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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1261217
審判番号 不服2011-14731  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-08 
確定日 2012-08-09 
事件の表示 特願2005-360735「携帯情報端末、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月28日出願公開、特開2007-164524〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年12月14日の出願であって、平成23年1月7日付けで拒絶理由通知がなされ、同年3月17日付けで手続補正がなされたが、同年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成23年7月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項4に係る発明
平成23年7月8日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、当該補正前の同年3月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項5を、以下のように、補正後の特許請求の範囲の請求項4に変更する補正を含むものである。

<補正前の請求項5の記載>
「 【請求項5】
電子メールの文章を複数行に分けて表示する表示手段を有する携帯情報端末に対し、前記表示手段への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
1文字分のサイズに相当する画像を、複数の文字から成る文字列と対応付けて記憶する記憶ステップと、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの文章に前記文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記文字列が含まれていると判断された場合に、ユーザからの変換操作に基づいて、前記電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた前記文字列を対応する前記画像に変換して前記表示手段に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含む
ことを特徴とするプログラム。」

<補正後の請求項4の記載>
「 【請求項4】
電子メールの文章を複数行に分けて表示する表示手段を有する携帯情報端末に対し、前記表示手段への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
1文字分のサイズに相当する画像を、複数の文字から成る文字列と対応付けて記憶する記憶ステップと、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの文章に前記文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記文字列が含まれていると判断された場合に、ユーザからの変換操作に基づいて、前記電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた前記文字列を対応する前記画像に変換して前記表示手段に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含み、
前記判断ステップではさらに、前記電子メールの文章が表示されたときに前記文字列が2行以上に亘って表示されるか否かを判断し、
前記表示制御ステップは、前記文字列が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記文字列を対応する前記画像に変換して表示するよう表示制御を行う
ことを特徴とするプログラム。」

そして、上記補正は、「判断ステップ」に関して、「さらに、前記電子メールの文章が表示されたときに前記文字列が2行以上に亘って表示されるか否かを判断」するという限定を付加し、「表示制御ステップ」に関して、「前記文字列が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記文字列を対応する前記画像に変換して表示するよう表示制御を行う」という限定を付加するものである。

してみれば、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項4の記載における発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-122838号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2004-133526号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、PHS端末等の電子メール表示装置に関する。」

B.「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態を示すPHS端末を示すブロック図である。このPHS端末は、アンテナ1、無線部2、音声変換回路部3、スピーカ4、マイク5、制御部6、ROM7、RAM8、時計部9、キー入力部10、リンガ用スピーカ11、液晶表示部12、メール保存メモリ13、変換データメモリ14等を備えている。アンテナ1は、図示しない公衆基地局(CS)や家庭内等に設置されている自営基地局との間で、所定の周波数帯の制御信号及び音声信号を含む送信信号及び受信信号を送・受信し、前記無線部2からの送信信号の送信及び受信信号の無線部2への出力を行う。無線部2は、音声変換回路3から入力される送信データを公衆基地局、自営基地局に無線送信するために所定の無線周波数の送信信号に周波数変換してアンテナ1から送信したり、アンテナ1により受信した受信信号を周波数変換して、音声変換回路部3に出力する。
【0013】音声変換回路部3は、図示しないがモデム部、コーディック部及びTDMA処理部等を備えている。前記コーディック部及びTDMA処理部は、コーディック部の受信側で、TDMA処理部から送られてくるADPCM音声データをPCM音声信号に復号化することにより伸長し、PCMにより音声信号のアナログ/ディジタル変換処理を行うとともに、ボリュウム、呼び出し音及びトーン信号等の制御を行い、スピーカ4から出力させる。またコーディック部は、その送信側でマイク5から入力され、PCM音声信号に変換処理された音声信号をADPCM音声データに符号化することにより圧縮し、TDMA処理部に出力する。
【0014】TDMA処理部は、TDMA方式により、モデム部から送られてきた所定キャリア上の物理スロットを抽出して制御情報や音声情報を出力するとともに、コーディック部からの音声情報に制御情報を付加して物理スロットを作成して所定のタイムスロットでモデム部に出力するプロトコルフォーマッタ等を備えており、公衆基地局や自営基地局との間で無線通信プロトコルに基づく通信制御シーケンスを実行する。また、公衆基地局あるいは自営基地局から送られるCS-IDやエリア番号を逐次取得しそれらを制御部6に送り、また着信に伴う呼設定時には呼設定メッセージから取得した相手方の電話番号や名前を制御部6に送る。
【0015】前記時計部9は、タイマー機能やカレンダー機能を有しており、現在の日付データ、曜日データ、時刻データを制御部6に出力する。キー入力部10は、テンキーをはじめ、保留キー、通話キー、自動ダウンロードモード等の各種動作モードの切換を行うための機能キー等を備えている。液晶表示部12は、液晶表示装置(LCD)により構成されており、キー入力部10から入力した通話相手先の電話番号、及び前記メール保存メモリ13に記憶されている電子メールなどの各種情報を表示する。制御部6は、CPU等から構成され、ROM7に格納されている通信処理プログラムに従った通信制御処理、電子メール等の表示処理を実行する。また上記各部の動作を制御し、着呼があったときリンガ信号によりリンガ用スピーカ11での報知等を制御する。RAM8は、制御部6の各処理プログラムを実行する際に各種データを一時的に格納する。
【0016】前記メール保存メモリ13は、受信した電子メールや送信済の電子メール、及び送信が保留された電子メールを格納するものであって、各々の電子メールを個別に記憶するための複数のメモリ領域が確保されている。」

