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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01G
管理番号 1261134
審判番号 不服2010-13533  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-21 
確定日 2012-08-06 
事件の表示 特願2004-239005「チップ状固体電解コンデンサ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月14日出願公開,特開2005-101562〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成16年8月19日(優先権主張:平成15年8月20日)の特許出願であって,平成21年10月30日付けの拒絶の理由の通知に対して,同年12月18日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成22年3月17日付けで拒絶査定され,同年6月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,手続補正書が提出されたものである。
その後,平成23年9月30日付けで当審から審尋を送付し,同年12月2日に回答書が提出され,平成24年3月2日付けで拒絶の理由が通知され,同年5月1日に意見書が提出された。

2 本願発明
本願の請求項1-2に係る発明は,平成22年6月21日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりである。
「コンデンサ素子の陽極部の一部と陰極部の一部を,各々陽極端子と陰極端子に接続し,前記陽極及び陰極各端子の下面または下面と側面の一部を除き外装封口されたチップ状固体電解コンデンサにおいて,陰極端子のコンデンサ素子との接続面がコンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面より大きいチップ状固体電解コンデンサの製造方法であって,陰陽極両端子の一部となる下面部を有するリードフレーム対を使用し,前記陰極端子に対応するリードフレーム上に前記コンデンサ素子の陰極端子接続面より面積の大きい陰陽端子を構成する金属材料を張り合わせることを特徴とするチップ状固体電解コンデンサの製造方法。」

3 引用例とその記載事項,及び,引用発明
平成24年3月2日付けで通知した拒絶の理由で引用した,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2002-367862号公報(以下「引用例1」という。),特開2003-133177号公報(以下「引用例2」という。),及び,特開2000-323357号公報(以下「引用例3という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。)

引用例1:特開2002-367862号公報
(1a)「【請求項1】 素子本体から陽極ワイヤが延出してなるコンデンサ素子を樹脂パッケージ内に封止してなる固体電解コンデンサであって,
上記陽極ワイヤに導通する陽極リードと,上記素子本体に導通する陰極リードとを備えており,
上記陽極リードおよび陰極リードは,板状導体によって形成されているとともにそれぞれの下面が上記樹脂パッケージの下面に露出させられて端子面とされており,
上記素子本体は,上記陰極リードの上面に接続されているとともに,上記陽極ワイヤは,上記陽極リードの上面に導電性桁部材を介して接続されていることを特徴とする,固体電解コンデンサ。
【請求項2】 上記陰極リードの下面側の一部がハーフエッチング又はスタンピングされることにより,樹脂パッケージの下面に露出させられる端子面に比較して上記素子本体が接続される上面の面積が十分に大とされている,請求項1に記載の固体電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「【請求項5】 上記陽極ワイヤはタンタルによって形成されているとともに,上記導電性桁部材はニッケルまたはニッケルを含む合金によって形成されており,両者は,電気抵抗溶接によって接続されている,請求項2乃至4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】 上記素子本体は上記陰極リードの上面に導電性接着材によって接続されているとともに,上記導電性桁部材は上記陽極リードの上面に導電性接着材によって接続されている,請求項5に記載の固体電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(1c)「【請求項7】 素子本体から陽極ワイヤが延出してなるコンデンサ素子を樹脂パッケージ内に封止してなる固体電解コンデンサの製造方法であって,
単位領域が複数行複数列に配列されるとともに,各単位領域において,内向端どうしが所定のすきまを隔てて位置する陽極リードおよび陰極リードの対がそれぞれ配置された板状の製造用フレームを用い,
(a)上記各陰極リードの上面に上記コンデンサ素子の素子本体を接続するとともに上記各陽極リードの上面に上記導電性桁部材を介して上記素子本体から延出する陽極ワイヤを接続する工程と,
(b)各陽極リードおよび各陰極リードの下面を露出させ,各コンデンサ素子を内包するようにして上記製造用フレームを樹脂封止した中間品を得る工程と,
(c)上記中間品を,上記単位領域ごとに分割する工程と,
を含む各工程を行うことを特徴とする,固体電解コンデンサの製造方法。」(【特許請求の範囲】)

(1d)「【従来の技術】従来より,電子回路においては,コンデンサが幅広く利用されている。コンデンサの中でも電解コンデンサは,比較的小型で大容量であることから電力回路等によく用いられている。代表的な電解コンデンサとしては,アルミ電解コンデンサ,タンタル電解コンデンサ等が挙げられるが,漏れ電流特性,周波数特性,および温度特性等の点で優れているタンタル電解コンデンサが,それらの特性を必要とするノイズ・リミッタ回路やフィルタ回路等に使用されることが多い。
図34および図35は,従来のタンタル固体電解コンデンサ(以下,単に「固体電解コンデンサ」という)の一例を示す図である。この固体電解コンデンサ61は,陰極リード62および陽極リード63と,コンデンサ素子C1と,それらを部分的に封止する樹脂パッケージ65とによって構成されている。コンデンサ素子C1は,素子本体64とその一端面64aから延出した陽極ワイヤ66とを有している。素子本体64には,その外表面を覆うように金属層67が形成されており,金属層67は,陰極リード62に電気的に接続されている。また,陽極ワイヤ66は,陽極リード63に電気的に接続されている。
上記固体電解コンデンサ61の製造方法では,まず,製造用リードフレーム(図示せず)上に形成した陰極リード62に,素子本体64を導電性接着材68によって接続し,同じく製造用リードフレーム上に形成した陽極リード63に素子本体64から延出した陽極ワイヤ66をスポット溶接等により接続する。その後,これらをエポキシ樹脂等によって封止して樹脂パッケージ65を形成し,この樹脂パッケージ65から外部に向かって延びている各リード62,63を製造用リードフレームから切断するとともに所定の形状に折り曲げる。
【発明が解決しようとする課題】ここで,上記各リード62,63を所定の形状に折り曲げる際,樹脂パッケージ65には,相当な曲げ応力が加わる。そのため,固体電解コンデンサ61においては,そのような曲げ応力に耐えられる程度の強度が必要とされ,通常,樹脂パッケージ65の厚みを比較的厚くすることにより曲げ応力による損傷を回避している。しかしながら,樹脂パッケージ65の厚みを厚く形成することは,素子本体64の容積以外の部分を厚くすることになり,製品の大型化を招くことになる。」(【0002】-【0005】)

