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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1260904
審判番号 不服2011-20820  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-27 
確定日 2012-08-02 
事件の表示 特願2005-210239号「浴室空調装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年2月1日出願公開、特開2007-24448号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年7月20日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成24年5月14日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「浴室内の空気を屋外へ排気する換気ファン及び前記換気ファンを回転駆動する換気ファンモータと前記換気ファンの風路を形成する換気ファンケースを有する換気手段と、
空気を取り込み、取り込んだ空気を浴室内に供給する給気ファン及び前記給気ファンを回転駆動する給気ファンモータと前記給気ファンの風路を形成する給気ファンケースを有する給気手段を備え、
前記換気ファン及び前記給気ファンの回転軸を鉛直向きとして、前記換気手段は前記給気手段の上側に前記換気ファン及び前記換気ファンモータが配置されると共に、前記換気ファンケースの上面に前記換気ファンの空気吸込口が配置され、
装置の下面に、浴室内の空気を吸込む換気吸込口を備え、
本体ケースの内側で、前記給気ファンケースの側部と前記換気ファンケースの側部に空間が設けられ、前記給気ファンケースの側部に設けられた空間と前記換気ファンケースの側部に設けられた空間が上下に接続されて、前記換気吸込口から前記換気手段の前記空気吸込口の間に、前記給気ファンケース及び前記換気ファンケースの側部に設けた空間を通る換気吸込風路が形成され、
装置の側面には、他室内の空気を吸込む他室排気吸込口を備え、
前記他室排気吸込口から前記換気手段の前記空気吸込口の間に、前記換気ファンケースの上部に設けた空間を通る他室排気吸込風路が形成され、
前記換気手段により換気を行う24時間換気運転モードを有し、
浴室内の空気は、装置の下面に設けられた前記換気吸込口から、前記換気吸込風路を介して、前記換気ファンケースの上面に設けられた前記空気吸込口より吸い込まれると共に、他室内の空気は、装置の側面に設けられた前記他室排気吸込口から、前記他室排気吸込風路を介して、前記換気ファンケースの上面に設けられた前記空気吸込口より吸い込まれるようにした
ことを特徴とする浴室空調装置。」

2.引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2004-301447号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図1?8とともに以下の事項が記載されている。
ア.「本空調装置においても、建物1内の浴室2の天井に空調装置本体3が設けられている。空調装置本体3には空気流路としてダクト4,5,6が取り付けられ、ダクト4は洗面所7に、ダクト5はトイレ8に、ダクト6は建物1外部の外気中にそれぞれ連通されている。空調装置本体3の底面には吸気口として開口部9(図2参照)が設けられ、この開口部9を介して空調装置本体3と浴室2とは連通している。
・・・(中略)・・・
そして、空調装置本体3内部に設けられたファン(図示省略)を駆動させることにより、空調装置本体3は、浴室2内、洗面所7内、トイレ8内および屋根裏11の空気を図の矢印のように吸引し、さらに建物1から外へ排気して、浴室2、洗面所7、トイレ8、および天井裏11等の換気を行う。」(段落【0017】?【0019】)
イ.「空調装置本体3は外側を覆う本体ケース21を有し、この本体ケース21は下部が開口された箱形をなし、下端周縁のフランジ部21Aが浴室2の天井22に取り付けられている。
本体ケース21は上部ユニット23と下部ユニット24の上下二段に分割されている。下部ユニット24にはファンケース25が設けられ、このファンケース25の一側には吸込口26が、他側には吹出口27がそれぞれ形成され、また吸込口26と吹出口27と間は循環風路28となっている。ファンケース25の内部には、吸込口26の上方に循環ファン29が配設されている。循環ファン29は円筒形状をなした遠心型ファンであり、下部ユニット24に取り付けられたモータ30によって回転駆動される。なお、モータ30はファンケース25に取り付けられていてもよい。
