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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1261185
審判番号 不服2010-21208  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-21 
確定日 2012-08-09 
事件の表示 特願2002-330150「固体撮像素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開,特開2004-165462〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年11月14日の出願であって,平成21年9月4日に手続補正書が提出されたが,平成22年6月16日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年9月21日に審判の請求がされるとともに,同日付で手続補正書が提出されたものである。
その後,当審において平成23年12月2日付けで審尋がなされたが,回答書は提出されていない。

第2 補正の却下の決定

〔補正の却下の決定の結論〕
平成22年9月21日に提出された手続補正書による補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正
(1)補正の内容
平成22年9月21日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,明細書の全文を補正するものであって,補正前の特許請求の範囲(請求項1?18)を,補正後の特許請求の範囲(請求項1)に補正する補正内容を含むものであるところ,補正前後の請求項1の記載は,次のとおりである。

ア 補正前の【請求項1】
「半導体基板上に設けられた光電変換部を含む複数の画素と,前記画素によって生成された信号電荷を電荷検出部に転送する転送部と,前記複数の画素の光電変換部の近傍に設けられ,前記光電変換部から隣接素子への電荷の移動を防止するチャネルストップ部とを有する固体撮像素子の製造方法であって,
前記チャネルストップ部を,注入エネルギーを変えた複数回の不純物イオン注入工程によって,前記半導体基板の深さ方向に不純物領域を複数層形成することで構成し,
前記チャネルストップ部の最下層の底が,前記光電変換部の底の深さより深くなるように形成する,
ことを特徴とする固体撮像素子の製造方法。」

イ 補正後の【請求項1】
「半導体基板上に設けられた光電変換部を含む複数の画素と,前記画素によって生成された信号電荷を電荷検出部に転送する転送部と,前記複数の画素の光電変換部の近傍に設けられ,前記光電変換部から隣接素子への電荷の移動を防止するチャネルストップ部とを有する固体撮像素子の製造方法であって,
前記チャネルストップ部を,注入エネルギーを変えた複数回の不純物イオン注入工程によって,前記半導体基板の深さ方向に多段階の不純物領域を形成することで構成し,
前記チャネルストップ部の最下層の底が,前記光電変換部の底の深さより深くなるように形成し,
前記複数回の不純物イオン注入工程において,注入エネルギーが相対的に高い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度は,注入エネルギーが相対的に低い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度より低い
ことを特徴とする固体撮像素子の製造方法。」

(2)特許請求の範囲についての本件補正の内容の整理
ア 補正事項1
補正前の請求項1の「前記チャネルストップ部を,注入エネルギーを変えた複数回の不純物イオン注入工程によって,前記半導体基板の深さ方向に不純物領域を複数層形成することで構成し」を,「前記チャネルストップ部を,注入エネルギーを変えた複数回の不純物イオン注入工程によって,前記半導体基板の深さ方向に多段階の不純物領域を形成することで構成し」として,補正後の請求項1とする。

イ 補正事項2
補正前の請求項1の「前記チャネルストップ部の最下層の底が,前記光電変換部の底の深さより深くなるように形成する」を,「前記チャネルストップ部の最下層の底が,前記光電変換部の底の深さより深くなるように形成し,前記複数回の不純物イオン注入工程において,注入エネルギーが相対的に高い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度は,注入エネルギーが相対的に低い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度より低い」として,補正後の請求項1とする。

ウ 補正事項3
補正前の請求項2ないし18を削除する。

2 新規事項の追加の有無,及び補正の目的の適否について
(1)補正事項1について
補正事項1により補正された事項は,本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0017】及び本願の願書に最初に添付した図面の図1ないし図5に記載されているものと認められるから,補正事項1は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって,補正事項1は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項(平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たす。
また,補正事項1は,補正前の請求項1の「不純物領域を複数層形成すること」を,補正後の請求項1の「多段階の不純物領域を形成すること」と補正するものであるから,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。

(2)補正事項2について
補正事項2により補正された事項は,本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0025】等に記載されているものと認められるから,補正事項2は,当初明細書等のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって,補正事項2は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また,補正事項2は,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「複数回の不純物イオン注入工程」について技術的限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項2は,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。

(3)補正事項3について
補正事項3は,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項3は,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。また,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことも,明らかである。

(4)新規事項の追加の有無,及び補正の目的の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項の規定を満たすものである。

3 独立特許要件について
上記したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明(以下,補正後の請求項1に係る発明を「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かについて,以下において更に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1(1)イの請求項1の記載のとおりである。