(1e)「また,本願の構成では,陰極リードおよび陽極リードがそれぞれ樹脂パッケージの下面から露出する結果,従来の構成のように,リードを折り曲げる必要がなくなる。すなわち,折り曲げ時に発生する曲げ応力が樹脂パッケージにかかるようなことはなく,そのために樹脂パッケージの厚みを厚くしなくてもよい。したがって,コンデンサ素子を樹脂パッケージ内において可能な限り占有させて設けることができるので,同一容量のコンデンサ素子を搭載する場合,本願発明では,従来の構成に比べ,樹脂パッケージの寸法を小さく形成することができ,より小型化を図ることができる。換言すると,樹脂パッケージの大きさが同じであれば,本願発明の方が従来の構成に比べより大容量のコンデンサ素子を搭載することができる。」(【0013】)

(1f)「本願発明の好ましい実施の形態によれば,上記陰極リードの下面側の一部がハーフエッチング又はスタンピングされることにより,樹脂パッケージの下面に露出させられる端子面に比較して上記素子本体が接続される上面の面積が十分に大とされている。この構成によれば,陰極リードは,その下面の一部が樹脂パッケージの下面から露出させられることにより,プリント配線基板等に表面実装可能とする一方で,その上面において素子本体を接続する十分な面積を確保することができる。」(【0014】)

(1g)「【発明の実施の形態】以下,本願発明の好ましい実施の形態を,添付図面を参照して具体的に説明する。
図1乃至図4は,本願発明の第1実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサ(以下,単に「固体電解コンデンサ」という)を示す図である。この固体電解コンデンサ1は,所定のすきまを隔てて配置された陰極リード2および陽極リード3と,陰極リード2に接続されたコンデンサ素子Cと,陽極リード3に接続された導電性桁部材5と,これらをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により封止して形成された樹脂パッケージ6とによって大略構成されている。
コンデンサ素子Cは,略直方体形状の素子本体4を有し,その一端面4aから陽極ワイヤ7を延出させている。素子本体4は,図5に示すように,タンタル等の金属粉末を圧縮成形して焼結させた多孔質焼結体4Aに対して,陽極ワイヤ7の基端部が埋設され,金属粉末の表面に誘電体としての酸化被膜4Bが形成され,さらに多孔質焼結体4Aの外周面に半導体層4C,グラファイト層4Dがそれぞれ形成され,グラファイト層4Dの表面が銀等からなる金属層8で覆われた構成とされている。すなわち,金属層8は,陰極として機能し,素子本体4の側面4bおよび他端面4c(図2および図3参照)に形成されている。素子本体4は,陰極リード2の上面2aにたとえば導電性接着材によって接続されている。なお,多孔質焼結体4Aは,アルミニウムやニオブ等によって形成されても良い。
陰極リード2は,たとえば銅からなる板状導体によって形成されており,下面側の一部がハーフエッチング処理されている。この処理により,陰極リード2は,その下面が凹凸状とされ,厚み方向に所定の厚みを有する厚肉部11と,これより厚み方向に薄く形成された薄肉部12とを有している。すなわち,陰極リード2の下面2c(図3および図4参照)は,端子面として樹脂パッケージ6の下面に露出させられており,たとえばプリント配線基板(図示せず)の表面に形成された導体パターンと半田付けすることにより,本固体電解コンデンサ1をプリント配線基板に表面実装することができるようになっている。これに対し,陰極リード2の上面2aは,平坦に形成されつつ,コンデンサ素子Cが搭載可能なように,下面2cと比較してその面積が十分大となるように形成されている。なお,陰極リード2の端面2bも,外部に露出させられている。」(【0025】-【0028】)

(1h)「コンデンサ素子Cの陽極ワイヤ7は,多孔質焼結体と同種の金属であるタンタル等によって形成され,素子本体4の一端面4aから樹脂製リング9を介して所定の長さに延びている。陽極ワイヤ7は,陽極リード3の上面3aに導電性桁部材5を介して接続されている。
陽極リード3は,たとえば銅からなる板状導体によって形成されており,陰極リード2と同様に,下面側の一部がハーフエッチング処理されている。この処理により,陽極リード3は,その下面が凹凸状とされ,厚み方向に所定の厚みを有する厚肉部13と,これより厚み方向に薄く形成された薄肉部14とを有している。陽極リード3は,その上面3aが平坦とされ,陰極リード2の上面2aとほぼ同一平面上になるよう配置されている。陽極リード3の上面3aは,陰極リード2の上面2aより小であって,導電性桁部材5が搭載可能な面積を有するように形成されている。そして,陽極リード3の下面3cは,樹脂パッケージ6の下面に端子面として露出させられており,本固体電解コンデンサ1をプリント配線基板等に表面実装することができるようになっている。なお,陽極リード3の端面3bも,外部に露出させられている。」(【0029】-【0030】)

