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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1261279
審判番号 不服2010-25479  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-12 
確定日 2012-08-10 
事件の表示 特願2004- 97445「量子化コンダクタンス素子、これを用いた磁場変化検出方法及び磁気検出方法、並びに量子化コンダクタンス素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-286084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年3月30日の出願であって、平成22年2月8日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月29日に意見書が提出されたが、同年9月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月12日に審判請求がされたとともに同日に手続補正書が提出され、平成23年12月8日付けの審尋に対して、平成24年2月6日付けで回答書が提出されたものである。


第2 本願発明に対する判断
1 本願発明
平成22年11月12日に提出された手続補正書による手続補正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の段落【0017】を補正するものである。このうち、特許請求の範囲に関する前記手続補正は、補正前の請求項4における「上記第1電極と第2金属との間を導通可能とする」の記載を、本願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載に基づいて、「上記第1電極と第2電極との間を導通可能とする」と補正するものであり、誤記の訂正を目的とする補正であると認められる。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項及び同第4項の規定に適合している。

よって、本願の請求項1?4に係る発明は、前記平成22年11月12日に提出された手続補正書による手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定された、次のとおりのものである。

【請求項1】
「第1金属を含む化合物からなるイオン伝導層が被覆された上記第1金属からなる第1電極と、上記第1金属とは異なる第2金属からなる第2電極とを、上記イオン伝導層と上記第2電極とを近接させて配設すると共に、上記近接部において、上記第1電極と第2電極とが、上記第1電極表面から上記イオン伝導層を貫通するように形成された上記第1金属からなるマクロ架橋部と、上記マクロ架橋部の露呈面と上記第2電極表面との間に形成された上記第1金属からなり量子化コンダクタンスを呈する金属ナノ架橋とにより導通可能に接続されてなることを特徴とする量子化コンダクタンス素子。」

2 引用刊行物
2-1 引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-141494号公報(以下「引用例」という。)には、「ポイントコンタクト・アレー」(発明の名称)に関して、図1?図5とともに、次の記載がある(下線は、参考のため、当審において付したものである。)。

ア 発明の技術分野
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、対向する電極間においてポイントコンタクトを形成し、又は切断してコンダクタンスを制御する素子を複数個用いるポイントコンタクト・アレーに関するものである。」

イ 発明の実施の形態
・「【0020】図1は本発明にかかる複数個のポイントコンタクトを配置したポイントコンタクト・アレーを示す斜視模式図である。
【0021】図1に示すように、混合導電体1で被覆された金属線(第1電極)2と、金属線3,4(第2電極)との交点に可動イオン(原子)5で構成されたポイントコンタクト(架橋)6,7を形成する。これらは、絶縁性の基板8上に設置され、絶縁性の材料(図では省略)により固定される。
【0022】第1及び第2の二つの電極間に半導体ないし絶縁体材料を挿入する場合は、この半導体ないし絶縁体中に可動イオンが固溶することにより、その半導体のコンダクタンスが変化する。
【0023】その結果、電極間のコンダクタンスが変化する。なお、その変化量は半導体ないし絶縁体材料中に固溶する可動イオンの量に依存する。」

・「【0025】本発明では、第1電極2と第2電極3,4間に電圧を印加して、イオン原子からなる架橋6,7を形成したり消滅させたりして、電極間に形成されたポイントコンタクトのコンダクタンスを制御する。具体的に説明すれば、第1電極2に対して第2電極3,4に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、混合導電体材料中の可動イオン(原子)が析出し、電極間に架橋6,7が形成される。この結果、電極間のコンダクタンスが増大する。逆に第2電極3,4に適当な正電圧を印加すると、可動イオン(原子)が混合導電体材料中に戻り、架橋6,7が消滅する。すなわち、コンダクタンスが減少する。
【0026】このように、各金属線に印加する電圧を独立に制御することによって、第1電極2と第2電極3,4の各交点に形成されたポイントコンタクトに印加する電圧を独立に制御することができる。すなわち、各交点のポイントコンタクトのコンダクタンスを独立に制御できる。
【0027】これにより、ポイントコンタクト・アレーからなるメモリー素子、演算素子などの電子素子とそれらからなる電気回路を構成することができる。
【0028】以下では、混合導電体材料Ag_(2) S、可動イオン供給源Agから成る第1電極と、Ptからなる第2電極を用いた実施例を述べるが、他の材料を用いても同様の結果が得られることは言うまでもない。
【0029】架橋の形成はAg原子が10個程度あれば十分可能である。測定結果から、電圧100mV、初期電極間抵抗100kΩの場合に、Ag原子10個を混合導電体Ag_(2) Sから引き出すのに必要な時間、すなわち架橋を形成するのに必要な時間は、高々数十ナノ秒と見積もられた。また、架橋を形成するのに必要な電力はナノワット程度と小さい。このため、本発明を用いれば、高速でかつ低消費電力型の素子を構築することができる。」

