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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1260896
審判番号 不服2011-12557  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-13 
確定日 2012-08-02 
事件の表示 特願2007-229425「半導体レーザ及び半導体光集積素子」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月26日出願公開、特開2009- 64837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成19年 9月 4日 特許出願
平成21年 8月 4日 拒絶理由通知
平成21年10月 8日 意見書・手続補正書
平成22年 5月21日 拒絶理由通知(最後)
平成22年 7月22日 意見書
平成23年 3月11日 拒絶査定(同年3月15日送達)
平成23年 6月13日 拒絶査定不服審判の請求

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1-9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。

「半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられる回折格子と、前記回折格子に設けられる位相シフトとを備え、
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも0.025?0.100%の範囲で長くなるように構成されていることを特徴とする、半導体レーザ。」(以下「本願発明」という。)

3 引用発明とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-299390号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

ア 「2.特許請求の範囲
位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置において、位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくなっていることを特徴とする半導体レーザ装置。」(1頁左下欄4?9行)

イ 「(従来の技術)
近年、長距離大容量光伝送システムの光源として単一軸モード半導体レーザの研究・開発が活発に行なわれている。その中で、分布帰還形(DFB)半導体レーザは、その単一軸モードの制御性および動作温度範囲の広さなどの安定性の面と、他の単一軸モード半導体レーザに比べて製作が容易であるという面から実用化に向けて急速に開発が進められている。
DFBレーザは、素子内に均一な回折格子を有する構造をとっており、この回折格子の周期で定まるブラッグ波長近傍で単一波長で発振する。しかしながら、両端面の端面反射率が小さく均一な回折格子を有するDFBレーザでは、…。 そこで、このような不安定性を除去するためにDFBレーザの内部に回折格子の周期をλg/4(λgは素子内を伝播する光の波長)だけずらした構造のDFBレーザが試作された。…。このような構造のDFBレーザをλ/4シフト型DFBレーザと呼んでいる。
λ/4シフト型DFBレーザは、ブラッグ波長に完全に一致した1本の軸モードで発振することを特徴としている。このため、従来の素子で見られた2軸モードで発振するような素子は極めて少なくなり、歩留り向上の点で非常に有望である。」 (1頁左下欄13行?2頁左上欄18行)

ウ 「(発明が解決しようとする問題点)
ところが、ここで1つ問題が存在する。雙田他が指摘しているように(1986年発行の電子通信学会技術報告OQE86-7、49ページ参照)、λ/4シフト領域のところで、第2図(a)に示すように光強度が強くなっている、いわゆる軸方向空間的ホールバーニング効果のために短波長側の高次モードがレーザ発振以後成長し、2モード化することがあり、歩留りも80%程度にとどまっていた。
本発明の目的は、歩留りのよいλ/4シフト型DFBレーザを提供することにある。」(2頁左上欄19行?同頁右上欄9行)

エ 「(問題点を解決するための手段)
前述の問題点を解決するために本発明が提供する手段は、位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置であって、位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくなっていることを特徴とする。」(2頁右上欄10行?同欄16行)

オ 「(作用)
第2図(a)に示すようにレーザ素子内部の光強度はλ/4シフト位置にピークをもつような分布を示している。光強度が強いところでは、キャリアの再結合が数多く起こり、その結果キャリア密度が小さくなり、キャリア密度は第2図(b)のような分布を示す。キャリアの数が多い程、屈折率は低くなるので、屈折率の分布は、λ/4シフト位置付近で屈折率が高く、端面付近で小さくなる。従って等価的に回折格子の位相がシフトしたことになる(等価的λ/4シフトDFBレーザは、このような屈折率差を用いて実現されている)。すなわち、位相シフト量がλ/4になるように回折格子が形成されていれば、発振時には等価的に位相シフト量がλ/4よりも大きくなってしまう。
第3図に位相シフト量がλ/4の時と3λ/8(>λ/4)の時の閾値利得α_(th)Lを示す。シフト量がλ/4よりも大きくなると短波側の高次モードの閾値利得がλ/4に比べて低くなるから、発振し易くなる。これは、主モードと副モードの発振閾値利得差Δα_(th)Lがλ/4の場合に比べて小さくなったと言い換えることもできる。
以上述べたように発振時にシフト量が等価的に増えることになるから、歩留りを改善するためには、ホールバーニングに起因した屈折率分布によるシフト量の増加を打ち消してやればよい。さて、DFB LDの発振波長λと回折格子の周期の間には、
λ=2n_(e)Λ ・・・(1)
という関係がある。ここでn_(e)は等価屈折率である。
(1)式からすぐわかるように、発振波長λは等価屈折率n_(e)と回折格子の周期Λに比例している。n_(e)の分布を考えると、λ/4よりもシフト量が大きくなると、主モードが長波側へ動き、短波側の高次モードが発振すること(第3図参照)も式(1)から説明できる。そこで、回折格子の周期Λに分布をもたせることによって、ホールバーニングによる等価屈折率n_(e)の分布の効果を打ち消してやればよい。すなわち、λ/4シフト領域付近で回折格子の周期Λを小さくすればよい。以上が、本発明の原理である。」(2頁右上欄17行?同頁右下欄16行)