(1i)「次に,上記固体電解コンデンサの製造方法について,図5,図8ないし図16を参照して説明する。まず,コンデンサ素子Cの素子本体4は,図5に示したように,タンタル等の金属粉末を圧縮成形し焼結させて多孔質焼結体4Aを形成し,多孔質焼結体4Aに陽極ワイヤ7の基端部を埋設し,次いで,多孔質焼結体4Aの粉末表面に対して,誘電体として機能する酸化被膜4Bを形成し,さらに,半導体層4C,グラファイト層4D,および金属層8を積層することにより形成される。
コンデンサ素子Cは,図8に示すように,素子本体4から延びた陽極ワイヤ7の先端部が帯状のタイバー21に溶接されて接続され,複数のコンデンサ素子Cがタイバー21に対して所定の間隔を隔てて連設された恰好で次工程に進む。
次工程では,図9に示すように,所定長さを有する棒状の導電性桁部材5を用意し,それを複数のコンデンサ素子Cの陽極ワイヤ7に掛け渡すようにして位置決めする。次いで,棒状の導電性桁部材5および陽極ワイヤ7をスポット溶接等の電気抵抗溶接により接続する。この場合,陽極ワイヤ7はタンタルからなり,導電性桁部材5はタンタルと相性のよい42アロイ等からなるので,両者は良好に接合される。
その後,陽極ワイヤ7を図9に示す切断線L1に沿って切断し,タイバー21を取り除く。これにより,図10に示すように,陽極ワイヤ7の余分な部分が切断されたコンデンサ素子Cを得る。次いで,図10に示す切断線L2に沿って棒状の導電性桁部材5を切断し,余分な部分を取り除く。これにより,各コンデンサ素子Cに対応した長さの導電性桁部材5が得られ,各導電性桁部材5が陽極ワイヤ7に接続されたコンデンサ素子Cを得る。
一方,陰極リード2および陽極リード3の製作には,図11に示すように,たとえば厚みが0.15mm程度の板状フレーム23が用いられる。この板状フレーム23には,その側縁部に,図示しない固定台等に固定するための係合孔24が形成されている。
図12は,図11の点線で示した領域Aの拡大図である。この板状フレーム23には,打ち抜き加工が施されており,最終的に固体電解コンデンサとなる単位領域B(図12参照)が複数行複数列に配列されている。各単位領域Bにおいては,陽極リード3および陰極リード2の対が,それらの内向端どうしが所定のすきまを隔てて位置するようにそれぞれ配置されている。なお,各単位領域Bにおける各リード2,3は,板状フレーム23の外枠および連設部28によって繋げられている。また,図13に示すように,板状フレーム23における各リード2,3の裏面側は,ハーフエッチング処理が施されており,図3に示した薄肉部12,14がそれぞれ形成されている。すなわち,図13における斜線部Dがハーフエッチング処理の施されている箇所であり,薄肉部12,14となっている部分である。
上記板状フレーム23の各リード2,3に対して,導電性桁部材5が繋がれたコンデンサ素子Cが接続される。具体的には,図14に示すように,各リード2,3の上面2a,3aにおける所定部位に,導電性接着材30としてのたとえばAgペーストからなる導電性ペーストを塗布する。そして,素子本体4を陰極リード2の上面2aに位置決め載置すると同時に,導電性桁部材5を陽極リード3の上面3aに位置決め載置する。これにより,コンデンサ素子Cおよび導電性桁部材5は,各リード2,3に搭載されて電気的に接続される。
その後,たとえばトランスファーモールド成形を用いて樹脂パッケージ6を形成する。具体的には,図15に示すように,複数のコンデンサ素子Cの周囲および板状フレーム23を所定の金型31,32を用いて上下から囲む。次いで,キャビティ33内に流動状態のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を注入,固化することにより,板状フレーム23,コンデンサ素子C,および導電性桁部材5を一体的にモールドし中間品を得る。
次に,図16(板状フレーム23の領域Aを裏面側から見た図)に示す,最終的に外部に露出する端子としての各リード2,3の下面2b,3bに対してめっきを施して表面処理を行う。その後,たとえば幅0.3mm程度のダイシングソーによって,図16の斜線部Eに示す領域を切除することにより,モールドされた中間品を縦方向に切断して横長の二次中間品を得る。次いで,図16の斜線部Fに示す領域を切除することにより,横長の二次中間品を縦方向に切断し,図1および図2に示す固体電解コンデンサ1を得る。
このように,上記製造方法においては,板状フレーム23を用いることにより固体電解コンデンサ1を一度にかつ多量に製造することができるので,製造コストの低減を図ることができる。なお,上記製造方法においては,導電性桁部材5は,陽極ワイヤ7に接合された後,陽極リード3に接続されたが,これに代わり,導電性桁部材5は,予め陽極リード3に接続され,その後,陽極ワイヤ7に接合されるようにしてもよい。」(【0038】-【0047】)

(1j)「図22は,本願発明の第2実施形態に係る固体電解コンデンサを示す一部切欠斜視図である。この実施形態では,固体電解コンデンサ1Eは,同図に示すように,陰極リード2および陽極リード3に代わり,絶縁性を有する基板40を具備し,基板40上にコンデンサ素子Cおよび導電性桁部材5が接続された構成とされている。
基板40は,ガラスエポキシ樹脂,BTレジン等のポリイミド樹脂,またはセラミックス等からなり,その上面40aに陰極パッド41および陽極パッド42が形成されている。また,下面40cには,陰極パッド41および陽極パッド42にそれぞれ導通された端子面41A,42Aが形成されている。すなわち,陰極パッド41は,基板40の一端面40bに形成された導体部41Bを介して下面40cの端子面41Aと導通されている。一方,陽極パッド42は,基板40の他端面40dに形成された導体部42Bを介して下面40cの端子面42Aと導通されている。
陰極パッド41の上面には,コンデンサ素子Cの素子本体4が導電性接着材を介して接続されている。また,陽極パッド42の上面には,導電性桁部材5が導電性接着材を介して接続されている。
樹脂パッケージ6は,基板40の上面40aに,コンデンサ素子C,導電性桁部材5,並びに陰極および陽極パッド41,42の一部を覆うように形成されており,基板40の両端部には形成されていない。その他の構成については,上記第1実施形態と略同様である。
この構成によれば,コンデンサ素子Cおよび導電性桁部材5を接続支持する部材として,第1実施形態で示したリード2,3に代わり,陰極パッド41および陽極パッド42が形成された基板40が用いられている。そのため,この構成においても,従来の構成のように,リードを折り曲げる等の作業が発生せず,曲げ応力は樹脂パッケージ6にかかることはない。したがって,第1実施形態と同様に,コンデンサ素子Cを樹脂パッケージ6内において可能な限り占有させて設けることができるので,同一容量のコンデンサ素子Cを搭載する場合,樹脂パッケージ6の寸法を小さくでき,小型化が可能となる。」(【0056】-【0060】)

