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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1260892
審判番号 不服2011-9101  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-28 
確定日 2012-08-02 
事件の表示 特願2008-517239「反射構造表面を備えたスカイライトチューブ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月29日国際公開、WO2007/136388、平成20年 7月31日国内公表、特表2008-528844〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2006年8月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年5月22日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成22年12月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は,平成22年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明は,次のとおりである。
「透明ドーム(21)と少なくとも1つのスカイライト軸基板(24,40,60)とからなり、
これらの軸基板はドーム(21)から延在して軸基板(24,40,60)を介してドーム(21)に入射する光線を搬送し、さらに少なくとも1つの表面不規則部(42,62)を備え、前記不規則部は軸基板(24,40,60)上に形成され、前記表面不規則部(42,62)は凹み(62)の形状であり、
各凹み(62)は中心部(64)と、該凹み(62)によって画成される周囲部(66)とを備えてなるスカイライト本体。」(以下「本願発明」という。)

3 引用刊行物の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である,特開平11-306819号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面と共に,以下の事項が記載されている(下線は当審付与。)。
(1a)「【請求項1】建物の屋根に設置される透明の採光部と、
前記採光部に連通され、内部が反射率の高い材質で覆われたパイプ状の導入部と、
前記導入部に連通され室内に配設された発光部とを備えた太陽光採光器本体と、
前記建物の屋根に設置され、前記太陽光採光器本体を支持する取付部材とを備え、
前記取付部材は、
前記屋根の表面の一部を屋根材として覆う基板部と、
前記基板部に設けられ平坦な面からなる平坦部と、
前記太陽光採光器本体を支持するために前記太陽光採光器本体と略同径の開口部と、前記基板部に貫通された孔とを有し、前記平坦部に突設された略円筒形からなる取付部とを備えたことを特徴とする太陽光採光器。」

(1b)「【026】以下、太陽光採光器1の構成を詳細に説明する。
【027】まず、採光ドーム16、本体パイプ11、室内ドーム19等からなる太陽光採光器本体10について図2を参照して説明する。図2は、本実施の形態の太陽光採光器本体10の断面図である。太陽光採光器本体10は、太陽光採光器1から、取付部材30を除いたものである。その概略は本体パイプ11の上部に、採光ドーム16が、網入りガラス15、ガスケット13を挟んで、取付リング14により取り付けられている。また、本体パイプ11の下部には、室内ドーム19がガスケット18を挟んで、フランジリング17により取り付けられている。以下、各部を詳細に説明する。
【028】採光部2には、採光ドーム16が配置される。・・・
【029】省略。
【030】本体パイプ11は、採光部2から採光した太陽光Lを室内まで伝達するための部材である。本実施の形態では全体が、ステンレススチールからできた円筒形の部材である。素材は、ステンレススチール以外でも、アルミニウムなどの金属製や、塩化ビニルなどの樹脂製であってもよい。
【031】本体パイプ11の内部は、反射材12が内部全面に貼着されている。反射材12は、例えば、アルミフィルムが用いられ、十分な反射率を有する。また、表面は樹脂コーティングがなされ、長期間高い反射率を維持できるようにすることが望ましい。もちろん十分な反射率さえ確保できればアルミフィルムに限らず、他の反射材を用いることができる。また、本実施の形態では、反射材12に、細かなしわを寄らせている。表面を平滑にしないで、細かなしわを形成することで、採光された太陽光Lを乱反射せしめ、発光部4である室内ドーム19に、均一に太陽光Lが当たるようにする効果を生ぜしめるためである。このように、採光ドーム16から入射した太陽光Lは、本体パイプ11の反射材12により反射しながら、本体パイプ11内部に進入する。」

(1c)「【056】ここで、本実施の形態の太陽光採光器1の作用に付いて説明する。本実施の形態の太陽光採光器1は、建物の屋根に設置された採光部2により、水平より高い高度、即ち採光部2に太陽光線が当たることによりいつでも、太陽光Lを採光し、本体パイプ11からなる導入部3に太陽光Lが導入される。本体パイプ11は、内部は反射材12に覆われており、且つ反射材12の表面がある程度凹凸が形成されているため乱反射を繰り返しながらさらに内部に導入されていく。光ファイバとは異なり、多少伝達効率は下がるが、光を集中させることなく伝達するので、加熱することがなく極めて安全である。又、集光板などを用いてないので、太陽に追尾して太陽光Lを採光する必要もないので、正確な太陽追尾や、そのための精密な駆動系も要らず、さらには電源等の何らの動力源すら必要としない。従って、設置すればそれだけで何らのメンテナンスも必要なく、基本的には修理の必要も生じにくい。」

