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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C01B
管理番号 1261276
審判番号 不服2009-10586  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-02 
確定日 2012-08-10 
事件の表示 特願2004-531828「二酸化ケイ素分散液」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日国際公開、WO2004/020334、平成17年12月 2日国内公表、特表2005-536435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2003年7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年8月27日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成17年2月24日付けで国内書面が提出され、平成20年5月16日付けで拒絶理由が起案され(発送日は同年同月28日)、同年11月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成21年2月25日付けで拒絶査定が起案され(発送日は同年3月4日)、これに対し、同年6月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正書が提出されたものであり、その後、平成23年8月22日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され、これに対する回答書が同年11月21日付けで提出されたものである。
そして、平成21年6月2日付けの手続補正書により特許請求の範囲についてする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除及び同第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められるから、その請求項1乃至14に係る発明は、平成21年6月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「火炎加水分解によって製造されかつ2.5?4.7OH/nm^(2)のヒドロキシ基密度を有している二酸化ケイ素粉末であり、かつヒドロキシ基密度が、J. MathiasおよびG. WannemacherによってJournal of Colloid and Interface Science 125(1988)61による水素化リチウムアルミニウムとの反応による方法によって、二酸化ケイ素粉末と水素化リチウムアルミニウムとの反応によって測定されることを特徴とする、二酸化ケイ素粉末。」

第2 引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用されたC.Clark-Monks et al.,The Characterization of Anomalous Adsorption Sites on Silica Surfaces,Journal of Colloid and Interface Science,1973年,Vol.44 No.1,Pages37-49(以下、「引用文献3」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「

」(第38頁右欄、表1、第1?6行)
「当審訳: 表1
表面領域 シリカI シリカII
1.窒素吸着
(a)B.E.T. 356±7m^(2)/g 152±2m^(2)/g
(b)ポテンシャル理論 320±50m^(2)/g 158±10m^(2)/g
2.CCl_(4)吸着
α_(s)プロット 350±10m^(2)/g
全表面 3.12±0.25 3.4±0.2
ヒドロキシル濃度 箇所/100Å^(2) 箇所/100Å^(2)
使用された非晶質シリカは、発熱反応粒子で、(CabotコーポレーションからCab-O-Sil S17として供給された)シリカIと(Degussaによって製造され、Aerosil TK800と名付けられた)シリカIIとされた2種類のふるまいが比較された。」
(イ)「

」(第40頁右欄第10?25行)
「当審訳:表面ヒドロキシル濃度
吸着水の決定とシラノール基の濃度は、熱重量分析法(T.G.A.)を含む幾つかの分析方法を比較するケラムとスミス(31)によって研究されてきた。現在の研究では、全面積ヒドロキシル基の濃度は、180℃から1050℃の間の水の放出と放出された水分子が2つのヒドロキシル基に凝縮生成物となる重量減少の結果から推定される。表1で結果は与えられ、シリカIで見いだされた値は、ケラムとスミス(31)の報告と密接な一致があった。」
(2)引用発明の認定
引用文献3の記載事項(ア)には、「発熱反応粒子で、(Degussaによって製造され、Aerosil TK800と名付けられた)シリカIIは、全表面ヒドロキシル濃度が3.4±0.2 箇所/100Å^(2)である」ことが記載され、同(イ)には、「現在の研究では、全面積ヒドロキシル基の濃度は、180℃から1050℃の間の水の放出と放出された水分子が2つのヒドロキシル基に凝縮生成物となる重量減少の結果から推定される。」と記載されている。記載事項(イ)の推定方法はいわゆる「熱重量分析法」である。
これらを本願発明の記載ぶりに則って整理すると、「全表面ヒドロキシル濃度が熱重量分析法で3.4±0.2 箇所/100Å^(2)であるDegussaによって製造され、Aerosil TK800と名付けられた発熱反応シリカ粒子」(以下、「引用発明」という。)が引用文献3には記載されていると認められる。

