧品に用いる顔料の粒径は、下記文献A(iv)、文献C、及び文献Dにも記載されているとおり、色彩化粧品の色彩特性に重要な影響を与えるものであり、製品に適した粒度分布が必要であること、微粒なものほど色彩の鮮明度を増すこと、0.1μmより小さい、特に0.01μmより小さくなると、隠蔽力が低下し透明度が増してくることが知られている。
そうしてみると、有機色素本来の発色がよく、色がくすんだりしないものを得る目的で、透明性の高い無水ケイ酸として、平均粒径が示された範囲内のうち0.01μm(10nm)に近い辺りを選択して採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

文献A:日本化粧品技術者会編、最新化粧品科学-改訂増補II-、平成4年7月10日、改訂増補II発行、株式会社薬事日報社
(iv)「(8)粒度分布
色素の粒子の大きさは,色彩化粧品の色彩特性に重要な影響を与えるものである。原料としての有機色素及び無機顔料の一次粒子は,通常0.01μから数ミクロンであるが(超微粒子は0.01μのものもある),顔料の製造工程により,または経時的に集粒された数十ミクロンのものもある。
顔料の粒子は微粒子ほど良いとは一概にはいえない。また粒子の大きさが均一に揃っているものではない。微粒なものほど色彩の鮮明度を増し,0.01μ以下になるとコロイド化して透明度が増してくるので,その製品に適した粒度分布が必要である。
ネイルエナメルの場合,顔料の沈降を防ぐということだけを考えれば微粒なものほど良いが,0.01μ以下になると透明化し,隠蔽力が低下する。」(726頁14?23行)(当審注:「μ」は「μm」古い表記法である。)

文献C:特開平7-304633号公報
「【0023】無機白色顔料の形状については特に制限は無いが、平均粒子径は0.1?60μmの範囲にある事が望ましい。平均粒子径が0.1μm未満であると、顔料の隠蔽力が低下する上、光学的に充分な顔料分散状態が得られにくく、60μmを越えると充分な着色力が得られないだけでなく、粒子感が感じられるようになり、化粧料として好ましくない。」

文献D:特開平8-127513号公報
「【0025】無機白色顔料の平均粒子径は0.1?60μmの範囲にある事が望ましい。平均粒子径が0.1μm未満であると、顔料の隠蔽力が低下する上、光学的に十分な顔料分散状態が得にくく、60μmを越えると十分な着色力が得られないだけでなく、粒子感が感じられるようになり、好ましくない。」

(2)(相違点2)について
上記「(1)(相違点1)について」で検討したとおり、引用発明の「複合粉体」は、本願補正発明の「複合顔料の粒子」を構成する無機コアーに含まれる材料である無水ケイ酸の表面に本願補正発明の有機着色物質であるFD&CイエローNo.5アルミニウムレーキを少なくとも部分的に被覆したものということができる。
そして、無水ケイ酸が干渉性物質ではないことは自明であるから、これに本願補正発明の有機着色物質と同じ材料を被覆した複合粉体は非干渉性ということができ、この点は実質的な相違点ではない。

(3)(相違点3)、(相違点4)について
引用発明の複合粉体は、上記2(1)(b)、(c)に示されているとおり、「色味の発色が良く」、「色素本来の発色(彩度)が得られ」るものであることが求められるものである。
そうすると、化粧料組成物中に複合粉体を配合する際に、「組成物を着色するのに充分な量」とすることは、当業者が当然行うことであって格別なことではない。
また、下記文献Eに記載されているとおり、引用発明のパール剤、すなわちパール顔料が光学的効果を有するものであることは、当業者における技術常識である。
したがって、これを化粧料組成物中に配合する際に、「ヒト観察者に目視で知覚できる組成物中の特定の光学的効果を生じるのに充分な量」とすることも、当業者が当然行うことであって格別なことではない。

文献E:化粧品ハンドブック、日光ケミカルズ株式会社他、平成8年11月1日発行
「4.パール顔料 パール顔料はメークアップ製品のアイシャドウ,ほお紅などに真珠光沢を与え,特殊な光効果をだしたり,基礎化粧品,トイレタリー製品に光沢を与え高級感をだすために使用されている.・・・中略・・・合成品としては,オキシ塩化ビスマスが開発された・・・中略・・・酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)・・・」(326頁右欄17?31行)