下部ユニット24内には、ファンケース25の外側に風路31が設けられ、風路31の下部は浴室2内に開口した開口部9に連通している。風路31の上部は、上部ユニット23と下部ユニット24との間の隙間Sを介して、上部ユニット23の吸引開口部32に連通している。また、下部ユニット24の吹出口27にはPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ33が配設されている。・・・(中略)・・・
上部ユニット23にはファンケース35が設けられ、ファンケース35の下部に前記吸引開口部32が形成されている。ファンケース35内部には吸引開口部32の上方に換気ファン36が設けられ、この換気ファン36は、上部ユニット23に取り付けられたファンモータ37により回転駆動される。
また、上部ユニット23には、換気ファン36から離れた側に排気口38が形成され、この排気口38はダクトジョイント39を介してダクト6に接続されている。
本体ケース21の側面には吸気口として3つの開口部41,42,43が形成され、これら開口部41,42,43は、それぞれダクトジョイント44,45,46を介してダクト4,5,15に接続されている。ここで、ダクト4は洗面所7内に、ダクト5はトイレ8内に、ダクト15は屋根裏11にそれぞれ連通している。・・・(中略)・・・
図示していない運転モード指令手段(リモートコントローラ)により、暖房モードが選択されると、モータ30が駆動して循環ファン29を回転させるとともに、PTCヒータ33が通電されて、浴室2内の空気は矢印Aのように下部ユニット24の吸込口26からファンケース25内に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、循環風路28を通過した後に、矢印Bのように流れてPTCヒータ33で加熱され、吹出口27から温風として浴室2に供給される。これにより、浴室2内を暖めることができる。
運転モード指令手段により、換気モードが選択されると、ファンモータ37が駆動して換気ファン36を回転させる。すると、浴室2の空気は矢印Cのように下部ユニット24の開口部9から第1の風路31内に吸い込まれ、矢印Dのように上部ユニット23と下部ユニット24間の隙間Sを通過した後、矢印Eのように上部ユニット23の吸引開口部32を介してファンケース35に流入する。
また、洗面所7の空気はダクト4を介して開口部41からファンケース35に流入する。トイレ8の空気はダクト5を介して矢印Fのように開口部42からファンケース35に流入する。浴室2、洗面所7およびトイレ8以外の部屋の空気は、各部屋のドアに形成されたアンダーカットを介して、浴室2、洗面所7およびトイレ8に集められ、上記と同様にしてファンケース35に流入する。
・・・(中略)・・・
そして、ファンケース35に流入した空気は、ファンケース35内を矢印Gのように流れて、矢印Hのように排気口38からダクト6を介して外気中に放出される。これにより、建物1全体の換気を行うことができる。」(段落【0021】?【0032】)
ウ.「図示していない操作手段で常時換気を行う24時間換気スイッチを設け、これが選択されているときには、建物1全体が必要換気風量(例えば、建物全体の容積の0.5回/hr)になるように制御することができる。」(段落【0036】)
エ.上記イ.の「循環ファン29は円筒形状をなした遠心型ファン」であること及び図2?4からみて、循環ファン29及び換気ファン36はともに鉛直の軸を有するといえ、上記イ.の「本体ケース21は上部ユニット23と下部ユニット24の上下二段に分割されている」こと及び図2?4からみて、上部ユニット23は下部ユニット24の上方にあって、上部ユニット23のファンケース35は下部に吸引開口部32を有し、隙間Sにその下部及び吸引開口部32が面しているといえる。さらに図2及び3には開口部41,42,43からファンケース35の下部の空間を介して吸引開口部32と連通することが図示され当該個所に矢印Fが示されている。
上記ア.?ウ.の記載事項及びエ.の図示内容を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「換気モードで浴室2の空気が吸い込まれ建物1から外へ排気されるファンケース35内部に設けられる換気ファン36及び換気ファン36を回転駆動するファンモータ37と空気が吸引開口部32を介して流入し排気口38から放出されるファンケース35を有する上部ユニット23と、