(2)引用例の記載と引用発明
(2-1)引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-227988号公報(以下「引用例」という。)には,「固体撮像装置およびその製造方法」(発明の名称)に関して,図7?図9とともに,次の記載がある(下線は当審で付加したもの。以下同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は固体撮像装置およびその製造方法に関し,特に電荷転送型固体撮像装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図8はインターライン型CCD撮像装置の概略を示すブロック図である。インターライン型CCD撮像装置は撮像領域1,水平CCDレジスタ2,電荷検出部(出力部)3からなる。撮像領域1には,単位画素がマトリックス状に複数個配置されている。各単位画素4は,垂直CCDレジスタ5と,フォトダイオード6と,フォトダイオード6から垂直CCDレジスタ5へ信号電荷を読み出すための読出しゲート7,およびそれ以外の領域の素子分離領域8からなる。撮像領域1に設けられた垂直CCDレジスタ5の左端には電荷検出部3が設けられている。
【0003】図6(a)は,撮像領域の単位画素4を示す平面図,図6(b)は図6(a)のX-X線断面図である。N型シリコン基板9の一主面側にP型のウェル10が形成され,ウェル10内に,フォトダイオードを構成するN型領域13が形成されている。また,ウェル10内にはさらに垂直CCDレジスタを構成するP型のウェル14が形成されその表面側にN型の埋込みチャネル層15が形成されている。素子分離領域8の表面にはP^(+ )型領域16aが形成されており,N型領域13の表面にはノイズを減らすためにP^(+ )型表面層17が形成されている。
【0004】さて,最近の撮像装置の小型化に伴い画素サイズも縮小されている。例えば,1/4インチフォーマット38万画素NTSC方式の撮像装置では,画素サイズは4.8μm(H)×5.6μm(V)であり,2/3インチフォーマット200万画素撮像装置では画素サイズは5.0μm(H)×5.0μm(V)である。画素サイズが縮小されるとフォトダイオードの面積も縮小されるため,必然的に感度が低下してしまう。単位面積あたりの光電変換効率を向上させるには,フォトダイオードのPN接合位置を基板の深い位置に設けることが有効である。これを実現するため,フォトダイオードを構成するP型のウェル層10およびN型領域13を高エネルギーイオン注入により深い位置に形成することがなされている。
【0005】図7(a)?(c)を参照して,従来の製造方法の一例について説明する。図7(a)に示すように,N型シリコン基板9にマスク12を用いてボロンを1?2MeVの高エネルギーでイオン注入し,活性化処理しておよそ5.0×10^(14)cm^(-3)?5.0×10^(15)cm^(-3)の不純物濃度を有するウェル10を形成する。つぎにリンを400?500keVの高エネルギーでイオン注入し,活性化処理をして,図7(b)に示すように,およそ1.0×10^(16)cm^(-3)?1.0×10^(17)cm^(-3)の不純物濃度を有するN型領域13を形成し,さらにウェル層14,埋込みチャネル層15をそれぞれイオン注入により形成する。その後,素子分離領域を以下のように2回のイオン注入により形成する。まず,幅0.6μmの開口18を有し,厚さ約1μmの薄いレジスト膜19を形成する。ボロンを20keV程度のエネルギーでイオン注入し,活性化処理をして,およそ1.0x10^(17)から1.0x10^(18)cm^(-3)の不純物濃度を有するP^(+ )型領域16を形成する。図7(c)に示すように,幅0.6μmの開口20を有し,厚さ約2μmの厚いレジスト膜21を形成し,ボロンを100?200keVのエネルギーでイオン注入し,活性化処理をして,基板深さ0.2μmから1.0μmにかけて,およそ5.0x10^(15)から5.0x10^(16)cm^(-3)の不純物濃度を有するP型領域22を形成する。これにより,P型領域22,P^(+ )型領域16aでなる素子分離領域8が完成する。
【0006】ここで,素子分離領域を形成するためにイオン注入を2回に分けて行う理由を説明する。図9に素子分離領域8の基板の深さ方向の1次元不純物分布をしめす。横軸は原点を基板の表面とする深さ,縦軸は不純物濃度を示している。P型のウェル10は高エネルギーイオン注入で形成されているため,不純物濃度のピークは基板の深い位置に存在する。P^(+ )型領域16aは低いエネルギーのイオン注入で形成されているため,不純物濃度のピークはほぼ基板表面に存在する。したがって,素子分離領域がP^(+ )型領域16aのみで構成されている場合,図9中深さDの近傍でP型不純物濃度が極端に低くなり,素子分離機能をはたさなくなる可能性がある。そこで,深さDの近傍に不純物濃度のピークが存在するP型領域22を,P^(+ )型領域16aの形成に用いたイオン注入よりも高いエネルギーで形成している。これにより素子分離が確実になされる。」

(2-2)引用発明
ア 引用例には,固体撮像装置およびその製造方法が記載されており,段落【0002】及び図8を参照すると,固体撮像装置は,水平CCDレジスタ2と,電荷検出部3と,単位画素4とを有し,各単位画素4は垂直CCDレジスタ5と,フォトダイオード6と,読出しゲート7,およびそれ以外の領域の素子分離領域8からなる。