(1k)図1は,引用例1に記載された発明の第1実施形態に係る固体電解コンデンサの構造を示す一部切欠斜視図であり,引用例1の前記摘記(1a)-(1i)の記載を参酌すれば,同図から,陰極リード2の上面2aの手前側の側端部が,素子本体4の下側の面の手前の側端部を超えて所定の幅(側端側幅)だけ外側に位置しており,
陰極リード2の上面2aの端面2b側の端部が,素子本体4の下側の面の他端面4c側の端部を超えて所定の長さ(切除端側長さ)だけ外側に位置しており,
陰極リード2の上面2aの前記端面2bに対向する側の端部が,素子本体4の下側の面の端面4a側の端部よりも所定の長さ(内向端側長さ)だけ内側に位置している,
チップ状固体電解コンデンサの構造を読み取ることができる。
さらに,同図からは,陰極リード2の上面2aの端面2b側の端部が,素子本体4の下側の面の他端面4c側の端部を超えて外側に位置する長さである「所定の長さ(切除端側長さ)」と,陰極リード2の上面2aの前記端面2bに対向する側の端部が,素子本体4の下側の面の端面4a側の端部よりも内側に位置する長さである「所定の長さ(内向端側長さ)」とが,略等しいことも読み取ることができる。

(1l)図14は,図1のコンデンサの製造方法を示す図であって,同図から,陰極リード2の上面2aの両側の端部が,素子本体4の両側の側面4bを超えてそれぞれ所定の幅だけ外側に位置しており,また,陰極リード2の上面2aの端部が,素子本体4の端面4aより所定の長さだけ内側に位置していることを読み取ることができる。

(1m)図22は,引用例1に記載された発明の第2実施形態に係る固体コンデンサを示す一部切欠斜視図であって,引用例1の前記摘記(1j)の記載を参酌すれば,同図から,陰極パッド41の上面の両側の端部が,素子本体4の下側の面の両側の側端部を超えてそれぞれ外側に位置しており,また,陰極パッド41の上面の端面41B側,及び,端部41Bに対向する側の端部が,素子本体4の下側の面の端面4c側,及び,端面4a側の端部を超えてそれぞれ外側に位置していることを読み取ることができる。

引用発明
引用例1の上記摘記(1a)-(1m)を総合勘案すれば,引用例1には,
「所定のすきまを隔てて配置された陰極リード2および陽極リード3と,陰極リード2に接続されたコンデンサ素子Cと,陽極リード3に接続された導電性桁部材5と,これらをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により封止して形成された樹脂パッケージ6とによって大略構成されているチップ状固体電解コンデンサの製造方法において,
前記コンデンサ素子Cは,略直方体形状の素子本体4を有し,その一端面4aから陽極ワイヤ7が延出し,素子本体4の側面4bおよび他端面4cには,陰極として機能する金属層8が形成されており,
前記素子本体4は,下面側の一部がハーフエッチング処理されることにより,下面が凹凸状とされ,厚み方向に所定の厚みを有する厚肉部11と,これより厚み方向に薄く形成された薄肉部12とを有している板状導体によって形成される陰極リード2の上面2aに接続されており,
前記陰極リード2の上面2aは,平坦に形成されつつ,コンデンサ素子Cが搭載可能なように,下面2cと比較してその面積が十分大となるように形成されており,前記陰極リード2の下面2cと,端面2bは,前記樹脂パッケージ6から露出しており,
前記陽極ワイヤ7は,陽極リード3の上面3aに導電性桁部材5を介して接続されており,
前記陽極リード3の下面3cと,端面3bは,前記樹脂パッケージ6の外部に露出しており,
前記陰極リード2および前記陽極リード3は,たとえば厚みが0.15mm程度の板状フレーム23を用いて製作されており,
前記板状フレーム23には,打ち抜き加工が施されて,陽極リード3および陰極リード2の対が,それらの内向端どうしが所定のすきまを隔てて位置するようにそれぞれ配置されており,
各リード2,3の上面2a,3aにおける所定部位に,導電性接着材30を塗布し,素子本体4を陰極リード2の上面2aに位置決め載置することにより,コンデンサ素子Cを各リード2,3に電気的に接続し,
前記位置決め載置は,前記陰極リード2の上面2aの両側の端部が,素子本体4の下側の面の両側の側端部を超えて所定の幅(側端側幅)だけ外側に位置し,
陰極リード2の上面2aの端面2b側の端部が,素子本体4の下側の面の他端面4c側の端部を超えて,所定の長さ(切除端側長さ)だけ外側に位置し,
陰極リード2の上面2aの前記端面2bに対向する側の端部が,素子本体4の下側の面の端面4a側の端部よりも,所定の長さ(内向端側長さ)だけ内側に位置するものであり,
その後,たとえばトランスファーモールド成形を用いて樹脂パッケージ6を形成し,
その後,たとえば幅0.3mm程度のダイシングソーによって切断し固体電解コンデンサ1を得るチップ状固体電解コンデンサの製造方法。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用例2:特開2003-133177号公報
(2a)「【請求項4】 陽極リード(10)が接続された陽極体(1)表面に誘電体酸化被膜(11),陰極層(12)が順次形成されたコンデンサ素子(5)を,対向配備した陽極片(22)と陰極片(23)上に載置接続し,両極片(22)(23)間を合成樹脂(70)にて被覆した固体電解コンデンサであって,少なくとも陽極リード(10)に近接するコンデンサ素子(5)の陰極層(12)部分が陰極片(23)に接続されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項5】 陽極リード(10)が接続された陽極体(1)表面に誘電体酸化被膜(11),陰極層(12)が順次形成されたコンデンサ素子(5)を,対向配備した陽極片(22)と陰極片(23)上に載置接続し,両極片(22)(23)間を合成樹脂(70)にて被覆した固体電解コンデンサであって,陰極片(23)をコンデンサ素子(5)の陰極層(12)幅に亘って延在させたことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項6】 陽極リード(10)が接続された陽極体(1)表面に誘電体酸化被膜(11),陰極層(12)が順次形成されたコンデンサ素子(5)を,対向配備した陽極片(22)と陰極片(23)上に載置接続し,両極片(22)(23)間を合成樹脂(70)にて被覆した固体電解コンデンサであって,陽極片(22)と陰極片(23)の極間距離Wが2mm以下になるように両極片(22)(23)を配置したことを特徴とする固体電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(2b)「【発明の属する技術分野】本発明は,固体電解コンデンサの製造方法に関する。」(【0001】)