暖房モードで浴室2内の空気が吸い込まれ、吸い込まれた空気を浴室2に供給する循環ファン29及び循環ファン29を回転駆動するモータ30と空気を吸い込む吸込口26及び浴室2に供給する吹出口27が形成されてその間は循環風路28となっているファンケース25を有する下部ユニット24を備え、
循環ファン29及び換気ファン36はともに鉛直の軸を有し、換気ファン36及びファンモータ37有する上部ユニット23は下部ユニット24の上方にあり、上部ユニット23のファンケース35の下部に吸引開口部32が配置され、
空調装置本体3の底面には、換気ファン36により風路31を介して浴室2の空気を吸い込む吸気口として設けられた開口部9を備え、
下部ユニット24内には、ファンケース25の外側に風路31が設けられ、風路31の下部は浴室2内に開口した開口部9に連通し、風路31の上部は、上部ユニット23と下部ユニット24との間の隙間Sを介して、上部ユニット23のファンケース35の下部の吸引開口部32に連通し、開口部9から吸引開口部32を介して浴室2の空気が流入するようなされ、
本体ケース21の側面に洗面所7内、トイレ8内及び屋根裏11の空気を吸引する吸気口として開口部41,42,43が形成され、開口部41,42,43からファンケース35の下部の空間及び吸引開口部32を介してファンケース35に流入するものであって、
常時換気を行う24時間換気スイッチを設けられ、
浴室2の空気は、空調装置本体3の底面の開口部9から風路31及び隙間Sを介して、上部ユニット23のファンケース35の下部の吸引開口部32より吸い込まれると共に洗面所7内、トイレ8内及び屋根裏11の空気は本体ケース21の側面に形成された開口部41,42,43からファンケース35の下部の空間を介して吸引開口部32より吸い込まれる
浴室2内、洗面所7内、トイレ8内および屋根裏11の空気を換気する空調装置。」

(2)引用刊行物2
同じく引用され、本願出願前に頒布された特開平4-100506号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、第1?10図とともに以下の事項が記載されている。
ア.「この清浄機本体15内には、清浄空間13内の空気を吸い込む吸込通路17および浄化された空気を清浄空間13内に吹き出す吹出通路19が形成されている。」(第2頁左上欄第7?10行)
イ.「また、ファン23から発生する騒音は、ファン23の吸込口25からの騒音が殆どであるが、従来のファン23は吸込口25が空気の流入方向を向いていたので、騒音が吸込口25がら空気の流入方向に直接放出されるという問題があった。
・・・(中略)・・・請求項2または3記載の空気清浄機では、清浄機本体から発生する騒音を低減することができる空気清浄機を提供することを目的とする。」(第2頁右上欄第末行?右下欄第4行)
ウ.「この清浄空間31の上方には天井板33が配置されており、この天井板33には、本発明の空気清浄機35が配置されている。
この空気清浄機35は、清浄機本体37と、清浄機本体37内の空気の流通路に設けられたフィルタ39と、清浄機本体37内に空気を吸引する2台のファン41とから構成されている。
2台のファン41は、例えば、シロッコファンからなる遠心送風機とされている。
また、清浄機本体37には、清浄空間31内の空気を吸い込む吸込通路43および浄化された空気を清浄空間31内に吹き出す吹出通路45が設けられている。
即ち、清浄機本体37内が縦仕切壁47により仕切られ、左右に吹出通路45が形成されており、ファン41の下方には、上記縦仕切壁47および横仕切壁49により、吸込通路43が形成されている。
・・・(中略)・・・
さらに、ファン41には、これらのファン41に空気を吸い込む吸込口53が形成され、これらの吸込口53は、清浄機本体37に流入する空気の流入側の面と反対側のファン41の面に形成されている。即ち、ファン41の吸込口53は、上方に向けて開口している。」(第3頁左下欄第3行?右下欄第9行)
エ.「さらに、ファン41に形成される空気を吸い込む吸込口53を、清浄機本体37に流入する空気の流入側の面と反対側の面に形成したので、ファン41から発生する騒音は殆ど吸込口53から発生するが、この吸込口53が、清浄機本体37に流入する空気の流入方向と反対側の面に形成されており、このため、吸込口53から発生した騒音は、空気の流入方向へは直接的には放出されない。従って、清浄機本体37から発生する騒音を低減することができる。」(第5頁右上欄第12行?左下欄第1行)
オ.第1図には下方から吸込通路43を上方に向けて通過する空気が、空気の流通路に設けられたフィルタ39を通過した後、ファン41の側部の空間を上方へと通過し、ファンの上方の空間を通ってファン41の上面の吸込口53から吸い込まれる様子が矢印で示されている。