C.「【0024】次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。すなわち本実施の形態は、図1に示したものと同様の構成を備えたPHS端末において、前記変換データメモリ14に、図6に示すような変換テーブルT2を構成する対象文字列データc1?c4、これと対応する変換画像の種別データd1?d4、変換画像データe1?e4が記憶され、これらのデータを利用し前記制御部6が電子メールの表示処理を行うものである。本実施の形態においては、対象文字列データc1?c4として「ます。」、「します。」、「でした。」、「下さい。」の4種類の文字列、つまり文末での出現頻度が高く、電子メールの本文でも多用される末尾語と句点とからなる文字列が記憶されている。なお、対象文字列は末尾語とピリオド(「.」)からなる文字列でもよい。また、対象文字列データc1?c4に対応した変換画像データe1?e4としては、上記の各文字列を1文字分の表示領域で表すものが記憶されている。なお、対象文字列データc1?c3等の種類は、必要に応じて増減してもよい。
【0025】以下、本実施の形態における前記制御部6によるメール表示処理に関する動作を図7のフローチャートに従い説明する。なお、以下の動作は、メール保存メモリ13に記憶されている電子メール(例えば受信メール)の本文が、従来の装置を用いて表示されたとき図8に示した第3の画面G3のように10行からなる文であるとき、これを図9に示した第4の画面G4ような6行の文として表示する際の動作である。
【0026】すなわち制御部6は、使用者により前記メールを表示させるための所定のキー操作が行われることに伴い動作を開始し、まずデフォルトである第1行目の行末を検索する(ステップSB1)。引き続き、その行末の文字が句点(「。」)であるか否かを判別する(ステップSB2)。このとき、図8に示すように、第1行目の行末の文字は「歓迎会」の「会」であるため、ステップSB5へ進み、その時点の検索位置が本文の最終行か否かを判別する。ここでは、検索位置が第1行目であるためステップSB6へ進み、行位置を更新(インクリメント)し、ステップSB1へ戻り、前記処理を繰り返す。この後、行位置が第3行目になると、その行末の文字が句点であるためステップSB2の判別結果がYESとなり、引き続き、その句読点に先立つ末尾語が、図6の変換テーブルT2を構成する対象文字列であるか否かを判別する(ステップSB3)。かかる判別は、まず句読点に先立つ4文字の文字列が前記対象文字列c2?c4のいずれかに該当するか否か、更にいずれにも該当しない場合には、前記句読点に先立つ3文字の文字列が前記対象文字列c1に該当するかどうかを判別することにより行う。つまり、対象文字列c2の「します。」を対象文字列c1の「ます」に優先して判断する。
【0027】このとき、第3行目では句点に先立つ末尾語が「でした」であって、ステップSB3の判別結果がYESとなるため、続くステップSB4において、末尾語の先頭位置データすなわち先頭文字位置及びその行位置と、末尾語が該当する種別データ(c3)とを対応させてRAM8に記憶する(ステップSB4)。しかる後、ステップSB5を経て再び行位置を更新した後(ステップSB6)、ステップSB1へ戻り、前述した処理を繰り返す。これに伴い、RAM8には、図8の本文中の4カ所の文末に関する末尾語の先頭位置データ及び種別データが記憶される。なお、前述した処理を繰り返す間、いずれかの行でその行末に句点が存在しない場合(ステップSB2でNO)、句点に先立つ末尾語が対象文字列でない場合(ステップSB3でNO)には、それぞれステップSB5に進む。
【0028】しかる後、前述した処理が最終行まで行われ、ステップSB5の判別結果がYESとなると、ステップSB4でRAM8に記憶したデータに基づき、前記変換テーブルT2を用いて、本文中の末尾語及び句点(「でした。」等)を、それと対応する変換画像(e1?e4)に変換し、メールの本文を液晶表示部12に表示させる(ステップSA10)。すなわち図9に示した第4の画面G4のように、所定の末尾語が削除されるとともに末尾語の先頭位置に変換画像d1?d4が挿入された本文を表示させる。そして、メール表示処理を終了する。」

