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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1260880
審判番号 不服2010-27433  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-03 
確定日 2012-08-02 
事件の表示 特願2005- 60236「携帯端末、受信回路制御装置及び受信回路制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月14日出願公開、特開2006-246121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年3月4日の出願であって、平成22年7月14日付けで拒絶理由が通知され、同年9月14日付けで手続補正がされたが、同年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月3日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成22年9月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「GPS信号を受信するGPS受信手段と、
基地局からの無線信号を受信する受信回路と、
前記GPS受信手段が受信したGPS信号に基づいて、携帯端末の移動速度を求める移動速度算出手段と、
前記移動速度算出手段が求めた移動速度に基づいて、基地局からの無線信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を設定する受信間隔設定手段と、
前記受信間隔設定手段が設定した間欠受信間隔に従って、前記受信回路に、基地局からの無線信号を間欠受信させる受信回路制御手段と、
携帯端末の移動速度と間欠受信間隔とを対応づけた対応テーブルを予め記憶する受信間隔記憶手段とを備え、
前記受信間隔設定手段は、前記受信間隔記憶手段が記憶する対応テーブルから、前記移動速度算出手段が求めた移動速度に対応する間欠受信間隔を抽出することによって、該間欠受信間隔を設定する
ことを特徴とする携帯端末。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「GPS信号を受信するGPS受信手段と、
基地局からの無線信号を受信する受信回路と、
前記GPS受信手段が受信したGPS信号に基づいて、携帯端末の移動速度を求める移動速度算出手段と、
前記移動速度算出手段が求めた移動速度に基づいて、基地局からの無線信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を設定する受信間隔設定手段と、
前記受信間隔設定手段が設定した間欠受信間隔に従って、前記受信回路に、基地局からの無線信号を間欠受信させる受信回路制御手段と、
携帯端末の移動速度が第1閾値未満である場合に間欠受信間隔を第1間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第1閾値以上且つ第2閾値未満である場合に間欠受信間隔を前記第1間隔より短い第2間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第2閾値以上である場合に間欠受信間隔を前記第2間隔より短い第3間隔とするように設定された、携帯端末の移動速度と間欠受信間隔とを対応づけた対応テーブルを予め記憶する受信間隔記憶手段とを備え、
前記受信間隔設定手段は、前記受信間隔記憶手段が記憶する対応テーブルから、前記移動速度算出手段が求めた移動速度に対応する間欠受信間隔を抽出することによって、該間欠受信間隔を設定する
ことを特徴とする携帯端末。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「携帯端末の移動速度と間欠受信間隔とを対応づけた対応テーブル」に関し、「携帯端末の移動速度が第1閾値未満である場合に間欠受信間隔を第1間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第1閾値以上且つ第2閾値未満である場合に間欠受信間隔を前記第1間隔より短い第2間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第2閾値以上である場合に間欠受信間隔を前記第2間隔より短い第3間隔とするように設定された」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開2004-104265号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動端末装置、その制御装置、通信システム及び通信方法に関する。」(3頁)