(3)引用刊行物3
同じく引用され、本願出願前に頒布された実願昭62-22231号(実開昭63-129153号)のマイクロフイルム(以下「引用刊行物3」という。)には、第1及び2図とともに以下の事項が記載されている。
ア.「天井内部に装着し、室内の空気を排出する換気扇に関するものである。
従来の技術
・・・(中略)・・・前記羽根104を回転することによって空気を排出する排気口106を箱101の下部に設け、箱101は天井107の上に装着して、この天井107に空気取入口となるグリル108を取付ける。このような構成でモータ103が回転すると回転軸105に固定した羽根104が回転し、グリル108から空気が入力排気口106より室内の空気が排出されていた。
考案が解決しようとする問題点
このような従来の構成では、羽根104の吸気はグリル108を通って入ってくることになり、羽根104の回転による騒音がグリル108を通して天井107の下の室内に発生することになる。・・・(中略)・・・
本考案はこのような問題点を解決するもので、室内への騒音の発生を低減・・・(中略)・・・することを目的とするものである。」(明細書第1頁第12行?第3頁第1行)
イ.「以上のように本実施例によれば、羽根5から発生した騒音は空間10を通って吸気口2から室内に伝わるので、騒音は迂回して伝わることとなりレベルは低減されることとなる。」(明細書第4頁第17?末行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「換気モードで浴室2の空気が吸い込まれ建物1から外へ排気されるファンケース35内部に設けられる換気ファン36」は、その機能・構成からみて、前者の「浴室内の空気を屋外へ排気する換気ファン」に相当し、以下同様に、後者の「換気ファン36を回転駆動するファンモータ37」は前者の「換気ファンを回転駆動する換気ファンモータ」に、後者の「空気が吸引開口部32を介して流入し排気口38から放出されるファンケース35」は前者の「換気ファンの風路を形成する換気ファンケース」に、後者の「上部ユニット23」は前者の「換気手段」に、後者の「暖房モードで浴室2内の空気が吸い込まれ、吸い込まれた空気を浴室2に供給する循環ファン29」は前者の「空気を取り込み、取り込んだ空気を浴室内に供給する給気ファン」に、後者の「循環ファン29を回転駆動するモータ30」は前者の「給気ファンを回転駆動する給気ファンモータ」に、後者の「空気を吸い込む吸込口26及び浴室2に供給する吹出口27が形成されてその間は循環風路28となっているファンケース25」は前者の「給気ファンの風路を形成する給気ファンケース」に、後者の「下部ユニット24」は前者の「給気手段」に、後者の「循環ファン29及び換気ファン36はともに鉛直の軸を有」する態様は前者の「換気ファン及び給気ファンの回転軸を鉛直向きと」する態様に、後者の「換気ファン36及びファンモータ37有する上部ユニット23は下部ユニット24の上方にあ」る態様は前者の「換気手段は給気手段の上側に換気ファン及び換気ファンモータが配置される」態様に、後者の「空調装置本体3の底面には、換気ファン36により」「浴室2の空気を吸い込む吸気口として設けられた開口部9」は前者の「装置の下面に、浴室内の空気を吸込む換気吸込口」に、後者の「本体ケース21の側面に洗面所7内、トイレ8内及び屋根裏11の空気を吸引する吸気口として開口部41,42,43が形成され」る態様は前者の「装置の側面には、他室内の空気を吸込む他室排気吸込口を備え」る態様に、後者の「常時換気を行う24時間換気スイッチを設け」ている動作に係る態様は前者の「換気手段により換気を行う24時間換気運転モードを有」することに、後者の「浴室2内、洗面所7内、トイレ8内および屋根裏11の空気を換気する空調装置」は前者の「浴室空調装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「上部ユニット23のファンケース35の下部に」配置された「吸引開口部32」は、「吸引開口部32を介して浴室2の空気が流入する」から、前者の「換気ファンケースの上面に」配置された「換気ファンの空気吸込口」と、浴室の空気を吸引する「換気ファンケースに」配置された「換気ファンの空気吸込口」である点で共通する。