(2c)「近年,斯種チップ型の固体電解コンデンサを,電圧降下による変動を小さくしてLSIを保護するデカップリングコンデンサとして用いることがあるが,コンデンサ全体のESR及びESLが大きいと,以下の不都合がある。
図17は,固体電解コンデンサ(4)を,デカップリングコンデンサとして用いた回路のブロック図である。電源(80)とLSI(8)を電路(81)にて繋ぎ,該電路(81)とアース間に,固体電解コンデンサ(4)を配備する。LSI(8)が使用される機器の高速処理化に伴って,LSI(8)の動作周波数であるクロックも高速になっている。LSI(8)を高速化すると,消費電力が増えるから,消費電力を抑え,発熱を最小にすべく,電源(80)の電圧Vccを下げ,低電圧駆動することが多い。然るに,低電圧駆動されるLSI(8)は,負荷の変動に影響を受けやすい。このため,負荷の変動により,LSI(8)に急激な電力消費が発生したときに,固体電解コンデンサ(4)からLSI(8)に電流を供給して,LSI(8)への給電電圧を安定に保っている。
ここで,固体電解コンデンサ(4)のESRの値をR,ESLの値をL,固体電解コンデンサ(4)からLSI(8)への給電電流をiとすれば,固体電解コンデンサ(4)の内部で,
V=R×i+L×di/dt
で示されるVだけ電圧降下が生じる。即ち,ESR,ESLが大きくなると,LSI(8)への給電電圧を十分に補償することはできない。例えば,図16に示す固体電解コンデンサ(4)において,長さ7.3mm,幅4.3mmのチップサイズの場合,出願人の製作したところでは,コンデンサ素子(5)からハウジング(7)の外形までの幅L1が約1.8mmあり,ESR,ESLが大きくなっていた。
本発明の目的は,コンデンサ素子から外部の回路基板に接続されるまでの長さを短くすることにより,コンデンサ全体のESR,ESLの値を小さくすることにある。」(【0009】-【0012】)

(2d)「 (第3実施例)図14は,さらに別の例に係わる固体電解コンデンサ(4)を一部破断した斜視図であり,図15は,図14をA-A線を含む面にて破断した側面断面図である。本例にあっては,第1実施例の固体電解コンデンサにおいて,陰極片(23)の横板(26)をコンデンサ素子(5)の陰極層幅に亘って延在させたことを特徴とする。
本出願人が種々実験したところ,陰極片(23)の横板(26)の先端が陽極片(22)に近づくほどESLが低減することが分かった。そして,本実施例の構成にすることにより,ESLを0.7nHまで低減することができた。また,本出願人による実験の結果,極間距離Wが2mm以下になるように陽極片(22)と陰極片(23)を配置すれば,ESLの低減の効果が顕著に現れることが分かった。即ち,陰極片(23)は,少なくともコンデンサ素子(5)の陽極リードに近接する陰極層部分と接続されていれば良い。ここで,極間距離Wとは,コンデンサ素子(5)の陽極及び陰極の各々から各極片(22)(23)の端子部分(露出部分)までを最短で流れる電流経路間の最も離れた部分での距離である。」(【0033】-【0034】)

(2e)図15は,引用例2に係わる固体コンデンサの,別の例に係わる固体コンデンサの側面断面図であって,引用例2の上記摘記(2a)-(2d)を参照すれば,同図から,陰極片(23)の横板(26)の先端とコンデンサ素子(5)の先端をほぼ揃えた構造を読み取ることができる。

引用例3:特開2000-323357号公報
(3a)「【請求項1】 一端が表出するように陽極導出線を埋設した弁作用金属からなる粉末を成形して焼結した陽極体に誘電化酸化皮膜層,電解質層,陰極層を順次形成して構成されたコンデンサ素子の上記陽極導出線を陽極端子に接合された陽極部材に接合し,上記コンデンサ素子の陰極層を陰極端子に接続部材を介して接合された陰極部材に接合し,上記陽極端子並びに陰極端子の一部がそれぞれ同一面上に露呈するようにして外装樹脂でコンデンサ素子を被覆してなるチップ形固体電解コンデンサ。
【請求項2】 外装樹脂の同一面からそれぞれの一部が露呈した陽極端子並びに陰極端子が外装樹脂の面から突出するようにした請求項1に記載のチップ形固体電解コンデンサ。
【請求項3】 外装樹脂の同一面からそれぞれの一部が露呈した陽極端子並びに陰極端子が,この露呈面に繋がる少なくとも一つの面にも露呈するようにした請求項1または2に記載のチップ形固体電解コンデンサ。
【請求項4】 陽極端子,陰極端子,陰極部材をニッケル材で,陽極部材を鉄材で,接続部材を鉄-ニッケル材で構成した請求項1?3のいずれか一つに記載のチップ形固体電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(3b)「【従来の技術】図3は従来の一般的なチップ形固体電解コンデンサの講成を示したものであり,図3に示すように,弁作用金属からなる陽極体6に陽極導出線11を埋設し,この陽極導出線11の導出根本部に絶縁部材12を挿入した陽極体6に誘電体酸化皮膜層7,電解質層8,陰極層9を順次形成して構成されたコンデンサ素子13の上記陽極導出線11の先端部に外部陽極端子16の一端部を接合すると共に,上記コンデンサ素子13の陰極層9に導電性接着剤5を介して外部陰極端子17が接続されている。さらに上記外部陽極端子16と外部陰極端子17のそれぞれのコンデンサ素子13との接続部とコンデンサ素子13全体を覆うようにモールド成形により外装樹脂10が形成され,この外装樹脂10から貫通するように露出した外部陽極端子16と外部陰極端子17の外装樹脂10からの付け根部を外装樹脂10の外表面を沿うように垂直方向に折り曲げ,上記端子を外装樹脂10の底面部に沿うように水平方向に折り曲げてチップ形固体電解コンデンサを構成している。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の構成のチップ形固体電解コンデンサでは,コンデンサ素子13の陽極導出線11と外部陽極端子16,さらにコンデンサ素子13の陰極層9と外部陰極端子17を接合するために,それぞれの外部端子材料を折り曲げ加工する必要があり,そのために外部端子材料の折り曲げ加工金型がチップ形固体電解コンデンサを製造する上で不可欠のものであり,サイズが異なる品種毎に専用の折り曲げ加工金型を必要とし,従ってランニングコストを引き上げる大きな要因となっていた。
また,コンデンサ素子13の陰極層9と外部陰極端子17を接合する際に,外部陰極端子17の折り曲げ加工を行い,その折り曲げ加工部17aも外装樹脂10の内部に収納することから,コンデンサ素子13の収納体積の面で折り曲げ加工部17aによるデッドスペースが大きくなり,コンデンサ素子13の収納体積効率が悪化し,大容量のコンデンサ素子13を収納することに不向きな構造となっていた。」(【0002】-【0004】)