ロ.「【0023】
〔第1の実施の形態〕
(通信システム)
図1に示すように、通信システム1は、複数の移動端末装置10と、複数の基地局20とを備える。通信システム1は、セルラー方式を採用するセルラーシステムである。移動端末装置10と基地局20は、信号の送受信を行う。移動端末装置10は、各基地局20がカバーするセルのいずれかに在圏する。そして、移動端末装置10は、自身が在圏するセルをカバーする基地局20を探して接続する。具体的には、基地局20が、移動端末装置10が基地局20を探すために用いる制御信号であり、複数の移動端末装置10に報知する報知信号を送信する。
移動端末装置10は、基地局20からの報知信号を受信し、受信した報知信号に基づいて自身に最も近い、接続すべき基地局20を探す。移動端末装置10は、通信中であっても、待ち受け中であっても、基地局20を探す処理を行う。
【0024】
図2に示すように、移動端末装置10は、制御装置11と、送受信部12とを備える。制御装置11は、通信状態判定部13と、通信状態記憶部14と、移動センサ部15と、受信状態測定部16と、受信状態記憶部17と、受信周期制御部18とを備える。送受信部12は、基地局と信号の送受信を行う送受信手段である。送受信部12は、制御装置11の制御に従って、基地局20からの制御信号である報知信号を受信する。具体的には、送受信部12は、制御装置11の受信周期制御部18から受信周期の指示を受ける。送受信部12は、指示された受信周期に従って、報知信号の受信動作とその休止を組み合わせた動作周期を制御して、報知信号を受信する。このようにして、送受信部12は、受信周期制御部18から指示された受信周期に従って、基地局20からの報知信号を受信する。
尚、送受信部12は、無線アクセス方式として、符号分割多元接続方式(CDMA方式)等を用いることができる。
【0025】
送受信部12は、報知信号を受信した受信信号から、その報知信号の送信元である基地局に関する基地局情報を取得する。基地局情報には、基地局名や基地局番号等が含まれる。そのため、移動端末装置10は、この基地局情報から報知信号を送信した基地局を特定して、自身に最も近い基地局20を見つけることができる。送受信部12は、取得した基地局情報を、接続する基地局の選択や切り替え等を行う制御部(図示せず)に入力する。又、送受信部12は、基地局20から送信される報知信号を受信した受信信号を制御装置11の受信状態測定部16に入力する。又、送受信部12は、現在の通信状態を通信状態記憶部14に記録する。送受信部12は、通信状態に変更があったときは、通信状態記憶部14の通信状態を更新する。
【0026】
制御装置11は、送受信部12を制御する。具体的には、制御装置11は、送受信部12が行う制御信号の受信を制御する。通信状態判定部13は、送受信部12の通信状態を判定する通信状態判定手段である。通信状態とは、送受信部12が行っている通信の状態である。通信状態には、例えば、データの送受信を行っている通信中、着信を待っている待ち受け中等の状態がある。通信状態判定部13は、通信状態記憶部14を参照して送受信部12の通信状態を判定する。ここで、通信状態記憶部14は、送受信部12の通信状態を記憶する通信状態記憶手段である。通信状態記憶部14は、送受信部12により記録される通信状態を記憶する。通信状態判定部13は、通信状態記憶部14を参照することにより、送受信部12が通信中であるか待ち受け中であるか等を判定し、その通信状態の判定結果を含む信号を受信周期制御部18に入力する。
【0027】
移動センサ部15は、移動端末装置10の装置本体の移動状態を測定する移動状態測定手段である。移動状態とは、移動端末装置10の移動の状態である。移動状態には、例えば、装置本体が静止中、移動中等がある。更に、移動中については、その移動速度により、高速移動中、中速移動中、低速移動中等に分けることができる。そして、移動状態を示す情報には、装置本体の振動量、衝撃量、加速度、移動速度等がある。移動端末装置10の移動速度が遅くなるほど、振動量、衝撃量、加速度、移動速度は小さくなる。そして、移動端末装置10が静止すると、振動量、衝撃量、加速度、移動速度は最小になる。又、移動端末装置10の移動速度が速くなるほど、振動量、衝撃量、加速度、移動速度は大きくなる。