上記記載事項(1a)?(1c)及び図面の記載によれば,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「採光ドーム16が配置される採光部2と,本体パイプ11と,室内ドーム19等からなり,
本体パイプ11の上部に,採光ドーム16が取り付けられており,本体パイプ11の下部には,室内ドーム19が取り付けられていて,本体パイプ11は,採光部2から採光した太陽光Lを室内まで伝達するための部材であって,
本体パイプ11の内部には反射材12が内部全面に貼着されていて,反射材12の表面には,細かなしわを形成することで凹凸が形成されている太陽光採光器本体10。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

4 対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「太陽光採光器本体10」は,本願発明の「スカイライト本体」に相当し,以下,同様に,
「採光ドーム16」は「透明ドーム」に,
「本体パイプ11」は「スカイライト軸基板」又は「軸基板」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明の「細かなしわ」は,本願発明の「表面不規則部」に相当し,本体パイプ11の内部の反射材12表面に形成されるものであるから,「軸基板上に形成され」ているといえる。
さらに,刊行物1記載の発明において,「本体パイプ11の上部に,採光ドーム16取り付けられて」いるは,本願発明において,「軸基板は透明ドームから延在して」いるに相当し,「本体パイプ11は,採光部2から採光した太陽光Lを室内まで伝達する」は,「軸基板を介して透明ドームに入射する光線を搬送」しているといえる。

したがって,両者は,次の点で一致する。
「透明ドームと少なくとも1つのスカイライト軸基板とからなり,
これらの軸基板はドームから延在して軸基板を介してドームに入射する光線を搬送し,さらに少なくとも1つの表面不規則部を備え,前記不規則部は軸基板上に形成されるスカイライト本体。」

また,両者は,下記の点で相違している。
<相違点>
表面不規則部が,本願発明では,凹みの形状であり,各凹みは中心部と,該凹みによって画成される周囲部とを備えてなるのに対し,
刊行物1記載の発明は,細かなしわで形成された凹凸であって,本願発明のような凹みではない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
刊行物1記載の発明において,軸基板の表面の細かなしわは,ドームに入射する光線を乱反射させて拡散し,室内ドームに均一に光があたるようにするもために設けられているものである。
そして,光を反射させるに際し,光線を拡散反射するために,「中心部と凹みによって画成される周囲部とを備えてなる凹み」を形成することは,例えば,特開2000-173324号公報(光拡散ルーバの略半球状の窪み),実願昭61-42288号(実開昭62-168560号)のマイクロフィルム(反射鏡のディンプル),実願平3-38388号(実開平4-109787号)のマイクロフィルム(反射板の凹部状からなる半円球形の反射面)等参照。)に記載されているように,本願の優先日前周知の技術であり,刊行物1記載の発明において反射して拡散するための凹凸として,細かなしわを形成することに代えて,中心部と凹みによって画成される周囲部とを備えてなる凹みを形成することは,当業者が容易に想到することである。

また,刊行物1には,凹凸により乱反射を繰り返しながら光を導入することにより,「光ファイバとは異なり、多少伝達効率は下がるが、光を集中させることなく伝達するので、加熱することがなく極めて安全である。」(記載事項(1c)参照。)と記載されており,本願発明の「反射光がホットスポットを発生させることを最小限に止めるとともに照射が不必要に過大となることを阻止する」と同様の効果を奏するものと認められ,また,光が集中することが防止されることは,上記周知技術も奏する効果であって,本願発明全体の効果は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-07 
結審通知日 2012-03-09 
審決日 2012-03-22 
出願番号 特願2008-517239(P2008-517239)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
中川 真一
発明の名称 反射構造表面を備えたスカイライトチューブ  
代理人 浜田 治雄  

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