ウ 第1実施例
・「【0030】まず、本発明の第1実施例について説明する。
【0031】図2は本発明にかかる多重メモリ素子に応用したポイントコンタクト・アレーの模式図である。
【0032】簡略化のため、図1と同様に、2つのポイントコンタクトから成る試料を用いた。ここでは、第1電極を構成する混合導電体材料11としてAg_(2) Sを、金属線10としてAg線を用いた。また、第2電極を構成する金属線13,14としてPt線を用いた。第1電極を接地し、第2電極13,14にそれぞれ電圧V1,V2を独立に印加する。V1,V2として負の電圧を選ぶと、混合導電体材料11中のAg原子12が析出し、架橋15,16が形成される。V1,V2を正の電圧にすると、架橋15,16中のAg原子12が混合導電体材料11中に戻り、架橋15,16が消滅する。この詳しい機構については、本願発明者によって特願平12-265344号として提案されている。
【0033】本発明では、ポイントコンタクトを複数用いることにより、以下に述べる新たな機能を実現している。
【0034】本実施例では、ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御をパルス電圧を印加することにより行った。すなわち、コンダクタンスを増大させるためには、50mVの電圧を5ミリ秒印加した。コンダクタンスを減少させる場合には、-50mVの電圧を5ミリ秒印加した。これにより、各ポイントコンタクトにおいて、量子化されたコンダクタンス間の遷移を実現した。すなわち、これがメモリとしての書き込み動作にあたる。」

・「【0035】そこで、記録状態を読み出すためには、V1,V2を10mVに設定し、読み出し動作によって記録したコンダクタンス値が変化しないようにした。その状態で、各ポイントコンタクトの第2電極を構成する金属線13,14に流れる電流I_(1) ,I_(2) を測定した。その結果を図3に示す。
【0036】図3において、I_(1) を細い実線で、I_(2) を太い実線で示してある。ポイントコンタクト15ないし16に、1秒ごとに書き込み動作を行い、その都度記録状態を読み出した。左側の縦軸は実際に測定した電流値を、右側の縦軸は対応する量子化コンダクタンスを示している。コンダクタンスは、測定電流を印加電圧(10mV)除算して得られる。
【0037】この図によれば、各ポイントコンタクトのコンダクタンスが量子化されていることが分かる。すなわち、架橋15による第1のポイントコンタクトの量子化コンダクタンスの量子数をN_(1) 、架橋16による第2のポイントコンタクトの量子化コンダクタンスの量子数をN_(2) とすると、それぞれN_(1) =0?3、N_(2) =0?3の合計16通りの記録状態が実現されている。
【0038】本実施例では、N=0?3の4つの量子化状態しか用いなかったが、さらに大きな量子数をもつ状態を用いることにより、記録密度を増やすことができる。また、ポイントコンタクトの数を増やすことによって記録密度が上げられることも言うまでもない。」

エ 第2実施例、第3実施例
・「【0042】図4は本発明の第2実施例の演算結果を示す図である。グラフ下に、入力したN_(1) ,N_(2) と測定されたN_(out) をグラフ横軸に対応させて示した。得られた電流値I_(out) がN_(1) +N_(2) に対応する量子化コンダクタンスを有していることが分かる。すなわち、加算が正確に行われている。本実施例でも、第1実施例と同様、N_(1) =0?3,N_(2) =0?3に対応する16通りの加算結果を示したが、より大きな量子数を用いても良い。また、用いるポイントコンタクトの数、すなわち、入力数を3個以上にしても同様のことが行える。
【0043】次に、本発明の第3実施例について説明する。
【0044】第1実施例に示す構成は、減算回路にも応用できる。入力の制御は第2実施例で述べたのと同じ方法で行う。減算の演算を行う際には、V1,V2として絶対値が等しく極性が逆の電圧を選べばよい。例えば、V1として10mV、V2として-10mVを設定すれば、N_(1) -N_(2) に相当する量子化コンダクタンスに対応する電流I_(out) が第1電極から接地電位に流出する。このとき、電流の向きが第1電極から接地電位を向いていれば演算結果は正の値を持ち、接地電位から第1電極を向いていれば演算結果は負の値を持つことになる。」