後者は「下部ユニット24内には、ファンケース25の外側に風路31が設けられ、風路31の下部は浴室2内に開口した開口部9に連通し、風路31の上部は、上部ユニット23と下部ユニット24との間の隙間Sを介して、上部ユニット23のファンケース35の下部の吸引開口部32に連通し、開口部9から吸引開口部32を介して浴室2の空気が流入するようなされ」るものであるから、後者の「風路31」及び「上部ユニット23と下部ユニット24との間の隙間S」は「開口部9から吸引開口部32を介して浴室2の空気が流入する」風路であるといえ、前者の「本体ケースの内側で、前記給気ファンケースの側部と前記換気ファンケースの側部に空間が設けられ、前記給気ファンケースの側部に設けられた空間と前記換気ファンケースの側部に設けられた空間が上下に接続されて、前記換気吸込口から前記換気手段の前記空気吸込口の間に、前記給気ファンケース及び前記換気ファンケースの側部に設けた空間を通る換気吸込風路が形成され」ることとは、「本体ケースの内側で、給気ファンケースの側部に空間が設けられ、換気吸込口から換気手段の空気吸込口の間に、給気ファンケースの側部に設けた空間を通る換気吸込風路が形成され」る点で共通する。
後者は「開口部41,42,43からファンケース35の下部の空間及び吸引開口部32を介してファンケース35に流入する」のであるから、ファンケース35の下部の空間は前者の「他室排気吸込口から前記換気手段の前記空気吸込口の間に」「設けた空間を通る他室排気吸込風路が形成さ」れることに対応する。
後者の「浴室2の空気は、空調装置本体3の底面の開口部9から風路31及び隙間Sを介して、上部ユニット23のファンケース35の下部の吸引開口部32より吸い込まれると共に洗面所7内、トイレ8内及び屋根裏11の空気は本体ケース21の側面に形成された開口部41,42,43からファンケース35の下部の空間を介して吸引開口部32より吸い込まれる」ことは、前者の「浴室内の空気は、装置の下面に設けられた前記換気吸込口から、前記換気吸込風路を介して、前記換気ファンケース」「に設けられた前記空気吸込口より吸い込まれると共に、他室内の空気は、装置の側面に設けられた前記他室排気吸込口から、前記他室排気吸込風路を介して、前記換気ファンケース」「に設けられた前記空気吸込口より吸い込まれるようにした」ことに対応する。
そうすると、両者は、
「浴室内の空気を屋外へ排気する換気ファン及び前記換気ファンを回転駆動する換気ファンモータと前記換気ファンの風路を形成する換気ファンケースを有する換気手段と、
空気を取り込み、取り込んだ空気を浴室内に供給する給気ファン及び前記給気ファンを回転駆動する給気ファンモータと前記給気ファンの風路を形成する給気ファンケースを有する給気手段を備え、
前記換気ファン及び前記給気ファンの回転軸を鉛直向きとして、前記換気手段は前記給気手段の上側に前記換気ファン及び前記換気ファンモータが配置されると共に、前記換気ファンケースに前記換気ファンの空気吸込口が配置され、
装置の下面に、浴室内の空気を吸込む換気吸込口を備え、
本体ケースの内側で、前記給気ファンケースの側部に空間が設けられ、前記換気吸込口から前記換気手段の前記空気吸込口の間に、前記給気ファンケースの側部に設けた空間を通る換気吸込風路が形成され、
装置の側面には、他室内の空気を吸込む他室排気吸込口を備え、
前記他室排気吸込口から前記換気手段の前記空気吸込口の間に、他室排気吸込風路が形成され、
前記換気手段により換気を行う24時間換気運転モードを有し、
浴室内の空気は、装置の下面に設けられた前記換気吸込口から、前記換気吸込風路を介して、前記換気ファンケースに設けられた前記空気吸込口より吸い込まれると共に、他室内の空気は、装置の側面に設けられた前記他室排気吸込口から、前記他室排気吸込風路を介して、前記換気ファンケースに設けられた前記空気吸込口より吸い込まれるようにした
ことを特徴とする浴室空調装置。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

相違点A:換気ファンの空気吸込口に関して、本願発明が「換気ファンケースの上面に換気ファンの空気吸込口が配置」されているのに対して、引用発明は「上部ユニット23のファンケース35の下部に吸引開口部32が配置」されている点。

相違点B:換気吸込風路に関して、本願発明が「換気ファンケースの側部に空間が設けられ、前記給気ファンケースの側部に設けられた空間と前記換気ファンケースの側部に設けられた空間が上下に接続されて」おり、「給気ファンケース及び換気ファンケースの側部に設けた空間を通る換気吸込風路」が形成されているのに対して、引用発明は「下部ユニット24内には、ファンケース25の外側に風路31が設けられ」るものの、「風路31の上部は、上部ユニット23と下部ユニット24との間の隙間Sを介して、上部ユニット23のファンケース35の下部の吸引開口部32に連通し」ており、上部ユニット23のファンケース35の側部に風路が形成されていない点。