D.「【0031】また、前記末尾語及び句点に代えて、いわゆる顔文字(フェイスマーク)を構成する文字列をそれと対応する変換画像に変換し表示させてもよい。その場合には、前記変換データメモリ14に、例えば図10に示すような変換テーブルT3を構成する対象文字列データf1?f4、これと対応する種別データg1?g4、画像データh1?h4を記憶させておく。そして、フローチャートには示さないが、電子メールの表示に先立って、本文中で前記対象文字列(f1?f4)を検索し、検索できた場合には、その位置情報(行位置及び文字位置)と種別データ(g1?g4)とを対応させてRAM8に記憶し、記憶した位置情報等に基づき、変換テーブルT3を用いてながら顔文字部分だけを変換画像h1?h4として表示するメール表示処理を前記制御部6に行わせる。その場合においても本実施の形態と同様の効果が得られる。」

E.「【0032】また、前述したメール表示処理に際して、複数文字を一文字で表すとともに既にに文字コードが割り当てられている省略文字、単位文字、絵文字等が用意されている文字列、例えば「(株)」、「(有)」、「メートル」、「パーセント」等の文字列が存在する場合には、それらの文字列データを画像データの一種である前記省略文字等のフォントデータに変換し、前記省略文字等を表示させてもよい。」

ここで、
(ア)上記Bの段落【0015】の「液晶表示部12は、液晶表示装置(LCD)により構成されており、キー入力部10から入力した通話相手先の電話番号、及び前記メール保存メモリ13に記憶されている電子メールなどの各種情報を表示する。」という記載、及び上記Cの段落【0025】の「なお、以下の動作は、メール保存メモリ13に記憶されている電子メール(例えば受信メール)の本文が、従来の装置を用いて表示されたとき図8に示した第3の画面G3のように10行からなる文であるとき、これを図9に示した第4の画面G4ような6行の文として表示する際の動作である。」という記載より、引用例1のものは、電子メールの本文を複数行に分けて表示する液晶表示部12があると解される。
(イ)上記Bの段落【0015】の「制御部6は、CPU等から構成され、ROM7に格納されている通信処理プログラムに従った通信制御処理、電子メール等の表示処理を実行する。また上記各部の動作を制御し、着呼があったときリンガ信号によりリンガ用スピーカ11での報知等を制御する。RAM8は、制御部6の各処理プログラムを実行する際に各種データを一時的に格納する。」という記載より、引用例1のものは、PHS端末に対し、液晶表示部12への表示処理を実行させるためのプログラムがあると解される。
(ウ)上記Cの段落【0024】、上記Dの段落【0031】、上記Eの段落【0032】の記載より、引用例1のものは、1文字分の表示領域で表す画像を、対象文字列と対応付けて記憶する記憶ステップがあると解される。
(エ)上記Bの段落【0016】の「前記メール保存メモリ13は、受信した電子メールや送信済の電子メール、及び送信が保留された電子メールを格納するものであって、各々の電子メールを個別に記憶するための複数のメモリ領域が確保されている。」という記載より、引用例1のものは、電子メールを受信する受信ステップがあると解される。
(オ)上記Cの段落【0026】の「引き続き、その行末の文字が句点(「。」)であるか否かを判別する(ステップSB2)。」,「引き続き、その句読点に先立つ末尾語が、図6の変換テーブルT2を構成する対象文字列であるか否かを判別する(ステップSB3)。」という記載、及び上記Dの段落【0031】の「そして、フローチャートには示さないが、電子メールの表示に先立って、本文中で前記対象文字列(f1?f4)を検索し、検索できた場合には、」、さらに上記Eの段落【0032】の「前述したメール表示処理に際して、複数文字を一文字で表すとともに既にに文字コードが割り当てられている省略文字、単位文字、絵文字等が用意されている文字列、例えば「(株)」、「(有)」、「メートル」、「パーセント」等の文字列が存在する場合には、」という記載より、引用例1のものは、受信した電子メールの本文に対象文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップがあると解される。
(カ)上記Cの段落【0028】の「ステップSB4でRAM8に記憶したデータに基づき、前記変換テーブルT2を用いて、本文中の末尾語及び句点(「でした。」等)を、それと対応する変換画像(e1?e4)に変換し、メールの本文を液晶表示部12に表示させる(ステップSA10)。」という記載、及び上記Dの段落【0031】の「検索できた場合には、その位置情報(行位置及び文字位置)と種別データ(g1?g4)とを対応させてRAM8に記憶し、記憶した位置情報等に基づき、変換テーブルT3を用いてながら顔文字部分だけを変換画像h1?h4として表示するメール表示処理を前記制御部6に行わせる。」、さらに上記Eの段落【0032】の「前述したメール表示処理に際して、複数文字を一文字で表すとともに既にに文字コードが割り当てられている省略文字、単位文字、絵文字等が用意されている文字列、例えば「(株)」、「(有)」、「メートル」、「パーセント」等の文字列が存在する場合には、それらの文字列データを画像データの一種である前記省略文字等のフォントデータに変換し、前記省略文字等を表示させてもよい。」という記載より、引用例1のものは、対象文字列が含まれていると判断された場合に、電子メールの本文を、当該電子メールの本文に含まれていた前記対象文字列を対応する画像に変換して液晶表示部12に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップがあると解される。