オ 第4実施例
・「【0047】次に、本発明の第4実施例について説明する。
【0048】これは、本発明のポイントコンタクトを用いて論理回路を構成した実施例である。論理回路を構成する場合は、第1実施例?第3実施例の場合と異なり、ポイントコンタクトにおける量子化コンダクタンス状態間の遷移は使わない。すなわち、オン・オフのスイッチング素子としてポイントコンタクトを用いる。典型的には、オンの状態の抵抗値が1kΩ以下、オフの状態の抵抗値が100kΩ以上である。
【0049】図6は本発明のポイントコンタクトを用いて構成したORゲートの模式図である。
【0050】Ag線21,22がAg_(2) S 23,24で被覆されており第1電極を構成している。これらのAg_(2) S 23,24から析出したAg架橋25,26が、第2電極であるPt電極20に対向して、ポイントコンタクトを形成している。Pt電極20の一端は、抵抗27(本実施例では10kΩ)を介して参照電圧VSに接続されており、もう一端は出力端子で、出力電圧Vout が出力される。Ag線21,22に対して、入力電圧V1,V2が印加されると、これにより、架橋25,26が形成されたり消滅したりして、ポイントコンタクトがオン・オフのスイッチング素子として働く。
【0051】図7にその動作結果を示す。本実施例では、1秒毎に入力、すなわちV1,V2を変更して出力V_(out) を測定した。
【0052】2入力ORゲートでは、LowレベルとHighレベルの2値化されたそれぞれの入力に対し、いずれか一方でもHighレベルならば、出力がHighレベルとならなければならない。
【0053】そこで、まず、Lowレベルとして0V(参照電位Vsも同じ)を、Highレベルとして200mVを用いて動作させた場合の結果を図7(a)に示す。
【0054】この図によると、2つの入力V1,V2の内、いずれか一方が200mVのとき、出力V_(out) は略200mVとなっており、正常に動作していることが分かる。Highレベルの電圧を500mVに上昇させても同様の結果〔図7(b)〕が得られた。
【0055】図8は本論理回路の等価回路を示す図である。
【0056】参照電圧Vsと入力電圧V1,V2によって、架橋25,26(図6)の生成・消滅が起こり、抵抗R1,R2(架橋によって形成されるポイントコンタクト部の抵抗)の抵抗値が変化する。電極20(図6)上の2つのポイントコンタクト間にも僅かな抵抗R12(数Ωから数十Ω程度)があるが、R0(10kΩ)、R1,R2(1kΩ?1MΩ)に比べれば無視できる大きさである。
【0057】まず、V1,V2ともに0Vの場合、系に接続された3つの電圧が全て0Vなので、出力Vout は必然的に0Vになる。次に、V1が0V、V2が200mV(500mV)の場合、架橋25(図6)が成長し、抵抗R2の抵抗値が小さくなる。典型的には1kΩ以下である。
【0058】この結果、R0よりもR2の方が抵抗値が1桁以上小さくなるので、V2′は約200mV(500mV)となる。このときV1′もほぼ200mV(500mV)となるので、架橋24(図6)に対しては架橋が消滅する電圧が印加されたことになり、R1は1MΩ以上の大きい値となる。この結果、V1が0Vであっても、R0,R1≫R2であるので、V1′はV2′と同じ約200mV(500mV)となる。その結果、出力は200mV(500mV)となるのである。正確には、架橋25の成長と架橋24の切断は平行して起こり、上述の結果をもたらす。
【0059】V1が200mV(500mV)、V2が0Vの場合も同様に説明できる。また、V1,V2ともに200mV(500mV)の場合は、架橋25,26がともに成長するので、V1,V2の電圧、すなわち、200mV(500mV)が出力されることになる。」