相違点C:他室排気吸込風路に関して、本願発明が「換気ファンケースの上部に設けた空間を通る」ものであるのに対して、引用発明は「開口部41,42,43からファンケース35の下部の空間及び吸引開口部32を介してファンケース35に流入するもの」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
引用刊行物2には、天井に配置される空気清浄機において、従来、吸込通路17を介して空気を吸い込むファン23の吸込口25が空気の流入方向を向いていたので、騒音が吸込口25から空気の流入方向に直接放出されるという問題を解決して、騒音を低減するために、ファン41の吸込口53を、流入する空気の流入側の面と反対側の面に形成して、上方に向けて開口することにより、下方の吸込通路43,ファン41の側部の空間を介して上面の吸込口53に空気を吸い込むようになすことが示されている。
引用刊行物2に記載の事項は空気清浄機におけるものであるが、引用発明と同じく天井に配置されるものであって、ファンによる騒音については共通する事項といえる。そして、引用発明のファンの1つである換気ファン36について、騒音は低減すべく、上記引用刊行物2に記載の事項を適用して、吸引開口部32をファンケース35の上面に設けることは当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
換気ファンについて騒音が問題であることは、例えば引用刊行物3にも示されており、引用発明の換気ファンの騒音を低減すべく、引用刊行物2に記載の事項を適用しようとすることに格別の困難性はない。
したがって、相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことといわざるをえない。そしてそのことによる格別の効果もない。
なお、本願発明は給気ファンのファンケースの吸込口の向きを限定しておらず、引用発明の全てのファンについて上記引用刊行物2に記載の事項を適用しても本願発明と同様である。

(2)相違点Bについて
上記(1)で述べたように、換気ファン36の吸引開口部32をファンケース35の上面に設けるとき、下部ユニット24のファンケース25の外側に風路31の上部からさらに、上部ユニット23の換気ファン36のファンケース35の吸引開口部32がある上面にまで風路を設ける必要があることは自明であって、下部ユニットの風路31に倣って、上部ユニットにおいてもファンケース35の外側に風路を設けてこれを連通させることは、当業者が格別の困難性を要することなくなし得た設計的事項である。
上記引用刊行物2に記載された事項においても、ファン41の下方にある吸込通路43に、上下に接続されるファン41の側部の空間を介して、ファン41の上方の面の吸込口53につながる風路を形成しており、このことからも上記のようになすことに格別の困難性はない。
したがって、相違点Bに係る本願発明の構成とすることも、当業者が容易になし得たことである。そしてそのことによる格別の効果もない。
なお、引用刊行物2のフィルタ39は空気の流通路に設けられるものであって、例えフィルタを設けるとしても上記のように風路を設けることが出来ないというものではない。

(3)相違点Cについて
上記(1)で述べたようなすとき、換気ファン36の吸引開口部32はファンケース35の上面にあるから、開口部41,42,43からの空気についても浴室の空気と同様に、ファンケース35の上面に導く必要があることは自明であり、そのための空間をファンケース35の上部に設けることも当業者が適宜なし得た設計的事項である。
したがって、相違点Cに係る本願発明の構成とすることも、当業者が容易になし得たことである。そしてそのことによる格別の効果もない。

また、上記相違点A?Cを合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物2及び3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2012-05-31 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-18 
出願番号 特願2005-210239(P2005-210239)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢松井 裕典千壽 哲郎  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 長浜 義憲
松下 聡
発明の名称 浴室空調装置  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  

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