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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1260874
審判番号 不服2010-21867  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-29 
確定日 2012-08-02 
事件の表示 特願2000-246802「情報処理システム、携帯電話機及び情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月12日出願公開、特開2001-160105〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月16日(優先権主張 平成11年9月22日)の出願であって、平成21年12月10日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成22年2月22日付けで手続補正がなされ、平成22年3月31日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年6月7日付けで意見書が提出されたが、同年6月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月29日付けで拒絶査定不服審判請求及び手続補正がなされた。
その後、平成23年9月29日付けで審尋がなされ、同年12月5日付けで回答書が提出され、当審がした平成24年3月7日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年5月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成24年5月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月11日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成24年5月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
電磁気的に情報が取得可能であって、当該有体物に関連した情報を提供するために任意の有体物に取り付けられる情報提供媒体と、
前記情報提供媒体と所定距離内に近接されると前記情報提供媒体から電磁気的に前記情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得された情報を記録する記憶手段と、当該情報読取開始のための入力手段の操作に応じて前記情報取得手段の前記情報提供媒体からの情報の取得を可能とする情報読取開始のための入力手段とを有する携帯端末と、
を備え、
前記携帯端末は、表示手段を備え、
前記携帯端末は、前記記憶手段に記憶された情報を表示可能な形態の情報に処理する処理手段を備え、
前記表示手段は、前記処理手段により処理された情報を表示し、
前記表示可能な形態の情報は、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて新たに取得される情報を含むものであり、
前記新たに取得される情報は、
前記記憶手段に記憶された情報に含まれる前記新たに取得される情報の場所を示す情報に基づいて取得される、
情報処理システム。」
と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項7を独立形式で記載するとともに(なお、本件補正前の請求項1は削除された)、
ア.補正前の「当該入力手段の操作に応じて前記情報取得手段の前記情報提供媒体からの情報の取得を可能とする入力手段」なる記載を、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的として「当該情報読取開始のための入力手段の操作に応じて前記情報取得手段の前記情報提供媒体からの情報の取得を可能とする情報読取開始のための入力手段」と改め(なお、かかる補正事項は、発明を特定するために必要な事項である「入力手段」について、「情報読取開始のための」ものであることの限定を付加するものであるとみることもできる)、
イ.補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である、記憶手段に記憶された情報に基づいて「新たに取得される情報」について、「前記記憶手段に記憶された情報に含まれる前記新たに取得される情報の場所を示す情報に基づいて取得される」との限定を付加するものである。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除、第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
当審が通知した拒絶の理由に引用された綾塚 祐二,UbiquitousLinks:実世界環境に埋め込まれたハイパーメディアリンク,情報処理学会研究報告,社団法人情報処理学会,1996年7月11日,Vol.96 No.62,p.23-30(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「今回の試作システムでは、製品毎に固有のIDを持つ小さなタグを実世界のオブジェクトに張り付け、その認識装置を携帯型の計算機に取り付けることにより、その認識を行っている。また、計算機が“現在、(この計算機を持った)ユーザは何処にいるのか”ということを認識するために、赤外線LEDによるIDも用いている。」(24頁右欄12?19行)

イ.「2 ハードウェア構成
UbiquitousLinksのシステムは、実世界に取り付けられるID群(タグID及び赤外線ID)と、それらを認識し、ネットワークを介してWWWにアクセスし情報を表示する携帯端末Roc(Real Object Clicker)から成る(図3)。」(25頁左欄1?6行)

ウ.「2.1 タグID及びその読み取り装置
今回使用したタグIDはINDALA社の製品で、タグはコイルと5mm角ほどのICから構成されておりバッテリ等は必要とせず読み取り装置の発する磁界の動きを起電力とする。読み取り装置は電波として受信したIDをシリアル回線(RS-232C)で計算機へと送る。
・・・・(中 略)・・・・
読み取り距離はタグの大きさ及び読み取り装置の発する磁界の強さにおおよそ比例して変わる。
・・・・(中 略)・・・・
この構成で、今回行なった実験環境下では3cm?6cmほどの距離で読み取ることができる。」(25頁左欄9?26行)