カ 「(発明の効果)
以上に説明したように、本発明によれば、単一軸モード歩止まりが95%以上となり、従来に比べて大きく改善された半導体レーザ装置が得られる。」(3頁右上欄13行?同欄16行)

4 引用発明
(1) 上記「3 ア」より、引用刊行物には、「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくなっている」「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」が記載されている。
(2) 上記「3 イ」には、従来の技術として「λ/4シフト型DFBレーザは、ブラッグ波長に完全に一致した1本の軸モードで発振」し、「2軸モードで発振するような素子は極めて少な」いことが記載されており、上記「3 ウ」には、前記従来の技術の問題点として「λ/4シフト領域のところで、軸方向空間的ホールバーニング効果のために短波長側の高次モードがレーザ発振以後成長し、2モード化することがあり、歩止まりも80%程度にとどま」ることが記載されている。そして、上記「3 エ」には、解決手段として「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さく」し「ホールバーニングによる等価屈折率n_(e)の分布の効果を打ち消」すことが記載され、上記「3 カ」には、効果として「一軸モード歩止まりが95%以上となり、従来に比べて大きく改善された半導体レーザ装置が得られる」ことが記載されている。以上の記載を総合すると、引用刊行物には、「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくす」ることにより、ホールバーニングによる等価屈折率n_(e)の分布の効果を打ち消し、単一軸モードで動作するように一軸モード歩止まりが改善された「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」が開示されている。
(3) 以上のことから、引用刊行物には、以下の発明が記載されている。
「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくなっており、ホールバーニングによる等価屈折率n_(e)の分布の効果を打ち消し、単一軸モードで動作するように一軸モード歩止まりが改善された、位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置。」(以下「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明は、その特定事項から明らかなように、「位相シフト」、「回折格子」を備える「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」である。そこで、本願発明の「半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられる回折格子と、前記回折格子に設けられる位相シフトとを備え」る「半導体レーザ」と、引用発明の「位相シフト」、「回折格子」を備える「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」を対比する。
引用発明の「位相シフト」、「回折格子」及び「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」は、それぞれ、本願発明の「位相シフト」、「回折格子」及び「半導体レーザ」に相当する。
また、半導体レーザの技術分野において、「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」が、「位相シフト」、「回折格子」と共に「電流注入によって利得を発生しうる光導波路」を備えること、「位相シフト」は「回折格子」に設けられること、「回折格子」は、「光導波路」の全長にわたって「光導波路」に沿って設けられることは、何れも技術常識である(例えば、引用刊行物の実施例の記載及び第1図参照。該引用刊行物に記載された「活性層140」は、「電流注入によって利得を発生しうる光導波路」に相当し、「λ/4シフト回折格子110」は、「位相シフト」が設けられた「回折格子」に相当する。また、引用刊行物の第1図には、「λ/4シフト回折格子110」が「光活性層140」の全長にわたって「光活性層140」に沿って設けられている図が描かれている。)。そうすると、引用発明の「位相シフト」、「回折格子」を備える「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」は、前記技術常識を参酌すると、実質的に、「半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路」を備え、「回折格子」は「前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられ」、「位相シフト」は「前記回折格子に設けられ」ているものといえる。
したがって、引用発明の「位相シフト」、「回折格子」を備える「位相シフト型分布帰還形半導体レーザ装置」は、実質的に、「半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路」を備え、「回折格子」は「前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられ」、「位相シフト」は「前記回折格子に設けられ」ているから、本願発明の「半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられる回折格子と、前記回折格子に設けられる位相シフトとを備え」る「半導体レーザ」に相当する。

(2) 本願発明の「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも0.025?0.100%の範囲で長くなるように構成されていること」と、引用発明の「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくなって」いることを対比する。
半導体レーザの技術分野において、ブラッグ波長と回折格子のピッチが比例関係にあることは技術常識であるから、前記技術常識より、回折格子のピッチを小さくするとブラッグ波長は短くなり、回折格子のピッチを大きくするとブラッグ波長は長くなる。ここで、回折格子のピッチを大きくしてブラッグ波長を長くすることは、光導波路に電流を注入することなくブラッグ波長を長くするから、光導波路に電流注入を行っていない状態でブラッグ波長を長くすることである。そうすると、引用発明において、「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さくなって」いることは、光導波路に電流注入を行っていない状態で、位相シフト領域以外の領域である両端部の近傍領域で、その他の領域よりもブラッグ波長が長くなっていることである。
そして、位相シフトが両端部間に設けられることを考慮すると、本願発明の「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも0.025?0.100%の範囲で長くなるように構成されていること」と、引用発明の「位相シフト領域付近で回折格子のピッチが、ブラッグ波長に対応する回折格子のピッチよりも小さなって」いることは、「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなるように構成されている」点で一致する。

(3) 以上のことから、本願発明と引用発明は、
「半導体基板上に、電流注入によって利得を発生しうる光導波路と、前記光導波路の全長にわたって前記光導波路に沿って設けられる回折格子と、前記回折格子に設けられる位相シフトとを備え、
前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなるように構成されている、半導体レーザ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
「光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなる」範囲が、本願発明では、0.025?0.100%の範囲であるのに対し、引用発明ではそのような範囲であるのか否か明らかではない点。

