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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1260900
審判番号 不服2011-14425  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-05 
確定日 2012-08-02 
事件の表示 特願2005-249359「光学シート用基材フィルム、光学シート及びバックライトユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 65160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は平成17年8月30日の出願であって、本願の請求項1?5に係る発明は、平成24年4月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
液晶層と、この液晶層の裏面側に配設される反射偏光板と、この反射偏光板の裏面側に配設され、ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導くエッジライト型バックライトユニットとを備える液晶表示装置において、
上記エッジライト型バックライトユニットが、方形の導光板の表面側に配設される光学シートを有し、
上記光学シートが、方形に形成された透明な光学シート用基材フィルムと、この光学シート用基材フィルムの一方の面に積層される光学層とを含み、
上記光学シート用基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムであって、光学的異方性を有し、リタデーション値が680nm以上であり、短辺方向に対する結晶軸方向の角度の絶対値がπ/16以上3π/16以下であり、
上記光学層が、複数の光拡散剤及びバインダーを有する層である
ことを特徴とする液晶表示装置。」

ここで、本願発明1の「短辺方向」における「短辺」とは、光学シート用基材フィルムの「短辺」を指していると思われるところ、当該「短辺」とランプ(光源)との位置関係が定かでないが、明細書【0097】の「本発明の液晶表示装置用のバックライトユニットは、方形の導光板と、導光板の長辺側端縁に沿って配設されるランプと、・・・を備え」の記載により、導光板の長辺側端縁に沿ってランプが配設されていることから、上記「短辺」とは、光学シート用基材フィルムにおいてランプが配設されていない側の辺を指すものと一応理解される。そうすると、上記「短辺方向」とは、いわゆる「主導光方向」、すなわち「光源から導光板内へ導入された光の導光板内おける巨視的な伝搬方向であり、通常は、光源が配設された側端面から、この側端面と対向する側端面に向かう方向」(特開2003-195058号公報の【0013】参照)ということができる。
また、本願発明1の「結晶軸方向」における「結晶軸」は、明細書【0041】等の記載から、光学シート用基材フィルムの「進相軸」又は「遅相軸」を意味するものと解される。
さらに、本願発明1では、光学シート用基材フィルムの結晶軸方向の角度が規定されるものの、反射偏光板の透過軸の角度は規定されていない。しかし、明細書【0010】等の説明からすると、本願では、反射偏光板の透過軸の角度が重要な要素となることは明らかであるところ、ここでは、明細書【0035】【0097】の記載を参酌して、本願発明1は、短辺方向に対する反射偏光板の透過軸の角度の絶対値がπ/4(すなわち45°)であることを前提とした発明であると理解しておく。

2.引用刊行物
これに対して、当審における平成24年3月5日付けで通知した拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平11-3608号公報には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1a)「【請求項1】 側面からの入射光を上下面の一方より出射する導光板の光出射側に、直線偏光の振動面を変化させる偏光制御層を設けてその偏光制御層を介し、透過型表示素子に設けた導光板側の偏光板の透過軸に対する、導光板より出射した直線偏光の振動面の平行度を高めてその直線偏光を前記偏光板に入射させることを特徴とする表示素子の照明方法。
【請求項2】 側面からの入射光を上下面の一方より出射する導光板、その光出射側に配置された位相差板、その位相差板の上側に偏光板を介して配置された透過型液晶セルを少なくとも有してなり、前記の位相差板が導光板の入射側面に対する面内法線と、導光板側の偏光板の透過軸とがなす角の中間に光学軸が位置するように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。【請求項3】 側面からの入射光を上下面の一方より出射し、その光出射側にプリズムアレイ層を有する導光板、そのプリズムアレイ層の上側に配置された位相差板、その位相差板の上側に偏光板を介して配置された透過型液晶セルを少なくとも有してなり、前記の位相差板がプリズムアレイ層におけるプリズム頂点の稜線に対する平面方向の垂直線と、導光板側の偏光板の透過軸とがなす角の中間に光学軸が位置するように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】 請求項2又は3において、位相差板の光学軸の角度をθ_(R)、導光板の入射側面に対する面内法線の角度をθ_(L)、プリズムアレイ層のプリズム頂点の稜線方向の角度をθ_(T)、導光板側の偏光板の透過軸の角度をθ_(P)としたとき、式:θ=(θ_(L)+θ_(P))/2又は(θ_(T)+θ_(P))/2で定義されるθに対してθ_(R)が±5度の範囲にある液晶表示装置。
【請求項5】 請求項2?4において、位相差板の位相差が波長550nmの光に基づき200?300nmである液晶表示装置。
【請求項6】 請求項2?5において、位相差板の配置角度を決定する光学軸が進相軸である液晶表示装置。」