エ.「現在のところ、携帯端末の脇にIDタグ読み取り装置のセンサ部と赤外線受光部を取り付け、IDタグ読み取り装置の制御部と赤外線IDの認識部及びそれらの電源(単三電池8本)をウェストポーチに収納している。従ってやや大きめではあるがRocは完全に持ち歩くことができる。」(25頁右欄8?13行)

オ.「3 ソフトウェア構成
Roc上で動いているソフトウェアはWWWブラウザと、IDを読みWWWブラウザを制御するアプリケーションから成る。」(25頁右欄16?19行)

カ.「3.1 制御アプリケーション
制御アプリケーションの機能は基本的にシリアルポートからIDを読み、それを関連付けられたURLに変換しそれをWWWブラウザに伝える、ということである。この変換のためのデータベースは本来ネットワーク経由でアクセスするべき性質のものであるが、今回の試作システムでは携帯端末自身が保持している。
データベースはスクリプトの形になっていて、制御アプリケーションは状態遷移機械として働く。このことにより、IDからURLへの対応は単純な一対一のマッピングだけではなく、同じIDを読んでも状況に応じて適切なURLへの変換ができるようになっている。この点に関しては5節で詳しく議論する。
シリアルポートから読み込まれるIDは、タグIDと赤外線IDとで区別して扱われる。赤外線IDを読んだ場合は、それは現在ユーザのいる場所を表すものとして、IDを読めない状態が一定時間続くか、違うIDを読むまで、状態の一部として保存する。タグIDを読んだ場合は、その保存されている赤外線IDと合わせてURLへの変換の処理が行われる。」(26頁左欄5?27行)

キ.「3.2 Druid
データベースを記述するために用いるスクリプトDruidでは、コメント行・空行でない各行が一つの規則を表す。図5が記述例である。各行の構成は次の通りである。
タグID; 赤外線ID; 条件; 遷移; URL
・・・・(中 略)・・・・
各項とも省略する(空白にしておく)ことが可能である(ただし、タグIDの項と赤外線IDの項を一つの行で同時に省略することはできない)。
・・・・(中 略)・・・・
赤外線IDの項が省略された場合には、指定されたタグIDを読んだときには、保存されている赤外線IDの種類に係わらず規則が適用される。」(26頁左欄28行?同頁右欄19行)

ク.「4.1 CDショップ
CDの売場では通常CDのパッケージを客が勝手に開けることはできない。パッケージの外から見ることのできる情報は限られており、例えば客の目的とする曲はそのCD中に含まれているものであるかどうかを判別することも必ずしも可能ではない。我々はCDのライナーノーツの間にカード型のIDタグを挟み込み、それをレコード会社の用意しているそのCDのホームページへとリンクした。RocをCDに近付ける、もしくはCDを手にとってRocへ近付けるとそのホームページを見ることができる。」(27頁左欄25行?同頁右欄4行)

ケ.「4.2 美術館・博物館ほか
今回使用したのは本物の絵ではなくポスターであるが、その裏にカード型のタグを取り付けておいた。すると傍目にはIDタグの存在は意識されずRocをポスターに近付けるだけでその絵の作家の説明が現れる。」(27頁右欄17?22行)

コ.「まとめ
本稿では、携帯型の計算機を現実世界のオブジェクトからWWWの世界の情報へのリンクを構築するシステム、UbiquitousLinksについて述べた。UbiquitousLinksは実世界のオブジェクトにIDタグを埋め込み、携帯端末(Roc)をオブジェクトに近付けることによってそれに関係するWWW上の情報を見ることができる、というインタフェースを持つ。オブジェクトから表示すべき情報へのマッピングはスクリプトとして記述され、状態遷移を表現することも可能であり、ユーザのその時点での状態を考慮した情報を提示することができる。Rocは赤外線IDの認識装置も備え、屋内での部屋単位程度の粒度のユーザの位置認識も行う。」(30頁左欄33行?同頁右欄7行)