カ 「本発明にかかる複数個のポイントコンタクトを配置したポイントコンタクト・アレーを示す斜視模式図(「図面の簡単な説明」の記載)」である図1の斜視図、「本発明にかかる多重記憶メモリを構成するポイントコンタクト・アレーを示す模式図(「図面の簡単な説明」の記載)」である図2には、
a.第1電極2、10を覆う混合導電体材料1、11上に形成されているポイントコンタクト(架橋)6、7、15、16を介して、前記混合導電体材料1、11と第2電極3、4、13、14が対向していること、
b.前記ポイントコンタクト(架橋)6、7、15、16は、円錐形状であるかどうかは定かでないが、少なくとも、錐体状であることが見て取れること、
c.第1電極10に0Vを印加し、第2電極13に電圧V1を印加し、第2電極14には電圧V2を印加すると、前記第2電極13から第1電極10には電流I_(1)が、前記第2電極14から前記第1電極10には電流I_(2)が、それぞれ、流れること、
が示されている。

2-2 引用発明
ア 段落【0020】の「図1は本発明にかかる複数個のポイントコンタクトを配置したポイントコンタクト・アレーを示す」、段落【0034】の「これにより、各ポイントコンタクトにおいて、量子化されたコンダクタンス間の遷移を実現した。」、段落【0037】の「各ポイントコンタクトのコンダクタンスが量子化されていることが分かる。」の各記載から、引用例には、そのコンダクタンスが量子化されているポイントコンタクトを複数個配置したポイントコンタクト・アレーが記載されている。

イ 段落【0021】の「混合導電体1で被覆された金属線(第1電極)2と、金属線3,4(第2電極)との交点に可動イオン(原子)5で構成されたポイントコンタクト(架橋)6,7を形成する。」、段落【0028】の「以下では、混合導電体材料Ag_(2) S、可動イオン供給源Agから成る第1電極と、Ptからなる第2電極を用いた実施例を述べるが、他の材料を用いても同様の結果が得られることは言うまでもない。」、段落【0032】の「図1と同様に、2つのポイントコンタクトから成る試料を用いた。ここでは、第1電極を構成する混合導電体材料11としてAg_(2) Sを、金属線10としてAg線を用いた。また、第2電極を構成する金属線13,14としてPt線を用いた。」の各記載、及び、図1及び図2の図示態様から、引用例には、混合導電体材料としてのAg_(2) Sで被覆されたAg線を第1電極とし、Pt線を第2電極として、前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料上に、ポイントコンタクトとなる、可動原子で構成された錐体状の架橋が形成されていること、が記載されている。

ウ 段落【0025】の「具体的に説明すれば、第1電極2に対して第2電極3,4に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、混合導電体材料中の可動イオン(原子)が析出し、電極間に架橋6,7が形成される。この結果、電極間のコンダクタンスが増大する。」、段落【0026】の「各金属線に印加する電圧を独立に制御することによって……各交点のポイントコンタクトのコンダクタンスを独立に制御できる。」、そして、段落【0029】の「架橋の形成はAg原子が10個程度あれば十分可能である。測定結果から、電圧100mV、初期電極間抵抗100kΩの場合に、Ag原子10個を混合導電体Ag_(2) Sから引き出すのに必要な時間、すなわち架橋を形成するのに必要な時間は、高々数十ナノ秒と見積もられた。」、段落【0032】の「第1電極を接地し、第2電極13,14にそれぞれ電圧V1,V2を独立に印加する。V1,V2として負の電圧を選ぶと、混合導電体材料11中のAg原子12が析出し、架橋15,16が形成される。」との各記載、及び、図1及び図2の図示態様から、引用例においては、ポイントコンタクトとなる架橋は、第1電極に対して第2電極に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、混合導電体材料中を動くAgイオンが前記混合導電体材料から引き出されてAg原子として析出し、各電極間の混合導電体材料上に前記第2電極に向かって架橋が形成されるという現象を利用して形成していると認められる。

エ 段落【0025】の「第1電極2に対して第2電極3,4に適当な負電圧を印加すると……この結果、電極間のコンダクタンスが増大する。逆に第2電極3,4に適当な正電圧を印加すると……コンダクタンスが減少する。」という記載を参酌すれば、段落【0034】の「ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御をパルス電圧を印加することにより行った。すなわち、コンダクタンスを増大させるためには、50mVの電圧を5ミリ秒印加した。コンダクタンスを減少させる場合には、-50mVの電圧を5ミリ秒印加した。これにより、各ポイントコンタクトにおいて、量子化されたコンダクタンス間の遷移を実現した。」、段落【0037】の「この図によれば、各ポイントコンタクトのコンダクタンスが量子化されていることが分かる。」の各記載から、引用例には、ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、ポイントコンタクトとなる架橋は量子化されたコンダクタンス間の遷移を示すこと、すなわち、ポイントコンタクトが量子化されたコンダクタンスを示すこと、が記載されている。