よって、上記A?Eの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「電子メールの本文を複数行に分けて表示する液晶表示部12を有するPHS端末に対し、前記液晶表示部12への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
1文字分の表示領域で表す画像を、対象文字列と対応付けて記憶する記憶ステップと、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの本文に前記対象文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記対象文字列が含まれていると判断された場合に、前記電子メールの本文を、当該電子メールの本文に含まれていた前記対象文字列を対応する前記画像に変換して前記液晶表示部12に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含む
プログラム。」

(引用例2)
F.「【0023】
[携帯電話の構成]
図1は、本発明が適用された携帯電話のブロック図である。携帯電話13は、マイクロプロセッサを主体として構成されたCPU1、そのCPU1に対する主記憶装置としてのROM2及びRAM3、画像処理及び音声処理用のGPU(Graphics Processing Unit)7及びSPU(Sound Processing Unit)9、入力処理用のキー入力部4、データ入力部11、並びに、データの送受信処理用の送受信処理部5がバス12を介して各部と接続されて構成されている。
【0024】
ROM2には、利用者端末31の全体の動作制御に必要なプログラムとしてのオペレーティングシステムが書き込まれる。RAM3は作業メモリとして機能し、後述する登録文字リストや改行位置リストなどが必要に応じて書き込まれる。
【0025】
GPU7は、装備された液晶等からなる所定のサイズのモニタ8に、送信先電話番号やメールアドレスを入力操作に応じて確認的に表示させたり、必要な機能をガイド的に表示させたりする制御を行うものである。また、GPU7は、ネットワークを介して他の利用者端末から受信した電子メール等を、モニタ8に表示させる。SPU9は、着信時の音楽やゲームの効果音などの、楽音データや音源データ等を再生してスピーカ10から出力させる。
【0026】
キー入力部4は相手先の電話番号やホームページアドレスの入力の他、電子メールの作成等をおこなうための各種のキーを備えているものである。データ入力部11は、キー入力部4の操作に応じて電子メール等を作成するものである。
【0027】
送受信処理部5は、通常の無線公衆回線からの着信、送信の回線制御及び音声データの送受信の他、インターネットを経由するなどして用いられる電子メールやサーバからダウンロードされる各種アプリケーション等におけるデータ送受信を処理するもので、送受信データはアンテナ6を介して授受される。」