【0028】
移動センサ部15としては、例えば、装置本体が受ける振動量を測定する振動センサ、装置本体が受ける衝撃量を測定する衝撃センサ、装置本体の加速度を測定する加速度センサ、装置本体の移動速度を測定するジャイロ等を用いることができる。尚、移動センサ部15部として、振動センサ、衝撃センサ、加速度センサ、ジャイロ等、複数種類のセンサを用いることにより、移動状態を示す複数の種類の情報を測定するようにしてもよい。移動センサ部15は、装置本体の移動状態の測定結果として、移動状態を示す情報を含む信号を受信周期制御部18に入力する。
【0029】
受信状態測定部16は、送受信部12が受信した基地局20からの信号の受信状態を測定する受信状態測定手段である。受信状態測定部16は、送受信部12から、送受信部12が基地局20からの制御信号である報知信号を受信した受信信号を入力される。受信状態測定部16は、入力された受信信号の受信状態を測定する。受信状態を示す情報には、受信信号の受信電力、SIR(希望波信号電力対干渉波信号電力比)、CIR(希望波電力対干渉波電力比)、SN比(信号対雑音電力比)等がある。移動端末装置10は、この受信状態の測定結果から、その報知信号を送信した基地局20との間の通信の品質を把握することができる。受信状態測定部16は、受信状態の測定結果として、受信状態を示す情報を受信状態記憶部17に記録する。受信状態測定部16は、送受信部12が新たな報知信号を受信し、送受信部12から新たな受信信号が入力されたときは、新たな受信信号の受信状態を測定する。そして、受信状態測定部16は、受信状態記憶部17の受信状態を示す情報を更新する。
【0030】
尚、移動端末装置10は、複数の基地局20から同時に報知信号を受信する場合がある。即ち、移動端末装置10は、最も受信状態の良い受信信号の送信元の基地局20からだけでなく、その周辺の基地局20からの報知信号も受信する場合がある。その場合、受信状態測定部16は、送受信部12から、送受信部12が複数の基地局20からの報知信号を受信した複数の受信信号を入力される。よって、受信状態測定部16は、入力された複数の受信信号の受信状態を測定する。そして、受信状態測定部16は、最も受信状態の良い受信信号の受信状態を、受信状態記憶部17に記録する。
【0031】
受信状態記憶部17は、送受信部12が受信した基地局20からの信号の受信状態の測定結果を記憶する受信状態記憶手段である。受信状態記憶部17は、受信状態測定部16により記録される受信状態を示す情報を記憶する。又、受信状態記憶部17は、送受信部12が新たな報知信号を受信したときには、受信状態測定部16によって、記憶している受信状態が更新される。よって、受信状態記憶部17は、基地局20を探すために受信した最新の報知信号の受信状態を記憶する。
【0032】
受信周期制御部18は、通信状態判定部13による通信状態の判定結果、移動センサ部15による移動状態の測定結果及び受信状態測定部16による受信状態の測定結果に基づいて、送受信部12が基地局20から送信される制御信号を受信する受信周期を制御する受信周期制御手段である。具体的には、まず、受信周期制御部18は、通信状態判定部13から、受信状態の判定結果を含む信号を入力される。又、受信周期制御部18は、移動センサ部15から、移動状態の測定結果として、移動状態を示す情報を含む信号を入力される。又、受信周期制御部18は、受信状態記憶部17から、送受信部12が受信した基地局20からの信号の受信状態の測定結果として、移動端末装置10が受信した最新の報知信号の受信状態を示す情報を取得する。受信周期制御部18は、受信周期を決定するときに、受信状態記憶部17から受信状態を示す情報を取得する。
【0033】
次に、受信周期制御部18は、図3に示す受信周期の決定基準に基づいて、移動端末装置10の通信状態、移動状態、受信状態を総合的に判断して、受信周期を制御する。図3に示すように、受信周期制御部18は、通信状態の判定結果が待ち受け中の場合には受信周期を長くする。一方、受信周期制御部18は、通信状態の判定結果が通信中の場合には受信周期を短くする。これにより、移動端末装置10は、通信中は、最も近い基地局20との接続を確保して、通信が途切れてしまうことや通信品質が劣化することを防止できる。又、移動端末装置10は、待ち受け中は、通信中の場合に比べて頻繁に基地局20を探す必要ないため、消費電力を削減できる。