第3 対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、本願明細書の段落【0012】に「本発明による火炎加水分解は、気相火炎中での少なくとも1つの蒸発可能なケイ素含有化合物の火炎加水分解によって二酸化ケイ素を生成させることを指す。火炎は、水素含有燃料ガスおよび酸素含有ガスを反応させることによって発生させる。この反応中、水が水蒸気の形態で生成し、この水蒸気によって、ケイ素含有化合物の加水分解が起こり二酸化ケイ素が生成する。」と記載され、本願明細書の実施例においてアエロジルが用いられているように、引用発明の「Degussaによって製造され、Aerosil TK800と名付けられた発熱反応シリカ粒子」は、微粉をも含むから、本願発明の「火炎加水分解によって製造される二酸化ケイ素粉末」に相当するということができる。そして、引用発明の「全表面ヒドロキシル濃度」は、本願発明の「ヒドロキシ基密度」に相当し、引用発明の「3.4±0.2箇所/100Å^(2)」は、本願発明の「2.5?4.7OH/nm^(2)」と「3.4OH/nm^(2)」で一致するといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「火炎加水分解によって製造されかつ3.4OH/nm^(2)のヒドロキシ基密度を有している二酸化ケイ素粉末。」である点で一致し、以下の点で相違する。
本願発明においては、「ヒドロキシ基密度が、J. MathiasおよびG. WannemacherによってJournal of Colloid and Interface Science 125(1988)61による水素化リチウムアルミニウムとの反応による方法によって、二酸化ケイ素粉末と水素化リチウムアルミニウムとの反応によって測定される」のに対して、引用発明においては、「熱重量分析法」で測定される点(以下、「相違点a」という。)。
相違点aについて以下検討する。
まず、本願発明において「ヒドロキシ基密度が、J. MathiasおよびG. WannemacherによってJournal of Colloid and Interface Science 125(1988)61による水素化リチウムアルミニウムとの反応による方法によって、二酸化ケイ素粉末と水素化リチウムアルミニウムとの反応によって測定される」ことについては、本願の明細書の段落【0011】に「 ヒドロキシ基密度は、J. MathiasおよびG. WannemacherによってJournal of Colloid and Interface Science 125(1988)に公開された方法によって、水素化リチウムアルミニウムとの反応によって測定した。」とあるだけで、格別の技術的意義を有するものではない。
さらに、回答書に添付されたパンフレットには、「ヒドロキシ基密度が、J. MathiasおよびG. WannemacherによってJournal of Colloid and Interface Science 125(1988)61による水素化リチウムアルミニウムとの反応による方法によって、二酸化ケイ素粉末と水素化リチウムアルミニウムとの反応によって測定される」ことに対応する、リチウムアルミニウムハイドライド法について「広範な比較検討の結果、乾燥したAEROSILをLiAlH_(4)と反応させて、AEROSIL表面のSiOH濃度を測定する方法が最も正確かつ、容易な方法であることが確認された。」とあるだけで、他の方法と異なる特別な数値を示すものとは判断できない。
そうすると、相違点aによって測定されたヒドロキシ基密度は、引用発明においても、「熱重量分析法」に換えて「ヒドロキシ基密度が、J. MathiasおよびG. WannemacherによってJournal of Colloid and Interface Science 125(1988)61による水素化リチウムアルミニウムとの反応による方法によって、二酸化ケイ素粉末と水素化リチウムアルミニウムとの反応によって測定される」ようにすることで、既に達成されている蓋然性が高く、たとえそうでないとしても、当業者であれば適宜採用し得る測定事項というべきである。
なお、この相違点aについては、原査定の備考において「IR分光法によるヒドロキシ基密度の測定値と、本願発明の方法によるヒドロキシ基密度の測定値とが大きく異なるものであるという根拠はないから、IR分光法によるヒドロキシ基密度の測定値と本願発明の方法によるヒドロキシ基密度の測定値とは同程度であると解され、引用文献3に記載された乾式シリカのヒドロキシ基密度が本願発明の範囲内にある蓋然性は高い。」と指摘したのに対して、審判請求書において「(d) 本願発明と引用発明との対比
引用文献3、文献A、Bに記載された二酸化ケイ素粉末は、本願発明の二酸化ケイ素粉末とは異なり、OH基密度を高めるように処理されていない。従って、本願発明は引用文献3、文献A,Bには記載されていない。すなわち、引用文献3、文献A、Bから得られる二酸化ケイ素粉末は、本願明細書の比較例に実質的に相当し、本願発明の二酸化ケイ素粉末とは異なるものである。また、本願発明と引用文献3、文献A、BとではOH基密度の測定法が異なる。さらに、これらの文献には、処理することでOH基密度を高めることは記載されておらず、OH基密度を高めるという本願発明の効果により奏される効果は、これらの引用文献から予測することはできない。 」として、本願発明の請求項に記載のない事項に基づいて相違点を主張するだけであるから、本願発明が新規性・及び進歩性を欠くものとせざるを得ない。
また、相違点aに係る本願発明の測定事項を採用することにより得られる効果についても、格別顕著であるとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明であり、そうでないとしてもこの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号及び同第2項の規定に該当し特許を受けることができない。

第4 回答書の補正案について
審判請求人は、回答書において「本出願人は、請求項1に記載の二酸化ケイ素粉末を、請求項2に記載のカリウム、ナトリウムまたはリチウムでドープされた二酸化ケイ素粉末に限定する用意があります。
この限定により、前置報告書にて指摘された原査定の拒絶理由1、2(対象条文:特許法第29条第1項第3項、同条第2項)は解消するものと思料いたします。さらに、前置報告書にて指摘された理由(1)、(2)につきましても解消するものと思料いたします。 」と主張する。
しかしながら、原査定の拒絶の理由において引用文献5として引用された特開2001-354408号公報には、シリカ微粒子分散液に関し、「【0019】本発明ではシード液としてシード粒子凝集体の分散液、より詳しくは窒素吸着法による比表面積が300m^(2)/g?1000m^(2) /gで、細孔容積が0.4ml/g?2.0ml/g、好ましくは0.5ml/g?2.0ml/gである多孔質なシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液として使用する。・・・
【0020】該シード液中のシード粒子凝集体同士のさらなる凝集を防止するために、必要量のアルカリ添加を行う。このアルカリは、シード液に対して添加していく活性ケイ酸の縮合触媒、あるいはアルコキシシランの加水分解触媒としても作用する。使用するアルカリとしては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物、・・・を挙げることができ、これらのアルカリを単独で、又は混合して用いる。」と記載されているように、シリカ微粒子分散液に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ添加を行うことは周知の技術と認められるから、この限定により、進歩性が生じるものとは判断することができないので、係る補正案を採用することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献3に記載された発明であり、そうでないとしてもこの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号及び同第2項の規定に該当し特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-08 
結審通知日 2012-03-14 
審決日 2012-03-27 
出願番号 特願2004-531828(P2004-531828)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C01B)
P 1 8・ 121- Z (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 哲  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 斉藤 信人
國方 恭子
発明の名称 二酸化ケイ素分散液  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 星 公弘  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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