(1b)「【0001】
【発明の技術分野】本発明は、光の利用効率に優れて明るい表示を達成できる表示素子の照明方法、及びその方法による透過型の液晶表示装置に関する。
【0002】
【発明の背景】従来、側面からの入射光を上下面の一方より出射するようにした導光板からなる導光板型光源の上に、両側に偏光板を有する液晶セルを配置してなり、必要に応じ偏光板と液晶セルとの間に、液晶セルの複屈折による光学特性を補償するための補償位相差板を配置してなる透過型の液晶表示装置が知られていた。導光板側の偏光板の透過軸等に基づく配置角度は、液晶の配向方向に基づいて決定され、例えばTN型液晶では通例45度又は-45度である。
【0003】しかしながら、導光板型光源より導光板側の偏光板に入射した光の通例50%以上が偏光板に吸収され、その吸収ロスが大きくて光の利用効率に劣り、液晶表示装置の表示の明るさの向上を阻む問題点があった。光源の輝度を向上させて明るさの向上を図ることは可能であるが、その場合には消費電力の向上を伴うこともさりながら、光源温度も上昇して偏光板等に光学歪が発生しやすくなり、表示品位が低下しやすくなる。
【0004】
【発明の技術的課題】本発明は、光利用効率の向上を図ることにより、消費電力の向上を伴う光源輝度の向上化の必要なく明るい表示を達成できる表示素子の照明方法、及び表示の明るさに優れる透過型液晶表示装置の開発を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、側面からの入射光を上下面の一方より出射する導光板の光出射側に、直線偏光の振動面を変化させる偏光制御層を設けてその偏光制御層を介し、透過型表示素子に設けた導光板側の偏光板の透過軸に対する、導光板より出射した直線偏光の振動面の平行度を高めてその直線偏光を前記偏光板に入射させることを特徴とする表示素子の照明方法、及びその方法を用いた液晶表示装置を提供するものである。
【0006】
【発明の効果】本発明によれば、偏光板にその透過軸との平行度が高い直線偏光を入射させることができて、偏光板による吸収ロスを抑制でき、偏光板透過率の増大で従来と同じ光源を用いても液晶表示装置等の表示素子における表示の明るさを向上させることができる。また従来と同じ明るさとするときには、光源の輝度を低下できて消費電力を低減でき、携帯用パソナルコンピュータ等の電池電源式の表示素子における電池寿命を向上させることができる。」