【0034】
更に、受信周期制御部18は、移動状態の測定結果が、静止中や低速移動中のように移動速度が遅いほど受信周期を長くする。一方、受信周期制御部18は、移動状態の測定結果が、高速移動中のように移動速度が速いほど受信周期を短くする。具体的には、受信周期制御部18は、移動状態を示す情報である装置本体の振動量、衝撃量、加速度、移動速度等が小さいほど受信周期を長くし、振動量、衝撃量、加速度、移動速度等が大きいほど受信周期を短くする。これにより、移動端末装置10は、移動中、特に高速移動中には、素早く基地局20を探す処理を行って、移動に伴い次々に変わる接続すべき基地局20を探すことができる。又、移動端末装置10は、静止中又は低速移動中には、接続すべき基地局が変わりにくく、移動中の場合に比べて頻繁に基地局20を探す必要ないため、基地局20を探すための処理を削減して、消費電力を削減できる。
【0035】
更に、受信周期制御部18は、受信状態の測定結果が良いほど受信周期を長くする。一方、受信周期制御部18は、受信状態の測定結果が悪いほど受信周期を短くする。具体的には、受信周期制御部18は、受信状態を示す情報である受信電力、SIR、CIR、SN比等が大きいほど受信周期を長くし、受信電力、SIR、CIR、SN比等が小さいほど受信周期を短くする。これにより、移動端末装置10は、受信状態が悪く、最も近い基地局20がすぐに変わる可能性が高い場合に、基地局20を適切に探すことができる。一方、移動端末装置10は、受信状態が良い場合には、接続すべき基地局が変わりにくく、通信状態が悪い場合に比べて頻繁に基地局20を探す必要ないため、消費電力を削減できる。
【0036】
このように、受信周期制御部18は、移動端末装置10の通信状態、移動状態、受信状態を総合的に判断して、受信周期を制御する。そして、受信周期制御部18は、制御した受信周期により報知信号を受信するように、送受信部12に指示をする。即ち、受信周期制御部18は、決定した受信周期を含む信号を送受信部12に入力する。
【0037】
受信周期制御部18は、このような図3に示す受信周期の決定基準に基づいて行う受信周期の制御を、例えば、以下のようにして行うことができる。受信周期制御部18は、まず、図4に示す関数に従って、移動端末装置10の移動状態の測定結果及び受信状態の測定結果に基づいて、暫定の受信周期を決定する。図4(a)に示すグラフは、受信状態及び移動状態と受信周期の関係を示す折れ線の関数であり、図4(b)に示すグラフは、受信状態及び移動状態と受信周期の関係を示す曲線の関数である。図4(a)、(b)に示すグラフにおいて、縦軸は受信周期であり、単位は秒である。横軸は、受信状態であり、左方向ほど受信状態が良く、右方向ほど受信状態が悪いことを示している。
【0038】
受信周期制御部18は、移動状態の測定結果に基づいて、図4(a)、(b)に示されている複数の折れ線2a?2cや曲線3a?3cのいずれかを選択する。複数の折れ線2a?2cや曲線3a?3cは、上方向にある折れ線2aや曲線3aほど移動速度が遅く、動きが小さい静止状態に近く、下方向にある折れ線2cや曲線3cほど移動速度が速く、動きが大きい。そして、受信周期制御部は、移動状態に基づいて選択した折れ線2a?2cや曲線3a?3cを用いて、受信状態の測定結果に基づいて暫定の受信周期を決定する。
【0039】
次に、受信周期制御部18は、移動状態の測定結果及び受信状態の測定結果に基づいて決定した暫定の受信周期に、通信状態に基づいて係数を乗算したり、通信状態に基づいて定数を加算又は減算したりすることによって、最終的な受信周期を決定する。具体的には、受信周期制御部18は、通信状態が待ち受け中である場合には、暫定の受信周期に1より大きい係数を乗算したり、定数を加算したりする。一方、受信周期制御部18は、通信状態が通信中である場合には、暫定の受信周期に1より小さい係数を乗算したり、定数を減算したりする。
【0040】
(通信方法)
次に、移動端末装置10を用いて行う通信方法を説明する。図5に示すように、まず、通信状態判定部13は、移動端末装置10の通信状態を判定し、その判定結果を受信周期制御部18に入力する(S101)。又、移動センサ部15は、移動端末装置10の移動状態を測定し、その測定結果を受信周期制御部18に入力する(S102)。更に、受信状態測定部16は、報知信号を受信した受信信号の受信状態を測定し、受信状態の測定結果を受信状態記憶部17に記録する(S103)。そして、受信周期制御部18は、受信状態記憶部17から受信状態の測定結果を取得する(S104)。これらのステップ(S101)、ステップ(S102)、ステップ(S103)及び(S104)は並行して行われる。