(3c)「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は,コンデンサ素子の陽極導出線と外部陽極端子及びコンデンサ素子の陰極層と外部陰極端子のそれぞれの接合を,それぞれの端子に対して折り曲げ加工を必要としない端子部を積層することにより接合した構成としたものである。
この発明により,外部陰極部のデッドスペースの低減と,端子材料の折り曲げ加工金型の廃止及び外装下金型の共有化により,安価で大容量且つ,厚み方向に自由度の高いチップ形固体電解コンデンサを製造することができる。」(【0007】-【0008】)

(3d)「【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は,一端が表出するように陽極導出線を埋設した弁作用金属からなる粉末を成形して焼結した陽極体に誘電体酸化皮膜層,電解質層,陰極層を順次形成して構成されたコンデンサ素子の上記陽極導出線を陽極端子に接合された陽極部材に接合し,上記コンデンサ素子の陰極層を陰極端子に接続部材を介して接合された陰極部材に接合し,上記陽極端子並びに陰極端子の一部がそれぞれ同一面上に露呈するようにして外装樹脂でコンデンサ素子を被覆した構成のもので,この構成によれば外部陽極端子と,コンデンサ素子の陽極導出線の間に陽極部材をスペーサとして介在させることで容易に外部に陽極を引き出すことができる。また,陰極引き出しにおいてもコンデンサ素子の陰極層と外部陰極端子の間に陰極部材を積層して介在させることで容易に出すことができ,折り曲げ加工金型を使用することなく安価にそれぞれの外部端子への電極引き出しを行うことが可能となる作用を有する。」(【0009】)

(3e)「以下,本発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)図1は本発明の第一の実施の形態による固体電解コンデンサの構造を示した断面図であり,同図において,13は一端が表出するように陽極導出線11を埋設した弁作用金属からなる粉末を成形して焼結した陽極体6に誘電体酸化皮膜層7,電解質層8,陰極層9を順次形成して構成されたコンデンサ素子である。
1は外部陽極端子,3はこの外部陽極端子1に一端が接合され他端に陽極導出線11が接合された陽極部材,2は外部陰極端子,4aと4bはこの外部陰極端子2に積層して接合された陰極部材,5はこの陰極部材4aとコンデンサ素子13を接続するための導電性接着剤である。12は陽極導出線11を挿通してコンデンサ素子13に接合された絶縁部材,10は外部陽極端子と外部陰極端子2の一部が外部に露呈するようにして,その他の部品全てを被覆した外装樹脂である。
このような構成にすることにより,外部陽極端子1とコンデンサ素子13の陽極導出線11の間に陽極部材3をスペーサとして介在させることで容易に外部に陽極を引き出すことができる。また,陰極引き出しにおいてもコンデンサ素子13の陰極層9と外部陰極端子2の間に陰極部材4a,4bを積層して介在させることで,容易に外部に陰極を引き出すことができ,折り曲げ加工金型を使用することなく安価にそれぞれの外部端子への電極引き出しを行うことが可能となる。」(【0014】-【0017】)

(3f)図1は,引用例3に記載された発明の第一の実施の形態によるチップ形固体電解コンデンサの構成を示す断面図であって,引用例3の上記摘記(3a)-(3e)の記載を参酌すれば,同図から,コンデンサ素子13の陽極導出線11の一部と陰極層9の一部を,各々外部陽極端子1と外部陰極端子2に接続し,前記外部陽極端子1及び外部陰極端子2の下面と側面の一部を除き外装封口されたチップ形固体電解コンデンサにおいて,前記外部陰極端子2とコンデンサ素子13との接続が,前記外部陰極端子2の上に張り合わされた陰極部材4aであって,上面の面積が前記外部陰極端子2の下面の面積より大きい面積を有する金属材料を介して行われている,チップ形固体電解コンデンサの構造を読み取ることができる。

4 対比
(1)引用発明の「陽極ワイヤ7」,「陰極として機能する金属層8」,「陽極リード3」,「陰極リード2」,「エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂により封止」,「陰極リード2の上面2a」,「素子本体4の下側の面」,「板状フレーム23」は,それぞれ,本願発明1の「陽極部」,「陰極部」,「陽極端子」,「陰極端子」,「外装封口」,「陰極端子のコンデンサ素子との接続面」,「コンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面」,「リードフレーム対」に相当する。

(2)そうすると,本願発明1と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりといえる。

<一致点>
「コンデンサ素子の陽極部の一部と陰極部の一部を,各々陽極端子と陰極端子に接続し,前記陽極及び陰極各端子の下面または下面と側面の一部を除き外装封口されたチップ状固体電解コンデンサの製造方法であって,陰陽極両端子の一部となる下面部を有するリードフレーム対を使用する,チップ状固体電解コンデンサの製造方法。」

<相違点>
・相違点1:本願発明1が「陰極端子のコンデンサ素子との接続面がコンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面より大きい」のに対して,引用発明では「陰極リード2の上面2a」と「素子本体4の下側の面」との面積の大小関係が明確には示されていない点。