イ 段落【0005】及び図7,図9の記載から,引用例では,素子分離領域を2回のイオン注入により形成すること,すなわち,ボロンを20keV程度のエネルギーでイオン注入し,活性化処理をして,およそ1.0x10^(17)から1.0x10^(18)cm^(-3)の不純物濃度を有するP^(+ )型領域16を形成し,また,ボロンを100?200keVのエネルギーでイオン注入し,活性化処理をして,基板深さ0.2μmから1.0μmにかけて,およそ5.0x10^(15)から5.0x10^(16)cm^(-3)の不純物濃度を有するP型領域22を形成することが,明らかである。これにより,P型領域22とP^(+ )型領域16aでなる素子分離領域8が完成する。

ウ したがって,引用例には,次の方法の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているといえる。
「N型シリコン基板9のP型ウェル10に設けられた,水平CCDレジスタ2と,電荷検出部3と,単位画素4とを有し,各単位画素4は垂直CCDレジスタ5と,フォトダイオード6と,読出しゲート7,およびそれ以外の領域の素子分離領域8からなる固体撮像装置の製造方法であって,
素子分離領域8を2回のイオン注入により形成し,P型領域22とP^(+ )型領域16aを形成することで構成し,
2回のイオン注入は,ボロンを20keV程度のエネルギーでイオン注入し,およそ1.0x10^(17)から1.0x10^(18)cm^(-3)の不純物濃度を有するP^(+ )型領域16の形成と,ボロンを100?200keVのエネルギーでイオン注入し,基板深さ0.2μmから1.0μmにかけて,およそ5.0x10^(15)から5.0x10^(16)cm^(-3)の不純物濃度を有するP型領域22の形成からなる,
固体撮像装置の製造方法。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明を対比すると,引用発明の「固体撮像装置」は,本願補正発明の「固体撮像素子」に相当する。
そして,引用発明の「N型シリコン基板9」,「単位画素4」,「フォトダイオード6」,「垂直CCDレジスタ5」と「水平CCDレジスタ2」,及び「素子分離領域8」は,本願補正発明の「半導体基板」,「画素」,「光電変換部」,「画素によって生成された信号電荷を電荷検出部に転送する転送部」,及び「チャネルストップ部」にそれぞれ相当する。なお,引用発明の「素子分離領域8」も,「フォトダイオード6」の近傍に設けられており,隣接素子への電荷の移動を防止することは明らかである。

イ 引用発明の素子分離領域8を形成する「2回のイオン注入」は,20keV程度のエネルギーと,100?200keVのエネルギーで行われるから,本願補正発明の「注入エネルギーを変えた複数回の不純物イオン注入工程」に相当する。
また,引用発明において,「素子分離領域8を」,「P型領域22とP^(+ )型領域16aを形成することで構成」することは,本願補正発明において,「チャネルストップ部を」,「半導体基板の深さ方向に多段階の不純物領域を形成することで構成」することに相当する。

ウ 引用発明の「2回のイオン注入」は,20keV程度のエネルギーのイオン注入が「1.0x10^(17)から1.0x10^(18)cm^(-3)の不純物濃度」となり,100?200keVのエネルギーのイオン注入が「5.0x10^(15)から5.0x10^(16)cm^(-3)の不純物濃度」となるから,本願補正発明の「注入エネルギーが相対的に高い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度は,注入エネルギーが相対的に低い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度より低い」ことに相当する。

エ したがって,上記ア?ウによれば,本願補正発明と引用発明とは,
「半導体基板上に設けられた光電変換部を含む複数の画素と,前記画素によって生成された信号電荷を電荷検出部に転送する転送部と,前記複数の画素の光電変換部の近傍に設けられ,前記光電変換部から隣接素子への電荷の移動を防止するチャネルストップ部とを有する固体撮像素子の製造方法であって,
前記チャネルストップ部を,注入エネルギーを変えた複数回の不純物イオン注入工程によって,前記半導体基板の深さ方向に多段階の不純物領域を形成することで構成し,
前記複数回の不純物イオン注入工程において,注入エネルギーが相対的に高い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度は,注入エネルギーが相対的に低い不純物イオン注入工程における不純物イオン濃度より低い
ことを特徴とする固体撮像素子の製造方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

〈相違点〉
本願補正発明は,「前記チャネルストップ部の最下層の底が,前記光電変換部の底の深さより深くなるように形成」しているのに対して,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