サ.携帯端末(Roc)は、WWW上の情報を表示する表示部を備える。(図2)

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「製品毎に固有のタグIDを持ち、コイルとICから構成されバッテリ等は必要とせず読み取り装置の発する磁界の動きを起電力とし、CDやポスターなどの実世界のオブジェクトに取り付けられて、そのオブジェクトに関係するWWW上の情報を見ることができるようにするためのIDタグ、及びユーザが何処にいるのかを認識するために部屋単位等で設置される赤外線ID(赤外線LED)と、
前記IDタグに3cm?6cmほどの距離に近付けると前記IDタグから電波としてタグIDを読み取るIDタグ読み取り装置、及び前記赤外線IDを読み取る赤外線受光部を有する携帯端末(Roc)と、
を備え、
前記携帯端末は、表示部を備え、当該表示部は、前記IDタグ読み取り装置で読み取られたタグIDや赤外線受光部で読み取られた赤外線IDなどをデータベースを利用して変換したURLに基づいてWWWブラウザを介して取得されるWWW上の情報を表示するものである、
現実世界のオブジェクトからWWWの世界の情報へのリンクを構築するUbiquitousLinksのシステム。」

(2-2)引用例2
同じく当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平11-39449号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0011】
制御手段17は、受信スイッチ15あるいは25が操作されると、送受信手段22を制御して所定回数あるいは所定時間だけアンテナから質問信号を送信した後、所定時間の間非接触型情報記憶装置90から送信される情報をアンテナで受信する動作を所定回数あるいは所定時間行う。そして、受信した情報が入力手段11により入力された情報と一致しているか否かを判断し、一致している時には報知手段16を作動させて音や光等により報知する。」

イ.「【0012】
あるいは、アンテナ接続部21に適切な指向性のアンテナを接続し、アンテナの向きや位置を調整した後、受信スイッチ15あるいは25を操作する。制御手段17は、受信スイッチ15あるいは25が操作されると、前記と同様に送受信手段22を制御して質問信号を送信した後、非接触型情報記憶装置90から送信される情報を受信する。そして、受信した情報を表示手段12に表示する。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における、CDやポスターなどの実世界の「オブジェクト」、「そのオブジェクトに関係するWWW上の情報」、「IDタグ」は、それぞれ本願補正発明における「有体物」、「当該有体物に関連した情報」、「情報提供媒体」に相当し、
引用発明における「製品毎に固有のタグIDを持ち、コイルとICから構成されバッテリ等は必要とせず読み取り装置の発する磁界の動きを起電力とし、CDやポスターなどの実世界のオブジェクトに取り付けられて、そのオブジェクトに関係するWWW上の情報を見ることができるようにするためのIDタグ、及びユーザが何処にいるのかを認識するために部屋単位等で設置される赤外線ID(赤外線LED)と」によれば、引用発明における「前記IDタグに3cm?6cmほどの距離に近付けると前記IDタグから電波としてタグIDを読み取るIDタグ読み取り装置」から明らかなように、引用発明の「タグID」は電波として、すなわち電磁気的に取得可能なものであることから、本願補正発明と引用発明とは、「電磁気的に情報が取得可能であって、当該有体物に関連した情報を提供するために任意の有体物に取り付けられる情報提供媒体と」を備える点で一致する。

イ.引用発明における「IDタグ読み取り装置」、「携帯端末(Roc)」は、それぞれ本願補正発明における「情報取得手段」、「携帯端末」に相当し、
引用発明における「前記IDタグに3cm?6cmほどの距離に近付けると前記IDタグから電波としてタグIDを読み取るIDタグ読み取り装置、及び前記赤外線IDを読み取る赤外線受光部を有する携帯端末(Roc)と、を備え」によれば、本願補正発明と引用発明とは、「前記情報提供媒体と所定距離内に近接されると前記情報提供媒体から電磁気的に前記情報を取得する情報取得手段を有する携帯端末と、を備え」の点で共通する。