・相違点2:本願発明1が「陰極端子に対応するリードフレーム上に前記コンデンサ素子の陰極端子接続面より面積の大きい陰陽端子を構成する金属材料を張り合わせる」のに対して,引用発明は,このような構成を有さない点。

5 相違点についての判断
(1)相違点1について
ア 引用例1の上記摘記(1f)の「陰極リードの下面側の一部がハーフエッチング又はスタンピングされることにより,樹脂パッケージの下面に露出させられる端子面に比較して上記素子本体が接続される上面の面積が十分に大とされている。この構成によれば,陰極リードは,その下面の一部が樹脂パッケージの下面から露出させられることにより,プリント配線基板等に表面実装可能とする一方で,その上面において素子本体を接続する十分な面積を確保することができる」,及び,摘記(1g)の「陰極リード2の上面2aは,平坦に形成されつつ,コンデンサ素子Cが搭載可能なように,下面2cと比較してその面積が十分大となるように形成」との記載から,引用発明において,当業者が,陰極リード2の上面2aの面積を十分に大きくする動機があるものと認められる。

イ 一方,引用例1の上記摘記(1k)に記載したように,引用例1には,陰極リード2の上面2aの端面2b側の端部が,素子本体4の下側の面の他端面4c側の端部を超えて外側に位置する長さである「所定の長さ(切除端側長さ)」と,陰極リード2の上面2aの前記端面2bに対向する側の端部が,素子本体4の下側の面の端面4a側の端部よりも内側に位置する長さである「所定の長さ(内向端側長さ)」とが,略等しく示されている。

ウ 他方,引用発明において,素子本体4の下側の面の長辺と短辺の長さがそれぞれ,L(素子),W(素子)であり,また,陰極リード2の上面2aの長辺と短辺の長さがそれぞれ,L(リード),W(リード)である場合,素子本体4の下側の面,及び,陰極リード2の上面2aのそれぞれの面積は,L(素子)×W(素子),及び,L(リード)×W(リード)であるところ,前記イのように「所定の長さ(切除端側長さ)」と,「所定の長さ(内向端側長さ)」とが略等しい場合には,陰極リード2の上面2aの面積が,素子本体4の下側の面の面積に比較して,略(W(リード)-W(素子))×L(リード)だけ大きくなることは明らかである。

エ してみれば,引用例1の図1には,陰極リード2の上面2aの面積が,素子本体4の下側の面の面積よりも大きい,固体電解コンデンサの構造が示唆されているものと理解することができる。

オ 更に,引用例1の上記摘記(1m)の記載に照らして,引用例1の図22には,陰極パッド41の上面の面積が,素子本体4の下側の面の面積よりも大きい,固体電解コンデンサの構造が図示されている。

カ そうすると,引用例1には,当業者が,陰極リード2の上面2aの面積を十分に大きくする動機が示されており,また,引用例1の図1には,陰極リード2の上面2aの面積が,素子本体4の下側の面の面積よりも大きい,固定電解コンデンサの構造が図示されており,同図22にも,陰極パッド41の上面の面積が,素子本体4の下側の面の面積よりも大きい,固定電解コンデンサの構造が図示されているのであるから,「陰極リード2の上面2a」と「素子本体4の下側の面」との面積の大小関係が明確には示されていない引用発明において,前記動機付けに沿って,陰極リード2の上面2aの面積を十分に大きくすること,及び,陰極リード2の上面2aの面積を十分に大きくする際の「十分に大きく」の程度として,前記各図の記載を参考にして,「陰極リード2の上面2aの面積が素子本体4の下側の面の面積よりも大きく」となるまで大きくすることは,当業者が容易になし得たことである。

キ なお,仮に,引用例1の前記記載に基づいて,陰極リード2の上面2aの面積を素子本体4の下側の面の面積よりも大きくすることが容易とはいえないとしても,以下の理由で,陰極リード2の上面2aの面積を素子本体4の下側の面の面積よりも大きくすることは,当業者が容易になし得たことである。

ク 引用例2には,引用発明と同一の技術分野に属するチップ型の固体電解装置において,コンデンサ全体のESR及びESLが大きいと不都合があること,及び,陰極片(23)の横板(26)の先端が陽極片(22)に近づくほどESLが低減することが示されている。
また,引用例2の図15には,陰極片(23)の横板(26)の先端を陽極片(22)に近づけた構造として,陰極片(23)の横板(26)の先端とコンデンサ素子(5)の先端をほぼ揃えた構造が示されている。
そして,引用例2の前記「陰極片(23)の横板(26)」と「陽極片(22)」とは,それぞれ,引用発明の「陰極リード2」および「陽極リード3」に相当する。また,引用発明のチップ状固体電解コンデンサにおいてもESLが低いことが望ましいことは明らかである。
そうすると,引用例2に接した当業者であれば,「所定のすきまを隔てて配置された陰極リード2および陽極リード3」を有する引用発明において,「陰極リード2」の先端を「陽極リード3」に近づくように,例えば,「陰極リード2」の先端を,素子本体4の先端と揃う位置にまで延長して,引用発明のチップ状固体電解コンデンサのESLを小さくすることは容易に想到し得たことといえる。
そして,引用発明において,「陰極リード2」の先端を「陽極リード3」に近づくように延長することは,陰極リード2の上面2aの面積を大きくすることに等しく,少なくとも「陰極リード2」の前記先端を,本体4の下側の面の端面4a側の端部と揃う位置にまで延長した場合には,陰極リード2の上面2aの面積は素子本体4の下側の面の面積よりも大きいということができるから,引用発明において,引用例2に記載された発明に基づいて,陰極リード2の上面2aの面積を素子本体4の下側の面の面積よりも大きくすることは,当業者が容易になし得たことといえる。

ケ したがって,引用発明において,相違点1について本願発明1の構成を採用することは当業者にとって容易である。また,このような構成を採用したことによる効果も当業者が予測する範囲内のものである。