オ 段落【0035】の「記録状態を読み出すためには、V1,V2を10mVに設定し、読み出し動作によって記録したコンダクタンス値が変化しないようにした。その状態で、各ポイントコンタクトの第2電極を構成する金属線13,14に流れる電流I_(1) ,I_(2) を測定した。その結果を図3に示す。」、段落【0037】の「この図によれば、各ポイントコンタクトのコンダクタンスが量子化されていることが分かる。」の各記載、及び、図2の図示態様から、引用例には、ポイントコンタクトの読み出しのために、第2電極に10mVに設定して、第2電極流れる電流を測定すること、が記載されていると解される。

カ 段落【0029】の「このため、本発明を用いれば、高速でかつ低消費電力型の素子を構築することができる。」の記載から、上記アの「ポイントコンタクト・アレー」が、「高速でかつ低消費電力型の素子」であると認められる。

以上のア?カによれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているといえる。
「そのコンダクタンスが量子化されているポイントコンタクトを複数個配置したポイントコンタクト・アレーであって、
混合導電体材料としてのAg_(2) Sで被覆されたAg線を第1電極とし、Pt線を第2電極として、前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料上に形成された、前記ポイントコンタクトとなる、可動原子で構成された錐体状の架橋を備え、
前記ポイントコンタクトとなる前記架橋は、前記第1電極に対して前記第2電極に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、前記混合導電体材料中を動くAgイオンが前記混合導電体材料から引き出されてAg原子として析出し、各電極間の前記混合導電体材料上に前記第2電極に向かって架橋が形成されるという現象を利用して形成されるものであり、
前記ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示し、その読み出しのために前記第2電極を10mVに設定して当該第2電極に流れる電流を測定する、
ことを特徴とする、高速でかつ低消費電力型の素子であるポイントコンタクト・アレー。」

3 対比
3-1 本願発明と引用発明との対比
次に、本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「第1電極」である「Ag線」における「Ag」、前記「第1電極」である「Ag線」は、本願発明の「第1金属」、「上記第1金属からなる第1電極」に相当する。
したがって、引用発明の「第1電極」を「被覆」する「混合導電体材料としてのAg_(2) S」は、「前記混合導電体材料中」を「Agイオン」が「動く」ことができるものであるから、本願発明の「第1電極」を「被覆」する「第1金属を含む化合物からなるイオン伝導層」に相当する。
また、引用発明の「第2電極」である「Pt線」は、本願発明の「上記第1金属とは異なる第2金属からなる第2電極」に相当する。

イ 引用発明の「前記ポイントコンタクト」は、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料上に形成され」た「可動原子で構成された錐体状の架橋」であるとともに、前記「架橋」として「各電極間の前記混合導電体材料上に前記第2電極に向かって」「形成される」ものである。すなわち、引用発明の「前記混合導電体材料」と「前記第2電極」とは、「前記第1電極と前記第2電極の交点」において、「錐体状の前記ポイントコンタクト」を介して対向することにより近接している。
したがって、引用発明の「前記ポイントコンタクト」が、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料上に形成され」た「可動原子で構成された錐体状の架橋」であるとともに、「架橋」として「各電極間の前記混合導電体材料上に前記第2電極に向かって」「形成される」ことは、本願発明の「上記イオン伝導層と上記第2電極とを近接させて配設する」ことに相当する。
そして、引用発明において、「前記混合導電体材料」と「前記第2電極」が近接している部分である「前記第1電極と前記第2電極の交点」は、本願発明の「近接部」に相当する。