ウ.引用発明における「表示部」は、本願補正発明における「表示手段」に相当し、
引用発明における「URL」、そのURLに基づいて取得される「WWW上の情報」が、それぞれ本願補正発明における、新たに取得される情報の「場所を示す情報」、「新たに取得される情報」に相当するといえ、
引用発明における「前記携帯端末は、表示部を備え、当該表示部は、前記IDタグ読み取り装置で読み取られたタグIDや赤外線受光部で読み取られた赤外線IDなどをデータベースを利用して変換したURLに基づいてWWWブラウザを介して取得されるWWW上の情報を表示するものである」によれば、取得したWWW上の情報は当然、WWWブラウザによって表示可能な形態に処理されて表示部に表示されるものであるから、引用発明における「WWWブラウザ」は、本願補正発明における「処理手段」に相当するとみることができ、また、取得したWWW上の情報を少なくとも一旦記憶する記憶手段が設けられていることも自明というべき技術事項である点を考慮すると、結局、本願補正発明と引用発明とは、「前記携帯端末は、表示手段を備え、前記携帯端末は、記憶手段に記憶された情報を表示可能な形態の情報に処理する処理手段を備え、前記表示手段は、前記処理手段により処理された情報を表示し、前記表示可能な形態の情報は、[少なくとも前記情報取得手段により取得された情報を用いて]新たに取得される情報を含むものであり、前記新たに取得される情報は、[当該]新たに取得される情報の場所を示す情報に基づいて取得される」という点で共通するということができる。

エ.そして、引用発明における、現実世界のオブジェクトからWWWの世界の情報へのリンクを構築する「UbiquitousLinksのシステム」は、本願補正発明における「情報処理システム」に相当するといえる。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「電磁気的に情報が取得可能であって、当該有体物に関連した情報を提供するために任意の有体物に取り付けられる情報提供媒体と、
前記情報提供媒体と所定距離内に近接されると前記情報提供媒体から電磁気的に前記情報を取得する情報取得手段を有する携帯端末と、
を備え、
前記携帯端末は、表示手段を備え、
前記携帯端末は、記憶手段に記憶された情報を表示可能な形態の情報に処理する処理手段を備え、
前記表示手段は、前記処理手段により処理された情報を表示し、
前記表示可能な形態の情報は、
[少なくとも前記情報取得手段により取得された情報を用いて]新たに取得される情報を含むものであり、
前記新たに取得される情報は、
[当該]新たに取得される情報の場所を示す情報に基づいて取得される、
情報処理システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
情報取得手段により取得された情報について、本願補正発明では、これを記録する「記憶手段」を備えると特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点。

[相違点2]
本願補正発明では「当該情報読取開始のための入力手段の操作に応じて前記情報取得手段の前記情報提供媒体からの情報の取得を可能とする情報読取開始のための入力手段」を備えると特定するのに対し、引用発明ではそのような入力手段を備えることの特定がない点。

[相違点3]
新たに取得される情報が、本願補正発明では、記憶手段に記憶された情報すなわち情報提供手段により取得された情報に含まれる「前記新たに取得される情報の場所を示す情報」に基づいて取得されるものであるのに対し、引用発明では、読み取ったタグIDや赤外線IDなどをデータベースを利用して変換したURLに基づいて取得されるものである点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば実願平5-51824号(実開平7-20641号)のCD-ROM(段落【0019】を参照)や、特開平10-40329号公報(特に3頁右欄26?29行を参照)に記載のように、情報提供媒体である電子データキャリアから電磁気的に非接触で取得した情報を記憶手段に記録(記憶)することは一般的に行われることである。そして、引用発明においても、携帯端末には各種情報を記録(記憶)する記憶手段は当然に設けられているといえ(この点については、前記「(3)ウ.」も参照されたい)、IDタグから読み取ったタグIDなどそのものについても、例えば表示部に表示して確認する等のために記憶手段に少なくとも一旦記録(記憶)するようにすることは当業者であればごく普通になし得ることである。