(1c)「【0010】図1に前記照明方法を実施した液晶表示装置を例示した。1が導光板、2が位相差板、3が導光板側の偏光板、4が透過型の液晶セルであり、位相差板2は、その光学軸が導光板1の入射側面に対する面内法線と、導光板側の偏光板3の透過軸とがなす角の中間に位置するように配置されている。なお図中の11は光源、12は反射層、31は視認側の偏光板である。
【0011】また図2に前記の照明方法を実施した他の液晶表示装置を例示した。これは、光出射側にプリズムアレイ層5を有する導光板1を用いたものである。この場合には位相差板2はプリズムアレイ層5の上側に、その光学軸がプリズムアレイ層5のプリズム頂点の稜線に対する平面方向の垂直線と、導光板側の偏光板3の透過軸とがなす角の中間に位置する状態に配置されている。
【0012】前記に例示の液晶表示装置では、導光板1がその側面に配置した光源11からの入射光を底面等を介し上面より出射し、その出射光がプリズムアレイ層5がある場合にはそれを透過して位相差板2に入射した後、偏光板3、液晶セル4、視認側偏光板31に順次入射して、その偏光板31より表示光が出射される。
【0013】従って上記した図1、図2の実施例は、直線偏光の振動面を変化させる偏光制御層として位相差板2を用いたものである。これによれば、導光板1又はプリズムアレイ層5より出射した光の内の直線偏光の振動面が、偏光制御層としての位相差板2を透過する際に変換され、その位相差板の光学軸の配置角度を前記中間としたので位相差板より出射する際には、導光板側の偏光板3の透過軸と平行度の高い振動面を有する直線偏光となり、それにより導光板側の偏光板3による吸収ロスが抑制されて透過率が増大し、透過型液晶表示装置の輝度が向上する。」

(1d)図1,2は次のとおり。


(1e)「【0026】導光板の形成に際しては、発光を均一化するための拡散板や光源からの出射光を導光板の側面に導くための光源ホルダなどの適宜な補助手段を必要に応じ所定位置に1層又は2層以上配置して適宜な組合せ体とすることができる。なお、拡散板の配置位置は、導光板と偏光制御層の間、導光板上にプリズムアレイ層がある場合には導光板とプリズムアレイ層の間が一般的であるが、これに限定されない。」

(1f)「【0029】偏光制御層を形成する位相差板には、適宜な位相差を付与するものを用いることができ、特に限定はない。導光板又はプリズムアレイ層より出射した光は、自然光に直線偏光が混合した部分偏光としての特性を示すことからその偏光特性の解消を防止する点より、すなわちかかる偏光特性を有効利用する点より、mλ+λ/2(ただしmは任意な整数、λは波長)の位相差を与える位相差板が好ましい。
【0030】また前記のmが増えると波長分散により前記の式に適合しない波長範囲が増大して前記の偏光特性を解消する波長光が増えることより、mは0であることが好ましい。従って広い波長域でλ/2ないしその近傍の位相差を示す位相差板が好ましく、液晶表示装置の視認光が可視光である点より、400?700nm、就中500?580mmの波長域でλ/2ないしその近傍の位相差を示す位相差板、特に波長550nmの光に基づき200?300nmの位相差を示す位相差板が好ましい。」

(1g)「【0033】また前記において、位相差板の配置角度を決定する光学軸は、斜め透過光の有効利用などの点より進相軸とすることが好ましい。遅相軸では、斜め透過光に対する位相差板の光学軸変化と偏光板の偏光軸変化の方向が逆転して斜め透過光、従って液晶表示装置を斜めから視認する場合の視認光の偏光板透過率が低下する場合がある。」

(1h)「【0036】位相差板、ないしそれを形成する位相差層には、複屈折性を示す適宜なものを用いうる。ちなみにその例としては、高分子フィルムを一軸や二軸等で適宜に延伸処理してなるフィルムや、液晶ポリマーフィルム等からなる位相差フィルムなどがあげられる。前記高分子フィルムの例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、酢酸セルロース系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜な透明プラスチックからなるフィルムなどがあげられる。」