G.「【0033】
[表示制御処理1]
次に、表示制御処理1について図2乃至図7を参照して説明する。表示制御処理1は、所定の文字データをモニタ8上に表示した際に、複数文字で構成される顔文字等が途中で改行されないように改行位置の制御を行う処理の一態様である。なお、表示制御処理1において、利用者端末13は、パソコンで閲覧することを前提に作成された電子メールを文字データとして受信し、当該文字データをモニタ8上で閲覧するものとする。
【0034】
利用者端末13が、所定の電子メールの本文をモニタ8上に表示した際の画面例を図2に示す。例えば、パソコンにおいて閲覧することを前提に作成された電子メールを、利用者端末13において閲覧しようとすると、パソコンと利用者端末13では最適な改行の挿入位置が異なるため、図2(a)の文末に示すように、顔文字等が途中で改行されてしまう。そこで、表示制御処理1において、利用者端末13は、複数文字で構成される顔文字や定型文字等を予め登録文字として記憶しておき、所定の変換方式に従って登録文字中に改行が挿入されないよう、改行位置を制御することとしている。ここで、改行の挿入とは、文字データを改行させる改行操作が挿入されることをいう。
【0035】
ここで、表示制御処理1において使用される登録文字ファイルについて、図3を参照して説明する。登録文字ファイルは、図1に示すROM2に記憶されており、登録ID、登録文字及び登録文字コードから構成されている。登録IDとは、登録文字を一意に識別する情報である。また、登録文字とは、登録IDに対応づけて記憶された顔文字をはじめとする複数文字の組み合わせである。表示制御処理1は、登録文字中に改行が挿入されないよう改行位置を制御する。さらに、登録文字コードとは、当該登録文字に対応する文字コードである。ここで、文字コードとは、コンピュータ上で日本語(平仮名・片仮名・漢字・記号)を識別するための文字を表す数値の事をいう。
【0036】
次に、表示制御処理1において使用される変換方式ファイルAについて、図4を参照して説明する。変換方式ファイルAは、図1に示すROM2に記憶されており、変換ID及び変換方式から構成されている。変換IDとは、変換方式を一意に識別する情報であり、CV0?4まで記憶されている。また、変換方式とは、変換IDに対応付けて記憶されており、登録文字中に改行が挿入されないよう改行位置を制御する方式である。
【0037】
変換ID「CV0」に対応する変換方式「無変換」は、改行位置を制御せず、利用者端末13が所定の文字データに基づいてモニタ8上にそのまま当該文字データを表示する方式である。なお、詳細は後述するが、表示制御処理1は、所定の文字データにおける登録文字中に改行が挿入されていない場合、利用者端末13の変換IDを「CV0」に設定し、当該文字データに基づいてモニタ8上に表示する。
【0038】
変換ID「CV1」に対応する変換方式「半角文字に変換」は、登録文字中に改行が挿入されている場合、当該登録文字を全角から半角に変換して表示する方式である。具体的に、図2(a)に示すように、文末の顔文字中で改行され、利用者が閲覧しにくくなっている場合、図2(b)に示すように、当該顔文字を半角に変換し、半角顔文字30として表示する。
【0039】
変換ID「CV2」に対応する変換方式「2ドット小さい文字に変換」は、登録文字中に改行が挿入されている場合、当該登録文字を2ドット小さい文字に変換して表示する方式である。具体的には、登録文字が、縦横「12×12ドット」の文字サイズであった場合、当該登録文字を縦横「10×10ドット」の文字サイズで表示する。
【0040】
変換ID「CV3」に対応する変換方式「4ドット小さい文字に変換」は、登録文字中に改行が挿入されている場合、当該登録文字を4ドット小さい文字に変換して表示する方式である。なお、表示制御処理1において変換ID「CV3」に対応する変換方式に基づいて改行位置を制御するのは、変換ID「CV2」に対応する変換方式に基づいて改行位置を制御したにも関わらず、登録文字中に改行が挿入されている問題が解消しない場合である。
【0041】
変換ID「CV4」に対応する変換方式「改行挿入」は、登録文字中に改行が挿入されている場合、当該登録文字の直前に改行を挿入して表示する方式である。具体的に、図2(a)に示すように、文末の顔文字中で改行され、利用者が閲覧しにくくなっている場合、図2(c)に示すように、当該顔文字の直前に改行31を挿入して表示する。これによれば、当該顔文字中で改行されているという問題を確実に解消することができる。
【0042】
なお、登録文字中に改行が挿入されている場合、表示制御処理1において利用者端末13は、変換ID「CV1」、「CV2」、「CV3」、「CV4」の順に対応する変換方式に基づいて改行位置を制御する。これは、利用者端末13は、一度に表示できる文字データが少なく、小さい画面上で文字データを有効に表示する必要があるからである。例えば、変換ID「CV4」に対応する変換方式「改行挿入」は、登録文字中で改行されているという問題を確実に解消することができるが、改行することで画面に表示する行数が多くなり、小さい画面上で情報を有効に表示しているとは言い難い。つまり、表示制御処理1において利用者端末13は、情報を有効に表示できる順に変換方式の優先順位を設定し、当該優先順位に基づいて変換方式を試すことにより改行位置を制御している。
【0043】
次に、表示制御処理1について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、以下に説明する処理は、図1に示すROM2に記憶されたプログラムやデータに基づいてCPU1により実行される。また、表示制御処理1においてCPU1は、閲覧予定の文字データを文字コードとして認識し、処理を行うものとする。
【0044】
図5によれば、利用者端末13のCPU1は、文字データ、及び、図3に示す登録文字ファイルに基づいて、登録文字リストを作成する(ステップS1)。
【0045】
ここで、登録文字リストについて図6を参照して説明する。登録文字リストは、閲覧予定の文字データ及び登録文字ファイルに基づいて、当該文字データ中に含まれる登録文字を検出したリストであり、図1に示すRAM3に記憶され、所定のタイミングで更新される。登録文字リストは、文字ナンバー(以下、「NO.」と呼ぶ。)、登録ID、開始文字番号及び終了文字番号から構成されている。
【0046】
文字NO.は、閲覧予定の文字データに含まれる登録文字の識別情報であり、通し番号となっている。また、登録IDは、文字NO.に対応付けて記憶されており、当該文字データに含まれる顔文字の登録IDである。さらに、開始文字番号及び終了文字番号は、文字NO.に対応付けて記憶されており、対応する登録文字が当該文字データの何文字目から何文字目に含まれているかを示す情報である。つまり、利用者端末13のCPU1は、登録文字リストを確認することにより、当該文字データ中に含まれる登録文字の数や位置といった情報を迅速に把握することができる。
【0047】
図5によれば、利用者端末13のCPU1は、次に、改行位置リストを作成する(ステップS2)。
【0048】
ここで、改行位置リストについて図7を参照して説明する。改行位置リストは、閲覧予定の文字データ、及び、利用者端末13の表示能力に基づいて、当該文字データ中に含まれる改行を検出したリストであり、図1に示すRAM3に記憶され、所定のタイミングで更新される。改行位置リストは、改行NO.、改行番号及び改行種類から構成されている。
【0049】
改行NO.は、閲覧予定の文字データに含まれる改行の識別情報であり、通し番号となっている。また、改行番号は、改行NO.に対応付けて記憶されており、対応する改行が当該文字データの何文字目に含まれているかを示す情報である。さらに、改行種類は、改行の種類であり、「行あふれ」と「挿入」の二種類が存在する。「行あふれ」は、モニタ8上に表示できる最大の行数を越えたため、利用者端末13により強制的に文字データ中に含まれている改行である。一方、「挿入」は、文字データの作成者が意図的に挿入することで文字データ中に含まれている改行である。つまり、利用者端末13のCPU1は、改行位置リストを確認することにより、当該文字データ中に含まれる改行の数、位置又は種類といった情報を迅速に把握することができる。
【0050】
図5によれば、利用者端末13のCPU1は、次に、変数「B=1、CV=0」と設定する(ステップS3)。
【0051】
ここで、「B」とは、ブロックの識別情報であるブロック番号を表す変数である。ブロックとは、文字データと改行位置リストに基づいて設定することができる文字データを改行で区切った1つの単位である。具体的には、図7に示すように、改行NO.「1」に対応する改行は、文字データの11文字目に含まれている。そして、改行NO.「2」に対応する改行は、文字データの20文字目に含まれている。よって、変数「B=1」は、文字データの1文字目から11文字目までの文字データを第1ブロックとして示しており、変数「B=2」は、文字データの12文字目から20文字目までの文字データを第2ブロックとして示している。
【0052】
また、「CV」とは、変換方式ファイルAの変換IDを表す変数である。具体的には、変数「CV=0」は、図4に示す変換方式ファイルAの変換ID「CV0」のことであり、変換方式「無変換」に対応している。また、変数「CV=1」は、変換方式ファイルAの変換ID「CV1」のことであり、変換方式「半角文字に変換」に対応している。
【0053】
図5によれば、利用者端末13のCPU1は、登録文字リスト及び改行位置リストに基づいて第Bブロックの検索を行う(ステップS4)。ステップS3において、変数「B=1」であるから、CPU1は、登録文字リスト及び改行位置リストに基づいて、文字データにおける第1ブロックの検索を行う。そして、CPU1は、第1ブロックに含まれる登録文字中に改行が挿入されているか否かを判定する(ステップS5)。
【0054】
改行が挿入されていない場合、CPU1は、検索を行ったブロックが文字データにおける最後のブロックであるか否かを、改行位置リストに基づいて判定する(ステップS6)。そして、例えば、第1ブロックのように最後のブロックでない場合、CPU1は、変数「B=B+1、CV=0」と設定する(ステップS7)。即ち、CPU1は、ブロック番号を「1」追加し、変換IDを初期値「0」に戻す。そして、CPU1は、登録文字リスト及び改行位置リストを修正する(ステップS8)。例えば、登録文字中に改行が挿入されている場合、CPU1は、所定の変換方式に従って改行位置を制御するため、文字データ中に含まれる登録文字や改行の位置が当該制御によりずれるからである。そして、CPU1は、ステップS5に戻り、所定の処理を行う。
【0055】
ステップS5において改行が挿入されている場合、CPU1は、変数「CV=CV+1」と設定し、対応する変換方式により改行位置の制御を行う(ステップS9)。例えば、変数「CV=0」である場合、変数CVに「1」を追加し、変数「CV=1」とする。そして、図4に示す、変換方式ファイルAの変換ID「CV1」に対応する変換方式「半角文字に変換」を、ステップS5で判定した改行が挿入された登録文字に適用することで、改行位置の制御を行う。そして、CPU1は、ステップS5に戻り、再び、登録文字中に改行が挿入されているか否かを判定する。
【0056】
例えば、上記の変換ID「CV1」に対応する改行位置の制御により、当該登録文字中の改行挿入が解消されていれば、CPU1は、ステップS6を行う。一方、当該登録文字中の改行挿入が解消されていなければ、CPU1は、再びステップS9を行う。即ち、変数「CV=CV+1」と設定し、対応する変換方式により改行位置の制御を行う。例えば、「CV=1」である場合、変数CVに「1」を追加し、変数「CV=2」とする。そして、図4に示す、変換方式ファイルAの変換ID「CV2」に対応する変換方式「2ドット小さい文字に変換」を、当該登録文字に適用することで、改行位置の制御を行う。このように、当該登録文字中の改行挿入が解消されるまで、CPU1は、ステップS5及びS9を繰り返す。
【0057】
一方、ステップS5において登録文字中に改行が挿入されていないと判定し、且つ、ステップS6において最後のブロックであると判定した場合、CPU1は、文字を展開し、文字データをモニタ8上に表示する(ステップS10)。ここで、文字を展開するとは、文字コードを通常のビットイメージの文字に変換することをいう。即ち、CPU1は、文字コードを通常のビットイメージの文字に変換し、利用者端末13のモニタ8上に表示する。これは、表示制御処理1におけるステップS1乃至S10は、文字コード及び文字サイズで処理が可能ため、ビットイメージの文字ではなく、文字コードの状態で処理が行われているからである。これにより、CPU1は表示制御処理1を終了する。」