[相違点2]について
引用例2には、物品等に取り付けられた情報提供媒体である非接触型情報記憶装置に対して情報の読み書きを行う非接触型情報読取装置において、「受信スイッチ」の操作に応じて非接触型情報記憶装置からの情報の読み取り(受信)の開始を行うようにしたものが記載されており、引用発明においても、携帯端末に入力手段としてこのようなスイッチを設け、スイッチの操作に応じてIDタグからの情報の読み取りを開始するようにすることは当業者であれば容易になし得ること(特に、前記「(2-1)エ.」にも記載のように、電池で駆動されるような携帯端末にあっては、消費電力節減の観点からなおさらのこと)である。

[相違点3]について
引用発明にあっては、読み取ったタグIDや赤外線IDなどをデータベースを利用してURLに変換するものであり、間接的にではあるが、これらIDは新たに取得される情報の場所を示す情報とみることができる。そして、このようなデータベースを利用しての変換を行うようにしているのは、タグIDのみでなく赤外線IDなどの情報をも用いることにより、「IDからURLへの対応は単純な一対一のマッピングだけではなく、同じIDを読んでも状況に応じて適切なURLへの変換ができる」(前記「(2-1)カ.」参照)ようにするためであるといえる。しかしながら、例えば引用例1には「赤外線IDの項が省略された場合には、指定されたタグIDを読んだときには、保存されている赤外線IDの種類に係わらず規則が適用される」と記載(前記「(2-1)キ.」参照)されているように、赤外線IDなどの情報は省略してIDタグからの情報のみを用いることも当然に考えられることであり、その場合には、IDからURLへの対応は単純な一対一であるから、あえて上記のようなテータベースを利用する必要性はなく、IDタグが直接的に新たに取得される情報の場所を示す情報、すなわちURLを提供するようにすればよいことは当業者にとって容易に想到し得る技術事項(なお、この点に関して、例えば特開平10-254802号公報を参照されたい。二次元バーコードではあるが非接触で読み取られる情報中に、URLなどの場所を示す情報を含ませることが記載されている。)である。よって、引用発明においても、IDタグに直接的に新たに取得される情報の場所を示す情報であるURLを含ませるとともに、赤外線IDを読み取るための赤外線受光部は省くなどしてIDタグのみからその情報を読み取るように単純化したものとすることも当業者であれば容易になし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から、当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成24年5月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年9月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電磁気的に情報が取得可能であって、当該有体物に関連した情報を提供するために任意の有体物に取り付けられる情報提供媒体と、
前記情報提供媒体と所定距離内に近接されると前記情報提供媒体から電磁気的に前記情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得された情報を記録する記憶手段と、当該入力手段の操作に応じて前記情報取得手段の前記情報提供媒体からの情報の取得を可能とする入力手段とを有する携帯端末と、
を備える情報処理システム。」

(1)引用例
当審が通知した拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「入力手段」について、「情報読取開始のための」ものであることの限定を省き、さらに、発明特定事項である「前記携帯端末は、表示手段を備え、前記携帯端末は、前記記憶手段に記憶された情報を表示可能な形態の情報に処理する処理手段を備え、前記表示手段は、前記処理手段により処理された情報を表示し、前記表示可能な形態の情報は、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて新たに取得される情報を含むものであり、前記新たに取得される
情報は、前記記憶手段に記憶された情報に含まれる前記新たに取得される情報の場所を示す情報に基づいて取得される」との限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-31 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-18 
出願番号 特願2000-246802(P2000-246802)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G06Q)
P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 誠也  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 松尾 俊介
井上 信一
発明の名称 情報処理システム、携帯電話機及び情報処理方法  
代理人 亀谷 美明  

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