次に、受信周期制御部18は、通信状態の判定結果、移動状態の測定結果及び受信状態の測定結果に基づいて受信周期を決定し、決定した受信周期を含む信号を送受信部12に入力する(S105)。送受信部12は、入力された受信周期に従って報知信号を受信する(S106)。そして、移動端末装置10は、ステップ(S101)?(S103)に戻り、ステップ(S101)?(S106)を繰り返す。」(6?10頁)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例の上記摘記事項ロ.の【0024】の記載、及び図2によれば、移動端末装置(10)は、送受信部(12)と、制御装置(11)とを備え、制御装置(11)は、通信状態判定部(13)と、移動センサ部(15)と、受信状態測定部(16)と、受信周期制御部(18)とを備えている。
また、上記摘記事項ロ.の【0025】における「送受信部12は、報知信号を受信した受信信号から、その報知信号の送信元である基地局に関する基地局情報を取得する。」との記載、及び図2によれば、送受信部(12)は、基地局からの報知信号を受信している。
また、上記摘記事項ロ.の【0040】における「通信状態判定部13は、移動端末装置10の通信状態を判定し、その判定結果を受信周期制御部18に入力する(S101)。又、移動センサ部15は、移動端末装置10の移動状態を測定し、その測定結果を受信周期制御部18に入力する(S102)。更に、受信状態測定部16は、報知信号を受信した受信信号の受信状態を測定し、受信状態の測定結果を受信状態記憶部17に記録する(S103)。そして、受信周期制御部18は、受信状態記憶部17から受信状態の測定結果を取得する(S104)。これらのステップ(S101)、ステップ(S102)、ステップ(S103)及び(S104)は並行して行われる。次に、受信周期制御部18は、通信状態の判定結果、移動状態の測定結果及び受信状態の測定結果に基づいて受信周期を決定し、決定した受信周期を含む信号を送受信部12に入力する(S105)。送受信部12は、入力された受信周期に従って報知信号を受信する(S106)。」との記載、及び図5によれば、受信周期制御部(18)は、通信状態判定部(13)による通信状態の判定結果、移動センサ部(15)による移動状態の測定結果及び受信状態測定部(16)による受信状態の測定結果に基づいて、基地局からの報知信号を受信する受信周期を決定し入力しており、これを決定入力手段ということができる。また、この決定入力手段が、決定入力した受信周期に従って、送受信部(12)に、基地局からの報知信号を受信周期で受信させていることが読み取れる。
また、上記摘記事項ロ.の【0024】における「送受信部12は、制御装置11の制御に従って、基地局20からの制御信号である報知信号を受信する。具体的には、送受信部12は、制御装置11の受信周期制御部18から受信周期の指示を受ける。送受信部12は、指示された受信周期に従って、報知信号の受信動作とその休止を組み合わせた動作周期を制御して、報知信号を受信する。」との記載によれば、前述の報知信号を受信する受信周期は、受信動作とその休止を組み合わせた動作周期である。すなわち、受信周期は、間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔ということができる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「基地局からの報知信号を受信する送受信部(12)と、
通信状態判定部(13)と、移動センサ部(15)と、受信状態測定部(16)と、
通信状態判定部(13)による通信状態の判定結果、移動センサ部(15)による移動状態の測定結果及び受信状態測定部(16)による受信状態の測定結果に基づいて、基地局からの報知信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を決定入力する決定入力手段と、
前記決定入力手段が決定入力した間欠受信間隔に従って、前記送受信部(12)に、基地局からの報知信号を間欠受信させる受信周期制御部(18)とを備え、
る移動端末装置(10)。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「報知信号」は、補正後の発明の「無線信号」に含まれる。