ここで、
(キ)上記Gの段落【0033】,段落【0034】の記載より、引用例2のものは、電子メールの本文を複数行に分けて表示するモニタ8があると解される。
(ク)上記Fの段落【0024】,上記Gの段落【0043】の記載より、引用例2のものは、利用者端末13に対し、モニタ8への表示処理を実行させるためのプログラムがあると解される。
(ケ)上記Gの段落【0033】の記載より、引用例2のものは、電子メールを受信する受信ステップがあると解される。
(コ)上記Gの段落【0044】?段落【0046】の記載より、引用例2のものは、受信した電子メールの本文に複数の文字から成る登録文字が含まれているか否かを判断する判断ステップがあると解される。
(サ)上記Gの段落【0053】の記載より、引用例2のものは、電子メールの本文が表示されたときに、登録文字中に改行が挿入されているか否か、言い換えると登録文字が2行以上に亘って表示されるか否かを判断する判断ステップがあると解される。
(シ)上記Gの段落【0055】?段落【0057】の記載より、引用例2のものは、登録文字が含まれていると判断された場合に、電子メールの本文を、当該電子メールの本文に含まれていた前記登録文字を所定の変換方式に従って変換してモニタ8に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップであり、
前記登録文字が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記登録文字を所定の変換方式に従って変換して表示するよう表示制御を行う前記表示制御ステップがあると解される。

