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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1261206
審判番号 不服2011-7499  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-08 
確定日 2012-08-09 
事件の表示 特願2009- 3750「呼制御装置および呼制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月22日出願公開、特開2010-161728〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成21年1月9日の出願であって、平成23年1月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月10日付けの手続補正書により補正された請求項14に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項14】
所定期間内に受け付ける複数の通信当事者毎の接続要求受付回数の計数値に関する個別規制を充足するように該通信当事者毎の接続要求受付回数を制限する個別規制ステップと、所定期間内における前記複数の通信当事者に関する全接続要求受付回数の計数値に関する所定のシステム総量規制を充足するように当該全接続要求受付回数を制限する総量規制ステップと、を含むことを特徴とする呼制御方法。」


2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-197111号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

「【0039】
ここで、ゲートウェイシステム3の最大呼接続性能を10,000コール/分として、かつVoIP輻輳制御装置5における電番(電話番号)Aの輻輳検出閾値を輻輳判定機能部5-4の有する輻輳閾値テーブル5-4-1に5,000コール/分と設定しておく。なお、輻輳検出閾値をゲートウェイシステム3の最大呼接続性能と同一にしない理由は、ゲートウェイシステム3が他の呼接続処理に使用するリソースを残しておくためである。
【0040】
IP網12では、コールエージェント2を介してすべての呼接続が実施されるので、VoIP輻輳制御装置5のCA信号モニタ機能部5-1で呼接続信号を監視し、計測機能部5-2で接続相手先及び要求サービス毎に集計して計測テーブル部5-3に記録することで、接続相手先毎の総要求呼数を記録することができる。
【0041】
輻輳判定機能部5-4は、この計測テーブル5-3の内容を例えば1分毎に読み込んだ後、計測テーブル5-3の内容をリセットする。輻輳判定機能部5-4は、読み込んだ計測テーブル5-3の内容と、輻輳閾値テーブル5-4-1の予め定めた輻輳閾値5,000コール/分とを比較し、上回った接続相手先、要求サービス及び呼接続要求数の情報を規制制御機能部5-5に送る。
【0042】
規制制御機能部5-5は、輻輳情報を輻輳管理テーブル5-5-1で管理し、輻輳閾値と呼接続要求数との割合を計算し、輻輳閾値を下回るように接続相手先及び要求サービス毎の規制指示をコールエージェント2に対して行う。規制の解除指示は、輻輳判定機能部5-4が輻輳を検出しなくなった時点で行う。
【0043】
上述した動作例は、接続相手先及び要求サービス毎の輻輳検出・鎮静化の例であるが、接続相手先毎だけで規制を実施することも可能である。」(7頁)

引用例の段落【0040】【0041】によれば、呼接続信号を集計し、1分毎にこれを読み込んだ後、計測テーブルをリセットしているから、引用例のものは、1分間に受け付ける接続相手先毎の総要求呼数を集計しているものといえる。そして接続相手先毎の総要求呼数を輻輳閾値と比較し、【0042】も参照すれば、当該輻輳閾値を上回った場合、規制指示を行っており、これは接続相手先毎の個別の規制であり、当該個別の規制を充足するように接続相手先毎の総要求呼数を制限するものと解するのが自然である。
また引用例には、規制をすることによって呼を制御する動作について書かれているから、これは呼制御方法ということができる。

したがって、引用例には、技術常識も考慮すると以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「1分間に受け付ける接続相手先毎の総要求呼数に関する個別の規制を充足するように接続相手先毎の総要求呼数を制限する個別の規制ステップと、
ゲートウェイシステムの最大呼接続性能を10000コール/分とするステップと、を含む呼制御方法。」


3.対比
本願発明を引用発明と対比する。

引用発明の「1分間」という時間は、接続相手先毎の総要求呼数を計数する期間であるから、本願発明の「所定期間」に相当する。
また、引用発明の「接続相手先」「総要求呼数」は、それぞれ本願発明の「通信当事者」「接続要求受付回数」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「所定期間内に受け付ける通信当事者毎の接続要求受付回数の計数値に関する個別規制を充足するように該通信当事者毎の接続要求受付回数を制限する個別規制ステップ、を含むことを特徴とする呼制御方法。」

[相違点1]
本願発明の個別規制は、複数の通信当事者毎に行われるのに対して、引用発明では複数の通信当事者についての規制であるのかどうかについて明確ではない点。

[相違点2]
本願発明が「所定期間内における前記複数の通信当事者に関する全接続要求受付回数の計数値に関する所定のシステム総量規制を充足するように当該全接続要求受付回数を制限する総量規制ステップ」を有するのに対して、引用発明はゲートウェイシステムの最大呼接続性能が10000コール/分であると記載されているだけであり、総量規制について記載がない点。


4.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用発明では、通信当事者毎の個別規制を行っているが、規制の対象となる通信当事者が複数存在することも当然想定される事項であるから、相違点1とした本願発明の個別規制が複数の通信当事者毎に行われる点は、格別な事項とはいえない。

[相違点2]について
本願発明のような呼制御の方法の分野においては、例えば特開2003-70059号公報(従来技術について記した【0005】?【0007】欄、特に【0007】欄の後半部参照。)にも記載されているように、輻輳状態となるのを回避するために総量規制を行うことは周知の技術である。
一方、最大呼接続性能が10000コール/分であることについて言及されている引用発明において、当該最大呼接続性能を超える呼が発生した場合に、輻輳が発生することは当業者が容易に予測できる程度の事項であり、その解決方法として総量規制があることも上述したように周知の技術にすぎない。そうしてみると、引用発明においても、最大呼接続性能を超える呼による輻輳を回避するために、上記周知技術を参酌して総量規制を行うようにすることは、当業者が容易に想到できる事項にすぎない。そして、引用発明において総量規制を行うため、相違点2とした本願構成である「所定期間内における前記複数の通信当事者に関する全接続要求受付回数の計数値に関する所定のシステム総量規制を充足するように当該全接続要求受付回数を制限する」構成を採用することも、格別な事項ではない。したがって、相違点2とした構成は引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知の技術から予測できる程度のものにすぎない。


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項14に係る発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-06 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-06-25 
出願番号 特願2009-3750(P2009-3750)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 山本 章裕
萩原 義則
発明の名称 呼制御装置および呼制御方法  
代理人 森 哲也  
代理人 阪間 和之  
代理人 小西 恵  
代理人 田中 秀▲てつ▼  

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