ウ 引用発明の「ポイントコンタクト」は、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料上に形成された」、「可動原子で構成された錐体状の架橋」である。そして、「前記ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示」す。
このとき、「前記ポイントコンタクトとなる架橋」は、前記「量子化されたコンダクタンスを示」すのであるから、引用発明の「第1電極」と「第2電極」とを導通可能に接続することに寄与する「コンタクト」である、すなわち、電気的な接点であることは、明らかである。
これに対して、本願発明の「金属ナノ架橋」は、「上記近接部において、上記第1電極と第2電極とが」、「導通可能に接続されてなる」ことに寄与するものであって、「マクロ架橋部の露呈面と上記第2電極表面との間に形成された上記第1金属からなり量子化コンダクタンスを呈する」ものである。
したがって、引用発明において、「前記第1電極に対して前記第2電極に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、前記混合導電体材料中を動くAgイオンが前記混合導電体材料から引き出されてAg原子として析出し、各電極間の前記混合導電体材料上に前記第2電極に向かって」形成された「前記ポイントコンタクトとなる前記架橋」に、「前記ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加する」ことで得られる、「量子化されたコンダクタンスを示」す「前記ポイントコンタクトとなる架橋」と、本願発明の「上記近接部において、上記第1電極と第2電極と」が「導通可能に接続されてなること」に寄与する「上記マクロ架橋部の露呈面と上記第2電極表面との間に形成された上記第1金属からなり量子化コンダクタンスを呈する金属ナノ架橋」とは、「上記近接部において、上記第1電極と第2電極と」が「導通可能に接続されてなること」に寄与する「面と上記第2電極表面との間に形成された上記第1金属からなり量子化コンダクタンスを呈する金属ナノ架橋」である点で共通する。

エ 引用発明の「前記ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加」して「量子化されたコンダクタンスを示」す「前記ポイントコンタクトとなる架橋」は、「その読み出しのために前記第2電極を10mVに設定して当該第2電極に流れる電流を測定する」ものであるから、引用例の図2を参酌すれば、「前記ポイントコンタクトとなる架橋」が「量子化されたコンダクタンスを示」すとき、引用発明の「第1電極」と「第2電極」とは導通可能に接続されていることは、明らかである。
してみれば、上記ウで指摘したように、引用発明の「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加する」ことで「量子化されたコンダクタンスを示」す「前記ポイントコンタクトとなる架橋」は、前記「第1電極」と前記「第2電極」とが導通可能に接続されるときの、導通経路の一部であると解される。
一方、引用発明における「第1電極」と「ポイントコンタクトとなる架橋」の間に存在する「混合導電体材料」も、「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加」して「前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示し」ているとき、前記「第1電極」と前記「第2電極」とが導通可能に接続されるときの導通経路の一部であることは、明らかである。
したがって、引用発明において、「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示」すときは、「第1電極」と「前記ポイントコンタクトとなる架橋」の間に存在する「混合導電体材料」と、「前記ポイントコンタクトとなる架橋」とにより、前記「第1電極」と前記「第2電極」とが導通可能に接続されると認められる。
そして、引用発明の「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示」すときにおける、「第1電極」と「ポイントコンタクトとなる架橋」の間に存在する「混合導電体材料」と、本願発明の「上記第1電極表面から上記イオン伝導層を貫通するように形成された上記第1金属からなるマクロ架橋部」とは、「上記第1電極表面」から「形成された」部分である点で共通している。
以上から、引用発明において、「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示」すときに、「第1電極」と「前記ポイントコンタクトとなる架橋」の間に存在する「混合導電体材料」と、「量子化されたコンダクタンスを示」す「前記ポイントコンタクトとなる架橋」とにより、前記「第1電極」と前記「第2電極」とが導通可能に接続されていることと、本願発明において、「上記近接部において、上記第1電極と第2電極とが、上記第1電極表面から上記イオン伝導層を貫通するように形成された上記第1金属からなるマクロ架橋部」と前記「金属ナノ架橋とにより導通可能に接続されてなること」とは、「上記近接部において、上記第1電極と第2電極とが、上記第1電極表面」から「形成された」部分と前記「金属ナノ架橋とにより導通可能に接続されてなる」点で共通している。

オ そして、引用発明の「そのコンダクタンスが量子化されているポイントコンタクトを複数個配置したポイントコンタクト・アレー」は、「量子化され」た「コンダクタンス」を示す「高速でかつ低消費電力型の素子」であるから、本願発明の「量子化コンダクタンス素子」に相当する。

3-2 一致点及び相違点
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の各点で一応、相違している。

《一致点》
「第1金属を含む化合物からなるイオン伝導層が被覆された上記第1金属からなる第1電極と、上記第1金属とは異なる第2金属からなる第2電極とを、上記イオン伝導層と上記第2電極とを近接させて配設すると共に、上記近接部において、上記第1電極と第2電極とが、上記第1電極表面から形成された部分と、面と上記第2電極表面との間に形成された上記第1金属からなり量子化コンダクタンスを呈する金属ナノ架橋とにより導通可能に接続されてなることを特徴とする量子化コンダクタンス素子。」