(1i)「【0058】
【実施例】
実施例1
裏面にAl蒸着層からなる反射層を設けたポリメチルメタクリレートからなる厚さ5mmの導光板の側面に直径4mmの冷陰極管を配置し、アルミニウム蒸着フィルムにてその導光板の側面と冷陰極管を包囲した後、導光板の上面に厚さ20μmのアクリル系粘着層を介してポリカーボネートからなる位相差265nm、Nz約1.0の位相差板を接着し、その上に厚さ20μmのアクリル系粘着層を介して両面に偏光板が接着したTN型液晶セルを接着して液晶表示装置を得た。
【0059】なお前記の位相差板は、導光板側の偏光板の透過軸が導光板の入射側面の面内法線に対し45度で配置されているため、その進相軸が当該面内法線に対し22.5度の角度となるように配置した。またTN型液晶セルは、両面の偏光板の透過軸が直交したノーマリーホワイトタイプのものである。」

(1j)「【0068】参考試験
実施例に準じた導光板からなる光源の上に偏光板を、その透過軸が導光板の入射側面の面内法線方向(主導光方向)、プリズムシートを有する場合にはプリズム頂点の稜線方向(プリズム方向)又はそれらに直交する方向となるように配置して導光板中央部でのバックライト点灯時における正面(画面垂直方向)輝度を調べた。測定は、色差計(ミノルタ社製、CS-100)にて暗室中で行った。」

これら記載事項を含め総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「側面に配置した光源からの入射光を上下面の一方より出射する導光板、その光出射側に配置された位相差板、その位相差板の上側に偏光板を介して配置された透過型液晶セルを少なくとも有し、拡散板が、導光板と位相差板の間に配置されてなる液晶表示装置であって、
前記の位相差板が、導光板の入射側面に対する面内法線(主導光方向)と、導光板側の偏光板の透過軸とがなす角の中間に、光学軸が位置するように配置されており、
具体的には、位相差板の光学軸の角度をθ_(R)、導光板の入射側面に対する面内法線の角度をθ_(L)、導光板側の偏光板の透過軸の角度をθ_(P)としたとき、式:θ=(θ_(L)+θ_(P))/2で定義されるθに対して、θ_(R)が±5度の範囲にあり、
位相差板の配置角度を決定する前記光学軸が進相軸であり、
例えば、前記の位相差板は、導光板側の偏光板の透過軸が導光板の入射側面の面内法線に対し45度で配置されているとき、その進相軸が当該面内法線に対し22.5度の角度となるように配置しており、
前記の位相差板として、偏光特性を有効利用する点より、mλ+λ/2(ただしmは任意な整数、λは波長)の位相差を与える位相差板が好ましい、 液晶表示装置。」

3.対比
本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「光源」「透過型液晶セル」は、それぞれ、本願発明1の「ランプ」「液晶層」に相当し、
刊行物1記載の発明の「偏光板」と、本願発明1の「反射偏光板」とは、「偏光板」の点で共通する。

また、刊行物1記載の発明の「拡散板が、導光板と位相差板の間に配置されてなる」と、
本願発明1の「上記エッジライト型バックライトユニットが、方形の導光板の表面側に配設される光学シートを有し、上記光学シートが、方形に形成された透明な光学シート用基材フィルムと、この光学シート用基材フィルムの一方の面に積層される光学層とを含み、」「上記光学層が、複数の光拡散剤及びバインダーを有する層である」とは、
刊行物1の導光板は通常、方形であるといえるから、
「方形の導光板の表面側に配設される光拡散板を有する」点で共通する。

そうすると、刊行物1記載の発明の「側面に配置した光源からの入射光を上下面の一方より出射する導光板、その光出射側に配置された位相差板、その位相差板の上側に偏光板を介して配置された透過型液晶セルを少なくとも有し、拡散板が、導光板と位相差板の間に配置されてなる液晶表示装置」と、
本願発明1の「液晶層と、この液晶層の裏面側に配設される反射偏光板と、この反射偏光板の裏面側に配設され、ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導くエッジライト型バックライトユニットとを備える液晶表示装置において、上記エッジライト型バックライトユニットが、方形の導光板の表面側に配設される光学シートを有し、上記光学シートが、方形に形成された透明な光学シート用基材フィルムと、この光学シート用基材フィルムの一方の面に積層される光学層とを含み」とは、
「液晶層と、この液晶層の裏面側に配設される偏光板と、この偏光板の裏面側に配設され、ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導くエッジライト型バックライトユニットとを備える液晶表示装置において、上記エッジライト型バックライトユニットが、方形の導光板の表面側に配設される光拡散板を有する」点で共通するということができる。