(4)相違点についての検討
ア 引用例(段落【0006】)の記載によれば,引用発明において,素子分離領域を形成するためにイオン注入を2回に分けて行う理由は,基板(ウェル)の内部においても素子分離が確実になされるようにするためである。
イ ここで,固体撮像素子において,チャネルストップ部(素子分離領域)を光電変換部の底の深さより深くなるように形成することは,以下の周知例1?3に記載されているように,周知の技術である。

周知例1:特開2000-150852号公報
上記周知例1には,図1,図2とともに,以下の記載がある。
・「【0027】またこの垂直シフトレジスタ3に沿って,この垂直シフトレジスタ3と受光素子1との間に垂直方向に連続的に配されたチャンネルストップ領域である水平分離領域4は図1に示す如く,このP型ウエル11上に不純物濃度がP^(+ )のP型領域により形成する如くする。
【0028】本例においては,図1に示す如く,このチャンネルストップ領域4に沿って,このチャンネルストップ領域4の深さ方向の下側のP型ウエル11中に不純物濃度がP^(+ )のP型領域より成るチャンネルストップ領域4と同様のチャンネルストップ領域4aを形成する如くする。
【0029】この図1,図3,図4,図6において,13及び14は夫々転送電極で,例えばポリシリコンの2層構造により形成する如くする。
【0030】斯かる本例によればチャンネルストップ領域4に沿って,このチャンネルストップ領域4より深い所にチャンネルストップ領域4aを形成したので,模式図8及び図9のルートA及びルートBの外に模式図2にルートCとして示す如く,オーバーフローバリア部分,即ちP型ウエル11に移動した正孔(ホール)がこのチャンネルストップ領域4a→このチャンネルストップ領域4を通して受光部の周辺部の接地されている部分15を介してグランドへ流れ,これにより過大光量入射における飽和信号量Q_(s )の増加を抑えることができる。」
・図1には,チャンネルストップ領域4より深い所にチャンネルストップ領域4aを形成し,全体として光電変換領域1Nよりも深く形成されたチャンネルストップ領域が見て取れる。

周知例2:特開平9-213925号公報
上記周知例2には,図1?図8とともに,「隣接する画素間には,P^(+ )層からなる分離部としてのチャネルストップ17が形成されている。」(段落【0012】)との記載があり,図1には,受光部2を構成する電荷蓄積部12よりも,深く形成されたチャネルストップ17が見て取れる。

周知例3:特開平10-321550号公報
上記周知例3には,図2?図4とともに,「図4は,CCD150における1画素の受光部近傍の構造の一例を示す断面図である。このCCD150では,オーバーフローバリア層122上のチャネルストップ領域125の図中左隣にN^(+ )層からなる電荷蓄積部127が形成され,この電荷蓄積部127上には,P^(+ )層からなるバーチャルゲート128が形成される。」(段落【0022】)との記載があり,図4には,受光部134の電荷蓄積部127よりも,深く形成されたチャネルストップ領域125が見て取れる。

ウ そして,チャネルストップ部(素子分離領域)は,基板の深い領域まで形成する方が,隣接する画素間での電荷の漏洩等をより防止でき,素子間分離をより確実になし得ることは明らかであり,また,上記周知例1に記載されるように,チャンネルストップ領域4,4aを深く形成することにより,P型ウエル11に移動した正孔(ホール)がチャンネルストップ領域4を通して受光部の周辺部の接地されている部分15を介してグランドへ流れ,これにより過大光量入射における飽和信号量Q_(s )の増加を抑えることができるとの作用・効果を奏することも,当業者において良く知られた技術的事項である。
エ したがって,引用発明においても,素子間分離をより確実に行い,また,過大光量入射における飽和信号量Q_(s )の増加を抑えることができるように,上記周知の技術を適用することは,当業者が直ちに想到し得ることである。
オ そうすると,引用発明において,本願補正発明のように「前記チャネルストップ部の最下層の底が,前記光電変換部の底の深さより深くなるように形成」することは,当業者が容易になし得たことである。

(5)小括
したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下についてのむすび
以上のとおり,本願補正発明が特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,請求項1についての補正を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり,本件補正は却下されたので,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,前記第2,1(1)アに摘記したとおりのものである。

2 引用例の記載と引用発明
引用例の記載及び引用発明は,前記第2,3(2)で認定したとおりである。

3 対比・判断
前記第2,2で検討したように,本願補正発明は,本件補正前に記載した発明特定事項を更に限定するものである。
そうすると,本願発明の構成要素をすべて含み,これを更に限定したものである本願補正発明が,前記第2,3で検討したように,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,この限定をなくした本願発明も,同様の理由により,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結言
以上のとおり,本願発明(請求項1に係る発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-06 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-06-26 
出願番号 特願2002-330150(P2002-330150)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青鹿 喜芳安田 雅彦  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 恩田 春香
早川 朋一

発明の名称 固体撮像素子及びその製造方法  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  

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