《相違点1》
本願発明は、「イオン伝導層を貫通するように」形成された「上記第1金属からなるマクロ架橋部」を有するものの、引用発明の「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加すると、前記ポイントコンタクトとなる架橋は、量子化されたコンダクタンスを示」すときに、「第1電極」と「前記ポイントコンタクトとなる架橋」の間に存在する「混合導電体材料」が、本願発明でいう前記「マクロ架橋部」となっているかは不明である点。

《相違点2》
本願発明の「金属ナノ架橋」は「上記マクロ架橋部の露呈面」と上記第2電極表面との間に形成されたのに対して、引用発明の「前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加する」と「量子化されたコンダクタンスを示」す、「前記ポイントコンタクトとなる架橋」は、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料上」に「前記第2電極に向かって」「形成され」ている点。

4 当審の判断
4-1 相違点1及び相違点2について
ア 引用発明の「ポイントコンタクトとなる架橋」は、「前記第1電極に対して前記第2電極に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、前記混合導電体材料中を動くAgイオンが前記混合導電体材料から引き出されてAg原子として析出し、各電極間の前記混合導電体材料上に前記第2電極に向かって架橋が形成されるという現象を利用して形成されるもの」である。
したがって、引用発明の「ポイントコンタクト」の形成は、「適当な負電圧」が「印加」されると、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中を「電流」が流れ、「前記混合導電体材料」の「中」を「Agイオン」が動くことで、当該動いた「Agイオン」が「前記混合導電体材料上」に「引き出されて」「Ag原子」として「析出」することでなされると認められる。

イ ところで、「Ag」等の金属イオンが分散している媒体中を電子が移動すると、この電子を捕捉した銀イオン等の金属イオンが還元されて金属となることは、技術常識である。
この点について、本願明細書の段落【0034】にも、
「次に、イオン伝導層13と第2電極12との近接部に第1電極11から第2電極12に向かう負の電圧を、好ましくは0.1?0.8V程度で印加し、この電圧の印加により、第2電極12から第1電極11に向かう電子の流れが発生し、これによりイオン伝導層13の第2電極12との近接部において第1金属のイオン(カチオン)が還元されて、図4(B)に示されるように、第1電極11と第2電極12との間に第1金属からなる導電路50が形成される。この導電路50はイオン伝導層13と第2電極12との近接状態に依存して本発明の金属ナノ架橋に比べてかなり大きく形成されるため、この操作だけでは金属ナノ架橋とはならない。」、と記載されている。

ウ さて、引用発明の「前記第1電極に対して前記第2電極に適当な負電圧を印加する」ことによる「ポイントコンタクトとなる前記架橋」の「形成」時には、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中を「電流」が流れる以上、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中を前記「電流」と逆向きに電子が流れていると認められる。
また、「前記ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加」された「前記ポイントコンタクトとなる架橋」は、「その読み出しのために前記第2電極を10mVに設定して当該第2電極に流れる電流を測定する」ことができるから、「前記第2電極を10mVに設定し」たときも、「前記混合導電体材料中」を「電流」が流れるものである。
してみれば、引用発明において、「前記第1電極に対して前記第2電極に適当な負電圧を印加する」ことにより「ポイントコンタクトとなる前記架橋」を「形成」する時には、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中を「電流」が流れ、言い換えると、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中を前記「電流」と逆向きに電子が流れるから、この電子が流れる「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中では「Agイオン」が少なからず「Ag」に還元されることは明らかである。
そして、この電子が流れ、「Agイオン」が少なからず「Ag」に還元された、「前記混合導電体材料」の領域が、前記「その読み出しのため」に「前記第2電極」を「10mV」という低電圧に「設定し」たときに、「前記混合導電体材料中」を「電流」が流れることに、少なくとも、寄与していると認められる。

エ したがって、「前記ポイントコンタクトとなる前記架橋」が「形成され」た時点では、「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」中では、そこにあった「Agイオン」が少なからず還元されて、前記「第1電極」の表面から「前記混合導電体材料」を貫通するように形成された導電路となっているものと、解される。