したがって、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「液晶層と、この液晶層の裏面側に配設される偏光板と、この偏光板の裏面側に配設され、ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導くエッジライト型バックライトユニットとを備える液晶表示装置において、
上記エッジライト型バックライトユニットが、方形の導光板の表面側に配設される光拡散板を有する、
液晶表示装置。」

[相違点1]
本願発明1は、
拡散板は光学シートであり、上記光学シートが、方形に形成された透明な光学シート用基材フィルムと、この光学シート用基材フィルムの一方の面に積層される光学層とを含み、
上記光学シート用基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムであって、光学的異方性を有し、リタデーション値が680nm以上であり、短辺方向に対する結晶軸方向の角度の絶対値がπ/16(すなわち、11.25°)以上3π/16(すなわち、33.75°)以下であり、
上記光学層が、複数の光拡散剤及びバインダーを有する層であるのに対して、
刊行物1記載の発明は、
拡散板の構成は特定がなく、拡散板のほかに、導光板の光出射側に配置された位相差板を有しており、拡散板が導光板と位相差板の間に配置されてなり、
前記の位相差板が、導光板の入射側面に対する面内法線(主導光方向)と、導光板側の偏光板の透過軸とがなす角の中間に、光学軸が位置するように配置されており、
具体的には、位相差板の光学軸の角度をθ_(R)、導光板の入射側面に対する面内法線の角度をθ_(L)、導光板側の偏光板の透過軸の角度をθ_(P)としたとき、式:θ =(θ_(L)+θ_(P))/2で定義されるθに対して、θ_(R)が±5度の範囲にあり、
位相差板の配置角度を決定する前記光学軸が進相軸であり、
例えば、前記の位相差板は、導光板側の偏光板の透過軸が導光板の入射側面の面内法線に対し45度で配置されているとき、その進相軸が当該面内法線に対し22.5度の角度となるように配置しており、
前記の位相差板として、偏光特性を有効利用する点より、mλ+λ/2(ただしmは任意な整数、λは波長)の位相差を与える位相差板が好ましい点。

[相違点2]
反射板が、本願発明1は、反射偏光板であるのに対して、刊行物1記載の発明は、種類の特定がない点。


4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

(相違点1について)
まず、刊行物1記載の発明では、拡散板と位相差板は、隣接する別々の部品である。
しかし、一般に、液晶表示装置において、構成部品の合理化等の観点から、光拡散層(光拡散剤及びバインダーを含む層)を有する拡散板を設ける場合に、位相差板等の隣接する部材を基材のように使用して、位相差板等の上に光拡散層を塗布形成することは、本願出願前に周知または公知の技術である。例えば、特開2001-56410号公報(【0015】【0016】)、特開2001-166140号公報(【0019】【0025】)を参照。
また、刊行物1には、位相差板の材質として、ポリエステルが例示されており(【0036】参照)、ポリエステルの典型例であるポリエチレンテレフタレート(PET)を採用することに何ら困難性がない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、拡散板と位相差板を別々に設ける態様に代え、また、材質の選択も行い、本願発明1の『方形に形成された透明な光学シート用基材フィルムと、この光学シート用基材フィルムの一方の面に積層される光学層とを含み、上記光学シート用基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムであって、光学的異方性を有し、上記光学層が、複数の光拡散剤及びバインダーを有する層(すなわち、光拡散層)である態様』とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