よって、上記F,Gの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。)
「電子メールの本文を複数行に分けて表示するモニタ8を有する利用者端末13に対し、前記モニタ8への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの本文に複数の文字から成る登録文字が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記登録文字が含まれていると判断された場合に、前記電子メールの本文を、当該電子メールの本文に含まれていた前記登録文字を所定の変換方式に従って変換して前記モニタ8に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含み、
前記判断ステップではさらに、前記電子メールの本文が表示されたときに前記登録文字が2行以上に亘って表示されるか否かを判断し、
前記表示制御ステップは、前記登録文字が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記登録文字を所定の変換方式に従って変換して表示するよう表示制御を行う
プログラム。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1記載の発明における「本文」、「液晶表示部12」、「PHS端末」、「対象文字列」は、それぞれ、本願補正発明における「文章」、「表示手段」、「携帯情報端末」、「複数の文字から成る文字列」に相当する。

(い)引用例1記載の発明における「1文字分の表示領域で表す画像」は、1文字分の表示領域のサイズに相当する画像であると捉えることができるから、本願補正発明における「1文字分のサイズに相当する画像」に相当する。

よって、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「電子メールの文章を複数行に分けて表示する表示手段を有する携帯情報端末に対し、前記表示手段への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
1文字分のサイズに相当する画像を、複数の文字から成る文字列と対応付けて記憶する記憶ステップと、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの文章に前記文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記文字列が含まれていると判断された場合に、前記電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた前記文字列を対応する前記画像に変換して前記表示手段に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含む
プログラム。」
である点。