オ なお、本願明細書の段落【0034】には、「イオン伝導層13と第2電極12との近接部に第1電極11から第2電極12に向かう負の電圧を、好ましくは0.1?0.8V程度で印加し」たという「操作だけでは金属ナノ架橋とはならない。」、と記載されている。
一方、引用発明は、「前記第1電極に対して前記第2電極に適当な負電圧を印加すると、電圧と電流との効果により、前記混合導電体材料中を動くAgイオンが前記混合導電体材料から引き出されてAg原子として析出し、各電極間の前記混合導電体材料上に前記第2電極に向かって架橋が形成されるという現象を利用」して「前記ポイントコンタクトとなる前記架橋」を「形成」するものである。そして、「前記ポイントコンタクトのコンダクタンスの制御のために、前記第2電極に50mV、5ミリ秒の負または正のパルス電圧を印加する」と、「前記ポイントコンタクトのコンダクタンス」が「制御」されて、「量子化されたコンダクタンスを示」す「前記ポイントコンタクトとなる架橋」が得られるものである。

カ 以上のとおりであるから、引用発明の「ポイントコンタクト」、及び、当該「ポイントコンタクト」と「第1電極」である「Ag線」との間に位置する「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」は、前記「第1電極」の表面から「前記混合導電体材料」を貫通するように形成された導電路となっているものと認められ、本願発明の「マクロ架橋部」に相当している。
してみれば、引用発明の「前記ポイントコンタクトとなる架橋」は、本願発明の「マクロ架橋部」に相当する前記「前記第1電極と前記第2電極の交点における前記混合導電体材料」の露呈面上に形成されていると認められる。
よって、相違点1及び相違点2は、いずれも、実質的な相異点ではなく、したがって、引用発明は、本願発明と相違するところがない。

4-2 審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書において、以下のように主張している。
a.「引用文献1記載のポイントコンタクト・アレーにおいて、その電極間のコンダクタンスが制御可能な電子素子(架橋)は、図2,6及び9に示されるとおり、混合導電体材料(Ag_(2)S)上に設けられており、可動イオン供給源である第1電極の金属線(Ag電極)とは接していない。」
b.「引用文献1記載の発明では、Ag原子を混合導電体Ag_(2)Sから引き出すに足るだけの負の電圧を印加することが示唆されているだけであるから、段落[0031]の記載からは、混合導電体Ag_(2)Sから負の電圧によりAg原子を引き出し、更に、正の電圧によりAg原子を混合導電体Ag_(2)Sに戻すことが想起されるだけである。つまり、引用文献1記載の発明の場合は、金属線から混合導電体にAg原子の移動はあり得るとしても、金属からなるマクロ架橋部を形成することはなく、混合導電体を介したAg原子の移動が示されているだけである。」
c.「更に、引用文献1記載の負の電圧の印加は、初期電極間抵抗100kΩに対して、電圧100mVを印加するものである……引用文献1記載の負の電圧の印加において、より低抵抗において高電圧(即ち、高電力)を印加する動機付けがない。」

イ しかしながら、上記a及びbの主張については、「4-1 相違点1及び相違点2について」のア?カで記載したとおりである。
また、上記cの主張については、本願の特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、この主張は当を得ていない。

ウ なお、審判請求人は、平成24年2月6日に提出された回答書において、上記a?cの主張のほかに、以下のように主張している。
d.「引用文献1の第4実施例は、本願発明のマクロ架橋部を示唆することはなく、引用文献1の第4実施例では、量子化コンダクタンスを呈する金属ナノ架橋すら形成されていない。」

エ しかしながら、引用発明は、「2-1 引用刊行物の記載」で摘記したように、引用例において、「そのコンダクタンスが量子化されているポイントコンタクトを複数個配置したポイントコンタクト・アレー」について記載された部分を基礎として認定したものであり、上記dの主張は当を得ていない。

4-3 小括
以上の検討から、本願発明は、引用例に記載された発明であると認められる。

第3.結言
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-07 
結審通知日 2012-06-13 
審決日 2012-06-26 
出願番号 特願2004-97445(P2004-97445)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 近藤 幸浩
早川 朋一
発明の名称 量子化コンダクタンス素子、これを用いた磁場変化検出方法及び磁気検出方法、並びに量子化コンダクタンス素子の製造方法  
代理人 重松 沙織  
代理人 小島 隆司  
代理人 石川 武史  
代理人 小林 克成  

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