次に、光学異方性を有する部品(刊行物1記載の発明では位相差板、本願発明1では光学シート用基材フィルム)における「短辺方向(これは、上記「1.」で検討したように、いわゆる「主導光方向」と認める。)に対する結晶軸方向の角度」について検討すると、
刊行物1記載の発明の「前記の位相差板は、導光板側の偏光板の透過軸が導光板の入射側面の面内法線に対し45度で配置されているとき、その進相軸が当該面内法線に対し22.5度の角度となるように配置している」は、本願発明1の「π/16(すなわち、11.25°)以上3π/16(すなわち、33.75°)以下」の範囲の中央値であり、
また、同じく刊行物1記載の発明の「位相差板の光学軸の角度をθ_(R)、導光板の入射側面に対する面内法線の角度をθ_(L)、導光板側の偏光板の透過軸の角度をθ_(P)としたとき、式:θ=(θ_(L)+θ_(P))/2で定義されるθに対して、θ_(R)が±5度の範囲」は、前記「導光板側の偏光板の透過軸が導光板の入射側面の面内法線に対し45度で配置されているとき」に、導光板の入射側面に対する面内法線(主導光方向)の角度をθ_(L)を基準(すなわち、0°)とすると、θは22.5°で、θ_(R)の範囲は17.5°?27.5°の範囲となり、これは、本願発明1の「π/16(すなわち、11.25°)以上3π/16(すなわち、33.75°)以下」の範囲に包含される。
したがって、「短辺方向(主導光方向)に対する結晶軸方向の角度」に関して、両発明に差異はないといえる。

さらに、本願発明1は、光学シート用基材フィルムのリタデーション値(位相差)が680nm以上である旨を規定しているが、刊行物1の位相差板は、「偏光特性を有効利用する点より、mλ+λ/2(ただしmは任意な整数、λは波長)の位相差を与える位相差板が好ましい」ものであり、刊行物1の【請求項5】の「位相差板の位相差が波長550nmの光に基づき200?300nmである」等の記載によれば、位相差板の位相差が波長550nmの光に基いていることが示されているから、「mλ+λ/2」は、m=0のときは、275nmであるが、m=1のときは、825nm、m=2のときは、1375nmとなり、mが1以上の整数のときには、本願発明1におけるリタデーション値(位相差)が680nm以上であることを満たしている。また、刊行物1の【請求項5】の「位相差板の位相差が波長550nmの光に基づき200?300nmである」は、【0030】の記載も勘案すると、m=0のときのものと考えられ、275nm(=λ/2)を中心に所要の幅を有しているので、m=1以上のときにも、所要の幅を持たせることは当業者が適宜なし得ることである。
また、本願発明1は、リタデーション値(位相差)が680nm以上であることを規定するが、下限値の臨界的意義が必ずしも明確でないばかりか、補正の根拠とされる本願の図6の計算値や明細書の表2の実測値では、リタデーション値(位相差)が680nm以上であれば、常に高い透過光強度または正面輝度が得られるわけではなく、位相差の程度により、透過光強度または正面輝度が周期的に高くなったり、低くなったりするのであるから、本願発明1のリタデーション値の範囲に格別な意義や効果を見出すこともできない。
したがって、刊行物1記載の発明において、位相差板のリタデーション値(位相差)を680nm以上にすることは、当業者が容易になし得ることであると言わざるを得ない。

以上をまとめると、刊行物1記載の発明において、相違点1に係る本願発明1の構成を採用することに、困難性はない。

(相違点2について)
反射偏光板は、文献を示すまでもなく、周知であり、また、光の利用効率が高いこともよく知られている。したがって、光の利用効率の向上を目的とする刊行物1記載の発明において、偏光板として反射型のものを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(効果について)
そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された事項、および周知技術から当業者が予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。

(まとめ)
したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-04 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-18 
出願番号 特願2005-249359(P2005-249359)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 理弘  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 清水 康司
金高 敏康
発明の名称 光学シート用基材フィルム、光学シート及びバックライトユニット  
代理人 天野 一規  

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