6 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1) はじめに、本願発明の「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなる」範囲が「0.025?0.100%の範囲」であることの技術上の意義について検討する。
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
ア 背景技術
「【0003】 …、図12(A)に示すように、DFBレーザの回折格子10の中央に位相シフト(ここではλ/4位相シフト)11が設けられている場合、結合係数を大きくすると、図12(B)に示すように、位相シフト11付近に光強度(光電界強度)の集中が発生し、大きな光強度によって位相シフト11付近における誘導放出レートが高くなり、電子正孔対(キャリア)が減少する。【0004】…、位相シフト11付近では、キャリア密度が小さいため、導波路屈折率が高くなり、端部では、キャリア密度が高いため、導波路屈折率が低くなる。【0005】 …位相シフト11付近では、屈折率が高くなるため、光学長が長くなり、ブラッグ波長が長波長化する一方、端部では、屈折率が低くなるため、光学長が短くなり、ブラッグ波長が短波長化する。【0006】 この結果、共振器内でブラッグ波長が一致しないことになり、所望の光出力が得られるように、注入電流値を大きくしていくと、レーザの発振スペクトルが劣化し、安定的な単一モード動作(単一波長動作)ができなくなる。このような現象は空間的ホールバーニングと呼ばれる…」
イ 第1実施形態
「【0022】 つまり、本半導体レーザによれば、位相シフト付近に光強度(光電界強度)の集中が発生し[図12(B)参照]、位相シフトの近傍領域のブラッグ波長が長波長化しても[図12(D)参照]、図3(A)に示すように、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で両端部の近傍領域のブラッグ波長が長波長側にオフセットされているため、図3(B)に示すように、ブラッグ波長が共振器内部の全長にわたって一定に近い状態となり、安定した単一波長動作が得られる。また、このようにブラッグ波長がほぼ均一化した状態においてしきい値は最小に近くなるため、低しきい値動作が得られる。…
【0026】 つまり、両端部の近傍領域に設けられている回折格子300の周期Λ2が、位相シフト310の近傍領域に設けられている回折格子300の周期Λ1よりも0.025?0.100%の範囲で長くなるように構成すれば、光導波路200に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長を、位相シフト310の近傍領域のブラッグ波長よりも0.025?0.100%の範囲で長くすることができ、これにより、サイドモード抑圧比が所望の値(例えば40dB以上)になり、単一波長安定動作性に優れ、しきい値も低い半導体レーザを実現できる。」
上記記載を総合すると、従来の位相シフト型分布帰還形半導体レーザでは、光導波路に電流注入を行うと、キャリア密度は、位相シフト近傍で低く、両端部近傍で高くなり、導波路屈折率は、位相シフト近傍で高く、両端部近傍で低くなる。そのため、光導波路に電流注入を行うと、位相シフト近傍のブラッグ波長は、両端部近傍のブラッグ波長より長波長化し、共振器内でブラッグ波長が一致せず、安定的な単一動作モードができなくなる(空間的ホールバーニング現象)。これに対して本願発明では、「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも0.025?0.100%の範囲で長くなるように構成されていること」との発明特定事項を備えることにより、光導波路に電流注入を行った状態で、ブラッグ波長を共振器内部の全長にわたって一定に近い状態とし、空間的ホールバーニング現象を防止して、安定した単一波長動作をさせることにあるものと解される。
そうすると、本願発明において「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなる」範囲が「0.025?0.100%の範囲」であることの技術上の意義は、光導波路に電流注入を行った状態で、空間的ホールバーニング現象を防止して、安定した単一波長動作をさせることにあるものと解される。

(2) そこで、上記相違点について検討すると、引用発明は、「ホールバーニングに起因した屈折率分布による効果を打ち消し、単一軸モードで動作するように一軸モード歩止まりが改善され」ているから、本願発明の「0.025?0.100%の範囲」が有する技術上の意義、すなわち、「光導波路に電流注入を行った状態で、空間的ホールバーニング現象を防止して、安定した単一波長動作をさせる」という技術上の意義と実質的に同様の技術上の意義を有しているものと認められる。そして、「前記光導波路に電流注入を行なっていない状態で、両端部の近傍領域のブラッグ波長が、前記位相シフトに隣接する位相シフトの近傍領域のブラッグ波長よりも長くなる」範囲を具体的にどの程度の範囲とするかは、半導体レーザ素子の構造上のパラメータや、注入する電流量等に応じて決まるキャリア密度のばらつき、許容されるブラッグ波長の変化量等に応じ、当業者が適宜設定する設計事項であって、前記範囲を本願発明の発明特定事項である「0.025?0.100%の範囲」とすることに格別の困難性は認められない。

(3) そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明に基いて当業者が容易に予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。
(4) よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-31 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-20 
出願番号 特願2007-229425(P2007-229425)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 北川 創
吉野 公夫
発明の名称 半導体レーザ及び半導体光集積素子  
代理人 真田 有  

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