(相違点)
相違点1:「表示制御ステップ」が、文字列が含まれていると判断された場合に、電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた文字列を対応する画像に変換して表示手段に表示させるよう表示制御を、本願補正発明においては、「ユーザからの変換操作に基づいて、」行うのに対し、引用例1記載の発明においては、ユーザからの変換操作に基づいて行うとはされていない点。

相違点2:本願補正発明は、「前記判断ステップではさらに、前記電子メールの文章が表示されたときに前記文字列が2行以上に亘って表示されるか否かを判断し、
前記表示制御ステップは、前記文字列が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記文字列を対応する前記画像に変換して表示するよう表示制御を行う」ものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものでない点。

(4)判断
そこで、上記相違点1,2について検討する。

(相違点1について)
ユーザからの変換操作に基づいて、文字列を変換し表示するよう表示制御を行うことは、例えば、特開平8-193837号公報の段落【0074】?段落【0077】や、特開2005-20287号公報の段落【0009】等に記載されているように、周知技術である。
したがって、引用例1記載の発明において、上記周知技術を適用し、表示制御ステップが、文字列が含まれていると判断された場合に、電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた文字列を対応する画像に変換して表示手段に表示させるよう表示制御を、ユーザからの変換操作に基づいて、行うようにすることは、当業者が適宜実施できたことである。

(相違点2について)
引用例2記載の発明は、判断ステップではさらに、電子メールの本文が表示されたときに複数の文字から成る登録文字が2行以上に亘って表示されるか否かを判断し、
表示制御ステップは、前記登録文字が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記登録文字を変換して表示するよう表示制御を行うという事項を有している。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明とは、ともに、電子メールの文章を複数行に分けて表示する表示手段を有する携帯情報端末に対し、前記表示手段への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの文章に複数の文字から成る文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記文字列が含まれていると判断された場合に、前記電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた前記文字列を変換して前記表示手段に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含むプログラムであるから、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明の上記事項を適用して、判断ステップではさらに、電子メールの文章が表示されたときに文字列が2行以上に亘って表示されるか否かを判断し、
表示制御ステップは、前記文字列が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記文字列を対応する画像に変換して表示するよう表示制御を行うようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。

なお、請求人は、平成23年7月8日付け審判請求書の請求の理由にて、引用例2(引用文献2)では、所定の文字列を1文字分の画像に変換するという引用例1(引用文献1)の技術に問題があるため、画像データを用いないで所定の文字列中の変換を行おうとしており、引用例2の技術と、引用例1の文字列を1文字分の画像に自動的に変換する技術との組み合わせを阻害する特段の理由が存在すると主張している。
しかし、引用例2記載の発明において、登録文字が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ登録文字を変換することと、登録文字をどのようなものに変換するかという変換方式とは、基本的には別個に採用し得る技術であり、画像を用いて対象文字列の変換を行う引用例1記載の発明からみて、引用例2記載の発明における登録文字が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ前記登録文字を変換して表示するという事項を適用できない理由はないので、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明とを組み合わせることに阻害要因があるとは考えられず、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用して上記相違点2に係る点を成すようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明、及び上記周知技術から、当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成23年7月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項5に係る発明は、同年3月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「 【請求項5】
電子メールの文章を複数行に分けて表示する表示手段を有する携帯情報端末に対し、前記表示手段への表示処理を実行させるためのプログラムであって、当該表示処理は、
1文字分のサイズに相当する画像を、複数の文字から成る文字列と対応付けて記憶する記憶ステップと、
電子メールを受信する受信ステップと、
受信した電子メールの文章に前記文字列が含まれているか否かを判断する判断ステップと、
前記文字列が含まれていると判断された場合に、ユーザからの変換操作に基づいて、前記電子メールの文章を、当該電子メールの文章に含まれていた前記文字列を対応する前記画像に変換して前記表示手段に表示させるよう表示制御を行う表示制御ステップとを含む
ことを特徴とするプログラム。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2とそれらの記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.(1)で検討した本願補正発明における、「判断ステップ」に関して、「さらに、前記電子メールの文章が表示されたときに前記文字列が2行以上に亘って表示されるか否かを判断」するという限定を省き、「表示制御ステップ」に関して、「前記文字列が2行以上に亘って表示されると判断された場合にのみ、前記文字列を対応する前記画像に変換して表示するよう表示制御を行う」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件に特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、上記特定の限定について引用した引用例2記載の発明を参酌することなく、引用例1記載の発明、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-05 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-06-25 
出願番号 特願2005-360735(P2005-360735)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 水野 恵雄
甲斐 哲雄
発明の名称 携帯情報端末、及びプログラム  
代理人 中島 司朗  

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