(4)本願補正発明の効果について
本願明細書の段落【0047】?【0054】には、例1?例4が示されている。
具体的には、例1及び例2では、本願補正発明の第二着色剤の選択肢の一つであるゴニオクロマチック顔料を用いたリップスティック、例4では、本願補正発明の第二着色剤の選択肢の一つである反射性材料に相当する、銀被覆ガラス粒子、TOYALにより販売されるメタシャインREFSX2040PSを用いたマニキュアを調製したことが記載されている。
そして、例1及び例2については、比較例1との比較を行い、その結果、「比較例1は顔料の緑色成分を示さず、例1及び2のそれと較べて低下された“色フロップ”効果を有していた。」(段落【0052】)と評価され、例4では、「銀被覆ガラス粒子の存在に連関するぱっと輝く効果が観察し得る」(段落【0054】)のように評価されている。
一方で、例3では、本願補正発明の第二着色剤の選択肢の一つである真珠層に相当する、マイカ/オキシ塩化ビスマス/褐色の鉄酸化物顔料、エンゲルハードにより販売されるクロマ-ライト・ブラウンを用いた液体ファンデーションを調製したことが記載されているものの、得られた化粧組成物についての評価はなされていない。
そうしてみると、引用発明のパール剤を用いた場合と比較できる唯一の実施例である例3は、その効果が理解できる程度に記載されていないから、本願明細書記載の実施例から直接的に引用発明に比較した本願補正発明の効果を確認することはできない。
そこで本願明細書の記載を検討するに、本願明細書には、背景技術として「光を反射でき、かつ/又は化粧組成物の目視知覚を変更し得る着色剤を含む組成物の調製が知られている。このような着色剤と関連して、純粋な形態の有機性又は無機性の顔料を組成物に混入することが知られており、これは組成物の透明性を低下させるという欠点を有することがあり、その結果、前記着色剤により生じた光学的効果の最大の利益を享受できない。」(段落【0002】)とあり、発明が解決しようとする課題として「満足な色を有し、かつ充分に目視し得る特定の光学的効果を生じ得る着色剤を含む化粧組成物に対する要望がある。」(段落【0003】)のように記載されている。また、「例えば、組成物中に存在する第一着色剤が色を与えるとともに、組成物に所望される透明性又は半透明性を保持することがあり、その結果、第二着色剤により与えられる光学的効果が裸眼に見えて残る。」(段落【0005】)と記載されている。
そうしてみると、本願補正発明の効果は、光学的効果を有する第二着色剤の効果を損なうことなく、組成物に所望の色を与えることができるように、透明又は半透明の第一着色剤を用いて、充分な光学的効果と着色を同時に得られるようにしたことと解される。
しかしながら、引用発明においても、複合粉体は、透明性の高いものを採用し、有機色素本来の発色が得られるとともに、色がくすんだりしないものであるから、併用したパール剤の光学的効果を損なうことなく、所望の着色が得られることは、当業者が予測し得た範囲内のことである。

なお、上記のとおり、本願明細書には真珠層を採用した例3においては具体的な評価はされていないが、例4の反射性粒子を用いた場合と同様な効果、すなわち、「ぱっと輝く効果」のような効果を奏することが理解されるともいえるので、この点についても補足して検討する。
これまで検討したとおり、引用発明においては着色剤として透明性の高い複合粉体を用いているといえるから、化粧料組成物中に配合されたパール剤が、透明性の低い着色剤を用いた場合に比べて、その光学的効果が損なわれることなく「ぱっと輝く効果」のような効果を奏することは当業者が予測し得たことであり、その程度についても、本願明細書の記載を参酌しても格別顕著なものともいえない。

(5)上申書の比較実験について
審判請求人は平成23年10月31日付の上申書で、無機コアーの平均サイズを限定することによる本願発明の効果を明らかにするために実験を行った結果を示しているので、その点についても検討する。
比較実験は、有機着色物質としてのD&CレッドNo.7カルシウムレーキを用い、無機コアーとして平均サイズが25nmであるTiO_(2)(P-25)と、平均サイズが250nmであるTiO_(2)(A-100)を異ならせるほかは条件を同じにして複合顔料を調製し、メタシャインMC1120RSである第二着色剤を用いて実施されたものであり、その結果、平均サイズが250nmである比較のリップグロスに比べて、強いぱっと輝く効果を示したことが記載されている。
しかしながら、この比較実験は、第二着色剤として反射性粒子を用いたものであり、無機コアーとしてもTiO_(2)を用いたものであるから、引用発明に対する優位性を明らかにする実験とはいえない。