b.引用発明の「送受信部(12)」は、基地局からの報知信号を受信する場合は、送信機能を停止した受信機能を有するものであり、そして、回路により構成されることは明らかであるから、「受信回路」ということができる。
c.引用発明の「通信状態判定部(13)と、移動センサ部(15)と、受信状態測定部(16)」と、補正後の発明の「前記GPS受信手段が受信したGPS信号に基づいて、携帯端末の移動速度を求める移動速度算出手段」とは、いずれも、「特定の測定手段」という点で一致する。
d.引用発明の「通信状態判定部(13)による通信状態の判定結果、移動センサ部(15)による移動状態の測定結果及び受信状態測定部(16)による受信状態の測定結果に基づいて、基地局からの報知信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を決定入力する決定入力手段」と、補正後の発明の「前記移動速度算出手段が求めた移動速度に基づいて、基地局からの無線信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を設定する受信間隔設定手段」とは、引用発明の「間欠受信間隔」は、決定入力手段が決定入力することにより設定されるものといえ、また、上記a.及びc.の対比を考慮すれば、いずれも、「特定の測定手段が求めた特定の要素に基づいて、基地局からの無線信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を設定する受信間隔設定手段」という点で一致する。
e.引用発明の「受信周期制御部(18)」は、補正後の発明の「受信回路制御手段」に相当する。
f.引用発明の「移動端末装置(10)」は、「携帯端末」の一種である。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「基地局からの無線信号を受信する受信回路と、
特定の測定手段と、
前記特定の測定手段が求めた特定の要素に基づいて、基地局からの無線信号を間欠受信する時間間隔を示す間欠受信間隔を設定する受信間隔設定手段と、
前記受信間隔設定手段が設定した間欠受信間隔に従って、前記受信回路に、基地局からの無線信号を間欠受信させる受信回路制御手段とを備え、
る携帯端末。」

(相違点1)
補正後の発明は、「GPS信号を受信するGPS受信手段」を備えるのに対し、引用発明は、その様な構成を備えていない点。

(相違点2)
「特定の測定手段」に関し、
補正後の発明は、「前記GPS受信手段が受信したGPS信号に基づいて、携帯端末の移動速度を求める移動速度算出手段」であるのに対し、引用発明は、「通信状態判定部(13)と、移動センサ部(15)と、受信状態測定部(16)」である点。

(相違点3)
「特定の測定手段が求めた特定の要素」に関し、
補正後の発明は、「移動速度算出手段が求めた移動速度」であるのに対し、引用発明は、「通信状態判定部(13)による通信状態の判定結果、移動センサ部(15)による移動状態の測定結果及び受信状態測定部(16)による受信状態の測定結果」である点。

(相違点4)
補正後の発明は、「携帯端末の移動速度が第1閾値未満である場合に間欠受信間隔を第1間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第1閾値以上且つ第2閾値未満である場合に間欠受信間隔を前記第1間隔より短い第2間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第2閾値以上である場合に間欠受信間隔を前記第2間隔より短い第3間隔とするように設定された、携帯端末の移動速度と間欠受信間隔とを対応づけた対応テーブルを予め記憶する受信間隔記憶手段」を備えるのに対し、引用発明は、その様な構成を備えていない点。

(相違点5)
「受信間隔設定手段」の態様に関し、
補正後の発明は、「前記受信間隔設定手段は、前記受信間隔記憶手段が記憶する対応テーブルから、前記移動速度算出手段が求めた移動速度に対応する間欠受信間隔を抽出することによって、該間欠受信間隔を設定する」のに対し、引用発明は、その様な構成を備えていない点。

そこで、まず、上記相違点1乃至3について検討する。