コ なお,審判請求人は,平成24年5月1日に提出した意見書において,「・・・上記(1-1)の通り,陰極リード先端を素子端面を超えて延伸する(すなわち,陰極端子のコンデンサ素子との接続面がコンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面より大きくなるように定める)ことには,陰極リード先端と陽極リードとが短絡するという阻害理由があるため,当業者が容易になし得ることではない。」のように,「陰極リード先端を素子端面を超えて延伸する」ことと,「陰極端子のコンデンサ素子との接続面がコンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面より大きくなる」ことが等価であることを前提として,本願発明の進歩性を主張する。
しかしながら,「陰極リード先端」が「素子端面」を超えて延伸していなくても,「陰極リード」の幅と長さの積が,「素子」の幅と長さの積よりも大きい場合には,「陰極端子のコンデンサ素子との接続面がコンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面より大きい」といえることは明らかである。
また,本願の図2(A),(B)には,陰極端子の先端と素子端面とを揃えた形態が,本願発明の平面断面図,及び,側面断面図として示されており,審判請求人の前記主張は,本願の前記図面の記載とも整合しないものである。
したがって,「陰極リード先端を素子端面を超えて延伸する」ことと,「陰極端子のコンデンサ素子との接続面がコンデンサ素子の陰極端子接続面側の全面より大きくなる」ことが等価であることを前提とする審判請求人の前記主張は,請求項の記載に基づかない主張であって採用することはできない。

(2)相違点2について
ア 引用例3には,コンデンサ素子13の陽極導出線11の一部と陰極層9の一部を,各々外部陽極端子1と外部陰極端子2に接続し,前記外部陽極端子1及び外部陰極端子2の下面と側面の一部を除き外装封口されたチップ形固体電解コンデンサにおいて,前記外部陰極端子2とコンデンサ素子13との接続が,前記外部陰極端子2の上に張り合わされた陰極部材4aであって上面の面積が前記外部陰極端子2の下面の面積より大きい面積を有する金属材料を介して行われている,チップ形固体電解コンデンサに係る発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
また,引用例3の上記摘記(3a)の「陽極端子,陰極端子,陰極部材をニッケル材で・・・構成した」との記載から,引用発明3の「陰極部材4a」は,「外部陽極端子1」及び「外部陰極端子2」と同じ金属材料であるニッケル材で構成されているといえるから,引用発明3の「陰極部材4a」は,引用発明3の「外部陽極端子,外部陰極端子」を構成する金属材料であるといえる。

イ そして,引用例3には,上記摘記(3a)-(3f)の記載から,従来は,外装樹脂10から貫通するように露出した外部陽極端子16と外部陰極端子17の外装樹脂10からの付け根部を外装樹脂10の外表面を沿うように垂直方向に折り曲げ,上記端子を外装樹脂10の底面部に沿うように水平方向に折り曲げてチップ形固体電解コンデンサを構成していたが,このような構成を有するチップ形固体電解コンデンサは,外部端子材料の折り曲げ加工金型がチップ形固体電解コンデンサを製造する上で不可欠のものであり,サイズが異なる品種毎に専用の折り曲げ加工金型を必要とし,従ってランニングコストを引き上げる大きな要因となっていた等の課題を有していたので,前記課題を,コンデンサ素子の陰極層と外部陰極端子との接続を,前記外部陰極端子に張り合わせた,「外部陽極端子,外部陰極端子」を構成する金属材料で構成された陰極部材4aを介して行う構成を採用することで,折り曲げ加工の必要を無くして解決して,引用発明3となしたことが示されているものと理解できる。

ウ 一方,引用例1には,上記摘記(1a)-(1m)の記載から,従来より,エポキシ樹脂等によって封止して樹脂パッケージ65を形成し,この樹脂パッケージ65から外部に向かって延びている各リード62,63を製造用リードフレームから切断するとともに所定の形状に折り曲げることで固体電解コンデンサを製造していたが,このような構成を有する固体電解コンデンサは,上記各リード62,63を所定の形状に折り曲げる際,樹脂パッケージ65には,相当な曲げ応力が加わるため,曲げ応力による損傷を回避するために製品の大型化を招くことになるという課題を有していたので,前記課題を,板状フレーム23の下面側の一部をハーフエッチング処理することにより製作した,端子面として樹脂パッケージ6の下面から露出する下面2cと,該下面2cと比較してその面積が十分大となるように形成されているコンデンサ素子Cが搭載可能な上面2aとを有する陰極リード2を用いる構成を採用することで,リードを折り曲げる必要を無くして解決して,引用発明となしたことが示されているものと理解できる。

エ 更に,引用発明3の「外部陰極端子2と,その上に張り合わされた「外部陽極端子,外部陰極端子」を構成する金属材料で構成された陰極部材4a」とからなる部材は,端子面として樹脂パッケージの下面から露出する下面と,該下面と比較してその面積が十分大となるように形成されているコンデンサ素子が搭載可能な上面という形状を有する部材である点で,引用発明の「陰極リード2」と共通する形状を有する部材であるといえる。

オ そうすると,引用発明と引用発明3とは,いずれも固体電解コンデンサという共通する技術分野に属する発明であり,また,いずれも外部端子の折り曲げ加工により生じる不都合を,外部端子の折り曲げ加工を用いることなく固体電解コンデンサを製作する構成を採用することで解決した発明である点においても共通するから,当業者であれば,引用発明に対して,引用発明と同様の課題を解決した引用発明3において採用されている構成を適用して,引用発明のハーフエッチング処理により製作した部材である「陰極リード2」に替えて,引用発明3の,外部陰極端子に「外部陽極端子,外部陰極端子」を構成する金属材料で構成された陰極部材を張り合わせる方法で製作した部材を用いること,すなわち,相違点3について本願発明1の構成を採用することは,当業者が適宜なし得たことである。また,このような構成を採用したことによる効果も当業者が予測する範囲内のものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用例1-3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-13 
結審通知日 2012-06-15 
審決日 2012-06-26 
出願番号 特願2004-239005(P2004-239005)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晃洋  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 恩田 春香
加藤 浩一
発明の名称 チップ状固体電解コンデンサ及びその製造方法  
代理人 林 篤史  
代理人 大家 邦久  

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