ここで、上記(4)でも検討したとおり、反射性粒子の効果と真珠層の効果とが同様なものとも解されるので、上記比較実験の結果についても検討する。
引用例の上記2(1)(c)に「また、屈折率2以上且つ平均粒子径0.1?60μmである無機白色顔料を赤色202号で被覆させる方法(特開平7-304633号公報)等があるが、色素の担体として屈折率2以上の隠蔽力の高い、酸化チタン、酸化ジルコニウム等や、その混合物、複合物を使用しているため、色素を付着させても、粉体自体の明度が高くなり、色素本来の発色は未だ十分には得られてない。」と記載され、上記2(1)(d)にも「屈折率が2以上の無機粉体を使用すると、隠蔽力が高くなり、有機色素本来の色味よりも明度が高くなってしまうため、色素本来の高彩度を演出することは期待できず好ましくない。」と記載されているとおり、酸化チタンはそもそも隠蔽力の高い材料であり、比較のものは平均サイズも大きいことからより透明性も劣るものであるといえる。そして、そのため、引用発明では屈折率が2未満の無水ケイ酸を採用しているのである。
そうしてみると、上記比較の場合において、同時に配合したメタシャインMC1120RSである第二着色剤の光学的効果が損なわれていることは、当業者が予測し得たことであって、格別なこととはいえない。

(6)まとめ
以上のことから、引用発明において、上記(相違点1)?(相違点4)に係る本願補正発明の発明特定事項を併せ採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められず、併せ採用したことによって格別に予想外の作用効果を奏しているとも認められない。
したがって、本願補正発明は、周知事項を勘案して引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年3月11日付の手続補正は却下されたので、本願の請求項1?49に係る発明は、平成19年9月5日付の手続補正より補正された特許請求の範囲の請求項1?49に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
以下を含む皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための化粧組成物:
少なくとも一種の非干渉性複合顔料の粒子を含む、組成物を着色するのに充分な量の少なくとも一種の第一着色剤であって、前記粒子が少なくとも一種の有機着色物質で少なくとも部分的に被覆された、平均サイズが1nmから100nmまでの範囲にある無機コアーを含む着色剤、及び
ヒト観察者に目視で知覚できる組成物中の特定の光学的効果を生じるのに充分な量の反射性粒子、真珠層及び/又はゴニオクロマチック着色剤を含む少なくとも一種の第二着色剤。」

2 引用例の記載事項及び引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用例記載の発明は、前記「第2 2 引用例の記載事項及び引用例記載の発明」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2 3 対比」で検討した本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である「有機着色物質」についての「少なくとも一種の有機着色物質がD&CレッドNo.2アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.3アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウムレーキ、D&CレッドNo.6バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.6カリウムレーキ、D&CレッドNo.7アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.7バリウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウムレーキ、D&CレッドNo.7カルシウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.7ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.8ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.9アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウムレーキ、D&CレッドNo.9バリウム/ストロンチウムレーキ、D&CレッドNo.9ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.10ナトリウムレーキ、D&CレッドNo.19アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.19バリウムレーキ、D&CレッドNo.19ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.21アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.21ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.22アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.27アルミニウム/チタン/ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.27バリウムレーキ、D&CレッドNo.27カルシウムレーキ、D&CレッドNo.27ジルコニウムレーキ、D&CレッドNo.28アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.30レーキ、D&CレッドNo.31カルシウムレーキ、D&CレッドNo.33アルミニウムレーキ、D&CレッドNo.34カルシウムレーキ、D&CレッドNo.36レーキ、D&CレッドNo.40アルミニウムレーキ、D&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、D&CグリーンNo.3アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.4アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.5ジルコニウムレーキ、D&CオレンジNo.10アルミニウムレーキ、D&CオレンジNo.17バリウムレーキ、D&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.5ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.6アルミニウムレーキ、D&CイエローNo.7ジルコニウムレーキ、D&CイエローNo.10アルミニウムレーキ、FD&CブルーNo.1アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.4アルミニウムレーキ、FD&CレッドNo.40アルミニウムレーキ、FD&CイエローNo.5アルミニウムレーキ、及びFD&CイエローNo.6アルミニウムレーキから選ばれた有機レーキを含む」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4 判断」に記載したとおり、周知事項を勘案して引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、周知事項を勘案して引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、周知事項を勘案して引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-29 
結審通知日 2012-03-05 
審決日 2012-03-21 
出願番号 特願2005-139026(P2005-139026)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 ▲高▼岡 裕美
関 美祝
発明の名称 皮膚、唇、爪、及び/又は毛髪への適用のための組成物  
代理人 平山 孝二  
代理人 浅井 賢治  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 箱田 篤  
代理人 小川 信夫  

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