携帯端末において、GPS信号を受信するGPS受信手段と、GPS受信手段が受信したGPS信号に基づいて、携帯端末の移動速度を求める移動速度算出手段を設けることは、例えば、特開平9-98465号公報(段落18、図1)に開示されるように周知であるから、引用発明に周知技術を適用して、補正後の発明のように「GPS信号を受信するGPS受信手段」を備えること(相違点1)、また、「特定の測定手段」に関し、補正後の発明のように「前記GPS受信手段が受信したGPS信号に基づいて、携帯端末の移動速度を求める移動速度算出手段」を備えること(相違点2)は当業者が容易になし得ることである。その際、「特定の測定手段が求めた特定の要素」に関し、補正後の発明のように「移動速度算出手段が求めた移動速度」となること(相違点3)は当然のことである。ここで、引用発明は、「特定の測定手段」として、通信状態判定部(13)と、移動センサ部(15)と、受信状態測定部(16)を有し、これらの測定手段を総合的に判断して受信周期を制御するとしている(段落【0036】)。しかしながら、移動センサ部(15)の出力のみを基に受信周期を判断することも「総合的に判断」の技術的範疇の中に含まれるのは当然のことである。したがって、引用発明の前記「移動センサ部(15)」による移動端末の移動速度を基に間欠受信間隔を求める場合において、前記周知のGPS信号による移動速度を基に間欠受信間隔を求めるようにすることは当業者が容易になし得ることにすぎない。

次に、上記相違点4及び5について検討する。
上記引用例の上記摘記事項ロ.の【0027】における「移動センサ部15は、移動端末装置10の装置本体の移動状態を測定する移動状態測定手段である。移動状態とは、移動端末装置10の移動の状態である。移動状態には、例えば、装置本体が静止中、移動中等がある。更に、移動中については、その移動速度により、高速移動中、中速移動中、低速移動中等に分けることができる。」との記載、ロ.の【0034】における「受信周期制御部18は、移動状態の測定結果が、静止中や低速移動中のように移動速度が遅いほど受信周期を長くする。一方、受信周期制御部18は、移動状態の測定結果が、高速移動中のように移動速度が速いほど受信周期を短くする。具体的には、受信周期制御部18は、移動状態を示す情報である装置本体の振動量、衝撃量、加速度、移動速度等が小さいほど受信周期を長くし、振動量、衝撃量、加速度、移動速度等が大きいほど受信周期を短くする。」との記載によれば、移動端末装置(10)(携帯端末)の移動速度は、低速(第1閾値未満)、中速(第1閾値以上且つ第2閾値未満)、高速(第1閾値以上且つ第2閾値未満)があり、これらに対応する間欠受信間隔は、それぞれ、第1間隔、第1間隔より短い第2間隔、第2間隔より短い第3間隔であることが読み取れ、また、このような対応関係を対応テーブルとして予め記憶することは、例えば、本願明細書の【0002】、【0003】における背景技術として引用された特開平11-295410号公報(段落19、図5)に開示されるように周知であるから、補正後の発明のように「携帯端末の移動速度が第1閾値未満である場合に間欠受信間隔を第1間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第1閾値以上且つ第2閾値未満である場合に間欠受信間隔を前記第1間隔より短い第2間隔とし、携帯端末の移動速度が前記第2閾値以上である場合に間欠受信間隔を前記第2間隔より短い第3間隔とするように設定された、携帯端末の移動速度と間欠受信間隔とを対応づけた対応テーブルを予め記憶する受信間隔記憶手段」を備えること(相違点4)は当業者が容易になし得ることである。その際、「受信間隔設定手段」の態様に関し、補正後の発明のように「前記受信間隔設定手段は、前記受信間隔記憶手段が記憶する対応テーブルから、前記移動速度算出手段が求めた移動速度に対応する間欠受信間隔を抽出することによって、該間欠受信間隔を設定する」こと(相違点5)は当然のことである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年12月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-30 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-20 
出願番号 特願2005-60236(P2005-60236)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 遠山 敬彦
萩原 義則
発明の名称 携帯端末、受信回路制御装置及び受信回路制御方法  
代理人 塩川 誠人  
代理人 岩壁 冬樹  

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